やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS 「間違いだらけの食事健康法」を読んで

<<   作成日時 : 2013/05/08 03:10   >>

面白い ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

タイトルがおもしろそうで、酵素健康法にも触れているということで、
買いました。
「全身酵素療法」として、確かに酵素のことが書いてありました。
この本のメインはこの著者オリジナルの進化を取り入れた食事健康法で、狩猟採集時代の食事を考慮した狩猟採集型ダイエット法です。
それ自身も興味深いのですが、今回はカットして、
『酵素健康法』の酵素を裏付ける?」の話だけにしぼります。

○テーマ「コラム・酵素」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/a2710f5053.html





食べたタンパク質は消化器官で分解されるし、分解されて生じたアミノ酸が酵素の原料に必ずしもなるわけではないので、酵素食は基本的には意味がない。
まずはそこをおさえ、一応、論文の根拠をあげながら、一部のタンパク質分解酵素が腸から吸収され、それが血液中に入り、どこかで働く可能性に触れています。

どこから血液中に入るかというと、腸のM細胞をあげています。
さらに、このタンパク質分解酵素が
動物実験及び試験管レベルでは、抗炎、抗血栓、抗ガン作用を持つことも報告されています

ということで、論文まで引用してあります。

この効果を踏まえて、ヨーロッパではタンパク質分解酵素を利用した全身酵素療法が行われていることが紹介されており、日本でも数十年遅れて一部の医師などが取り入れているとしています。




ここまでの話、本当なら大変な事ですけど、詳しく見ていきましょう。

まず、6年前、このブログで次のようなエントリーを書いています。
○食べたタンパク質はどうなるのか 経口摂取した機能性タンパク質の働き方
http://yoshibero.at.webry.info/200704/article_4.html

この本に登場するM細胞からの吸収の件では、1995年の論文が引用されています。
これは入手できませんでしたけど、確かにその手の話は古くからあって、先に引用した6年前のブログのネタ論文にも書いてあります。
6年前のブログではそれとは別のより特異性の高い機構の可能性を議論していました。

リゾチームなどの医薬品としての酵素やプリオンタンパク質が機能を保ったまま吸収されることが考えられますので、大きな分子が壊れないように吸収され、働くべき場所に移動する機構があるはずで、それらに関して、6年前のブログには詳しく書いています。

それはいいとして、この本では、さらに、血液中に取り込まれたタンパク質分解酵素がそれなりの働きを持つとの報告があると、書いてあります。
幸い、論文が引用されていて、入手できます。
Med Hypotheses, 6(6), 1386-1388 (2006).
実質2ページの短い論文です。
仮説が書いてあって、それっぽい方法が書いてあって、
結果は Summary という論文です。
これで「動物実験及び試験管レベルでは、抗炎、抗血栓、抗ガン作用を持つ」という報告とするには、無理があります。

で、ヨーロッパの動向とやらの件ですが、先の論文はリトアニアの方のようで、その論文(?)に2つの商品名が書いてあり、この本にも引用されています。
これがなんとヨーロッパでは
「ミラクルエンザイム」
なんだそうです。
日本でミラクルエンザイムと言えば、二大巨匠のうちの1人が使っていますけど、それとは別物のようです。

海外の動向と言えば、例えば次のような本でしょうけど、
いずれにしてもこの本とは別の話のようです。
画像





さらに、3つの問題点をあげ、それぞれ検証しています。

何の問題点かというと、ミラクルエンザイムを使った「全身酵素療法」のことで、これはサプリメントとして摂ったタンパク質分解酵素が胃を通過して腸に達し、腸から機能を保ったまま吸収されどこかでプラスの働きをしてくれるかもと期待する療法です。
サプリメントだけでなく、通常の食事で摂るタンパク質も考慮に入っているようです。

1番目は胃酸で分解されるので、意味ないやん、と言う問題点で、胃酸にさらされないようにコーティングすることで解決としています。

いまでは、そんな原始的ではなく、分子修飾で対応することもあります。
この点は深入りしません。

2番目は食事と一緒に摂っても、単なる消化酵素(タンパク質分解酵素)として働くだけやん、という問題点で、空腹時に撮ればよいと指導している、とされています。
「絶食で酵素」は、だから意味があると。
実は、この本で、なんで酵素健康法が出てきたかというと、狩猟採集食事法の中で、絶食や断食の効能が説かれており、その流れで出てきます。
なので、絶食や断食に「酵素」も効果があるとしたいらしい。

もしそうなら、なんか中途半端です。
絶食してサプリメントとして純粋な酵素だけを摂ることで、そのうちの一部でも血液中に入ればいいやというのなら、そもそも腸から大型分子が機能を保ったまま取り込まれるという機構に、特異性、という話は出てきませんから、ランダムに高分子が取り込まれていることになります。
食事中に摂るタンパク質の一部も常時ランダムに血液中に取り込まれていることになります。
絶食してサプリメントとして摂った場合は、それなりに特異性が獲得されると言うことらしい。
それでいいのか?

6年前のブログ記事では、腸管からの取り込みに、それなりの特異性も考慮していました。

3番目はアレルギーの指摘で、つごうよく「異物として認識されない可能性が高いとある論文で推測している」という話が引用されていますが、基礎研究はないとしています(いずれも論文引用なし)。

おもしろい論文をよく見つけてくるもんだと思いますけど、いくら何でもつごうよすぎます。
この手の話が出てくれば、誰でもアレルギーを気にします。6年前のブログでもそこが焦点になっています。
これを解決しない限り「全身酵素療法」なんて、無理でしょう。




この本の後半で「リーキーガット」について、詳しく解説してあります。
腸に穴が空いて、そこから不本意に異物が取り込まれることですけど、
これはいろんな意味で危険です。

これを相当のページを割いて説明しているのですけど、先の酵素健康法と矛盾しないかどうか考えられた形跡はありません。

酵素健康法で、食品中のタンパク質分解酵素だけが特異的に腸から吸収されるには、それに対するレセプターなど、それなりの特異的な機構が必要でしょう。
非特異的に食品中のタンパク質が取り込まれるのであれば、量の多いものから取り込まれることになり、サプリメントとして大量に摂ることで、特異的に取り込まれると言えなくもないですけど、通常の食事で、つごうの良い酵素だけが取り込まれると考えるのは、ちょっと無邪気すぎます。

リーキーガットの場合、ある程度は非特異的な現象です。
通常は多かれ少なかれ、現象としては見られるわけですから、
食事中の酵素が何らかな機構で特異的に取り込まれるとしても、
リーキーガットも同時にある程度は起こっているでしょうから、
そうなると、両者をどうやって区別するのか疑問です。

いずれにしても、きちんとした論文は皆無なわけですから、いまのところこの本に書かれているような、食事中の酵素が血液中に取り込まれて、どこかで働くかも、って話は憶測に過ぎません。




ちょっと前(2013年3月)、朝日新聞の医療サイトで内科医の方が興味深い記事を書いておられます。

○酵素を食べて意味があるのかな?
http://apital.asahi.com/article/sakai/2013030300003.html?ref=rss&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

冷静な議論に見えます。
ちょっと方向性が違いますけど。

酵素の広告を見て疑問点を述べておられます。
若者との老人を比べて、老人の方が酵素が少ない、
老人は酵素を摂れば良い、
という話に、冷静に議論されています。

もっともな話なんですが、酵素栄養学が巧妙なのは、
単に酵素を補充すればよいといっているわけではなく、
消化酵素と代謝酵素の割合云々という話があって、
食事酵素で消化酵素を節約すると、その分、代謝酵素にまわせるから、健康に良い、といった与太が付いてきています。

私なんかは、分子レベルでのメカニズムをまず考えます。
この内科医は酵素が効くかどうかは試してみればわかる、という話に持っていきます。
臨床医らしい発想です。

もちろん、それだけで効くと証明できるわけではないことをわかった上で書いておられますが、この手の調査をいくらやっても「効く」ことの証明にはなりません。

私がこのブログであれこれと酵素栄養学について(おちょくりながらも)書いてきたこととは違う視点を見る事ができ、タメになりました。

○テーマ「コラム・酵素」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/a2710f5053.html

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
面白い 面白い 面白い
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

関連リンク集

「間違いだらけの食事健康法」を読んで やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる