やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS 「食卓のメンデル」を読んで 遺伝子組換え技術解説の決定版

<<   作成日時 : 2013/05/05 02:13   >>

驚いた ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

このブログでは「遺伝子組換え」技術にこだわっているわけですが、
多くは誤解を解くことに力を入れています。
今回登場する本は、研究者とサイエンスライターの合作で、
この分野の幅広い話題をカバーしており、科学的で中立的な知識が
得られます。
翻訳はつい最近なのですけど、原著はちょっと古い。
しかし、内容は色あせていません。
○テーマ「コラム・遺伝子組換え」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/934e4c5c2a.html

ちなみに、この本は内容も表記も「遺伝子組換え」本です。
○テーマ「コラム・くみかえの法則」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/24de9f0512.html

食卓のメンデル: 遺伝子組み換え食品の正しい見方
日本評論社
ニーナ・フェドロフ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 食卓のメンデル: 遺伝子組み換え食品の正しい見方 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



研究者だけがポピュラーサイエンスを書くと、どうしても硬くなって、
読みにくいことが多い。
本著のように、サイエンスライターと研究者の合作というのが
一番読みやすい。

よくここまで話題を広げたなと思うくらい、幅広い分野の資料を調べ上げ、科学的に間違いがないように慎重に書かれていることも好感が持てます。




多くの「遺伝子組換え」陰謀本は、「遺伝子組換え技術」のみに特化し、他の品種改良技術には触れないことが多い。
科学的に考えるというのは、健全な懐疑主義をとり、可能な限り多様な仮説を立て、単に信じるのではなく客観的に再現性ある実験を行い、比較検討できるあらゆる方法を試すなど、いろんな考えがあると思います。

その中でも、比較検討するという精神は大切です。
きちんと設計された実験には必ず健全な対照実験が組み込まれています。
そこまで行かなくても、ある一つの事だけに集中するのではなく、周辺の事にも目を向けるのは大切なことです。

遺伝子組換え技術が対象になるのなら、これとよく似た技術も対象にすべきです。そのためには、周辺のあらゆる技術に精通する必要が出てきます。

この本でも、まずは従来から行われている品種改良技術を丁寧に説明しています。この時、単に歴史的な事実を振り返るだけでなく、比較的新しい事例も紹介しています。

人類は知ってか知らずか、従来から多様な突然変異を品種改良に取り入れてきました。
今では、放射線や変異誘発性化学物質だけでなく、あらゆる方法を使って突然変異を誘発し、有用な品種を作る努力がなされています。

多くの人は、あるいは遺伝子組換え技術に反対する人は、遺伝子組換え技術を使って作られた品種はフランケンフードやモンスター食品などと言って怖れ、通常の品種改良で突然変異を誘発して作られた品種は「自然」だと勘違いしています。天然であり健康にいいとまでも。

これが誤解である事を、この本では丁寧に説明しています。
(わたしも、このブログや本や雑誌で同じような主張を繰り返しています)

天然自然で、有機栽培していれば、ナマで食べても健康に良いと信じている野菜が、放射線や発がん性物質を使って改良された非天然の植物だなど、セレブを気取っている人などにとっては受け入れることはできないしょうけど、この現実はきちんと見つめないといけません。

そして、遺伝子組換え食品が恐ろしいと思う気持ちがあるのなら、もっと恐ろしがる事実を受け容れないといけません。
それは、遺伝子組換え技術を使った場合は、導入するあるいは削除する遺伝子があらかじめわかっていますから、安全性試験を行う方法があり、実際徹底した安全性試験が行われており、そもそもこのような作物を作るためには膨大な申請書を書き、要所要所で膨大な検査を行って報告書を書かないといけないのですが(日本の場合、監督省庁が複数あり、文科省、農水省、厚労省、環境省などそれぞれに申請、報告しないといけない)、先にのべた放射線や発がん性物質を使う場合、そもそもそれを使って品種改良するために申請する必要はなく、どの遺伝子がどの程度どのように変化したなどわかりませんから、安全性試験を行うことはできませんので、安全性試験を全くやらずに毎年政府の監視も規制も受けずに多くの品種が開発され、多くの品種の試験栽培がなされ、そして、多くの品種が実際にスーパーに並んでいます。

このことは、このブログで何度も繰り返し書き、「やさしいバイオテクノロジー」にも書きましたが、これは私が勝手にいっているわけではなく、この本でも多くのページを割いて、要所要所に書かれています。

この本の素晴らしいことは、具体的なデータが豊富なことです。
これらのデータを載せるためには、徹底して調べ上げないといけないことから、かなり大変な作業になるのですけど、この本ではそれをやってのけています。
なので、実際に何が起こっているのか、何がなされているのか知ることができます。




遺伝子やDNAなどの基本用語の解説、野生種と栽培種の具体的な事例や、人類が行ってきた膨大な品種改良歴史など、理解するのに必要な情報がきちんとまとめられています。


「種(しゅ)の壁を越えるのはけしからん」という意見がよく出てきます。
その場合「種」とは何か、「壁」とは何なのか、超えているのは何なのか、これらを理解するには、生物学の基本を理解する必要が出てきます。
いまだに多くの「組み換え」派がこの壁を持ち出して批判しているわけですが、この批判が的外れであるとこは明らかで、私もくどいですけど「やさしいバイオテクノロジー」で多くのページを割いて説明しています。

少なくとも遺伝子とゲノムの違いが理解しないことには始まりません。
これは重要なポイントでもありますから、この本でもメンデルの法則まで持ち出し、遺伝子の性質や役割まで詳細に説明することで、解説してあります。




ここまで来て、やっと遺伝子組換え技術そのものの理解に進めます。
特定の技術を話題にしているわけですから、技術そのものの理解は必須です。
なので、ここでも、遺伝子組換え技術に限らずあらゆる品種改良技術に対してかなり突っ込んだ説明がなされています。

ここまでの基本的な理解があってはじめて、安全性や環境への影響の話に移れるわけです。

多くの陰謀本がなぜ陰謀本に留まっているのかは、ここまでの話がすっぽり抜け落ちていますし、書いている人もまるっきり理解していないからでしょう。
反対したい人は反対することは自由ですけど、少なくとも基本は抑え、事実は事実として認識しておかなければ、話はかみ合いません。

反対本や陰謀本に読む価値がなく、突っ込みを入れることで楽しむしか利用価値がないのは、ここまでの話に誤解があったり理解不足が見られるからで、社会的なタメになりそうな話があったとしても、技術的、科学的な話の段階で頓挫してしまっているからです。




基本の話で本書の半分を費やされていて、後半は安全性などの話です。
普通の食品に遺伝子が入っていないと誤解している人が65%もいるとのアンケート結果など巧みに利用しながら、遺伝子やDNAの理解の重要性を説き、さらには、陰謀本作家が好む「実質的同等性」の陰謀話も、きちんと解き明かしてあります。
○「黙示」を読んで
http://yoshibero.at.webry.info/201304/article_14.html

遺伝子組換え技術に問題点は全くなく安全だ、とはもちろん言えませんから、どこが問題になるのか、どうすれば問題点があぶり出せるのかを知ることも重要です。

さらには、陰謀本で好まれる「毒ジャガイモ事件」など誤解も、かなりの字数を費やして解説してあります。
劣悪な陰謀本の中には、アレルギーになるからダメだの一点だけで、あれこれ陰謀話を展開するのもあります。
これには、そもそもアレルギーとは何か、どうしてアレルギーになるのか、これまた基本の理解がないといけませんから、ここでも突っ込んだ解説がなされています。
そうした上で、「スターリンク事件」の真相を明らかにしています。




環境への影響も問題になります。
陰謀本の作家にとって、有機無農薬栽培は神聖視されています。
天然自然が絶対だとの天然信仰もあります。
これをこの本ではバッサリと切り捨てています。

日本ではあまり取り上げられることはありませんが、不耕起栽培の話題も持続可能な農業にとって重要なポイントであること、それに対して遺伝子組換え品種がどのように貢献できるかも、懇切丁寧に解説してあります。

日本では水田による稲作が盛んなため、今一つ実感が湧きにくいわけですが、不耕起栽培を含む保全耕起農法に対する遺伝子組換え品種の貢献は絶大です。
無農薬の有機栽培で天然種子を使う農法だけが絶対だという人たちには、にわかには受け入れがたいことでしょうが、これもきちんと理解しておくべき事実でしょう。

生物多様性に対する誤解も多い。この点もきちんと解説してあります。

狭い意味での遺伝子組換え技術の開発は終わったわけではありませんから、まだまだ改良された新しい技術が出てくるでしょう。
どんな技術が出てこようと、陰謀論や信仰だけで対処するのではなく、
きちんとした基礎知識と科学的思考の訓練さえあれば、
対処できるはずです。

しかし、口で言うのは簡単でもこれを実践するのはなかなか難しい。
時間もないし、そもそもその根気があるかどうかも怪しい。

難しいからといって、何もしないのも個人レベルではありでしょう。
しかし、行政機関や発言に影響力のある人が、
あいまいで間違った理解のまま誤解の種をまき散らすのは
害があるだけです。
そのような例の本を、この後このブログで紹介していきますが、
著者らも最後のまとめの章で、辛辣に語っています。

私は、その通りだ、と思ったのですが、
この本の訳者はこの部分にいちゃもんを付けています。
どちらがまっとな意見かも、それぞれが判断することでしょう。
ただし、本をよく読んで著者の主張をよく吟味してからにしないと、
恥ずかしい思いをする羽目になります。

解説の部分から引用します。
「科学的な問題に絡む政策を策定するときに、世間に左右されやすくなった政府」は「問題を悪化させている」という意見を持つ、アメリカ食品医薬品局(FDA)職員のヘンリー・ミラー氏の言葉を引用しているカ所があります。

あいまいで複雑な技術的な問題に関して、(新聞広告で募集された)非専門家である市民グループから、技術的な勧告を受けることは、心臓病の病院からカフェに行き、ウェイトレスに自分の胸の痛みの治療法について説明し、血管形成手術と薬の服用のどちらにすべきか、尋ねるようなものだ

著者は、ミラー氏の言葉を引用し、「たとえ、聡明で探究的な頭脳の持ち主でが「あらゆる主張を聞いた」としても、そのテーマの教育を受けていないのなら、やはり混乱するだけでしょう」と述べています。
しかし、市民一人一人が勉強し、自らの意見を持つことは意味がないというのでは、この本を読む意味も見いだせません。


ちなみに訳者が言う「自らの意見を持つことは意味がない」ということを
著者らは言っていません。

画像


最近賑わしている「憲法改正論議」でも同じことが言えるかもしれません。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
驚いた 驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

関連リンク集

「食卓のメンデル」を読んで 遺伝子組換え技術解説の決定版 やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる