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zoom RSS いくつかの「遺伝子組み換え」本を読んで

<<   作成日時 : 2013/05/06 02:47   >>

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先のエントリーで「遺伝子組換え」本である「食卓のメンデル」を紹介したのですが、今度は3冊の比較的新しい「遺伝子組換え本」の登場です。
誤解したまま誤解を垂れ流すのは、どの業界でもあるでしょう。
先に紹介した「食卓のメンデル」と読み比べることで、今回の本のおもしろさがよりいっそう実感できると思います。

別に選別したわけではないのですけど、4冊の本は見事に「くみかえの法則」に合致しています。
画像

○テーマ「コラム・遺伝子組換え」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/934e4c5c2a.html
○テーマ「コラム・くみかえの法則」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/24de9f0512.html
○「食卓のメンデル」を読んで 遺伝子組換え技術解説の決定版
http://yoshibero.at.webry.info/201305/article_6.html




まずは、あきれるしかない(表現が)軽めの本を。
思いっきり危険をあおっていますけど、その根拠が示されていません。
食全体の陰謀本なので、「遺伝子組み換え」作物は6章のうち第1章だけですが、他の章にもチラホラ出てきます。




「はじめに」で爆弾炸裂です。
日本を滅ぼすのはカンタンで、「遺伝子組み換えの種」だけで、
日本人は自然に消えてくれるそうです。
アメリカでは遺伝子組み換え「殺人事件」まで起きたと脅しています。
例の「トリプトファン事件」です。これがなんと「殺人事件」です。

遺伝子組換え技術による食品添加物」の製造工程には不純物が
生じやすく、この不純物のために「殺人事件」が起こったそうです。
これは「第二の水俣病」なんだそうです。恐ろしいですねぇ。

ちなみに、この「殺人事件」は収束しています。
○天然と人工 トリプトファン事件は永久に不滅です!?
http://yoshibero.at.webry.info/200811/article_4.html
○トリプトファン事件はまだ有効なのでしょうか
http://yoshibero.at.webry.info/200703/article_7.html

この本のように、「事件」が起こったときの最初の報道だけとりあげ、
その後の検証を一切無視するのは不誠実です。

この「事件」は最高峰の頭脳と多くの時間と多額のお金を使って、
公的に検証され、膨大な報告書も書かれています。
これをなかったことにするのは、いくら何でもヒドイ。
しかも「殺人事件」とし、事件に関わった企業の実名をあげ、
あたかもその企業が殺人を犯したごとく書くのはやり過ぎでしょう。




かなり断定的に危険をあおっていますが、、出典が記されていません。
唯一それらしいのは「フード・インク」という映画にまつわる話題です。

この映画の監督さんによる苦労話が出てきます。
著者はそれを本気で信じているようです。
このドキュメンタリーを見られたのかどうかはわかりません。
「WOWOW」などテレビでも何度も放映されています。


遺伝子組換え作物がどんなものか、あるいは基本となる「遺伝子」って何なのか、という基本は全く書いてありません。皆さんご存じでしょ、って感じで、説明してくれません。

それらしい表現が出てくるのは、

遺伝子をピンセット操作された妖怪
未熟な人間がピンセットで操作する
もはや「神の領域を冒しています


と言う程度です。意味不明ですけど。

で、なんだろう?
狭い意味での遺伝子組換え操作だけがターゲットになっていますけど、
研究室で日常的にやられていて、既にたくさん栽培されていて、
しかも、安全性試験が全くなされていない「ピンセット操作された妖怪」は不問なんでしょうか?
おそらくこの妖怪を著者は喜んで食べているはずですが、
単に知らないだけなんでしょうか?
どうせ脅すんだったら、そっちの方を叩いて欲しいな。


そして、極めつけは、次の脅し。著者による大予言です。
遺伝子組換え技術限定の脅しです。
通常の品種改良(放射線や発がん物質を使ってどんな遺伝子が何個どのように変化したかわからず、安全性試験が全くされていない品種)は含まれていません。

今後、「大問題に発展する」と思いますよ。
これから「未知の毒性」が出現して大騒ぎになるでしょう。
これは間違いありません。
なにしろ、未知の分野の遺伝子を、人間(企業)が勝手に操作しているのですから。
ありがたいご神託です。

いままでと同じ作物を食べているのに、その栄養分の不足が広まって大問題になるかもしれません。
こちらはちょっと気弱。

慢性・急性の毒性が知らぬ間に身近で現れ、人が各所で倒れているようになるでしょうね。
大変だっぁ!

また、アレルギーが老若男女に広がり社会生活が成り立たなくなり、抗生物質への耐性が強まって、些細な病気でも薬が効かなくなる人が増えてくる
もう、何でもありです。




次は、この分野では「著名」な方の最新刊です。
「遺伝子組換え」だけの本ではありませんけど、その記述がメインの本です。




「遺伝子組み換え」技術により種々の「モンスター食品」が作られているそうです。
かつては「フランケン食品」と言われていましたが、フランケンシュタインは怪物ではなく、その怪物を作った学生の名前ですから、ふさわしくないということになったのかもしれません。

で、いろんな「モンスター食品」の問題点や、それを作る「モンスター企業」がやり玉に挙がっています。
例によって、その恐怖をあおる技術は天下一品で、知らない人が読むと誰もが信じてしまいそうな迫力があります。

この手の本で、危険をあおる実例としてよく登場するのは「トリプトファン事件」「毒ジャガイモ事件」「オオカバマダラ事件」「スターリンク事件」等しかないのですけど、これらの古い話がここでも出てきます。

これらが誤解や捏造やらである事は、多くの研究や公的機関の検証があり、これらの事実は入門書ややさしい解説本でも説明してあるのですけど、このような陰謀本を書く人にとっては、最初の報道だけが重要で、それだけが真実であるかのごとくしか書きませんから、その後の検証などきれいさっぱり無視されます。

その点でも「食卓のメンデル」は役に立ちます。引用する方も便利です。
その「事後の検証」とやらは何だ、と言われたら「食卓のメンデル」を
読んで下さい、と言えるので。
両著を読み比べ、どちらが真実に迫っているかを、それぞれが判断すればよい。


類は友を呼びますから、著者は「フード・インク」や「美味しんぼ」を絶賛しています。著者は「美味しんぼ」にも登場します。
「ヒゲをもごもごさせて言うから、ヒゲもごおじさん言われている」と紹介されています。

この本の圧巻は、137ページあたりから書かれているサソリキャベツの話でしょう。
イラストも凝っていて、キャベツからサソリが飛び出しています。

「昆虫」と「植物」を遺伝的に掛け合わせるとは・・・・自然では、ぜったいに起こりえない現象だ。
神様だってお手上げの荒技を、遺伝子組み換え科学者たちは、やってのけるのである。


いやいや、掛け合わせって、ゲノムと遺伝子なんですけど、っていう話は通じないのでしょう。
この表現がお気に入りらしく、
「昆虫」と「植物」を掛け合わせるという前代未聞の操作を行えば、遺伝子が損傷したり、変質したり・・・
とも書かれています。

このサソリキャベツにまつわる問答をネット上で見つけ、回答がよくできていることから、その問答に対して陰謀っぽいいちゃもんの付けているのですが、それがおもしろい。
この部分だけ(p142あたり)でも是非とも読んで欲しい。

聞きかじった情報だけで、妄想を展開しているわけですが、自戒を込めて、こうならないようにしないといけないという好例です。

「非科学の極致だ」「バカも休み休み言え」と鼻息が荒いが、
ことごとくポイントを外しています。

本当は引用したいのですけど、今度の試験問題のネタになるなと
思ってしまいましたから、ここまでにします。

とにかく、全体を通じて、人間ってどうしてこうなんだろう、という
社会科学的な考察もできる好著です。

繰り返しになりますが、「食卓のメンデル」では、この本で書かれている数々の誤解や曲解や陰謀などはことごとく論破されています。
問題点もきちんと整理してありますので、読み比べることで、
よりいっそう理解が深まると思います。
食卓のメンデル: 遺伝子組み換え食品の正しい見方
日本評論社
ニーナ・フェドロフ

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最後は、海外の本を。

遺伝子組み換え食品の真実
白水社
アンディ リーズ

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「やさしいバイオテクノロジー」のサブタイトルは
「遺伝子組換え食品の真実を知る」なわけですが、
今回の本は
「遺伝子組み換え食品の真実」
です。
タイトルは似ていますが、全く異なる内容です。



どちらが真実なのでしょうか?
それとも、どちらも間違っているのでしょうか?

文字制限の関係上、ああり書けませんが、先の日本人による2冊に比べ、平静を装っているようで、かえって怖い。
冷静に事実を述べているように読めますので、ついつい信じてしまいそうに書かれています。

今回登場した3冊のうち1冊目は文体がふざけていて、内容もふざけていて、無根拠な話ばかりで、2冊目はテンションが高いだけで、科学的だと装っているだけなんですが、こちらは、分量もあり、引用先もきちんと示されていますから、学区寿つっぼいふんいきを顔しだし、上品に書かれているような錯覚を受けます。

ここでも「スターリンク事件」「トリプトファン事件」「毒ジャガイモ事件」など定番話が登場します。その書き方が先の2著と比べても学術っぽく、へぇっと納得させるような膨大な資料を提示して書かれています。
しかし、残念なことに、「食卓のメンデル」や「やさしいバイオテクノロジー」に書かれていることと全く逆です。

同じ事件なのに、どうしてこうなるのだろう?
という視点で読むのもおもしろい。

この本には訳者による長めの「解説」が載っています。
むしろ、こっちの方がおもしろいかもしれません。

試験栽培にまつわる話など、陰謀話に持って行く筆致には舌を巻くしかない。
お見事!!

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