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<<   作成日時 : 2013/11/29 02:26   >>

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「医学的根拠とは何か」
興味をそそる話題です。
一読して分かるのは、本書でいう「医学」は一般に認識されている
医学ではない。
医学部で行われている医学教育や医学研究は本来の医学ではないらしく、本来の医学に回帰すべきだと主張する本ともいえます。
じゃあ、本来の医学とは何なのか。
また、本書の主題はあくまでも「医学」ですから、主題は「科学」でない。
なので、「科学的根拠とは何か」を学ぼうとしても本書では学べません。
あくまでも「医学」です。
しかし、自分なりの理解では、ここで出てくる医学は「医療」とし、
一般的な「医学」と分けた方が分かりやすいような気がします。
画像


医学的根拠とは何か (岩波新書)
岩波書店
津田 敏秀

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「医学的根拠とは何か」
本書では、
直感派
メカニズム派
数量化派
と3つに分けています。

それぞれの特長が述べられているわけですが、著者の立ち位置は
数量化派。

直感派はともかくとし、メカニズム派をかなり毛嫌いし、場合によってはこき下ろしています。
日本の医学部は直感派とメカニズム派が席巻していて、数量化派がほとんどいない、本来の医学は数量化派のはずだ、メカニズム派では医学はできない、欧米では数量化派が主流だ、日本も早くそうなるべきだ、といった感じの本です。

数量化派というのは端的に言えば疫学です。
人間を題材にした科学ということらしい。


メカニズム派というのは色々あるわけですけど、通常の医学でいわれているところの基礎医学がそれに該当するようです。
要素還元派でメカニズムを主として研究し、病気の原因や因果関係を重要視する派らしい。

実験手法としては、動物実験、細胞実験、分子実験、遺伝子実験などが該当するそうで、医学部の中ではいわゆる基礎講座がやっていることが該当します。
いわゆる実験医学です。

これらは一般には基礎医学といっているわけですが、著者によると、
「基礎医学は医学の基礎ではない」
そうで、実験医学をやっても医学的問題からどんどん遠ざかるばかりで、ちっとも役に立たないから、医学部から追い出したいという勢いまで感じられます。

で、本書ではこの実験医学というのがどうもよくないものらしく、医学部でやることではない、医学部なら人間を対象にした疫学などの数量化した学問が大切だ、といっているわけです。

医学部で実験医学や基礎医学がのさばり、臨床系の講座であっても、学位(医学博士)を取るためには分子や遺伝子のレベルの実験をやっているのが気に入らないらしく、教授陣も数量化派はほとんどおらずメカニズム派ばかりなので(直感派は論外?)、医学部生への教育もままならず、欧米の傾向から見ても変な方向に向いてしまっているから、きちんと疫学を勉強させろということらしい。

いろんな例が出てきます。
ただ、どうも気になるのは、数量化派の手法で研究した場合は結果として上手くいったり正しかったりといった例があげられ、メカニズム派の主張する例では、結果として失敗したり正しくない結論を導いた、というなんだか偏った例ばかり紹介されているようにも見えます。

数量化派でも結果として上手くいかないこともあるでしょうし、メカニズム派の研究でも役に立っているのがあるはずです。




医学部の中で人間とはかけ離れた研究をやっているところもあるでしょう。
しかし、両派は対立するものではなく、お互いに補完し合うものでしょう。
確かに、本書でも排他的ではない、排他的であってはならない、としています。
しかし、科学的根拠として需要なのは数量化派であって、メカニズム派は重視しない、として切って捨てるのはちょっといきすぎだと思います。

数量化派が重要だというのは分かります。
疫学も大切だし、その結果も尊重されるべきでしょう。
その重要性を説明するのに、疫学の実際例を紹介するのも、もちろんありです。
しかし、疫学を重要視するために、遺伝子研究や細胞研究や動物実験がなぜ役に立たずゴミ同然だという主張をするのかがさっぱり分からりません。

人間に関係ない研究は医学部から追い出し、医学部以外でやればいいといっている風にも読み取れます。


医学部にとって重要なのは臨床でしょう。
医学部は医師養成専門学校的要素だけではなく、医学の研究の場でもあるはずです。
その研究機関としての役割の中に、基礎医学も重要な一角を占めているはずです。
さらには、教育機関としての基礎医学の役割も無視できません。

医師などの肩書きで、トンデモ学説を連発する人が後を絶ちません。
基本的な分子レベルの知識が欠除したまま、それらしいメカニズムを説いて怪しい療法や健康法などを説いているのは掃いて捨てるほどたくさんいます。


ただ、著者が心配する保護普通の医学部の中で、基礎医学教育がそれ程重要な位置を占めているとは思えません。
医師養成専門学校として割り切っている学生も多いでしょうし、基礎医学を軽視する学生の方が多数派でしょう。

医学博士を取るときには著者のいうような役に立たない動物実験や遺伝子実験をやることもあるでしょうが、そうでない一般の医師になる人にとって、医学部教育における基礎医学や実験医学の占める割合って、もともとマイナーどころか消え去るほど小さいのではないでしょうか?
博士の学位を取るような人でも、基礎医学や実験医学は学位のためだけの短い時間だと割り切っている人が多数派でしょうし、iPS細胞の山中先生のようになったり、大学に残ったりするのは少数派でしょう。

だからかどうか知りませんが、著者が一貫して攻撃しているのは、メカニズム派の教授陣です。実名を挙げて具体的に攻撃しているわけですが、実際の医療や公害問題や政策策定などに少なからず悪影響を与えている、だからけしからん、数量化派の意見をきちんと聞け、という主張なんだと思います。

そっちがメインのような気がするのですけど、なぜか医学的根拠は数量化派だけで、メカニズム派はそれになり得ない、役に立たない、どうでもよい、というような攻撃にはちょっと疑問を感じました。

あくまで、私の印象ですけどね。




根拠に基づいた医学として、冷静に学ぶには次の本が役に立つと思います。

EBMがわかる―臨床医学論文の読み方
金芳堂
Trisha Greenhalgh

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少し古いですが、「数量化派」の考え方などがわかりやすい例を伴って解説してあります。
いま、パラパラと読み直してみて、そうだそうだ、これこそ「医学的根拠だ」と納得がいきました。

さらには、次の本も楽しめます。

その数学が戦略を決める
文藝春秋
イアン・エアーズ

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文庫化もされています。
この本は「医学的根拠とは何か」に何度か登場します。
この本の中にも「根拠に基づく医療」の話が出てきます。
この本のおもしろいのは、医療だけでなく、ありとあらゆる分野の「ビッグデータ」をとりあげ、その分析や結果の解釈など、豊富な例で紹介されていることです。

そして、何より興味深いのは訳者の解説。
というか、実は私がこの本を買ったのは、訳者が山形浩生氏だったからで、その解説を読みたいだけだったのですが(氏の訳本の多くを買っている)、本書でも痛快な解説が楽しめます。



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