やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS 新聞報道にみられる画一性と臭い物にふた マヨネーズ値上げの記事とバイオ燃料、遺伝子組換え作物

<<   作成日時 : 2007/05/12 03:16   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

マヨネーズ生産の大手、キューピーが5月8日、マヨネーズの販売価格を値上げすると発表しました。1995年以来維持してきた価格は、原料の植物油が1.5倍になったことなどから、維持しきれず、6月1日出荷分から値上げするとのことです。
http://www.kewpie.co.jp/company/corp/newsrelease/2007_new.html

このニュースをマスコミ各社が報道しましたが、みな一様にバイオ燃料との関係で報道し、遺伝子組換え作物とリンクさせた報道は、少なくとも大手新聞、テレビにはみられませんでした(私のWeb検索によれば)。
遺伝子組換え作物と関連させて報じたのは、日経BP社のFoodScience NewsとKlugぐらいでした(5月10日現在)。

FoodScience--食の機能と安全— (5月9日の中野栄子氏によるメールニュース)
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/index.jsp

米国の大豆作付面積が与える影響と今後 (5月10日の記事)
http://www.gci-klug.jp/commodityreport/07/05/10/post_3229.php


新聞やテレビ報道の論理は以下の通り(5月9日、10日の朝日新聞、日経新聞などの記事より要約)。
世界的にバイオエタノール燃料ブームが起こっている。
バイオ燃料の原材料はトウモロコシやサトウキビ。トウモロコシの多くはアメリカ産。アメリカでは、ブッシュ大統領の後押しもあって、バイオ燃料用のトウモロコシが高く売れるため、生産者にとってうまみがある。
その結果、バイオ燃料用のトウモロコシの増産につながり、その分、ダイズが減産している(全栽培面積はそれほど変わらないので)。
収穫されたトウモロコシの一部がバイオ燃料に使われるようになり、コーンスターチや肥料に使われるトウモロコシは減産し高騰している。
ダイズも同様、減産しダイズ油などが高騰している。
日本の穀物としてのトウモロコシ自給率はほぼゼロ%。穀物用トウモロコシはアメリカからの輸入に頼っているので、もろに高騰分の影響をかぶっている。ダイズも同様。ダイズ油用のダイズの自給率はほぼゼロ%。その結果、マヨネーズに使う輸入ダイズ油が高騰し、マヨネーズの値上がりに結びついた。



新聞報道ではわかりやすい話ですが、ことは、そう単純ではないようです。
FoodScience NewsとKlugのふたつの記事を参考に、私なりに解説してみましょう。


マヨネーズが話題なので、ダイズに話を絞ると、現在、消費者は遺伝子組換えダイズを忌避しているので、食品メーカは非遺伝子組換えダイズを使わざるを得ません。日本産ダイズで油を作るほどダイズは栽培されていませんので、ダイズ油はすべて輸入に頼っています。
日本のダイズ自給率は4%程度で、ほとんど納豆、豆腐、油揚げ、醤油、味噌などの食用に使われています。
ダイズの輸入はアメリカからが70%を占めており、残りも遺伝子組換え作付け国から多くを輸入しています。アメリカのダイズ生産に占める遺伝子組換えダイズの割合は89%。この状況で、非遺伝子組換えダイズをアメリカから手に入れるためには、分別輸送する必要があります。

日本穀物商品取引所によると、一般ダイズ(遺伝子組換えダイズ)とNon-GMOダイズに分けて取引されています。一般ダイズが遺伝子組換え作物であることがおもしろいですね。
Non-GMOダイズは証明書付きで分別輸送されていることになっています。この証明がなければ遺伝子組換え不分別表示が義務づけられています。

分別輸送には当然コストがかかります。以前は分別輸送などせず、一般ダイズもNon-GMOダイズも一緒に輸送されていましたが、日本で遺伝子組換え表示が義務づけられるようになってから、分別輸送の需要が高まり、わざわざお金をかけて設備投資し、分別輸送するようになりました。

日本穀物商品取引所における5月11日終値のダイズ価格は(1日で大きく値が変わります)、一般ダイズ44,140円、Non-GMOダイズは50,120円で5,980円の価格差があります。

油ですから、当然その中にはダイズのDNAもタンパク質も含まれていません。したがって、ダイズ油を作るのに一般ダイズとNon-GMOダイズで本質的な違いはありません。しかし、多くの消費者には遺伝子組換え作物アレルギーがあるため、この高いNon-GMOダイズを使うことを好んでいます。


ちなみに、植物オイルにはDNAやタンパク質が含まれていませんので、遺伝子組換えかそうでないかを植物オイルを使って検査することはできません。したがって、日本の遺伝子組換え表示の制度では、植物オイルは表示を除外されています。
それでも、「遺伝子組換えでない」と表示されているオイルが売られていますが、これは任意表示で、書いても書かなくてもよい。ただし、ウソは書いてはいけません。
分別流通していないダイズを使った場合は、「遺伝子組換え不分別」、または5%以上遺伝子組換え作物が入っていることがわかっていれば、「遺伝子組換え」の表示が必要です。
生活協同組合が売っているマヨネーズに「遺伝子組換え不分別」の表示をしているのがあります。これは、 Non-GMOダイズを使っていませんので、普通のマヨネーズより安く、「遺伝子組換え不分別」表示がしてあってもよく売れているそうです。
キューピーがどのダイズを使ってマヨネーズを作っているのかは、その表示からはわかりませんが、まじめに分別ダイズを使っているのであれば、高いダイズを使っていることになります。


この価格差からわかるように、もともと日本人は科学的根拠なしに高いダイズを買わされていることになります。そのコストは当然小売りに跳ね返ってくるはずなのですが、キューピーの大変な企業努力により、1995年以降、現在の価格の維持に努められてきたそうです。

しかし、1995年当時と比べて食用油の価格は1.5倍になり、キューピーは値上げせざるを得なくなったと言っています。その値上げ分の多くは最近のバイオ燃料騒ぎによるものでしょうが、遺伝子組換えに絡む部分も少しは含まれているでしょう。


今後、バイオ燃料熱がますます盛んになると、アメリカのダイズ生産量が減産することは目に見えていますが、その減産分はおそらくNon-GMOから来ると思われます。
アメリカが一般ダイズ(遺伝子組換えダイズ)を栽培することに比べ、労力とコストがかかるNon-GMOをわざわざ日本向けに栽培しているのは、それに見合うだけの価格差で日本が買ってくれるからで、その価格差のうまみにあわないとなると、よりもうけの多いバイオ燃料用トウモロコシや、より労力とコストのかからない一般ダイズに乗り換えるのは目に見えています。


さらにやっかいなのは、中国です。
Klugによると、中国の穀物の自給率は10年前の95%から現在33%にまで急激に落ち込んでいるそうです。その足りない分はアメリカなどから輸入しています。その中国の消費分もアメリカが生産していますが、その増量分はおもに一般ダイズで補っています。中国は遺伝子組換え作物栽培国ですので、日本みたいなNon-GMOでないとダメ、といった世論はありません。
となると、ますますアメリカが日本のためにボランティアみたいにNon-GMOダイズを作ってくれるはずがなく、日本の道楽にいつまでも付き合ってくれるという楽観的な予測は難しくなります。

日本のマスコミは、キューピーの値上げの話題を遺伝子組換え作物との関連で報道しようとしません。
マスコミは遺伝子組換え技術の危険性を不当に感情的にあおることに貢献しました。消費者活動家や一般消費者はこれにまんまと騙されました。
その結果、日本は、この活動を封じるために、IPハンドリングという本来作らなくてもいいシステムに莫大な資金を注ぎ、証明書の発行という煩雑な手続きを加えて分別流通というシステムを作り上げました。
そのしわ寄せはメーカと消費者に押し寄せ、本来負担しなくていいお金を負担するというばかげたシステムが出来上がってしまいました。
この元の一端はマスコミですから、当然、自分たちの非科学的な主張により値上がりせざるを得なくなったとは書かないわけです。



さらにもうひとつ、この話題で気になることがあります。
そもそもバイオ燃料がもてはやされるようになったのは、地球温暖化対策でした。
バイオ燃料は地球に優しいことになっています。
本当でしょうか?

バイオ燃料を作るために、食料や飼料としてのトウモロコシやダイズが減り、食品などの高騰につながっているとは皮肉な話です。
大手マスコミは、バイオ燃料の提灯記事ばかり書いていますので、当然、バイオ燃料が地球に優しいと言うことに疑念を持つことも報道されていません。

バイオ燃料とはいえ、エタノールですから、燃やせば二酸化炭素はきっちり出ます。
簡単な化学反応式で書けます。
その分を原材料の栽培時に二酸化炭素を吸収していて、差し引きゼロだと詭弁を弄していますが、そんな単純ではありません。
この手の論理は、太陽熱発電やリサイクルでもみられます。

トウモロコシを栽培するときに光合成により二酸化炭素を吸収してくれると言いますが、トウモロコシは勝手に育つわけではありません。種をまき、肥料をやり(肥料を作り)、除草剤をまき(除草剤を作り)、収穫し、輸送するなどの行程で石油を燃やします。

収穫したトウモロコシは、バイオ燃料を作る工場まで運搬されます。

そこで、まず、原材料を粉砕し、高温で煮てでんぷんを抽出します。このままでは酵母のエサになりませんので、単糖にまで分解する必要があります。一般には酵素を使います。特殊な(遺伝子組換え技術で人工的に作られた)酵母を培養し、抽出した単糖とこの酵母を培養します。エタノール発酵により得られたエタノールを蒸留により抽出します。バイオ燃料に水が入っているとよくないので、脱水しながらアルコールの純度を高めます。
これらの行程を踏むのに、抽出や培養などの過程で熱が必要です。特に多糖類の抽出や蒸留や脱水行程には高熱が必要です。出来上がったエタノールをパッキングし、必要とされるところにまで輸送する必要があります。
これらの、ランニングコストだけでなく、初期の設備投資にも石油を燃やす必要があります。

多くの行程で石油を燃やし(エネルギー浪費)、二酸化炭素を排出(地球温暖化に貢献?)しています。

トウモロコシの種をまき、放置しておけばエタノールがザックザック、なんてことはありません。

地球に優しいという概念、すなわち、エタノールを燃料として燃やして出た分の二酸化炭素は、トウモロコシの栽培の時にトウモロコシが光合成により吸収してくれるので差し引きゼロだという論理は、上のようにザックザックでなければ、収支が合いません。
つまり、原野にトウモロコシの種をまくと、放置したままで、トウモロコシが育ち、純度の高いエタノールが自然に濃縮され、そのエタノールが放っておくだけで自分で必要とされているスタンドにまで動いてくれる場合の話です。この時はじめて、地球に優しいとか地球温暖化対策とかいう甘言を述べることができます。

バイオ燃料用の原材料を栽培している国は限られていますから、それを世界各国が利用するには余分に船便などで輸送する必要があり、そこでも余分に石油を燃やしています。

バイオエタノールは、ちまたで宣伝されているほどクリーンでも地球に優しくもなく、地球温暖化対策(が仮に必要だとしても)にも、エネルギー対策にもつながっていません。



以下、ちょっと蛇足です。というか、ホントはこれが書きたかった。
バイオ燃料を作るために使われているバクテリアは、遺伝子組換え技術を駆使してアルコール発酵を効率よくしてくれるように作られたGM菌です。
このGM菌が世界中で大量に培養されて、そのGM菌で作られたバイオエタノールが市販され出回っているわけですが、今のところ、「遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン!」や市民運動に熱心な政治家などは沈黙しています。
こんな菌を使ってバイオ燃料を作るのはけしからんといっても良さそうなのですが、何故か静かです。大量培養されたGM菌が環境に漏れ出て、他の菌や作物などに遺伝子汚染して環境破壊するだとか、遺伝子組換え技術で作られエタノールなど使うとどんな影響が子孫に残るかわからないから、車のガソリンに決して混ぜてはいけないとか、いつものお得意のトンデモ論理で何で言わないんでしょうか?

また、病気にならない云々本を出している人たちや、買ってはいけない云々本を書いている人たちも、その主張を通すなら、バイオエタノールにも反対しないといけません。
この人達は、人工培養された菌を使って発酵させてできた物には、何であろうと反対しています。

あるいは、天然のエタノールを使うのならいいが、発酵で人工的に作ったアルコールはダメだと言いふらしている天然信仰家も反対しないといけません。

頑張って欲しいものです。

もちろん、バイオ燃料の原材料に使われるトウモロコシ自身は、間違いなく遺伝子組換えトウモロコシです。
こんな危険な原材料から作ったバイオ燃料を使うと、人間への悪影響や環境破壊につながる可能性は否定できなく、遺伝子汚染の可能性も考えられ、現時点で安全性が確認できていない危険な技術未満の技術を使うのはけしからん、100%の安全が確認されるまで実用化すべきでない、といった、お得意の論理でなぜ反対しないのでしょう。単に忘れているだけ?
閑話休題。



バイオエタノールブームに乗っている国は、食糧の自給率に余裕のあるアメリカ、ヨーロッパ、ブラジルなどであって、少々の食糧としての穀物が減ってもビクともしない国々です。

ヨーロッパは地球温暖化対策に熱心であることをアピールするために、バイオ燃料の政治的利用に積極的です。
アメリカはバイオ燃料を導入することで地球温暖化対策に対するバッシングのガス抜きに利用しようとしています。
それぞれ政治的な思惑があっての話で、本気で地球温暖化対策やエネルギー問題の解決に取り組むためではないでしょう。

それでも、このような国々がそれぞれの論理でバイオエタノールを作るのにはとやかく言うつもりは全くありません。どんどんやっていいと思います。地球温暖化対策とでも詭弁を言わないとエンジンもかからないでしょう。


そんななかで、日本がバイオ燃料に取り組む必要があるのか疑問に思います。
朝日新聞の記事に依れば、非食用米や規格外小麦(農水相)、草木や廃材(環境省)からバイオ燃料を作ることを計画しているようです(食料に影響はないといいたいためハンパな原料を利用)。しかし、悪質な材料から作ることになり、トウモロコシやサトウキビから作ることに比べると遙かに工程が複雑で、その分たくさん石油を燃やすことにつながります。

このようなハンパな材料を使って代替燃料を作ったところで、その量はしれており、エネルギー対策にならず、二酸化炭素も余分に排出してしまいます。


もともと化石燃料がなく、油や飼料用のトウモロコシ、ダイズ、ナタネをいずれもほぼ100%輸入に頼っている国で、世界のエネルギーや穀物市場のわずかな変化だけで慌忙しなければならない国で、地球温暖化対策という本来ならやらなくていいことに大金とエネルギーと食糧を使い、貴重な人材まで使う必要が本当にあるのでしょうか。

日本には、アメリカやヨーロッパが持っている大義名分がみあたりません。

やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)
やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
食は国家なり
[http://www.worldwatch.org/ ワールドウォッチ研究所]を設立し、現在は[http://www.earth-policy.org/ アースポリシー研究所]のレスターブラウン氏が基調講演するシンポジウムに参加してきました。 ...続きを見る
地球大好き!
2007/05/24 06:26

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

関連リンク集

新聞報道にみられる画一性と臭い物にふた マヨネーズ値上げの記事とバイオ燃料、遺伝子組換え作物 やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる