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zoom RSS 血液型病気学と医学的根拠

<<   作成日時 : 2013/11/28 02:50   >>

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おもしろい本がたくさんあって、退屈しない。
ある作家は、
おもしろくない本などない。どんな本であろうとおもしろい。
おもしろがることができない人がいるだけである。
と言っていた。その通りだろうと思う。
「おもしろい」というのは、「タメになる」「役に立つ」というのでもよい。
最近のおもしろい本を2冊取り上げます。
一つ目は血液型でなりやすい病気やなりにくい病気があると主張する本で、科学的な根拠があると自信満々に語っている本。
疑う余地はない、確かな根拠があるらしい。
画像




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もう一つは、「医学的根拠とは何か」というそのものズバリのタイトルの本です。

医学的根拠とは何か (岩波新書)
岩波書店
津田 敏秀

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どちらも「人間を対象とした科学」がテーマの本です。
はたして、何が書いてあるのやら。

血液型と言えば、たくさんある中で話題になるのはもっぱら
ABO式の血液型。
この本でも話題はABO式の血液型にしぼっています。
その血液型といえば性格判断。トンデモの代表とされています。
じゃあこれもか、となるところが、
今回の本の話はそんな占いのような戯れ言とは異なり、
きちんとした根拠がある「科学」だとされています。

オビによると、
遺伝子レベルで分かってきた驚きの関係!
とあります。
「遺伝子レベル」なら、かなり還元された根拠だなぁと感心しますよね。
さらには
膵臓がん O型に比べB型は1.72倍のリスク
胃がん O型に比べA型は1.20倍のリスク

以下、胃・十二指腸潰瘍、エコノミー症候群、脳梗塞、心筋梗塞
具体的な数字をあげてリスクを断言しています。
すべて小数点以下2桁の精度。自信満々です
他にもピロリ菌、ウイルス感染能もオビに触れられており、
本書の最後の方には寿命、自殺率との関係まで出てきます。

本書でたくさん出てくる「科学的根拠」というのは、ほとんど疫学です。
それがどんなものか、どれほど「医学的根拠」になるのかは
二つ目の本に書いてあるのですが、どうも様子がヘン。
出てくるデータは玉石混淆で、コホート研究から、
警察などがよくやる事故率と血液型との関係程度のお粗末な
データまで、ありとあらゆるデータを利用しています。
もちろん、データの重みはそれなりに説明されています。
でも、オビに見られるような書き方を見ると、
そんな重みなどどうでもよいともうけとれます。

疫学を否定するわけではありませんけど、
出てくるのはいろんな条件を設定して、統計取って、
統計処理したという話ばかりです。
病気そのものの原因などと血液型との関係に言及したのは
ほとんどありません。
まぁ、まだ分からない、というのがその理由ですから、
今後の説明を待ちましょう。

もちろん、血液型と病気との関係が全くないとはいいきれません。
血液型といっても、関連する抗体や抗原に多様性があるわけで、
その多様性の部分に関与している病気も皆無とはいえないでしょうから、なんらかの因果関係が認められることもあり得るでしょう。

でも、この本では、弱い根拠ながらも、あれもこれもと説明しているので、サプリメントや健康食品業界がよくやるように、なんでもかんでも関与しているという話になっています。
オビのところで触れた病気だけでなく、寿命や自殺率まで出てくると(本当はもっといろいろ関与するかもという例があるらしいが割愛したらしい)、これだと、核酸や酵素やらその他諸々の単品を飲めば万病に効くといってありとあらゆる症例を紹介しているのと変わりがありません。
それだけ広範囲に関与しているのなら、もっと病気が根絶されていたり、病気の原因が明快に分かるだろう、って話になります。

それでも、偉いセンセイによる深遠なる考察のもと、深いお考えがあっての結論なんでしょう。
ただ、例えば膵臓癌との関係といっても、膵臓癌にはいろんなタイプがあるわけで、年齢や性別や育った環境やその他諸々の因子が絡んでいるわけで、考えられる因子を考慮した上での結論だとは思うのですけど、そういった説明は本書ではほとんどありませんから、いきなり結論、それも小数点以下2桁の数字が延々と出てきます。
どんな大規模なデータであろうと、条件が単純であろうと複雑であろうと、出てくるデータの確からしさや誤差などの話は一切なく、すべて有効数字3桁で統一しているのも、ちょっとまずいんじゃないでしょうか。
このあたりは、本文とは離れてコラムなり表の欄外などに書いておけばいいことで、素人にも分かりやすく優しくというのは分かりますけど、おさえておくべきデータはきっちりと示しておかないと、著者が言う科学的根拠やら、今までになかった画期的な本というコンセプトが色あせてしまいそうです。
小規模で病気と血液型との関連性が怪しい統計であっても、著者の仮説にあうのなら「有意義な研究」と絶賛したり、単に著者の願望を結論にしたり、いろんな記述が楽しめます。




ABO式血液型の話ですし、「遺伝子レベルで分かってきた」と言うくらいですから、それなりのバックグランドは必要なので、分子レベルの話も解説してあります。
そんななかに、抗原になるA型物質、B型物質というのが出てくるのですけど、そんな中にO型物質というのが出てきて、本書ではH抗原のことをこう呼ぶとしています。
それはいいのですけど、「A型物質に対する抗体(抗A抗体)は、血液型がB型の人とO型の人の血清中に、生まれたときから入っています」なんて書いてあります。
その後で、すぐこの言葉を否定しているのですが、否定するなら、なんでこんなトンデモをわざわざ書いたんだろう?
さらに、抗原になる物質の説明なんですが、H抗原の末端の2つの糖だけが著者の言うO型物質としても間違いではなさそうな記述まであります。
抗原性が2糖だけで決まるとは書いてありませんけど、もしそういう意味なら、そして本書では獲得免疫によって抗O抗体も生じることがあると書いてありますから、いつの間にか知らないところで大変なことが体内で起こっていたらしい。




何度も登場するのは血液型と膵臓癌との関係です。
くどいほど数字が繰り返されています。
なので、この根拠となっている論文を見てみましょう。
著者は「アメリカの国立がん研究所から、驚くべき研究結果が発表されました」と言っています。
なんだろう、確かに発表された雑誌の名前は「Journal of the National Cancer Institute」です。
論文の著者は8人いて、「National Cancer Institute」の人は3番目と4番目だけです。
最初と最後の著者は「Dana-Farber Cancer Institute」の人です。
「アメリカの国立がん研究所から発表されました」の「から」は発表の場がってことらしい。
それでもNIHの組織が発表したんだからひれ伏せ、ということがひしひしと伝わってくるほど、「アメリカ国立がん研究所」がしつこいほど繰り返されています。

とはいえ確かに本書に書かれているように、この研究は大規模です。
本書には書かれていませんが、まともな研究ですから、年齢、性別(各血液型で71-74%が女性)、人種(各血液型で96-98%がWhite)、体型、喫煙の有無(喫煙者7-8%、非喫煙者45-46%)など各血液型できちんと揃えてあります。
ここまで揃うかと思うほど見事に揃っています。
人数が多いからでしょう。
本書で取り上げられていない因子で数々の結果も載っています。
で、本書では
膵臓癌になるリスクが
O型と比べてA型は1.32倍、AB型は1.51倍、B型は1.72倍
という数字が、これでもかとくどいほど、繰り返し、繰り返し、もう分かったからエエやンと思うほど出てきます。
しかし、論文を見てみると、当然ですがこんな数字だけが一人歩きするような結論を述べているわけではありません。
本書にはこの論文の要約の部分が貼り付けてあるわけですが、そこを見ると、
「Compared with participants with blood group O, those with blood groups A, AB, or B were more likely to develop pancreatic cancer (adjusted hazard ratios for incident pancreatic cancer were 1.32 [95% confidence interval {CI} = 1.02 to 1.72], 1.51 [95% CI = 1.02 to 2.23], and 1.72 [95% CI = 1.25 to 2.38], respectively).」
とあります。
Wolpin, B. M., et al., J. Natl. Cancer Inst., 101(6), 424-431 (2009).
このCIをどう見るかですが、この辺の解説は一切ありません。




疫学的にみて、血液型と癌などの病気のリスクに一定の傾向はあるらしい、というのは分かります。
大規模な疫学的調査により、一部地域の人達が対象ではあっても、関連性があるというのを認めましょう。

とはいっても、両者の因果関係はわかりません。

いや、科学的研究であっても、相関関係ばかりで因果関係はわからんだろうという疫学派の話もありますけど(2冊目の「医学的根拠とは何か」)、とはいっても、分子や細胞など、流動的な因子を極力排除した還元的研究にもそれなりに意味はあるはずです。

その部分が弱いと思ったのか、本書には
遺伝子レベルで解明された血液型と膵臓がんの接点
という節があります。
これがオビに書いてあった
遺伝子レベルで分かってきた驚きの関係!
でしょう。
では、読んでみましょう。ワクワクしますね。

まずは一塩基多型の説明。
例としてアルデヒド脱水素酵素が取り上げられています。
確かに、分かりやすい例だ。
で、問題の「驚きの関係!」なんですが、なんとまたもや「アメリカ国立がん研究所」の登場です。
こんどはその「メンバー」です。論文があるらしい。
ところが、先ほどの例と違って、こちらはその問題の論文が何か書いてありません。
巻末に参考文献一覧があるのですが、そこにもありません。
どんなデータか分かりませんが、とりあえず、著者の説明を見ましょう。

1896人の膵臓がん患者のDNAを調べたところ、なんと血液型遺伝子の中に膵臓がんと直接関係するSNPが1個見つかったというのです。より正確には「ABO血液型遺伝子の第1イントロンの中」にSNPが位置しているということでした
それなりに慎重な言い回しはしているものの、
血液型遺伝子と膵臓がんの間に、遺伝子レベル、塩基配列レベルで深い関係が潜んでいることは分かりました
という力強いまとめです。

ABO式血液型遺伝子の多様性は、関心が深いこともあってか、比較的早い段階(199年代)から調べられており、多数同定されています。
関心が深いのはエキソンの部分ですから、それでも多くの多様性が見つかっています。
今回の話ではエキソンではなくイントロンの部分に肝臓癌と関係がありそうなSNPが見つかった、ということらしい。

たったこれだけで(論文を見ていないので本当のところは分かりませんが、著者を信じるなら)「遺伝子レベルで分かってきた驚きの関係!」と言うのはちょっと行き過ぎでしょう。
オビは編集者が作るのだから、編集者の感性で書かれただけだといえばそれまでですが、著者は「最先端のゲノム解析」だとも言いきっていますから、それなりに力の入った話なんでしょう。

血液型を決定している遺伝子と膵臓癌との関係のありそうなSNPsが、他にも見つかっているのかどうか分かりません(書いてありません)。
そもそも、O型遺伝子とA型遺伝子、B型遺伝子との間にはそれぞれ違いがあるわけで、それぞれの遺伝子の中にもそれ以上の多様性が見つかっているわけで、そんななかで、第1イントロンの一塩基多型だけが膵臓癌と関係していると言われても、具体的にどんな関連があるのか、もし関連があるとして、それが膵臓癌にどう関与しているのかなど、さっぱりわかりません。

せっかく初めの方で遺伝子のしくみを詳しく説明し、SNPの説明もけっこう詳しくやっておきながら、肝心の血液型と肝臓癌との話になると、極端に情報量が少なくなってしまうのは、なぜ?

この血液型-膵臓癌SNPの話はアルデヒド脱水素酵素の明快な説明の直後に出てくるだけに、それと同等に根拠がある話だと誤解してしまう人も出てくるかもしれません。




著者は能見血液型性格学を「怪しいもの」とし、それとは一線を画するといいながらも、能見氏が批判されていることと同じことを繰り返しています。
たとえば、著者の幼少時の体験から得られる印象や身近な人の観察から、著者の血液型診断学が「当たっている」とする話が、あちこちに出てきますし、テレビによく出てくる著名人(イモトさん)を例に出すなど、能見方法論と同じです。
親しみやすくということから出てきたエピソードかもしれませんが、これでは逆効果です。
それに、個人的見解、というのもよく出てきます。
根拠は示されていませんが、この数字ならけっこう大きな違いだとか、違いがあるとみて間違いないとか、著者の感じ取り方で結論づけているところもあります。

最後に登場する「寿命」や「自殺率」となると、ほとんど能見占いと同じで、話の持って行き方に違いを見つけることは難しい。
警察が血液型別の事故率を真面目に発表するのを笑えません。




結局、「なりやすい病気、なりにくい病気」が「血液型で分かる」として、
じゃあ、それがどう役に立つのかというと、その辺の所は、
予防や治療に役立つはずだという希望程度で、具体的な活用法としては、あやしい血液型別健康食品の話題程度で、ほとんどあげられていません。
「血液型病気学」という名前まで作って血液型に注目して欲しいという割には、活用法の話が弱いのはちょっと残念です。


せっかくおもしろい話題なのに、信憑性の薄い書き方になっているのも
残念です。


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