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zoom RSS 遺伝子組換え技術について06 遺伝子くみかえの法則 教科書編03 生物II

<<   作成日時 : 2008/02/21 20:10   >>

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高等学校と中学校の教科書に見られる「遺伝子くみかえ」表記を調べています。
前回は高等学校と中学校の教科書に出てくる「遺伝子くみかえ」表記の集計結果を示しました。
今回から具体的にその記述内容を検証します。

「生物II」(8社)、「理科基礎」(3社)、および副読本として使われる「生物の図録」(4社)は、いずれも「遺伝子組換え」表記でした。

「生物U」、「理科基礎」、「生物の図録」は理科の科目のうちのひとつですから、正しく「遺伝子組換え」表記しているのでしょう。


それでは、まずは、正統派の教科書「生物U」から検証しましょう。
「生物II」を学ぶ高校生は1割以下だと言われていますが、正確なところは知りません。
私も、高校生の時に「物理II」と「化学II」を選択しただけで「生物II」は学んでいません。

8社の「生物II」の遺伝子組換え技術やバイオテクノロジーにかんする記述を見てみますと、出版社により難易度が異なりますが、いずれの教科書にも組換え技術の説明が見られ、多くの教科書では実際の応用例を写真で紹介しています。

また、バイオテクノロジーにかんする技術的な問題点もほとんどの教科書で指摘しています。
ただ、その指摘のしかたは玉石混合でした。

ほとんどの教科書では、遺伝子組換え技術やバイオテクノロジーの問題点を指摘するとき、比較的冷静で、この技術の危険性を指摘するときでも、他の技術と併せて議論するように配慮されています。
客観的に現状を伝える出版社が多いなかで、遺伝子組換え技術のみ(つまり細胞融合法などの安全性には全く触れていないで)安全性を懸念する指摘をする教科書があります。
その代表例が、今回登場していただく東京書籍の教科書です。



教科書1 「生物II」(東京書籍)p79、
 2003年03月20日検定済、2005年02月20日発行
【遺伝子組換え作物の安全性】
「農作物を農薬に強くすれば、雑草の駆除は容易になるがそのことが農薬散布量の増加につながらないだろうか。害虫抵抗性の遺伝子として、細菌の生産する毒素の遺伝子が導入されているが、これは本当に人体には影響しないのだろうか。これらの懸念に対しては、今のところ安全性が100%保証されているとはいえない」




「バイオテクノロジーの光と陰」と題するコーナーでバイオテクノロジーにかんする多くの技術的問題点を取り上げており、その多くの問題点の中のひとつとして「遺伝子組換え作物の安全性」が指摘されています。

その指摘の仕方は「農作物を農薬に強くすれば、雑草の駆除は容易になるがそのことが農薬散布量の増加につながらないだろうか」とか、「害虫抵抗性の遺伝子として、細菌の生産する毒素の遺伝子が導入されているが、これは本当に人体には影響しないのだろうか」といった内容で、完全にポイントが外れています。
さらに、「これらの懸念に対しては、今のところ安全性が100%保証されているとはいえない」という結びは、まともな教科書の記述とは思えません。
もし100%の安全性が確認されている技術があるのだとしたら、どんな技術なのか教えてほしいものです。

それでは、引用文を3つにわけて、詳しく検証しましょう。


農作物を農薬に強くすれば、雑草の駆除は容易になるがそのことが農薬散布量の増加につながらないだろうか
農薬は無料ではありません。
農家の方がお金と労力を使って、無駄な農薬散布をするはずがありません。
除草剤耐性や害虫抵抗性でない農作物の場合、複数(多数)の農薬を計画的に複数回散布する必要があります。
そのために、お金や労力がかかります。
一方、除草剤耐性を持っていれば、汎用的な1種類の農薬を散布するだけでよく、害虫抵抗性も併せ持っていれば、その害虫に対する殺虫剤の散布も省けます。
実際にアメリカなどでは、遺伝子組換え作物を導入することで、農薬の使用量は減っています。

農家に便利な農薬を与えてやれば、何も考えないでジャバジャバ使ってしまう、とこの教科書の執筆者言っているようなもので、これは非常に失礼な物言いです。
教科書の執筆者に、実際の農作業の行程をイメージできる能力が少しでもあるなら、このような記述にはならないはずです。

ここで話題になっている除草剤はおそらく「グリホサート」のことだと思います。
この農薬自身の安全性に関しては、「やさしいバイオテクノロジー」の162-163ページに詳しく書いてあります。
このグリホサートの毒性は食塩より低いとされています。


害虫抵抗性の遺伝子として、細菌の生産する毒素の遺伝子が導入されているが
いいたいことはわかるのですが、正確ではありません。
細菌由来で、昆虫に対して毒素となるタンパク質をコードしている遺伝子が導入されています。

害虫抵抗性の遺伝子」が「本当に人体には影響しないのだろうか」というのは、「細菌の生産する毒素の遺伝子が導入されている」のだから、安全なはずがないとの思い込みからくる文章でしょう。
単に「毒素」と書くことで危険を煽ることも忘れていません。

このように書くのなら、この「毒素」がどのようなメカニズムで昆虫(の幼虫)に効くのか、またこの「毒素」をヒトが摂取するとどのような影響があるのかを説明する必要があるでしょう。
それなしに、単に「本当に人体には影響しないのだろうか」とだけ書いて突き放してしまうのは、悪質な市民運動家のレトリックと同じです。

この「毒素」はおそらくBt毒素のことだと思います。
このBt毒素にかんする説明は「やさしいバイオテクノロジー」の160-161ページに詳しく書いてあります。

Bt毒素の本体はタンパク質で、一部の昆虫にとってはこのタンパク質が消化不良を引きおこすなどの害を及ぼし結果的に死にいたる毒物となります。
しかし、ヒトなどの動物では、この毒素タンパク質は胃液で分解され、他の食品中に含まれるタンパク質と同様、分解・代謝されて栄養になるだけで、他のタンパク質と同程度の安全性があります。

ちなみに、この毒素タンパク質は、「天然農薬」として数十年前から使われており、天然信仰の篤い方々から高い支持を受け、ありがたがられて使われています。念のため。


これらの懸念に対しては、今のところ安全性が100%保証されているとはいえない
これはもう、何をか況んやです。
「100%の安全性」の話題は、すでにいくつかのブログ記事に書いています。

100%や0%は科学的でないし現実的でもない
ニセ科学の萌芽 朝日新聞の食品添加物特集「絶対安全ですね?」「100%の安全はありえません」
科学的とはなにか

また、この一連のブログを書くきっかけになったブルーバックス版の「新しい高校生物の教科書」でも「まったく危険性がないとはいえない」という表現で、同じことを言っています。

おそらくこの教科書の執筆者は、普段食べている野菜に100%の安全性保証があると思っているのでしょう。
かわいそうなことです。

この話題は、「やさしいバイオテクノロジー」の86-87ページや154-155ページでも指摘しています。
マスコミではメダミドホスやジクロルボスで盛り上がっています。
最初に見つかった超高濃度の農薬は別として、その後見つかっている低濃度の農薬と比べて、植物由来である野菜や果物自身が本来持っている天然毒素(天然農薬・天然殺虫毒素)がどの程度あるいは何種類含まれているか知ることで、100%の安全性の保証を求めることがナンセンスであることがわかるはずです。

だからといって、このBt毒素を免罪しろといっているわけではありません。
Bt毒素にかんする安全性の試験は重要で、実際、膨大な安全性の検証実験が行われています。
その上で、普段食べている野菜などと比べて格段危険性が増すわけではないという結論が出ています(もちろん100%安全であるという結論はいくら調べても出ません)。
この点を踏まえて安全性を議論すべきだという話です。

この毒素を虫が食べるとコロッとと死ぬ映像が(そんな食べてすぐにコロッと死にませんから、たぶん捏造でしょうが)一時期よく放送されました。
その映像だけ見て、このように虫がコロッと死ぬ毒をあなたは食べたいと思いますか、と問いかけられれば、誰でもそんなのいやだと思うでしょう。
その安直なテレビ番組の作り方とこの東京書籍の教科書の記述は同じ穴の狢です。



「遺伝子くみかえの法則」の通りであれば、「遺伝子組換え」表記の教科書はまともなことになります。

(本当にくどいようですが、この「遺伝子くみかえの法則」は「やさしいバイオテクノロジー」の180-181ページに詳しく書いてあり、私が勝手にそう呼んでいるだけの法則です。念のため)

実際、ほとんどの「生物II」教科書で冷静な記述が見られました。
東京書籍の「生物II」だけ変な記述が見つかったわけですが、これはたまたまというのではなさそうです。
なぜなら、次に見る「理科基礎」でも同じようなことが起こっているからです。

すべて「遺伝子組換え」本である「理科基礎」に、どんなことが書いてあるのか。
それは、次回に。


○生物II 8社中 A組換え8社
「生物II」(教育出版)p122、
 2003年03月20日検定済、2005年01月20日発行 A組換え
「生物II」(啓林館)p99、
 2004年02月20日検定済、2004年12月10日発行 A組換え
「生物II」(三省堂)p124、
 2004年02月20日検定済、2005年03月30日発行 A組換え
「生物II」(実教出版)p101, 108、
 2003年03月20日検定済、2005年01月25日発行 A組換え
「生物II」(数研出版)p93、
 2003年03月20日検定済、2007年01月10日発行 A組換え
「生物II」(第一学習社)p55、
 2003年03月20日検定済、2005年02月10日発行 A組換え
「生物II」(大日本図書)p63、
 2003年03月20日検定済、2005年02月05日発行 A組換え
「生物II」(東京書籍)p79、
 2003年03月20日検定済、2005年02月20日発行 A組換え



<<遺伝子組換え技術について>>
01 ゲノムに占める遺伝子のイメージ01
02 ゲノムに占める遺伝子のイメージ02
03 遺伝子くみかえの法則 単行本編
04 遺伝子くみかえの法則 教科書編01 イントロ
05 遺伝子くみかえの法則 教科書編02 集計
○06 遺伝子くみかえの法則 教科書編03 生物II
07 遺伝子くみかえの法則 教科書編04 理科基礎・図録
08 遺伝子くみかえの法則 教科書編05 家庭基礎
09 遺伝子くみかえの法則 教科書編06 保健体育
10 遺伝子くみかえの法則 教科書編07 現代社会
11 遺伝子くみかえの法則 教科書編08 中学校教科書
12 遺伝子くみかえの法則 教科書編09 現代社会02 スターリンク事件
13 遺伝子くみかえの法則 教科書編10 農業科用教科書
14 遺伝子換飼料不使用 この世に存在しない遺伝子組換え作物不使用

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