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zoom RSS 「黙示」を読んで

<<   作成日時 : 2013/04/27 02:35   >>

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農薬やら遺伝子組換えやらが登場する小説です。
職業の異なる3人のメイン登場人物が農薬や遺伝子組換え作物などのの農業の話題で複雑に絡み合います。
農薬、遺伝子組換え作物以外にTPPや植物工場、食料自給率など食に関する話題がてんこ盛りです。
初出は2011年12月〜2012年10月までの連載小説です。
あの大震災のあとですから、「放射能汚染」も話題になります。
キャラクターがわかりやすいため、読みやすいし、周辺の話題を
よく調べられていると思います。
著者は「ハゲタカファンド」の「ハゲタカ」で著名だそうです。
私は未読。

黙示
新潮社
真山 仁

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戦場カメラマンだったのに養蜂家になった男、
農薬会社の農薬研究・開発部門のリーダーの男、
農林水産省の若きキャリアの女、
がメインの登場人物で、それぞれ独立していながら、
複雑に絡み合います。

これらの登場人物は、農薬や食の安全について、専門家であったり、
熟慮している人であったり、科学的、論理的に考える人達として
登場しています。

農薬の定義、毒物劇物の定義、無農薬栽培の問題点など、
よく考えて書かれています。
この点、安心して読むことができます。


一方で、テレビのワイドショーやネットの情報を聞きかじっただけで
知ったつもりになる困った人達も登場します。
農薬会社の人であっても、農薬知識や考え方がテレビのワイドショー並の人も出てきます。

こういった人達は、現実の世界でも小説でも、自分たちの考え方が根本的に間違っていることに気がつくことはなく、事実を指摘されても聞く耳を持ちませんし、勝手な行動で必ずトラブルを起こします。
物語的には、もっとハチャメチャなトラブルを起こして欲しかった。
意外とおとなしい。
最後まで誤解したままというのはちょっと悲しいのですけど、
ほんのちょっとでも考え直すそぶりぐらいは見せても良かったかも。

さらには、マスコミの傲慢さ、無知な政治家の横暴さも、
痛快に切って捨ててています。
「使い捨ての傲慢政治家」なんて、小説のキャラでありながら、
実際いそうで怖い。
(明らかなモデルがいる。「人を不愉快にさせる天才」)
こちらも、救いようのない人のまま終わります。

いろんな立場の人を登場させることで、食に関する健全な立場を提示しようとする著者の意気込みが感じられます。




農薬関係では「ネオニコチノイド」が出てきます。
懐かしい言葉です。
一時期流行し、私もいろんな本を集め、読みました。
画像

(この小説の最後に参考文献の一覧があります)
(上の写真の中の3冊が参考文献になっています)
一昔前、ミツバチが消えたと話題になりました。
アメリカの事情も大々的に報じられました。
少なくとも、日本ではネオニコチノイド系農薬が犯人扱いされました。

結局この問題がどうなったのか知りませんけど、
少なくとも「美味しんぼ」であおったほどには問題になっていなさそう。


美味しんぼ 105 (ビッグコミックス)
小学館
2010-10-29
雁屋 哲

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(この本には「ネオニコチノイド」の他に「遺伝子組み換え」食品や
 低温殺菌牛乳に関するユニークな話題が描かれています。
 ○美味しんぼと遺伝子組換え その4
 http://yoshibero.at.webry.info/201010/article_61.html

「黙示」では、この農薬に被害を受けた(と称する人も)側(ネオニコチノイド全面禁止を訴える活動家も)と開発した側の人が登場します。
「美味しんぼ」と違って、自制の効いた書き方で、単に農薬を悪者にはしていません。
全体的に善悪二元論も切って捨てていますから、農薬のメリットも説明しながら、自制しつつ問題提起しています。




改革派? と思われる農水省のお役人が何人か出てきます。
もちろん、農薬会社と同様、どちらも旧態依然とした人たちも。

いかにもなぁ、という役回りですけど、小説の中では非常にわかりやすい立場を取っていますので、キャラクターとしてはなじみやすい。

日本には耕作放棄地がたくさんあります。減反もやめていません。
この土地をどうするか、大胆な提案もでてきます。




途中から「遺伝子組み換え」の話になります。
そう、この本は組換え本です。

「遺伝子組み換え」という言葉そのものは、p77が初出で、以降「遺伝子組み換え」はチラホラ出てくる程度で、多くはGMOで通しています。

遺伝子組換え作物に関する社会的な記述は、
自制しつつ正確に書かれている印象です。
穀物としての農作物がどの程度日本に入ってきているのか、
そのなかに遺伝子組換え作物はどの程度なのか、
どんな用途に遺伝子組換え作物が使われているのか、
小説の進行に合わせて、さりげなく書かれています。

メインの遺伝子組換え作物がなぜトウモロコシ、ダイズ、ナタネなのか、
小麦や米の遺伝子組換え作物が(アメリカでも)なぜ広がらないのか、
そういったレクチャーも出てきます。

遺伝子組換え作物の種を売っている会社も登場するわけですが、
その会社の扱い方は、物語の根幹部分でもありますので、
感想は控えます。

日本の食料自給率(小説では食糧自給率)は約40%だとよく言われますが、これはカロリーべース。
重量や金額ベースだとこの数字が大きくなります。
40%と小さな数字になっている原因のひとつに、家畜などの飼料を
全面的に輸入に頼っている事情もあります。
なので、「日本の食の半分以上を輸入にたよっている」という表現は、
あまり実態を表していません。




遺伝子組換え技術について、少しだけ残念なことがあります。
(これはストーリーに関係ないと思いますので、引用します)
(それに、些細なことですので、これでこの小説が駄目だというわけでもない)

この分野の専門家である研究者による説明の部分です。
DNAの99.9パーセントは胃液で分解されるため、GMOの食品が人体に影響を及ぼすとは考えにくい
言いたいことはわかるんですが、食品中のDNAが食べることで分解されることと、食の安全とは直接関係ありません。

この辺があやふやなので、
タンパク質の毒性というのは、何ですか。胃液で99.9パーセンは分解されると言ってましたよね(農水省の若きキャリア官僚)
導入遺伝子として、本来植物で生産されるはずのない毒素タンパク質を作るようにプログラムする場合があります。それ自体は、ターゲットとなる害虫にだけ効くものを使いますが、そのタンパク質が、目的以外の昆虫や微生物にどのような影響を与えるのかは、実は未知数です(農水省の研究者)
会話がかみあっていません。どこかから切り貼りしたんだろうか?

一般に、この辺が理解しにくいところだと思います。

「実質的同等性」について。
これも、このブログで何度も取り上げています。
GMOが既存の作物と実質的に同等であれば、安全だという概念ですよね
これは、農水省の若きキャリアの発言。ワイドショーを聞きかじっただけの主婦として登場する狂言回しと同じレベル。高級官僚よぉ、これでいいのか?

これに対し、研究者は大きくうなずき、
もう少し厳密い言うと、GMOの導入遺伝子の特性が明白であり、食品成分が従来品から変化していなければ、実質的に同等な安全性を持つ、という考え方です
と返します。
わかったようなわからないような表現だった。
という地の文で終わります。

研究者が答えるのが面倒なのか本当に知らないのかわかりませんが、
これでは答えになっていません(これも切り貼りか?)。
うなずいている場合ではありません。
上記の引用の後、大切な説明が抜け落ちています。
そもそも、キャリア女性が明らかに間違っているわけですから、
研究者は訂正すべきところです。補足じゃありません。


次の2冊の本が参考文献のリストにあります。
これらの本にも「実質的同等性」について解説しているのですけど、
すこし難しいかも。
画像


(最近、もっと読みやすくタメになる本が出ていますので、
 そのうち紹介します)


「実質的同等性」の説明は次の引用がわかりやすい。

○トンデモさん、またやりました クローン技術・遺伝子組換えなど
http://yoshibero.at.webry.info/201204/article_5.html


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