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zoom RSS ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本(再掲載)

<<   作成日時 : 2010/10/15 01:26   >>

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訳あってちょうど2年前に削除していたエントリーを復活させます。
アップしたのは 2007/04/24 03:29  ですから、3年半前です。
批判の対象となった本の紹介Webサイトは閉鎖されています。
(復活文のリンクなどは当初のママです。)
批判の対象となったシリーズの続編の計画もあったようですが、
出ていません。




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ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本
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食の安全・安心の実現に挑む―秋川牧園物語(山口県) (まんが 農業ビジネス列伝―食と農の未来を拓く挑戦者たち)
家の光協会
農林水産省中国四国農政局

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農のはぐくむもの―木次の牛乳作りを通じて(島根県) (まんが 農業ビジネス列伝―食と農の未来を拓く挑戦者たち)
家の光協会
農林水産省中国四国農政局

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この春から、農林水産省中国四国農政局監修の恐ろしいシリーズ本が出版されています。
「食の安全・安心」というキャッチフレーズはあちこちで(安易に)使われており、頻繁に目にします。
何かと問題の多い農水省ですが、農水省監修の本なら、トンデモ農水相は関与していないでしょうし、お役人が直接監修しているのだから、それこそ「安心」して読めるのかなと期待して、わざわざ注文して購入しました。350円と安い本ですけど。

何が書いてあるかというと、化学肥料や農薬を使用しない栽培を推奨しており、さらに、家畜の肥料として抗生物質や抗菌剤などを一切使用しないことが「食の安全・安心」に必要なことなのだそうです。
「安全が確認できないエサを」使うことはできない、それには「薬を使わない自然な飼い方」しかないという物語です。
この流れからわかるように、遺伝子組換えトウモロコシを家畜の飼料に使うのも、絶対にダメ!です。
このような内容の本が、なんと、農林水産省監修の本として堂々と市販され、中国四国9県の小中学校に寄贈されるそうです。
圧倒的大多数の真面目な農家は、これでは浮かばれません。


「まんが農業ビジネス列伝 vol.5 山口県―食と農の未来を拓く挑戦者たち 食の安全・安心の実現に挑む 秋川牧園物語」
農林水産省中国四国農政局企画・監修、橋本崇夫他作画
家の光協会、2007年03月15日第1刷発行、350円


農林水産省中国四国農政局が企画・監修する「食の安全・安心」本があると知り、上記の本を購入し読みました。
率直に言って、中国四国農政局が本当に本文を読んだ上で、「監修」されたのだろうか?と疑問に思いました。
もしかしたら、出版社が勝手に「農政局」の名前を使っているのでは?とまで思ったのですが、次のプレスリリース(平成19年1月25日付)を見つけて本気だと知りました。
http://www.chushi.maff.go.jp/press/1901/070125_b.htm

このプレスリリースによれば、「中国四国9県の小中学校の図書館に本学習まんがシリーズを1セットずつ寄贈する予定となっている」ということで、「一挙に9冊ものシリーズものの「まんが」を発刊し、一般の出版社を通して市販するのは、明治以来、役所の企画としては初めてのこと」と、ものすごい意気込みです。
「明治以来」というところに、意気込みのすごみが感じられます。もう寄贈は終わっているのでしょうか?

9冊のシリーズ本ですが、残念ながら、私はそのうち今回話題にするvol.5しか読んでいませんので、以下の話は、シリーズ全体に対するものではなく、vol.5に限った話です。
この本の内容は、明らかに国の方針とは真っ向から対立しています。
この点で、国からクレームはないのか心配してしまいます。

vol.5の内容は、ある農園の物語で、どんな苦労して今の「安全・安心」な牧園を作ったかが描かれています
その中で、p21 以降に「薬ゼロ」の飼料が話題になっています。
安心・安全な食べ物を作るためには、「薬」を使わない飼育、残留農薬をカットするなどの表現が出てきます。「薬」というのは、用語解説によれば、抗生物質や抗菌剤のことのようです。
「薬」を使わないことが「安全・安心」の条件なので、「薬」を使う通常の農業は「安全・安心」ではないことになります。

p40 に次の言葉があります。
「安全が確認できないエサをうちの鶏に食べさせるわけにはいかない!!」
p35にも「口に入るものに間違いがあってはならない」とあります。
このマンガが言うところの、「安全が確認できないエサ」で「間違い」があるというのは、飼料に抗生物質や抗菌剤を使うこと、農薬が濃縮されていると思われる動物性飼料を使うこと、残留農薬のある植物性飼料を使うこと、そして、遺伝子組換えトウモロコシを使うことです。
上記の方針を、ほとんど不可能と思われていたことを実現させた(といってもウソでしょうが)、という物語です。
この農園が上記のように考えて、非遺伝子組換え飼料を求めたり、農薬などを否定したりすることには何ら問題がありません。これは自由です。
この農園の活動を非難するつもりは全くありません。

問題にしたいのは、この考えに、農林水産省として、全く注釈を加えていないという点です。
これでは、遺伝子組換えトウモロコシや「薬」が危険なもので、これらを使うのは安全・安心に反することだと、子どもたちが判断してしまいます。

これらは国の方針とも真っ向から対立するものだと思います。
中国四国農政局として、国の見解とは別に上記のような考えを推進するという方針があるのなら、農林水産省の名前を返上すべきでしょう。

本の監修とは、正しい注釈を加えること、だと思います。
物語の本文に注釈がないのは、劇的な(感動的な?)物語に水を差すのはよくないと考えたのかな、それなら、別に用語解説でちゃんと注釈しているのかな、と好意的に思ったのですが、なんと、さらに追い打ちをかける問題の多い用語解説がp48以降に載っています。


p52の用語解説に「non-GMO(遺伝子組み換えでない作物)」の項目があります。
「組換え」でなく、なぜ「組み換え」?というツッコミは取りあえずここでは保留します。おそらく出版社の事情だと思うからです。
(ある意味、以下の記述からわかるように、私が言う「遺伝子くみかえの法則」に合致しています。「遺伝子くみかえの法則」は「やさしいバイオテクノロジー」p180参照)

(遺伝子組換え作物は)「トウモロコシの遺伝子に虫を殺す毒素を出すカビの遺伝子を打ち込んだもの」とあります。
グリーンピースや生活協同組合、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」などがこの表現をよく使います。
というか、彼らの記述そのままそっくりです。
彼らがこう書くのはある意味仕方がないと思います。
彼らに科学的正確さを求めるのも無理でしょうから。
ところが、農林水産省中国四国農政局監修の本に、グリーンピース並の表現を用いるのはよくないのではないでしょうか。
いくら小中学生向けの本だとしても。

「遺伝子」に「遺伝子」を打ち込む。

おそらく、グリーンピースや生活協同組合、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」などがイメージしている遺伝子組換え技術は、これだと思います。
だからこそ、遺伝子を組換えるなどとんでもないと思っているのでしょう。
「トウモロコシの遺伝子」と「カビの遺伝子」が等価です。
この「遺伝子」に「遺伝子」を打ち込むという表現がヘンだということは、直前のブログにも書きました。

ちなみに、細かいことですが、「カビの遺伝子」とは具体的にどんな「カビ」なのでしょうか?
市販されている遺伝子組換え作物に、どんな「カビの遺伝子」が使われているのでしょうか?
Bacillus thuringiensis (いわゆる「害虫抵抗性」を持たせる遺伝子を持つ細菌)や Streptomyces viridochromogenes (いわゆる「除草剤耐性」を持たせる遺伝子を持つ細菌)はいずれも細菌だとばかり思っていたのですが、カビなんですね?始めて知りました。いつのまにか細菌がカビの仲間になったらしい。

品種改良の説明で「地球が誕生してからの長い歴史の中で、生き物は同じ種の中で交配するという方法で子孫を残してきました」とあります。
遺伝子組換え技術は「種の壁を越えている」と言いたいのでしょう。
ウソを書いてはいけません。子供だましもいけません。
この引用した文章の前後も含めて、明らかにウソの記述が続きます。
このロジックもグリーンピースなどがよくとる方法です。
農政局としては、これはおかしい、と訂正・解説を加える立場ではないのでしょうか?
いつから彼らの仲間になったのでしょうか?

おそらく、監修とは名ばかりで、内容の吟味もせず出版してしまったのでしょう。


最後に、地産地消を進めるといいながら、なぜアメリカ産の飼料にこだわるのでしょうか?
この本の解説の部分では、何となく(あまり根拠なしに)流行っている地産地消を絶賛しています。
ところが、なぜか、この本の本文であるマンガの主人公はその方向性に背を向けます。

主人公は、ニワトリを「薬を使わない自然な飼い方」で育てるため、まず「薬ゼロ飼料」を作ります。それでも、その中には「残留農薬」が含まれている動物性飼料が含まれていると考えます。それで、植物性の飼料だけでニワトリを飼うことを決意するのですが、うまく行きません。
そこで、なぜかよくわからないのですが、残留農薬のない植物飼料をアメリカに求めます。
そして、アメリカ産の「安全・安心」な飼料を求める過程の話が延々と続きます。
もちろん、途中から非遺伝子組換えトウモロコシを求める物語もしっかり書いてあります。
マンガの本文を見ても、アメリカ産の飼料に行き着いた動機がまったくわかりませんし、そもそもなぜ苦労してまでアメリカ産を探さないといけないのか、さっぱり見えてきません。

たとえば、子どもたちにこの本を読ませ、「主人公は、なぜ、アメリカへ行ったのだと思いますか?」とか「主人公はアメリカへ何しに行ったのでしょう?」という問題を出した場合の答案を予想してみればわかります。

国産の飼料を調達するのが難しいことは知っています。
しかし、この物語の主人公が言うところの「安全・安心」を徹底するのなら、そして、JAが「地産地消」を主張するのなら、なぜ飼料の国産化が話題にならないのでしょう。
きれい事をここまで書くのなら、飼料を全面的に輸入に頼り切っていることを恥じる記述もあっていいのではないでないかと思いました。

もちろん、私は著者が言うところの「薬」を使うことに反対しませんし、アメリカ産飼料を使うことも恥じ入る必要はないと思っています。
このマンガが追い求めている理想が中途半端に感じたという意味です。


このような本を小中学校に寄贈してまでして子供に読ませるのは間違っていると思います。
ただでさえ、農薬や食品添加物や遺伝子組換え技術が科学的根拠なしに「悪」だという教育をしている中で、このような監修本で追い打ちをかける必要はないはずです。


今年の3月から、同じ子供用の啓蒙活動として「食品安全委員会」(http://www.fsc.go.jp/)が配布しているDVDソフトを手に入れて、観ました。
 ・「気になる農薬」
 ・「遺伝子組換え食品って何だろう?」
 (ちなみに、こちらは「組換え」です。念のため)

これらのDVDは、送料だけで手に入れることができます。
また、政府公報オンライン(http://www.gov-online.go.jp/)から、ネット上でいつでも観ることができます。

この二本のソフトは、国の方針をよく反映していると感じ、また、データに基づいた科学的根拠というのを大切にして製作されているという観点から、多くの小中学生にみてもらうべきだと思いました。

食品安全委員会が二本のDVDソフトで主張していることと、中国四国農政局が監修している小中学生に寄贈している本との間で、言っていることが全く正反対です。
一方は科学的根拠に依存し、もう一方は全くの思いこみと非科学的な信念だけに依存しています。
そういう意味では、子どもたちに両方の教材を提供し、各自にそれぞれの内容を吟味させたり、討論などの教材に使ったりできるという点では、食品安全委員会のDVDとセットにするという使い方でのみ、このシリーズ本の利用価値があるかも知れません。


中国四国農政局が企画・監修したシリーズで、子どもたちの農業に親しんでもらいたいという趣旨はよくわかります。
しかし、そのために、わざわざウソを教えミスリードする必要はないし、自らピエロになる必要もないと思います。

やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)

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