やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS 食べたタンパク質はどうなるのか 経口摂取した機能性タンパク質の働き方

<<   作成日時 : 2007/04/14 01:02   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 23 / トラックバック 3 / コメント 2

コラーゲンや生野菜由来の生きた酵素が経口摂取するサプリメントして注目されており、多くの効果を期待する広告が氾濫しています。
コラーゲンや食品由来の酵素は、基本的には経口摂取してもヒトの消化管で分解されるので、あまり効果は期待できないというコラムを以前に書きました。
たとえ分解されずに吸収されたとしても、魚や動物のコラーゲンがヒトに有効とは考えにくく、まして、植物由来の野菜酵素がヒトに吸収されたとしても、その酵素がヒトにとって有用であるとはもっと考えにくい、と言うことも書きました。

先のコラムでは、この後段の話を中心に書いたのですが、前段の話、つまり、食べたタンパク質が分解されるという話は、実はそれほど単純ではありません(後段の話ももちろん単純ではありません)。
ここでは、食べたタンパク質のうち、分解されずに、あるいは部分的に分解されただけで吸収されることを考えてみます。

参考資料
「化学と生物」(学会出版センター)2007年4月号、pp230-232
廣瀬潤子、木津久美子、成田宏史
「経口摂取したタンパク質の腸管通過機構とその生物学的合目的性」
http://www.jsbba.or.jp/02/kaseiindex.html

このレビューはタイトルの通り、分解されなかったタンパク質や部分分解タンパク質の吸収のメカニズムを推定し、そのメカニズムの生物学的な合目的性を考察しています。このレビューに沿って、わかりやすく解説しましょう(日本農芸化学会の会誌ですので、それなりのレベルの難しさです)。

食品に含まれるタンパク質は基本的には分解されて、吸収されます。タンパク質の多くは胃・腸の中で、それぞれの消化管に存在する消化酵素などによってアミノ酸やアミノ酸が2つ、あるいは3つつながったペプチドサイズにまで分解されます。
これまで述べてきた酵素(エンザイム)もコラーゲンも、他のタンパク質と同様、同じようにアミノ酸クラスにまで分解され、吸収されます。しかし、まれに分解されずに、あるいは部分分解状態で吸収されることがあります。

たとえば、プリオン病について考えてみましょう。以下のプリオン説はまだ仮説です。
プリオンというのは、物質としての本体がタンパク質で、これ自身が病原性を持っていると考えられています。たとえば、プリオン病に冒されているウシ(いわゆるBSE、昔は狂牛病と呼んでいた)の特定部位には異常プリオンタンパク質が蓄積しており、これをヒトが食べると(プリオンは熱に強いので、加熱調理しても病原性は失わないといわれています)、ウシ異常プリオンタンパク質がヒトの脳などに侵入し、ヒトの脳に本来あった正常なプリオンと病原性のウシ異常プリオンが出会うと、正常なヒトプリオンが次々と異常型に変わり、結果的に異常プリオンが蓄積することで発病すると信じられています。
もしこの仮説が正しいのだとすると、ウシプリオンタンパク質は病原性を持つ大きさを保ったまま脳に行く必要があります。他のタンパク質と同じように、胃や腸などでアミノ酸レベルにまで分解されるのであれば、このような感染経路はあり得ません。したがって、この説が正しいのなら、タンパク質の大きさを保ったまま腸管を通過する機構が必ず存在するはずです。

プリオンタンパク質の他にも、ある機能を持ったタンパク質を経口摂取することがあります。
薬の中に配合されているタンパク質(多くは酵素)やサプリメントに配合されている多様なタンパク質が、それぞれの機能を発揮するためにはタンパク質の形を保ったまま何らかの形で吸収され機能を発揮する場所に行く必要があります。他のタンパク質と同じようにアミノ酸レベルにまで分解されてしまうのであれば、タンパク質の構造は壊れてしまっていますので、タンパク質としての機能もなくなってしまいます。ところが、薬剤にしろサプリメントにしろ、それぞれに配合されているタンパク質がそれぞれの機能を発揮するといわれていることから、もし本当に機能するのであれば、プリオンと同じように、何らかの吸収経路が必要になります。

では、どうやって分解されずに吸収されるのでしょうか。
先にあげたレビューでは従来の定説と新しい仮説が解説されています。従来の定説としては、動物実験(タンパク質を胃に直接投与)などの結果から、投与量の10万分の1ぐらいが吸収されると考えられています。吸収経路としては、腸の表面の細胞の隙間から吸収されるというものですが、もしこのような隙間からタンパク質が侵入してきても、その多くは小腸の免疫系によって排除されます。免疫系が充分に働かなかった場合や乳幼児のように免疫系がまだ充分に発達していない場合は、この侵入してきたタンパク質によって食物アレルギーなどを発症することになります。

薬やサプリメントなどに含まれる機能性タンパク質やプリオンタンパク質が、このように免疫系とケンカしながら侵入する経路で吸収されるともあるかも知れませんが、免疫系を逃れ、さらにアレルギーも発症しないで吸収することは考えにくい。

そこで、別の吸収経路の仮説として、「食品タンパク質が免疫複合体を形成し、腸管に存在する免疫グロブリン受容体を介して積極的に体内に取り込まれる機構」が考えられています。
ちょっと難しい言葉が使われていますが、先ほどの免疫系とケンカしながら取り込まれるというのとは反対に、積極的に取り込まれる仕組みがあるのではと言う考え方です。
このような積極的な侵入口がもしあるのなら、プリオンのような病原体が侵入することにつながってしまいますが、もともと病原体のためにこのような侵入口を用意しているとは考えにくいので、この経路を使って何らかの生体機能を発揮しているはずです。残念ながら、その本来の機能が何かはまだよくわかっていません。

もっとも、「免疫グロブリン受容体を介して」いるのであれば、タンパク質は抗原とし提示されるように小さく分解されていますので、このサイズで機能を持っていないと意味がありません。
したがって、プリオンのような大きなタンパク質が口から脳へ行くためには、分解されずに吸収される必要があるので、この免疫系を積極的に利用する経路とは別経路で感染していると思われます。残念ながら、この経路はまだよくわかっていません。

分解されないタンパク質や部分分解タンパク質の正常な侵入の仕組みが詳しくわかれば、この経路を積極的に利用する薬剤の開発などの応用が考えられます。

コラーゲンや食品のエンザイムも、もしかしたらここから侵入することもあり得るかも知れません。しかし、たとえ侵入してきても、この記事の最初に述べたように、働く場所がないので、あまり侵入してきても効果は考えにくいですね。

やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)
やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 23
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い 面白い 面白い
かわいい かわいい
驚いた
ナイス

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「酵素」にからんだ健康情報1 概要と書籍
酵素に関係したニセ健康情報が流行っています。いくつかの健康情報雑誌に特集が組まれています。 「酵素栄養学」、「酵素風呂」、「手作り酵素」、「酵素サプリメント」などの話題です。 ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2007/05/13 00:06
飲むヒアルロン酸の効果
ヒアルロン酸は加齢とともに減り続け、成人以降には胎児のときと比べて4分の1程度にまで減ってしまいます。ヒアルロン酸は普通の食生活からはなかなか摂取する事が難しいですし、ヒアルロン酸の代謝も非常に早いため成人の場合は十分なヒアルロン酸量を維持していくことは難しいと考えられます。 ...続きを見る
飲むヒアルロン酸効果
2008/03/24 23:58
ベジライフ酵素液口コミ
ベジライフ酵素液口コミ ...続きを見る
ベジライフ酵素液口コミ
2013/01/01 21:36

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
酵素の経口採取について疑問がありましてこちらへ辿り着きました。理系には疎い私ですが丁寧でわかりやすい解説で霧が晴れたようです。

「自然食」「菜食」といわれる分野に身を置いていますが、こういうジャンルはどうしても観念的な解釈ばかりが先行してしまい、消費者もそれを何の疑いもなく鵜呑みにしてしまいがちです。実に残念なことです。

稚拙ですが調べたことを多くの方に知ってもらいたい為自分のサイトから参考サイトにリンクを貼らせていただいています。差し支えあるようでしたらご一報下さい。
http://sky.geocities.jp/biogarden_sora/

本来はメールにてご連絡をと思いましたがコメントにて連絡させていただきました。ご覧いただきましたらコメントは削除いただいて結構です。今後ともよろしくお願いいたします。
sin
2010/06/14 12:10
どうもコメントありがとうございました。
せっかくいただいたコメントを削除なんてもってのほかですので、そのまま置いておきます。リンクもかまいません。
たまたま、今日、ある雑誌の記者さんから、酵素を食べることについて取材を受けました。
ナマのものを食べる風習はつい最近(戦後)のことですし、火を使って料理した食べ物には180万年の歴史があります「火の賜物」(NTT出版)。
ヒトは加熱食に「適応」し、生(ナマ)食の類人猿など他の動物と全く違う進化を遂げています。
yoshi
2010/06/14 21:04

コメントする help

ニックネーム
本 文

関連リンク集

食べたタンパク質はどうなるのか 経口摂取した機能性タンパク質の働き方 やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる