哲学的生命論は科学的生命論と合致する??「ゲノムと遺伝子」

(前期中間試験問題のネタです)
(試験が終わりましたのでアップします)
輪廻転生そのものにはあまり興味がありませんが、
輪廻転生を信じている人には興味があります。
どうすればこの滑稽な考え方が受け入れることができるのか、
関連する大量の本を読んできましたが、まだよくわかりません。
参考:
○構造と機能 モノとコト8 スピリチュアル
http://yoshibero.at.webry.info/200807/article_1.html
○民主党新代表は宇宙人?
http://yoshibero.at.webry.info/200905/article_6.html

ちょっと古くなってしまいましたが、
「大法輪」という月刊誌が「輪廻転生を考える」という特集を組んでいます。

大法輪 2009年4月号
特集:輪廻転生を考える
大法輪閣
\840
2009年04月01日発

大法輪 2009年 04月号 [雑誌]
大法輪閣

ユーザレビュー:
輪廻転生が面白い仏教 ...
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大法輪ですから、「仏教の説く輪廻転生と業」で
ブッダ、空海、親鸞、道元、日蓮、チベット仏教、葬儀
と輪廻観の話題が語られています。
一方で、総説などで、現代のテレビにおける
「スピリチュアル批判」もなされています。
確かにテレビに出てくる心霊ものには目に余るものが多すぎます。

しかし、テレビがダメで、伝統仏教はよい、とは単純にいえません。
テレビの輪廻観が誤っているという主張は、まぁわかります。
確かにヘンです。
だからといって、
健康的な輪廻観に生きるとき、開かれた人生の歩みがはじまるでしょう」(p71)
という総説の結びはどうも理解しかねます。

健康的な輪廻観」って、ありえるんだろうか?


文学の世界や、いわゆる新興宗教の世界で説かれる輪廻観なら、
わかります。
フィクションだと割り切ればいいわけですから。




そんななかで、「大法輪 4月号」におもしろい記事を見つけました。
「識者に聞く」というコーナーで日野原重明氏(医学博士・聖路加国際病院理事長
文化勲章受章者・明治44年生まれ)がおもしろいことを書いておられます。
(pp128-129)
日野原氏には多数の著書があるようです。
しかし残念ながら、私は氏の本を一冊も読んだことがありません。
こういう雑誌や広告などで見かける文章をちらっと読んだ程度です。
ですから、どんな人なのかよく知りません。


「哲学的生命論は科学的生命論と合致する」
というタイトルです。
この断定的タイトルからわかるように、本文もかなり断定的です。


私はキリスト教徒ですが、仏教の輪廻思想に強い関心を持っています
私は医学を修めた科学者としてこう考えます

と断った上で、次のように語っておられます。


私たちは父と母からそれぞれ1万1千個の遺伝子を受け継ぎ、人間としてこの地上に生まれる

たとえ話のつもりなのかも知れませんが、ちょっとピントがずれています。
おそらく減数分裂というのを誤解しておられるのではないかと。

父から半ゲノム、母から半ゲノムうけとり、一つのゲノムができあがる
と考えておられたのなら、間違っています。
違っていたら、すみません。


子どもはわたしから1万1千個の、私の妻からも1万1千個の遺伝子を受け継ぎ、私たちの遺伝子を持つ子供をこの世に送る

減数分裂という言葉は、ある意味では罪作りなのかも知れません。
減数」ということから遺伝子も「減数」すると勘違いする人がいます。
すなわち、ゲノムに2万2千の遺伝子を持つ細胞が減数分裂により1万1千になると。
そして、受精とは減数分裂でできた1万1千の遺伝子をもつ配偶子が合体して完成すると。

これだと、減数分裂の時によほどうまく遺伝子が分配されないと
まともな受精卵ができません。

遺伝子が半分に減るとき、ランダムに選ばれるのであれば、
受精で完全な遺伝子数になるのはほぼ不可能です。




実際には成人の体細胞にはゲノムは2セットあります。
1セットのゲノムに2万数千の遺伝子が乗っかっています。
減数分裂が2セットのゲノムが1セットになる過程です。
受精は1セットのゲノム二つが合体し、2セットのゲノムになる過程です。

遺伝子で見てみると、相同染色体が対になっているように
2万数千の遺伝子は基本的にはすべて対になっています(例外あり)。
つまり、2万数千の遺伝子が一つの体細胞に入っています。

減数分裂を遺伝子で見てみると
体細胞の中にある2万数千のになっている遺伝子が離ればなれになって
2万数千の遺伝子を持つ卵子や精子になることです。




ヒトのゲノムと遺伝子の関係を別の観点から見てみます。
1本の染色体には1本のDNA分子が含まれています。

私のゲノム
対になっている遺伝子の両方が「私」を作っていますので、
(片方だけしか発現しない遺伝子もありますが)
2万数千の遺伝子が含まれている
23対46本分の染色体に含まれるDNAの塩基配列すべて
ということになります。


ヒトゲノム
対になっている遺伝子の塩基配列、
相同染色体に含まれるDNAの塩基配列は
基本的にはお互いによく似ています。
0.1%ぐらいの多様性だと言われています。
元々対になっている染色体のうち、
1本は母親から、1本は父親から受け継いだものです。

ということで、ヒトという種のゲノムといえば、
第1~第22染色体、X染色体、Y染色体の
合計24本分の染色体に含まれるDNAの塩基配列すべて
ということになります。
この中には2万数千の遺伝子が含まれています。


卵子ゲノム
第1~第22染色体、X染色体の
合計23本分の染色体に含まれるDNAの塩基配列すべて
ということになります。
この中には2万数千の遺伝子が含まれています。


精子ゲノム
精子には染色体レベルで2種類あります。

第1~第22染色体、X染色体の
合計23本分の染色体に含まれるDNAの塩基配列すべて
または
第1~第22染色体、Y染色体の
合計23本分の染色体に含まれるDNAの塩基配列すべて
ということになります。
いずれも2万数千の遺伝子が含まれています。


ミトコンドリアゲノム
体細胞や生殖細胞にはミトコンドリアがあり、
一つの細胞には複数のミトコンドリアがあります。
一つのミトコンドリアには1分子のDNAが含まれています。
ということで
一つのミトコンドリアに含まれる1分子のDNAの塩基配列すべて
がミトコンドリアゲノムです。




日野原氏の文章に戻ります。
次の記述も、またおもしろい。

締めの文章はタイトルの通りです。

生命とは、先代から引き次がれて進化を続けるものと考える。哲学的生命論はこの科学的生命論とも合致するものと私は考えている

そのタイトルの結論の根拠は、よくわかりません。


先の、1万1千個の遺伝子の話に続いて、

この遺伝子は、科学的な意味での輪廻の原則に従って、各世代に引き継がれることは、輪廻を科学的にも実証したといえよう

実証したといえよう、と言われても、困惑するしかありません。
短い字数制限のあるコラムですから、詳しくは書いてありません。
字数制限があるからこそエッセンスがこめられていると考えたい。
ですが、その実証の根拠は先に挙げた「科学者としてこう考えます
としてはじまった1万1千個の遺伝子論です。

どうもよくわかりません。


輪廻思想は生まれ変わりのことだと思ったのですが、違うのでしょうか。
親から子へゲノムが伝えられます。
そのとき、親も子も普通は生きています。
更に離れた世代が生きていることも珍しくありません。
この生きている人間同士が互いに「輪廻」しているということなのでしょうか?


この大法輪という雑誌で特集している輪廻転生というのは、
この世に存在する一つの人格ある人が、
肉体としてこの世で滅んでも別の世で存在し続け、
死後の生命、永遠の生命を肯定し、
そのうち、再びこの世に生を受けることだと思います。

この考えの中に、遺伝子やゲノムが関与するのは
あくまでもこの世の物質レベルで存在しているヒトに限られるはずです。

日野原氏は「輪廻」の科学的な側面だけを述べておられ、
「転生」には触れておられませんが、
たとえ「輪廻」に関する科学的な話だとしても、
そして、減数分裂の認識が正しかったとしても、

この遺伝子は、科学的な意味での輪廻の原則に従って、各世代に引き継がれることは、輪廻を科学的にも実証したといえよう

という断言は、どうも理解できません。
なにか深遠な思想が含まれているのでしょうが、私にはわかりませんでした。




「輪廻転生」とゲノムとの関係について、
同時期に読んだ「京大心理臨床シリーズ」の本の中に
おもしろい記述を見つけました。
「輪廻転生」を心理臨床の専門家にかかるとこんな考察になるのか
という驚きとともに。

この話は、別の機会に。




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