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zoom RSS 怪異 妖怪 神隠し 「妖怪文化入門」

<<   作成日時 : 2012/09/11 23:45   >>

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「妖怪文化入門」
「怪異考/化物の進化 - 寺田寅彦随筆選集」(次回登場)
進化心理学や神経科学、脳科学の領域でどうしても出てくるのが霊魂不滅の法則です。この話題における学術的な話の多くは欧米の著者による本に書かれています。日本文化に根ざした論考があまりないのですけど、その一つの方法として、前回、「神隠し」との関連性に触れました。
○霊魂不滅の法則と神隠し 魂の世界と妖怪の世界
http://yoshibero.at.webry.info/201209/article_12.html
「神隠し」という方便に登場するまつろわぬものは天狗、鬼、狐等です。
これらは「妖怪」の範疇に入ります。
しかし、妖怪研究には誤解が多い。
そこで、今回、コンパクトで読みやすい学術的な妖怪の本を紹介します。

妖怪文化入門 (角川ソフィア文庫)
角川学芸出版
2012-06-22
小松 和彦

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「妖怪文化入門」という本で、角川ソフィア文庫から出ています。
2006年に出版された同名の本の文庫版です(2012年06月刊)。
元は古いですけど、文庫として読みやすいように再編集されています。

妖怪は、いかがわしいもの、あるいは幼稚なものと捉えられることが多い。
これは以前も書きましたが、このいかがわしさは、怪獣やSFに出てくるエイリアンなどと混同されることから来ると思います。
あるいは、水木しげる大(おお)先生の影響もあるでしょう。
さらには、超常現象やオカルトと混同されることもあるでしょう。

学問の世界でも、妖怪を研究する人はほとんどいませんでした。
しかし、妖怪のモノゴトは民俗社会に密接に関わっています。

かつて、民俗社会には異界がありました。
天の上には死後の世界があり、山の中や海の中にも異界があり、あるいは地中にも異界がありました。
それぞれ別の世界で、天狗や鬼や狐や亀などが異界との橋渡しをしていたわけです。

一般に妖怪研究の先駆者としては柳田國男があげられますが、アカデミックな場で妖怪を論じた先駆者は今回の著書の小松和彦です。

「妖怪文化入門」は妖怪研究の歴史や、個別の妖怪や怪異の解説もあり、まさに妖怪や妖怪文化の学術的な入門書として最適の本です。

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この本のタイトルにもあるように、妖怪そのものを信じるとか信しないとか、あるいは有るか無いかを論じているのではありません。
妖怪という現象が民俗社会の中でどう利用されてきたかを論じているのであって、怪異や妖怪現象そのものの学問ではありません。

ここはキチンを分けないといけない。

先のエントリーで書いたように、神隠しも臨死体験も、それらの有無を論じているのではなく、したがって、超常現象ともオカルトとも無縁です。
引用文からわかるとおり、神隠しも臨時体験も、あるいは死後の世界も、有るか無いかと無理やり聞かれれば無いと答えるでしょう。
そもそもそれらの有無を論じること自体無意味だし。
そもそも妖怪は実在するわけでもない。

なので、妖怪そのものの専門家ではありません。
妖怪現象を通じて民俗社会を論じる研究者です。
うまく書けませんけど。

これから登場する人たちも似たようなものです。

妖怪や死後の世界や霊言や霊魂不滅やスプーン曲げやテレパシーや宇宙人の乗り物などを信じるのってヘンなやつだなぁ、でもなんで信じちゃったのか分析したらおもしろいかも、ってスタンスだとすると、なんだか上から目線のイヤらしい学問に見えるかもしれませんが、もしかしたら多少その気はあるかもしれません。

アンチによるビリーバーの人間観察ですから、ある意味しかたがない。

あくまでも人間研究であって、オカルトや超常現象の研究ではありません。




江戸時代に多くの妖怪画が描かれています。
一番著名なのは「画図百鬼夜行」でしょう。
国書刊行会から出版されていますが、文庫化もされています。

鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集 (角川文庫ソフィア)
角川書店
鳥山 石燕

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妖怪を1ページに1体紹介するものや、百鬼夜行絵巻のように、多くの妖怪が行進する絵巻、黄表紙と呼ばれる滑稽ものなど、江戸時代に多くの妖怪物が出版されています。
幸いなことに、現代ではその多くが復刻版で見ることができます。
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「妖怪学」研究のはしりは井上円了でしょう(p93)。
東京都中野区のちょっと不便なところに「哲学堂公園」という奇妙な場所があります。中に入っただけで異界を感じる造りになっていますが、その主人公が東洋大学の創設者でもある井上円了です。
代表作「妖怪学講義」は明治29年(1896年)に出ています。
全集で復刻されています。
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円了は不思議現象を合理的に解釈する立場で妖怪現象を分類し、単なる迷信からそれでも解明できない現象まで冷静に分類しています。
迷信的妖怪を撲滅する立ち位置にいますが、怪異を全否定しているわけではありません。
「未確認飛行物体」をどうしても解明できない飛行物体として保留する立場に似ているでしょう。
このアナロジーからいうと、UFOを単なる宇宙人の乗り物とする立場を徹底的に糾弾しているわけです。


円了は科学的な視点から妖怪を捉えていますが、実在性を伴った妖怪現象を歴史的な立場から分析したのが江馬努です(p95)。
「日本妖怪変化史」(大正12年・1923年)としてまとめられており、文庫本で読むことができます。

日本妖怪変化史 (中公文庫BIBLIO)
中央公論新社
江馬 務

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そして、真打ちの登場です。民俗学の提唱者である柳田國男は「妖怪談義」(昭和11年・1936年)で、妖怪と幽霊、伝説と昔話などの分類をしています(p97)。
こちらも文庫本で読むことができ、1冊で「妖怪談義」以外の妖怪に関連した論考を読むことができます。

柳田国男全集〈6〉 (ちくま文庫)
筑摩書房
柳田 国男

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その流れをくんで、今回の著者が登場するわけです。

ちなみに、水木しげる大先生の妖怪たちは、柳田國男の妖怪と石燕の画図百鬼夜行の妖怪をキレイに区別して使い分けています。
これらの妖怪は大先生の単なる妄想ではなく、学術的な裏付けのある妖怪たちです。そういう意味で、水木妖怪は学問の世界でも論じられています。

本書の第2部で、「憑きもの」「河童」「鬼」天狗」「幽霊」などがどのように研究されていったかを具体的にコンパクトにまとめられています。




巻末に「参考文献」があります。
一般の書店では手に入らない学術雑誌も入っていますけど、書店や古本屋で買える本もたくさんリストされており、章ごとにまとめてありますから便利です。

本文中にも多くの著作などの引用をしており、興味を持った分野をさらに突っ込んで読みたいとき、すぐに手に入れることができます。

この本に出てくる書店で買える本の多くの参考書籍は、私の本棚にもあります。
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「怪異考」「化物の進化」 寺田寅彦随筆選集
先のエントリーで時数制限のため書けなかった続きです。 ○怪異 妖怪 神隠し 「妖怪文化入門」 http://yoshibero.at.webry.info/201209/article_13.html これまでに、死後の世界や霊魂の不滅を進化心理学や脳科学で考える過程で「神隠し」が出てきました。「神隠し」に登場する装置が「妖怪」の一種なので、「妖怪学」の入門を紹介しました。 今回、少し毛色が違いますが、妖怪の話を読んでいると、ときおり登場する寺田寅彦の随筆です。 彼は物理学者とい... ...続きを見る
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2012/09/12 02:28

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