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zoom RSS パスカルの賭け 神を信じるか、天国はあるか

<<   作成日時 : 2012/08/26 00:41   >>

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多くの本で「パスカルの賭け」について語られています。
今回はこの「パスカルの賭け」について書かれている比較的新しい本を紹介します。
「パスカルの賭は」一般に神を信じるか、天国はあるかと言った文脈で登場します。数学者であり神学者であるパスカルらしく、数学の用語を使って、神の信仰を語ります。
「パスカルの賭け」によれば、神は在るに賭けた方がよい
という結果になります。
はたしてそうなのか?
画像


『パンセ』の233節(パスカル著、津田穣訳「パンセ」(新潮文庫))

考えてみよう、えらばなければならないのであるからには、どちらが君に関係が少ないかを考えてみよう。君は失うべき2つのもの、すなわち真と善を持っており、かけるべき2つのもの、すなわち君の理性と君の知識と君の幸福とを持っている。君の理性はどれか1つをえらんだとて傷つけられることにはならない。しかし君の幸福は?

神があるという表(おもて)をとってその得失を計ってみよう。2つの場合を見積もってみよう、もし君が勝つならば君は一切を得る、もし君が負けても君は何も失わない。それゆえためうことなく神はあるというほうに賭けたまえ。−−−それはすばらしい!



ここに出てくるパスカルというのは、「考える葦」のパスカルで、
「パスカルの原理」や「パスカルの三角形」のパスカルです。
数学や物理学にすぐれた業績を残していますけど、
信仰心のあつい人で、神学者としても著名です。
そのパスカルが言うんだから、と、信じちゃう人が結構多い。

そもそも神の存在を賭けの対象にするとはなにごとか、と言われそうですけど、パスカルは大まじめです。その前に伏線を張り論理的に書いています。

読み直してビックリしたのですけど、無限や無にかんする考察の中で、回りくどく延々と語っています。
先の引用文ではちょっとわかりにくいですので下のように単純化します。


神は存在する
神は存在しない
 どちらかしかない。二択とする。

神は存在すると信じる ならば 神が存在するに賭ける
神は存在しないと信じる ならば 神が存在しないに賭ける
 どちらかに賭ける。二択しかない。


○神は存在するに賭ける −> ちゃんと神は存在する
 永遠の命が得られる 天国が待っている

○神は存在するに賭ける −> 実は神は存在しない
 信じた時間は無駄になる 信仰により多少の安らぎは得られる

○神は存在しないに賭ける −> ホントに神は存在しない
 信仰による安らぎが得られない

○神は存在しないに賭ける −> 実は神は存在する
 永遠の業火に焼かれ苦しむ


神は存在するに賭けると
 永遠の命が得られるか、
 悪くても今生だけだが(永遠の命はないが)安らぎが得られる

神は存在しないに賭けると
 もっとも良くても今生だけの命 永遠の命はない
 悪ければ永遠の地獄

さて、どっちに賭ける?

(すぐに気がつくでしょうけど、これはローカルな宗教の話に過ぎません。彼らにとってはグローバルな話なのかもしれませんけど。死後、神がいるかどうかわからない、だけど、死んでみると神がいるかどうか確認できる、という前提が必要です。その前提を持たない人にとってはそもそも賭は成り立たない)




パスカルには「パンセ」という著作がありますが、これは生前に書かれた本ではなく、死後、残されたメモをまとめられた本です。
節には番号がつけてあります。なので、引用・参照に便利。

多くの節は短い。
例えば、クレオパトラの鼻で有名な162は5行ですし、その次の163は
むなしさ。愛の原因と結果。クレオパトラ。
とだけ書かれた1行だけです。

その近くの166に
死のことを考えないで死ぬ方が、危険な死に死のことを考えるより堪えやすい。
というのがあります。

「考える葦」は347。ちょっとだけ長い。

そのような断片だけでなく、今回の話とも関わる194や「賭け」の233などは非常に長い。




はたして、この賭は賢明なのか?
そもそも、この賭は成立するのか?
ちょっと考えるとわかりますけどね。

懐疑的に考えることができないひとは、パスカルを信じるしかない。
無批判に信じちゃう人がいたりするからおもしろい。

このブログに以前登場してる人です。

○霊魂や死後の世界を信じること ある80有余年生きてきた方の独白
http://yoshibero.at.webry.info/201204/article_32.html

「碩学」とあがめられている方です。

「パスカルの賭が」かなりお気に入りのようで、何度も登場します。
この人の結論は、単純化されたパルカルの話の通り、神を信じるに賭けた方がよい、というものです。懐疑精神のかけらもありません。
しかも、それが科学的だとさえ匂わせています。

前にも書いたことですが、この賭は賭なのだからどちらに賭けようと自由です。どっちでもかまわない。死んでから、あぁやっぱり失敗したとか、やっぱり正解!とかそんな世界が来るかどうか考えるのも自由です。どうでもよい。

だけど困るのは、この賭には答えは1つだけしかない、その理由に科学やら進化論やらを持ち出して、間違った科学を不当にけなし、進化論はおかしいとか言い出すことです。

神を信じます。信じたいから信じます。それだけでええやん。
死後の世界、魂、永遠の生命を信じます。それだけでええやん。
何でそれを宣言するために科学を攻撃する?
しかも、その攻撃している科学の認識がおかしい。




次の本も以前登場しています。
「サイエンス・クエスト」
○「サイエンス・クエスト 科学の冒険」
http://yoshibero.at.webry.info/201207/article_18.html

3つの章のうち、1つの章は死や死後の世界の話です。

「パスカルの賭け」(p214)

サイエンス・クエスト 科学の冒険―宇宙の生命、死の意味、数の世界
NHK出版
アイリック・ニュート

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こちらは科学者による冷静な本ですから、懐疑的に考えています。
回りくどい話はいっさいなく、小学生にもわかる論理でやさしくダイレクトに解説してくれます。

神さまはひとりしかいないかのように思える。でも、じっさいには、神さまはひとりではなく、たくさんいるかもしれない。

パスカルの賭は二択になっているけど、現実は二択ではない。
上の引用で、「二択」にこだわったのはこのためです。

このように、むりやり二択にするのが、ニセ科学の特徴でもある。
二択を提示し、一方は間違っている、だから他方が正しい、とか。
よくあるパターン。

二択が出てくれば、それ以外の可能性がないかどうか考えればいい。
そうすれば、たいていの場合、二択の前提条件が崩れ、
その論理も崩れることがわかる。

これはニセ科学かどうか見破るのに有効な考え方で、
ニセ科学に引っかからないための奥義でもある。

どちらか選べと迫られたら、それ以外や両方の可能性を考えればよい。
あるいは、可能性は2つ。1つは間違っている、だから残りは正しい、
と言う主張を見れば、それ以外の可能性や両方の真偽を探ればよい。


しかも、そのたくさんの神さまのなかに、自分以外の神を信じたら、より厳しい罰を与える神さまがいたとしたら、話はややこしくなる。

さらに、二択以外にもっとつごうの悪い条件もあるかもしれない。
今回のように。


ほかの神さまを信じない
 その神さまからは罰を受けずにすむ

さらにべつの神さまがいる
 その神さまが自分を信じていないといって罰を与える


死後の世界も大変やなぁ。




次は倫理学者の本です。

「100の思考実験」
現在の科学で解明されていることがわかりやすく紹介されていますし、
いくつかの思考実験も、どのように考えたらいいかわかりやすく解説してあります。

「78 神に賭ける」(p310)


100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか
紀伊國屋書店
ジュリアン バジーニ

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まず、宗教に関わる 祈る 洗礼を受ける ってなに?

万一に備えて最低限、神と関係を持ち続けておくのが何より
保険の外交員の理屈
もしものために備えておけば、時間も手間もたいしてかけずに安心が得られる


まぁ、こんなもんか。


で、パスカルの賭け。

まずは、先の「サイエンス・クエスト」と同様の論理。

パスカルの賭は、可能性が2つだけの時に成り立つ。
実際は違う。いろんな神がいるし、信じる方法もたくさんある。

もし、死後、自分の信じた神とは違う神がいたら。それが排他的なら。
自分の神を信じようが信じまいが、確実に地獄行き。
どちらに賭けても、地獄行き!

いやいや慈悲深い神がいて、異なる神を信じていてもきちんと導いてくれるはず、というのなら、無神論者でも地獄行きにならないはず。
どちらに賭けても、地獄に行かない。

他にもおもしろいことが書いてあります。
いずれにしても、パスカルの賭が成り立たない。




「神は妄想である」


神は妄想である―宗教との決別
早川書房
リチャード・ドーキンス

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少し古い本ですみません。
ドーキンスの次の言葉も引用しないわけにはいかない。

神が実在する可能性がわずかながらあるとしよう。そうだとしても、神が実在することに賭けて信仰し、捧げ物をし、神のために戦い、神のために死ぬよりも、神が実在しないことに賭けた方が充実した一生を送ることがでるだろう。

ドーキンスはこのブログで何度か登場しています。この本の話題も少し書いています。

この手の本を書くきっかけの定番とえいば9.11ののですけど、この本も同類です。しかし、それだけではなく、家族に対するメッセージにもなっています。

これでもかと宗教への決別宣言が続く、痛快な本です。
上記の引用は「パスカルの賭け」そのものについて語っているわけではありませんが、その賭が無意味であること、そもそも前提からして意味が無いことが延々と、しかもおもしろく書かれています。

子どものころから信仰の世界を聞かされて育った人にとっては、それが全てでしょう。それ以外の考えはありえない。疑うことすら思いつかない。そういう人々が(日本にいるかぎり考えにくいでしょうけど)世界にはたくさんいます。
そんな1つの宗派の偏った教義に凝り固まった人たちへ向けて、その信仰は確かなのか、神が存在するのは確かなのか、宗教や道徳ってそもそもなんなのか、といったメッセージを送っています。

狂信者には無理でしょうが、神に対し、違和感があるけど疑問に思う事すら忘れ、疑問に思っていいことすら気がつかず、疑問に思ってはいけないと思っていた人たちには、効果がありそうな本です。




この「神は妄想である」に対して「神は妄想か?」という本が出ています。こちらの翻訳はまだ新しい。原著はドーキンスの本が出た直後。速攻で書いています。
2人の著者はドーキンスと同じ大学に所属する歴史神学と宗教心理学の学者で、分子生物物理学と実験心理学・臨床神経心理学からの転向組です。
ばりばりの神学者ではないので(科学に無知ではないので)、科学に関する考察もそれなりに読める。


神は妄想か?―無神論原理主義とドーキンスによる神の否定
教文館
A.E. マクグラス

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非常に薄い本で、文字数も少ないのですけど(ハードカバーだからそれなりに高価)、読み終えるのに時間がかかる本です。
ドーキンスの本は分厚いのにすんなり読めたのですが、こちらは難敵。

反「神は妄想である」だけにしぼって書かれています。
ねちねちと細かいことを指摘しているのはわかるのですが、結局どこが致命的なのかわからない。

結局、口泡飛ばして神の存在を説いても、その(妄想でない)神とは、一地方のひとつの神さまでしかない(欧米人にとってはグローバルだと「妄信」している神さま)。
違う地域の人にとっては、どうでもよいこと。

ドーキンスの言う神は、一地方の神だけではない。




「パスカルの賭け」に戻って、お気に入りの本をもう一冊。
2007年刊、2008年翻訳出版とちょっと古いですが、内容は古くならない。

数学者の無神論―神は本当にいるのか
青土社
ジョン・アレン パウロス

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病気から回復するのが神の介在による奇蹟的な事例と考えられるなら、そもそも病気にかかるのは何のせいなのだろう」(p100)

「神は存在する」とされる論法を数学者による数学的論理でばっさばっさと切り落としています。

その中に「パスカルの賭け」も出てきます。
「賭け」とくれば数学だし、パスカルも数学者です。
ここでは「期待値」で応戦しています。

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