やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS 自然信仰、天然信仰の考え方を学ぶ3 万田発酵の工場見学をして 天然信仰は傲慢か

<<   作成日時 : 2007/06/17 16:05   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

先のコラムで、天然の酵母による発酵や天然礼賛について書いていて、万田発酵へ工場見学に行ったときのことを思い出しました。
有名な万田酵素を作っている会社です。
万田酵素は50数種の植物、黒砂糖などから、3年3ヶ月以上の年月をかけて発酵・熟成して作った「植物発酵食品」です。
発酵に使う酵母菌などは、空気中に存在する酵母を取り入れて使うそうです。
だから、自然発酵だという論です。
材料に使う50数種類の野菜や果物も契約農家から買い付けた安心・安全の食材だそうです。

それだけ聞くと、すごく自然の恵みたっぷりという感じがします。
しかし、実際にはものすごい違和感がありました。

その違和感について、簡単にまとめてみます。

天然酵母を使って自然発酵しているといっても、発酵させている樽がズラリと並べられた建物は、元は海だった埋め立て地に建っています。
造船所を作る予定で埋め立てた土地に買い手がなく、そこに巨大な発酵棟が建てられました。
自然の酵母といっても、かつては海だったところの上に置かれた樽の周りにいる酵母です。

食材は50数種類。
たくさんあって、有効成分がたっぷりあり、しかもお得な気がします。
しかし、50数種類の食材はすべて独立した植物種であり、それぞれ別々の土地で育てられており、それぞれ別々に食べることができ、育つのにそれぞれ別々の環境に適しており、そういった多様な食材です。

これらをひとつの樽の中に押し込むわけです。
つまり、日本全国各地から集められ、日本で育たない果物は海外からも集められ、それぞれの食材が自然のままであれば決して出会うことのないもの同士が、人の手によって(石油を燃やして)集められ、樽の中に押し込まれたものです。
これがどうして自然なのでしょうか。

さらにいうなら、発酵物には有効成分だけが入っているわけではありません。
自然信仰の篤い人から見れば、発酵過程で有害物質ができるなどとんでもない発想でしょう。
しかし、実際には、出発の食材そのものに、すでに有害化学物質は含まれています。
天然の素材だからといって、有害物質ゼロ、有効物質たっぷりというわけではありません。

発酵と腐敗という言葉があります。
両方とも起こっている現象は本質的には同じです。
微生物が有機物を使っていろんな代謝反応を起こす過程で、細胞呼吸です。
同じ現象にも関わらず、異なる言葉があるのは、人にとって都合が良いか悪いかという、きわめて身勝手な基準で分類しているに過ぎません。
自然にとっては、発酵も腐敗も区別はなく、もちろん、境界もありません。自然は、両者ともに同じような過程を淡々とこなしているだけです。

ところが、天然信仰の篤い人にとっては、自然発酵という過程は相当神聖な過程らしく、この神聖な発酵により人にとって有用な物質が作り出されるそうです。
神聖な過程ですから、人にとって害になるものができるはずがありません。

発酵食品を作るとき、ときおり失敗します。
大手メーカーが作るときであっても、おそらく失敗することもあるでしょう。
家庭で手作り酵素液を作るときには、もっと失敗する確率は高いでしょう。
家庭で作るときの手作り酵素液は、基本的には、野菜や果物などを細かく切り、市販の微生物や皮膚についている常在菌を使って発酵させて作るそうです。

 ・世の中にはいろんな酵素があります  参照

家庭で酵素液を作るときに失敗が起こるということは、腐敗するということです。
俗に言えば、雑菌が入って腐ってしまうともいえます。
元々雑菌を使っているにもかかわらず、発酵が起こっているときは有効な菌が働いており、失敗して腐ってしまうと雑菌のせいにされてしまいます。
ここでいう、有益菌、雑菌や悪玉菌でもなんでもいいですが、この手の菌の分類も、人の都合で勝手にそう呼んでいるだけです。

雑菌がはえてきて腐敗すると、おそらく臭いも悪いでしょうから、人にとって有害な化学物質ができてしまい、これは失敗作ということになります。
有益菌が生えてきて発酵すると、おそらくこれもあまり良いにおいはしませんが、人にとって有益な栄養成分だけができ、つまり成功ということになります。

菌にとっては勝手に善玉、悪玉と呼び分けられ、迷惑な話でしょう。
ほんとに身勝手ですね。

ちなみに、高等学校クラスの教科書では、人に有益な物質を生じる過程が発酵で、悪臭を生じたり毒素を作るような過程が腐敗だそうです。
食中毒の原因となるような毒素が作られる過程も腐敗です。

万田酵素のような発酵食品を作るということは、腐ったりしないように発酵だけ起こるように3年も4年も置いておくわけですから、結構大変ですね。

微生物にとって、栄養たっぷりのペースト状のエサが大量にある環境は天国でしょう。
この天国のようなところに自然の空気中にいる菌も取り込みながら発酵だけ起こして腐敗は起こさないように3年も4年も管理するなんて、やっぱり神業ですね。
できあがった商品が高価なのも仕方がないのかも。


発酵食品が作られる過程を、菌の立場でもう少し考えてみましょう。
自然の状態では決して出会うことのない食材が一堂に集められています。
各食材には微生物もたっぷりついています。
つまり、自然の状態では決して出会うことのない菌もたくさん集まっています。
これらの雑多な食材と微生物がひとつの樽の中に押し込められ、自然発酵という名で、長い年月の間樽の中にとどまっているわけです。
北国産や南国産の微生物がひとつの樽の中で培養され、増殖しています。
その培養(増殖)過程で、各微生物がそれぞれいろんな代謝物を作ります。
それぞれの微生物が環境に適した状態で増殖するのではなく、無理矢理作られた、雑多な食材、つまりエサを与えられ、しかも、見知らぬ微生物たち、人が介入しなかったら決して出会うことのかなった組み合わせの微生物たちがお互いに相手を牽制し合いながらも増殖していくわけです。

この発酵過程そのものがものすごく人工的で不自然な気がするのですが、それでも、できたものは自然発酵食品です。
有効成分たっぷりだそうです。
自然の恵みたっぷりだそうです。

いわゆる不純物もたっぷり、どんな危険な成分が新たに生じたかもさっぱりわからない、そういうものも含んでいないことになっています。

これが自然たっぷりなんでしょうかねぇ。



天然信仰や自然信仰を持つことは、素朴な感性の持ち主であって、害があるわけではない、と一見思えますが、しかし、ちょっと考えてみれば、この信仰は、ものすごく傲慢で独りよがりな発想がなければ成り立たない、ということに気がつきます。


自然は人のために存在する。
自然は人のために有用物質を作ってくれる。
自然は人のために人が健康に生きていく上で必要な物質を準備してくれる。

これらの自然に人が介入することはよくない。
なぜなら、せっかく人のために存在する有用物質に手を加えることで悪い物質に変わってしまう。

そのような考えがあるように思えませんか。

もしそうなら、自然をなめきっています。傲慢すぎます。
だからこそ、自然に優しくしてあげたり、自然を守ってあげたりする、という発想が生まれてくるのでしょう。


自然界には絶対安全な食べ物がある。

これも一見素朴な天然信仰に見えますが、このような考え方にも同じように傲慢さが潜んでいます。
天然物は安全であるという考えの根底には、自然は人に従属していると思わなければ出てこない発想でしょう。
人に従属した自然が、人のためにせっせと安全なものを作ってくれると。

天然信仰の篤い人はその傲慢さに気がつくべきでしょう。
自然は人に従属するいわれはありません。
自然は人のために尽くさなければいけない理由はありません。
自然にとって人とは、つい最近出現した単なる新参者のひとつに過ぎません。
地球の歴史からみれば、人の存在などほんの一瞬の出来事に過ぎません。
自然が新参者にすぎない人の軍門に降らないといけない理由はいったい何なのでしょうか。

人は自然からみればちっぽけな存在に過ぎないにもかかわらず、人のためになるものだけを作り続ける自然があると本気で思いこんでしまうのが自然信仰、天然信仰です。


ちまたには、天然信仰の信者向けの商品のコピーが氾濫しています。

天然の物質を配合しているので、副作用は全くありません。
天然物だけを使った安心・安全のサプリメントです。
天然素材しか使っていませんから、(薬と違い)いくら摂っても安心です。
天然素材だけを使い、人工の添加物は一切使用しておりません。
より自然に近いのを選ぼう。

こういった物言いは、ある意味、自然に対する傲慢さがなければいえないことだと思います。


(何度も書いたような気がしますが、念のため補足。
自然が悪くて人工が良い、といっているわけではありません。
自然や天然の礼賛が過ぎるのではないかという話です。
人工にも良いことがあるはずです。
天然なら安心・安全と盲進するのはおかしい、人工的な化学物質なら危険だと即断するのもおかしい、という話です。
念のため。)


・自然信仰、天然信仰の考え方を学ぶ1 「病気にならない生き方2実践編」を読む
・自然信仰、天然信仰の考え方を学ぶ2 「ウソが9割健康TV」を読む
・自然信仰、天然信仰の考え方を学ぶ3 万田発酵の工場見学をして 天然信仰は傲慢か

・食糧と食料と食品の行く末 農薬や食品添加物をめると農業はどうなるんだろう
・森林と割り箸 二酸化炭素と地球温暖化
・天然なら安全か 木酢液を例にして 無農薬栽培の危険性


[SI新書]やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る
やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

関連リンク集

自然信仰、天然信仰の考え方を学ぶ3 万田発酵の工場見学をして 天然信仰は傲慢か やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる