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zoom RSS 「最新血液型の基本としくみ」を読む 思わぬ収獲 遺伝子の転写・翻訳が理解しにくいワケ

<<   作成日時 : 2009/11/12 02:13   >>

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「血液型」の語につられて
「図解入門 よくわかる最新血液型の基本としくみ」
という本を買いました。
血液型だけの話題で1冊書いたのかと思い、期待したのですが、
残念ながら、そういう本ではありませんでした。
しかし、収獲がありました。
転写・翻訳の理解でつまずく原因のひとつが見えたかも。







DNAやRNAには向きがあります。

高等学校の教科書や図録ではDNAやRNAの方向に無頓着です。
そのため、ちょっとややこしいことが書いてあります。
この「血液型本」の著者は予備校の講師の方のようなので、
高等学校の教科書に準拠しているのでしょう。
高等学校の教科書と同様の
統一されていなくてわかりにくい記述があり、
これが案外理解の妨げになっているのかもしれません。




この「血液型本」をぱっと開いたとき、p72

アセチルグルコサミンの塩基配列

という奇妙なタイトルの図が目に入りました。
目が点になってしまいますよね。
単糖の塩基配列って??なに???

ご丁寧にも次のような説明が続きます。

ABO式血液型に関する転移酵素(アセチルグルコサミン)の塩基配列です。

興味のある方は、転写・翻訳をしてみて下さい(笑)。

とあります。
ウケ狙いで自虐的に書いているわけではなさそうです。

    (笑)の意味もわからない。

どうやら単糖の塩基配列ではなく、酵素の塩基配列であったらしい。
でも安心できません。

このページには2つ問題があります。
一つ目は用語の間違い、
二つ目は塩基配列の方向
です。




まず、用語の間違いから。
これは単なる勘違いでしょうけど、この本のあちこちに出てきます。

もうお気づきと思いますが、
グルコサミンではなくガラクトサミンです。
高等学校ではグルコサミンとガラクトサミンを区別しない、
ってことはないでしょうから、単なる勘違いでしょう。
 (まさか、高校では六単糖は全部グルコースとする
  なんて決まりはないですよね)

このページの塩基配列の出典らしきモノが下に書いてあります。
ここには、きちんと
N-acetylgalactosaminyltransferase
と書いてあります。

この図だけなら、ああ勘違い、ほほえましい誤植、
ということで済ませますけど、
本文中にも
アセチルグルコサミン
が何度も出てきます。

たとえば、p48

A型に人はアセチルグルコサミン転移酵素を持っているので、糖鎖の先端にアセチルグルコサミンが結合しており、

二度出てくるアセチルグルコサミンのうち後者は太字です。


隣のp49の図には

アセチルガラクトサミン

ときちんと書いてあり、

N-アセチルガラクトサミン

の構造式も書いてあります。(ここだけなぜか「N-」が付いている)
編集者も気がつかなかったのでしょう。


アセチルグルコサミン
は、p50、p54、p56などにも出てきます。

p57の図でも、p49でせっかく正しく書いていたのに
アセチルグルコサミン
になってしまってます。


極めつけは、p50で、

A型の遺伝子によってつくられるアセチルグルコサミンは赤血球に結合していません。

という、トンデモな説明まであります。もう用語が空中分解しています。
説明するまでもないでしょうけど、何重にもツッコミどころがあります。


そういえば、この記述なら、p72の

アセチルグルコサミンの塩基配列

と整合性がありますね。
遺伝子がアセチルグルコサミンを[合成]するので、
その遺伝子であるアセチルグルコサミンの塩基配列

スッキリしました!!




他にも誤植をいろいろ見つけましたけど、
自分のことを棚に上げて人のことはいえないので、
これだけにします。





次は塩基配列の方向の話です。
ちょっとややこしいです。

p72で、
転写・翻訳をしてみて下さい(笑)

というからには、ゲノムDNAの配列が書いてあると思うでしょう。
出典らしきモノもゲノムDNAの配列のようです。
しかし、引用してあるのは翻訳領域だけのcDNAの塩基配列です。
これは細かいことですからいいとして、
それ以上に深刻なことがあります。

転写・翻訳をしてみて下さい(笑)

といわれても、この本の転写・翻訳の説明を読んだ上で、
転写・翻訳しようと思っても、
残念ながら、この配列から正しく転写・翻訳はできません。
cDNAだからダメだろう、という細かいツッコミではありません。

塩基配列の向きの話です。


高等学校の教科書やこの本に出てくるDNA塩基配列は、
この相補鎖です。
ですから、正しく転写・翻訳できません。

どういうことかというと、、、
センス、アンチセンスという便利な言葉がありますけど、
その用語の説明が面倒なので、
ここでは、右向き、左向きで説明します。


通常、

---------> DNA
<---------
  ↓転写
---------> mRNA

と書きます。
DNAは二本鎖ですが、1本の配列がわかれば
もう一方の配列は一意に決まりますので、
1本だけ書くときは、通常、上の右向きの配列、
つまり、mRNAと同じ方向の配列を書きます。
通常、単独の「遺伝子」の塩基配列はこの鎖の配列がこの向きで
データベースに登録されています。
(長いゲノムDNAでは逆向きの遺伝子が含まれることがあります)

この本では、右向きのDNA塩基配列(実際にはcDNAですけど)が
p72に書いてあります。
これはまともな書き方です。




しかし、高等学校の教科書やこの「血液型本」のDNAの方向はその逆、
転写の時の鋳型になる鎖がDNAの塩基配列として登場します。
従って、このp72の配列は教科書やこの本とは反対向きです。




どういうことかというと、
この本や高等学校の教科書で転写・翻訳や突然変異を説明するとき、

<--------- DNA
  ↓転写・翻訳
---------> mRNA
アミノ酸配列

と、先ほどと逆向きのDNAが登場します。
左向きのDNA、つまり、転写の時の鋳型になる鎖が
DNAの塩基配列として書かれていることが多い。
転写時の鋳型としての役割が強調されるからかもしれません。
もちろん、方向には無頓着ですから、さらに混乱します。




教科書などでは、

<--------- DNA
--------->
  ↓転写
---------> mRNA

という説明も出てきます。

DNAの二重らせんの配列が上下逆です。
転写の時の鋳型になる鎖が上で、
mRNAと同じ方向の鎖が下です。




さらに、

<--------- DNA
アミノ酸配列

というのもあります。
これだと、このDNAの塩基配列とコドン表を見比べても
そのままでは翻訳できず、
DNAの塩基配列をいったん相補鎖に置き換え、
その配列とコドン表を見てアミノ酸を見つけることになります。

しかも、突然変異の説明の時にこれが出てきますから、
1塩基置換があってアミノ酸置換があると説明されても、
置換のあるコドンをそのままコドン表で照会してもダメで、
いったん相補鎖に置き換えるという手間がかかります。

もっと困るのは、同じ本の中で同じトピックスの説明なのに、
別々のページで異なる鎖のDNAが登場する教科書もあって、
もうむちゃくちゃです。




こんなややこしいことをしなくても、すなおに、

---------> DNA
<---------
  ↓転写
---------> mRNA

で説明すれば、コドン表を見るときも簡単です。




「血液型本」では、

<--------- DNA
---------> mRNA
アミノ酸配列

で説明しています。
これで突然変異まで説明しています。

これも、DNAに変異があっても
その部分のコドンをコドン表からアミノ酸を探してもダメで、
いったんその相補鎖のmRNAの塩基配列に置き換え、
そのコドンからアミノ酸を探すことになります。




なもんですから、
「血液型本」で登場する塩基配列は通常のcDNAなので

転写・翻訳をしてみて下さい(笑)

は、普通難なくできるのですけど、
(cDNAだから云々のツッコミは置いといて)

この本で説明されているように転写・翻訳しようとすると、
このDNAは鋳型の左向きの配列だと勘違いしてしまい、
(本書を通して方向のことは書いてありませんけど)
この配列の相補鎖の配列とコドン表を見比べながら
翻訳することになってしまいます。

具体的に言うと
アセチルグルコサミンの塩基配列
は翻訳領域のcDNAですから
ATG の開始コドンからはじまっています。

転写・翻訳をしてみて下さい(笑)

と言われて転写するとなると、この開始コドン部分は

UAC

になり、p178のコドン表で翻訳すると、

チロシン

になります。正しいメチオニンではありません。




なんだか説明がややこしく、混乱してしまいました。

「やさしいバイオテクノロジー」では
DNA、RNAの塩基配列、タンパク質のアミノ酸配列には
方向があることにこだわって説明しています。



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芦田 嘉之

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