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<<   作成日時 : 2010/09/09 04:17   >>

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「免疫力」という言葉は、
体力とか抵抗力とかいったあいまいな言葉と一緒に使われるらしい。
あるいは、免疫系や免疫応答や生体防御の代わりに使われるらしい。
最近話題の多剤耐性菌を報道する新聞にも、
がんなどで免疫力が弱った人に感染すると、肺炎や敗血症などの重い症状を起こすことがある」(2010年09月06日の天声人語)とか、
「(院内感染した人は)血液や循環器に重い病気を患って免疫力が低下している人が多い
免疫力が下がった患者では重症化する場合がある」(2010年09月04日の朝日新聞の記事)
と書かれています。
健康な人なら感染しても自分の免疫力で抑えられるほどの毒性だ
(2010年09月07日朝日新聞1面の記事)といった違う意味でも使われるようです。

一方、癌関連の健康食品やサプリメントの説明を見ていると、
やたらと「免疫力」や「ナチュラルキラー細胞」というのが出てきます。
その説明は非常に単純で、癌に対しては免疫力を上げればよい、
その指標はナチュラルキラー細胞の活性化だと。
この二つはセットで語られることが多く、人気のようです。

つい最近も、テレビの情報番組で、
発酵学の権威という方が出てきて、
ヨーグルトで免疫力UP!
ってやっていました。

その権威という方の説明では、
免疫力」とは
病原体などに対する体の抵抗力
だそうです。

この方とは別の大学の医学部教授の監修として、
「あなたの免疫力をはかるテスト」というのもあった。
6つの問い「はい」「いいえ」で答えるというもの。
ストレス系の問いが多い。
おもしろいので書き写します。

免疫力チェック
1 禁酒・禁煙を心がけている
2 細かい事にも気を配る
3 辛くてもすぐ泣かない
4 サプリメントで体調管理
5 肉や魚は控えめ
6 悩み事は自分で解決


まぁ、くだらん話の典型。
テレビクォリティだけど、医学部、医学博士クォリティの典型ですね。

免疫力低下の要因は
悩み事・心配事などによる精神的ストレス
なんだそうです。
ここでいうところの「免疫力」が何か不明ですが、
これを低下させるのが上記のようなストレスなんだとすると、
免疫力をUPさせるも大変ですね。

でも簡単なんだそうです。
切り札のヨーグルトがあります。
なんでヨーグルトで免疫力UPかというと、

ヨーグルトが免疫力に関わるナチュラルキラー細胞を活性化

するからだそうです。
査読付きの論文発表ではなく、
なにかのセミナーでの報告です。
もちろん、そのヨーグルトを作っている乳業会社の発表です。
テレビではよくあることですが、学会発表や企業の一方的な発表でも
重要な情報源(科学的根拠)として扱われます。

普通、この程度の情報は信頼に足るものとは考えないのですけど、
これを受けて、先の発酵学の権威という方は
免疫力の約7〜8割は腸で作られる
という意味不明の言葉で、締めています。

「腸能力」なんだそうです。


どうやら、一般には、こういう解説を受け入れる人が一定数いるらしく、
そういった説明を信じてかどうわかりませんが、
この手の説明で売っている商品が意外と売れているようです。

癌が免疫力でやっつけられると信じている人も意外と多いらしい。


このブログでは、「免疫力」なる言葉はない、
そもそも測ることができないので、高い低いもない、
という話を何度か書いています。

前振りが長くなりすぎました。
免疫学の教科書の紹介です。




エッセンシャル免疫学」という入門書が最近出版されました。
2009年発行の原著第3版の翻訳本です(翻訳本では第2版)。
免疫の基礎を学び、臨床への応用につながる話も載っています。

エッセンシャル免疫学 第2版
メディカルサイエンスインターナショナル
Peter Parham

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こういった教科書を読んでみるとわかるのですが、
「免疫力」やら「免疫力アップ」やら「高い免疫力を維持する」やら
そういった話がピント外れであることがよくわかります。


この本は非常によくまとまっていて、
初版に比べ理解しやすい構成に変わっています。
一般的なまとめの後、
「自然免疫」「適応免疫」を独立した章で概説した後、
分子レベルや細胞レベルでの基礎が解説してあります。
すなわち、
抗体タンパク質とB細胞、T細胞の働き、
B細胞の分化、T細胞の分化
その後、通常の免疫応答の話がまとめてあります。

そのあと、通常でない例、すなわち、
アレルギーなどの過剰反応の話、
自己免疫疾患の話などが解説してあります。

臨床的な話題としては、
予防としてのワクチン、
臓器移植時の免疫応答、
癌との関係
などが独立した章で解説してあります。

概要から詳細へ、そして臨床へ、と流れるように構成されています。

図表も適切でわかりやすく、
初学者にとって、帯にあるように、
「重すぎず軽すぎない」教科書となっています。
この手の教科書を読んだことがない人にとっては「重い」と思うかもしれませんが、
この手の教科書の中ではそれほど重い部類には入りません。
画像





最近、健康食品やサプリメントの説明を見ていると、
「自然免疫」という言葉によく出くわします。
「自然」という言葉が付いているためか、
イメージがいいからか知りませんが、
本来の意味とは違った使い方で「自然免疫」が使われていることが
よくあります。

「エッセンシャル免疫学」では、
この「自然免疫」をおおざっぱに解説した後、
B細胞やT細胞が出て来る「適応免疫」の話に移ります。
こちらは、免疫学の主要な部分でもあるためか、
半分近いスペースを割いて解説してあります。

ナチュラルキラー細胞は第2章の「自然免疫」と
第10章の「感染に対する生体防御」などで解説してあります。

第15章の臓器移植の所にもナチュラルキラー細胞が登場します。
ここでの説明を見てみると、
この「高い活性化」が必ずしもいいことではないことがわかります。

最後の第16章「がんと免疫系の相互作用」という章では、
ナチュラルキラー細胞はメインの話として登場しません。
健康産業の定番の説明、
ナチュラルキラー細胞を活性化し、
「免疫力」を向上させ、癌を退治しよう、
という話は登場しません。
当たり前のことではありますけど。




健康産業ではナチュラルキラー細胞について、
それ自身が増えればいいとか、活性が高いといいとか、
活性化するのがいいとか、
あいまいで統一性のない言葉とグラフで説明するのによく出くわします。

しかし、こういった教科書を読めばわかることですが、
普段から活性化しているのがいいわけではないわけですから、
採血して、ナチュラルキラー細胞関連の数値を出し、
高い低いと議論したところで、特段意味があるわけではありません。
何を測るかによるでしょうが、
普段から高いのがよいわけではありませんし、
いろんな原因で上がったり下がったりするでしょう。
それこそ、ストレスで免疫力が上がったり下がったりするのなら、
ナチュラルキラー細胞のなにがしかの値も不安定になりそうです。




また、ナチュラルキラー細胞は闇雲に自然免疫等に
関わっているわけではありませんし、一様ではありません。
表面に発現しているタンパク質の組み合わせの違いにより、
多様な細胞を形成し、多様な働きを担っています。

たとえば、酵素力というのがあって代謝力を担っている、
というような話と比べてみるとよくわかるかもしれません。

酵素力を高めて代謝力をアップさせよう!!とかいったって、
何言ってんだ、酵素なんてごまんとあるんだし、
みんな働きが違うんだし、働いてほしいときに働いてもらって、
いらん時には休んでもらわんと困るだろう、と。
で、酵素力って、何を測るんだい?

これと同じ話で、ナチュラルキラー細胞だっていろんな種類があり、
機能も異なり、自然免疫だっていろんな系があります。
まして、免疫系全体はもっと複雑です。




この教科書で、「免疫力」は出てきませんし、
健康産業がいう「免疫力」の概念も解説してありません。

健康産業の人たちは、この教科書が古いからだというかもしれません。
教科書に載っていないからダメ・ないというわけでもないのですけど、
定番となり、広く語られている有効な理論だというのなら、
教科書で少しぐらいふれていてもよさそうなものです。

免疫力やナチュラルキラー細胞云々を使って説明している方々に、
「エッセンシャル免疫学」の
第2章「自然免疫」、
第10章「感染に対する生体防護」、
第16章「がんと免疫系の相互作用」
だけでもお読みになることをオススメします。


ちなみに、各章別の演習問題と解答は、
本をコンパクトにするという理由で、Webサイトに移動しています。
誰でも利用できます。
 http://www.medsi.co.jp/e-meneki2/index.html


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