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help リーダーに追加 RSS 「疑似科学入門」(岩波新書)はニセ科学? その1 遺伝子組換え

<<   作成日時 : 2008/05/14 23:39   >>

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久しぶりに大学生協へ行って、岩波新書の「疑似科学入門」という本を見つけたので、買って読んでみました。
あまり目新しいことは書いてないのですが、気になることが二点ありました。
「遺伝子組換え」と「BSE」 にかんする記述です。
またかと思わないでください。
ターゲットは新しいですので。
この本には、はっきりとは書いてないのですが、両問題とも日本政府の対応が疑似科学に該当すると考えておられるようです。
両問題とも、市民運動家や環境団体が好んで使う論理は疑似科学の対象にはなっていません。


「科学が不得手とする問題」(著者はこれを第三種疑似科学と言っています)という章の中で「予防措置原則」をキーワードにさまざまな問題を切っておられます。
その中に「遺伝子組換え」と「BSE」 問題が含まれています。


まずは「遺伝子組換え」の話題から。

p168から「遺伝子組換え作物は危険なのか」という項が4頁あります。
遺伝子組換え技術にかんして、『原理的な側面において』は『純粋な科学の手法であり、それ自体問題はない』とし、『社会的取り扱い』に疑似科学が潜んでいるとしています。

では、その『社会的取り扱い』とは何かというと、なぜかよくわかりませんが「安全性の証明」や「生態系への影響」が含まれるそうです。
どうやら「安全性の証明」や「生態系への影響」は科学の問題ではないらしい。
しかも、両問題とも日本政府や企業の対応が疑似科学らしい。


最初に、「安全性の証明」の話から。

ここでいう「安全性の証明」というのは、どうやらリスク評価のことらしい。

『「リスクがなかった」ことは「安全性が証明された」ことを意味しない』のに、『「リスクがなかった」という評価結果を、「安全が証明された」と読み替え』るのはけしからんと批判しておられます。

リスク評価は完璧でなく、『想定外』の領域があるのだから、完全な安全性は証明できない。
だから、遺伝子組換え作物の安全性議論は疑似科学だと断定しておられます。

『商業優先のあまりにリスク評価が甘い』とも思っておられます。

なんだかなぁ。
これではリスク評価のために膨大なデータを出した人たちがかわいそう。。。

それより、リスク評価したからといって「安全である」と宣言する人はどこにもいないでしょうに。
もしいるとしたら、それこそニセ科学でしょうが、どこにもいない対象を取り上げて「疑似科学だぁ」と騒いでいるとしかみえませんけど。

いったい誰が『読み替え』ているのか明記してほしいものです。
それ以前に、この問題が「遺伝子組換え」とどうリンクしているかも全く不明です。

唯一それらしい話題は「実質等価」の話です。
たぶん実質的同等性の話だと思うのですが、それに対する著者の認識は

『遺伝子操作した作物としない作物は本質的に何ら変わらない』としています。


これでは、グリーンピースや生協並みの認識じゃないですか。

だもんだから、『リスク評価を行って安全であることが証明されたとし、「実質同等」というレッテルを貼って、今では巨大ビジネスとなっている』という記述に結びつきます。


なんだかなぁ。
これではできの悪い市民運動家と同じ論理ですね。


『「実質同等」も同じで、この言い換えに一つの作為があることに注意しなければならない』

「陰謀論」かなぁ?


『限られた範囲のテストでは問題がなかった(遺伝子操作したものとしないものも同じ結果であった)と言っているだけで』

そんなことまともな人なら言ってないでしょう。


『それを超えたところでは等価であるとは何ら証明されていないのだ』

あのぉ。「実質的同等性」の意味がまるっきり違うのですけどぉ。



つぎに、「生態系への影響」の話。

『遺伝子組換え作物が人体に有害ではなかったとしても、広大な畑に他の作物と混じって作付けするとき、生態系にいかなる問題が生じるかを調べねばならない』と言っておられます。
『調べなければならない』のにそれが不十分だと嘆いておらレル野だと思います。

実際には膨大なデータが蓄積されていますが、そんな科学的なデータはどうでもいいらしい。
あくまで「社会的取り扱い」に潜む疑似科学が問題ですから。
科学の話ではありませんから。

 あれっ?じゃあ疑似科学の話でなくはじめから科学以外の話?


よくわかりませんが、とりあえず読んでみましょう。
どんな「社会的な取り扱い」かというと、、、

『あるAという作物には有効であるとしても、隣の畑には遺伝子組換えを行っていないBという作物を育てている』

という状況を想定しておられます。

ここで『有効』が何を指しているのかこの時点でわかりませんが、実は最後までわかりません。
したがって、それ以降の話が全く見えてきません。


『Bの畑に特有の雑草や病原菌や昆虫はAの作物とは異なっているであろう』

まぁ、これはいいでしょう。


『Bに何らかの効果を及ぼさないのか、数年だけのテストで良いのか、BだけでなくCやDの作物もテスとしたのか、どれだけの面積でテストしたのか、など調べるべき項目は多くある』

だからぁ、この『効果』っていったい何?
何を調べればいいの?
何が足りないというの?
やっぱり科学の話なの?
お役人が承認したデータはどこ行ったの?


『遺伝子組換え作物が出現してから日がまだ浅いから、これら生態系におよぼす影響が調べ尽くされたとはとても思えないのだ』

とし、ここでも『想定外』があるからダメだという議論らしい。


このような『調べ尽くされていない』のが問題なのなら、遺伝子組換え技術を使わずに開発された無数と言っていいくらいの品種はどうなるの?
新しい品種を開発するたびに調べ尽くさないといけないの?
もしかして、遺伝子組換え技術以外で開発された品種は調べ尽くされているの?

どんな遺伝子が変化したか全くわからない普段食べている品種はなぜ問題にならないの?

世界中で正体の知れない数多くの作物が栽培されています。
それらはなぜ不問なの?


この本で取り上げられている話題のどこが疑似科学なのでしょうか?
どうやら厚生労働省や農林水産省や環境省がやっていることが疑似科学だと言いたいらしいが、どうも理解に苦しみます。

  もしかして、問題の指摘方法が疑似科学って話?


さらにおもしろい話が続きます。
アメリカがアフリカ諸国に食糧援助することにケチをつけています。
なぜなら、その食糧が遺伝子組換えだからです。
これは『善意』ではなく『壮大な人体実験を目的としているのかもしれない』んだそうです。

これって、ニセ科学にありがちな「陰謀論」の典型では?


『考えすぎだと言われそうだが、やはり警戒すべきだろう』。

いよいよ「陰謀論」だぁ。

疑似科学入門で「と」の典型例が出てきました。


人体実験だと騒ぐのなら、別にアフリカ諸国の人たちを心配しなくても、アメリカ人の心配をしてあげた方がいいのではないでしょうか。
アメリカでのダイズの作付けのうち、すでに90%以上が遺伝子組換え品種です。
非遺伝子組換え品種は年々減っています。
今の勢いだと、数年で非遺伝子組換えダイズはほとんどゼロになるかもしれません。
(それほど栽培する側にとってメリットが大きい)

『早大の人体実験』でないのなら、この非遺伝子組換え品種をアフリカに援助せよと著者はいいます。
ところが、非遺伝子組換え品種は高価でして(安く、かつ易く作れるのが遺伝子組換えですから当たり前ですね)、日本のような金満国向けに特別に作られたものです。
(でも、そのメリットがなくなってきたので、残念ながらその作付面積は減少の一途をたどっています)

こんな貴重なものをアメリカがアフリカに無償援助するわけないでしょうが。


第一、日本が黙っていないでしょうに。
苦労して組換えと非組換えを分別流通させるためのシステムを金と労力をかけて作ったのに、それを無償援助に使えって、それはないでしょう。


トウモロコシも非遺伝子組換えの割合は昨年の約3割から今年は2割弱に減少しています。
早晩この割合がダイズ並みになると予測されています。

アメリカは膨大な量の穀物を輸出していますが、同時に膨大な量を消費しています。
その多くは遺伝子組換え品種です。
「壮大な人体実験」の場はむしろアメリカでしょう。


日本だって例外ではありません。
日本の穀物としてのトウモロコシはほぼ100%輸入に頼っており、その97%はアメリカから輸入しています。
昨年まではアメリカの非遺伝子組換え品種を分別して輸入していたことになっていましたが、今年度からは、非遺伝子組換え品種の品薄と価格の高騰などの理由で、お菓子などの食用の原料であっても、遺伝子組換えトウモロコシを輸入することが決まり、すでに輸入されています。
早晩、遺伝子組換えトウモロコシ使用と書いた食品が出回ることでしょう。
日本も「実験場」になっていますよ。


『遺伝子組換え作物は、出発は純粋科学であっても、社会的状況によって疑似科学化する一例である』というのは確かにあります。

ただ、著者によるこの「社会的状況」の取り上げ方がおかしい。
著者の攻撃する疑似科学はちゃんとした科学で、著者の論理自身が疑似科学になっています。

遺伝子組換え技術にかんして疑似科学性を問うのであれば、むしろ遺伝子組換え技術が危険でその作物は人体にとって危険で環境への影響も悪いと言いつのっている人たちを取り上げるべきでしょう。
そのような主張に、なんら科学的な側面はありません。


しかし、著者は遺伝子組換え技術そのものがどうも信用できないらしい。

『安全性の証明や生態系への影響など、まだまだ調べなければならないことが多くあり、現在はまだ本格展開すべきでないのである』

と結んでおられます。


ところが、具体的に何を調べないといけないかといった提案は一切ありません。
この本でこの手の言説に共通することです。


『本格展開すべきでない』といいながら、その根拠として『調べなければならないことが多くあり』といいながら、具体的に何も指摘しないのは、それこそニセ科学そのものではありませんか?


『無害だと言い募ると、疑似科学と同類になってしまう』とも言っておられます。

だからぁ、『無害だと言い募る』人たちってだれのこと?日本政府?科学者?
モンサントでもそこまで言ってませんよぉ。
存在しない敵を勝手に作って「疑似科学だぁ」と言っても仕方がないと思うのですが。


BSE問題では問題の多いブルーバックス本福岡伸一氏の本を参考文献としてあげておられます。
しかし、遺伝子組換え問題にかんする参考文献はみあたりません。

どんな本を読んでこの章を書かれたのかある程度予想できますけど、政府筋の書かれた本も参考にされるともっと違った切り口になったのではないでしょうか。

岩波だからそれは望めないってことなんでしょうか。

「疑似科学入門」(岩波新書)はニセ科学? その1 遺伝子組換え
「疑似科学入門」(岩波新書)はニセ科学? その2 BSE

農林中央金庫の「食の安全」にかんする調査結果について
遺伝子組換え技術について14 遺伝子組換飼料不使用 この世に存在しない遺伝子組換え作物不使用
ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本 その後
新聞報道にみられる画一性と臭い物にふた マヨネーズ値上げの記事とバイオ燃料、遺伝子組換え作物
食べたタンパク質はどうなるのか 経口摂取した機能性タンパク質の働き方

疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)
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