やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS 「BSE安全宣言」を読む 附:○○口蹄疫2010

<<   作成日時 : 2010/05/18 01:49   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

宮崎県における口蹄疫の被害は収束する気配がありません。
朝日新聞などの報道を信じるかぎり、
被害拡大の原因は、どうやら政府による人災のようです。
担当大臣が一番大切な時に外遊し、
臨時代理(消費者)が指揮したとの報道も聞こえてきません。

○口蹄疫に関する情報(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/index.html

○宮崎県の口蹄疫に対する防疫措置について(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/syh_soti.html

BSE騒動の時は、
BSE患畜牛の少なさ以上に甚大な風評被害などが生じ、
自殺者という被害まででました。

今回の口蹄疫は、報道規制されているからか、
あまり取り上げられないので風評被害がないように見えますが、
家畜や畜産業に与える被害は甚大です。

毎日のように更新される農水省の「疑い事例の概要」を見ると、
暗澹たる気持ちになります。

今回の口蹄疫、最初に確認されたのは4月20日。
朝日新聞で「ニュースがわからん!」での解説が5月11日。
与野党との駆け引きを報じたのが5月12日。
そして、社説と時時刻刻で報じたのが、今日、5月17日です。

その間、小さな記事は載っていますけど、ほとんどが地方版です。

新聞が現政府の失点をあまり報じないのは仕方がないとしても、
ここはきちんと検証して欲しい。

これらの記事を読んでみると、、、

殺処分対象になった家畜の数が爆発的に増えたのが5月4日。
農水相が外遊したのが4月30日〜5月8日。
5月9日はしっかり休みを取り、仕事を始めたのが5月10日から。
もう、そのときには被害が爆発しています。

野党には2000年に発生した時のノウハウがあります。
4月28日に総裁が現地入りし、50項目の対策を官邸と農水相に
3回にわたり申し入れています。

しかし、反応が鈍く、
官邸が関係閣僚に対策指示したのが5月7日、
そのとき、農水相はいません。消費者相が代理です。
農水相が動いたのは5月10日から。
「全額補償 全額負担だ!」とぼざいて批判を浴びたのも、そのとき。

さらに、同日、農水相は野党議員のまともな批判を自制するように求め、
一連の事態への対応が選挙目的かどうかの言い争い
(5月12日朝日新聞)するありさま。

本気で蔓延を防止するつもりがあるのか、疑問です。




被害を最小限にするために、優先順位をどう考えるか、
科学的に考えるとはどういうことなのか、
というのが重要になってきます。

その参考になりそうで、
BSE騒動をネタに、きちんとまとめられている良書があります。
著者は「安全の科学」と呼んでいます。
ゴールデンウイーク中に偶然見つけた本です。

牛肉安全宣言
PHP研究所
唐木 英明

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る




これまでに、このブログでもBSE(ウシ海綿状脳症)にかんする話題、
特に、全頭検査の欺瞞について、いろいろ書いています。
○テーマ「牛海綿状脳症」のブログ記事
 http://yoshibero.at.webry.info/theme/e7519e1a94.html
また、「やさしいバイオテクノロジー」のp96にも
「アメリカ産牛肉は危険か?」というコラムを書いています。

やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)
ソフトバンククリエイティブ
芦田 嘉之

ユーザレビュー:
やさしい「応用」の本 ...
真面目な学者のきちん ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る


増刷しています。2010年03月31日初版第2刷。
買っていただいた皆様、どうもありがとうございます。




牛肉安全宣言』著者の主張は
あちこちの雑誌や新聞等で読ませてもらっていましたから、
目新しい内容はあまりなかったのですけど、
「安全」を評価する当事者の話なので、読み応えがありました。

ちなみに、著者の娘さんは「ケイコ先生」だそうです。
といっても、若い人は知らないでしょうけど、
むかし高視聴率をあげていた「電波少年」の中の
「電波少年的東大一直線」の家庭教師だった人です。
生徒役は「坂本ちゃん」。
いま、「坂本ちゃん」といえば、プロ野球選手かな?
市民球場の巨人寄りの席で野球観戦していたら、
ファンのおじさんがやたら連呼していました。




BSEの「全頭検査」が「安全」には何ら寄与しない、というのは、
このブログでも何度も取り上げていますし
「やさしいバイオテクノロジー」にも書いてあります(p96)。


検査には見落としがあるわけですし、
(実際にELISAをやってみれば分かります。
 この方法で見逃しゼロなんてあり得ません)
若い牛でBSEの原因となるプリオンを見つけることができないことも
分かっているわけですから、
肉牛となる若い牛で検査結果が陰性だからといって、
BSEに感染していないという保証は全くありません。

世界一厳しい検査態勢を敷いているといったって、
思いっきり見逃しているわけですから(著者によると40%)、
いつまでも続ける意味がありません。

少なくともBSE検査が「安全」の担保になり得ないことは明白です。
あり得るとしたら、無知の人の「安心」だけです。


検査などにより日本で見つかったBSE牛は36頭。
いちばん遅く生まれた牛は、2001年08月26日。
それ以降生まれた牛でBSE牛は見つかっていません。
 http://www2.biglobe.ne.jp/~ashida/kurekousen/BSE_test.pdf
最大の感染源と目されている肉骨粉飼料の製造・出荷禁止が
法的に決定(飼料安全法)されたのが2001年10月15日。
すでに9年以上経っています。

それでも「生後30ヶ月齢以上の牛の全頭検査」がまだ続き、
地方の補償による「全頭検査」がまだ続いています。
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1018-6.html

その費用がバカになりませんが、
それ以上に、
優秀な検査官がどうでもよい仕事にかり出されているという
現状が気になります。
はやく、本来の検査の目的にもどり、
もっと優先順位の高い検査に予算と人を使うべきでしょう。




日米の獣医師制度の違いや、「二つの科学」の話はおもしろかった。

特に「二つの科学」。
これは医歯薬系における「基礎」と「臨床」にも当てはまりますね。
お互いに決めつけたり、レッテル貼ったり、誤解したりと。


著者が言う「二つの科学」とは、
「安全の科学」と「科学のための科学」です。

学問としての科学なら、「科学のための科学」が重要なわけですが、
リスク学にとっては、この「科学のための科学」がじゃまになることがある。
食品安全委員会内での両者の衝突の話は臨場感があっておもしろい。


BSE問題では、
「動的平衡」のあのお方が「安全の科学」のじゃまをする
「科学のための科学」の最右翼といえるかもしれません。

それに、「ニセ科学入門」の、なんでも「予防措置原則」の方とか。
もちろん、世間で言うところの「予防原則」のことですけど。

○「疑似科学入門」(岩波新書)はニセ科学? その2 BSE
 http://yoshibero.at.webry.info/200805/article_4.html




そうえいば、ニセ科学関連で言えば、
この「牛肉安全宣言」の中でもおもしろい話が時折出てきます。

p40あたりの「無農薬・食品添加物」の話や、
p53あたりの「生野菜」の話や
(数十年前までは生野菜などは誰も食べなかった)、
その他、もろもろ。

このブログでも定番の話です。
○テーマ「安心安全」のブログ記事
 http://yoshibero.at.webry.info/theme/82ec49ede5.html




ただ、残念なことがいくつかあります。


国際獣疫事務局(OIE)によるステータス評価の話があまり出てきません。
日本のステータスの遍歴をもう少し取り上げて欲しかった。

途中、ページ稼ぎなのかどうか知りませんが、
あまり関係のなさそうな話が延々続きます。
後で関係があるのかなとも思いましたが、なかった。



家畜としての犬の話の中で(つまり犬肉を食べるということ)、
犬を「オオカミ型」と「ジャッカル型」と呼ぶことをとりあげ、

ほんとうにオオカミとジャッカルがこれらの犬の祖先なのかは遺伝子を調べてみないと分からない

とあるのは、ちょっと残念です。

2002年のScienceによると、
ミトコンドリアの特定塩基配列の比較で
(つまり遺伝子ではない、ましてゲノム単位でもない)、
通俗の言うところの遺伝子を調べてみると、
オオカミ起源が有力で、ジャッカル説は退けられています。
かのローレンツはジャッカル説を唱えておられますけど、、、
最近では、「人イヌにあう 」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
が読みやすくておもしろい。

人イヌにあう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
早川書房
コンラート ローレンツ

ユーザレビュー:
今こそ、イヌに会おう ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る




そのあと、ミトコンドリアの話が続きます。

ちょっとビックリする記述があります。

世界中の人間の共通の祖先も十数万年前のアフリカの一人の女性である

ミトコンドリア・イブの話なのですが、
ポピュラーサイエンスとはいえ、ちょっと言いすぎでしょう。
いくらなんでも「一人の」は、ないでしょう。
ちょっと勇み足ですね。
だれでも過去をたどっていけば、ある特定の人にたどり着きますけど、
人類の共通の祖先が一人、ってことはあり得ません。


一応、「やさしいバイオテクノロジー」でもp30に

アフリカにいた少数のヒトにたどり着きます

と書いてあります。

p101には、

人類は14万年前から29万年前のアフリカにいた女性の子孫

とも。


このミトコンドリアイブと「一人」伝説について、
次の本で解説してあります。
いろんなニセ科学を懐疑的に検証する内容の本です。

謎解き超常現象 II
彩図社
ASIOS

ユーザレビュー:
充実の"不思議"ライ ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る



全面的には賛同しかねる内容ですけど、なかなかおもしろい。
「一人」の子孫だという話は、魅惑的であるだけに、引っかかりやすい。


さらに、

ミトコンドリア遺伝子は精子にはなく、卵子にだけ入っている。

という衝撃的な記述もあります。

いくらなんでも、それはないでしょう。
精子にミトコンドリアがないのなら、
精子はどうやって卵子にたどり着くの?


ちょっと安易でした。
「科学のための科学」の人達に突っ込む材料を提供してしまってます。



しかし、

こんな章があるからと言って、
この本の価値が下がるわけではありません。
BSEの話題で、まともで、まとまって読める本がありませんので、
これはお勧めです。




BSE問題、
騒ぐだけ騒ぎ、いまだに全頭検査だぁとか、
アメリカ産牛肉を懸念している人達とか、
いろんな人がいますけど、
最近の口蹄疫騒動を見ると、BSEなんて、どうでもいいと思えるほど、
口蹄疫被害額は、あらゆる面でシャレになりません。
どうなってしまうのか、心配です。

ネットでは、口の悪い人が、大臣の名前を冠して
○○口蹄疫
と呼ばれているようです。

当初の目的を達成できなかった(できない見込みの)
現時点で8万頭あまりの家畜たちに、合唱。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

関連リンク集

「BSE安全宣言」を読む 附:○○口蹄疫2010 やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる