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zoom RSS 暴走するバイオテクノロジー

<<   作成日時 : 2012/09/05 23:03   >>

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「暴走するバイオテクノロジー」(金曜日)
ちょっと古くなりましたが、直前に遺伝子組換えネタが出ましたので、
この本を取り上げます。
帯には「科学は人類を裏切るのか」と扇動的で、
「生命操作」は「制御できない技術」で「第二の原発」との位置づけ。
帯は扇動的ですけど、今までのような勢いが感じられないのが残念。
あれこれ盛り込みすぎなので、焦点が絞りにくい。
遺伝子組換え技術の話がメインです。

暴走するバイオテクノロジー
金曜日
天笠 啓祐

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10章からなり、10の話題が取り上げられています。
話が独立しているので、好きなところから読めば良い。

人間がらみは1、2、9、10章。

1章はiPS細胞などの幹細胞研究を取り上げています。
すでに三次元の再生臓器ができているような勢いで書かれています。
○この一冊でiPS細胞が全部わかる トーチウッド人類不滅の日
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_15.html

2章は遺伝子治療に関連して、遺伝子ドーピングの話題。
すでに取り上げましたが、いずれも現在生きている人間に施すのがメインの技術ですから、実現は難しそうで、実現しても獲得形質となりますから、遺伝しないという点ではそれほど問題にはならないでしょう。
○黒人アスリートはなぜ強いのか? 金メダル遺伝子を探せ! 人種とスポーツ
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_2.html
○金メダルか死か、「遺伝子組み換えアスリート」の実現性
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_1.html

9章は体細胞クローン技術にからんだ捏造事件をネタに、いろんな陰謀説が取り上げられています。

10章は「DNA鑑定」の話。冤罪になった例などを取り上げ、この技術は未熟だとの指摘。
DNA型鑑定技術そのものの問題点を指摘していますが、技術は進歩しています。
古い技術と新しい技術の問題点の指摘のしかたに混乱が見られます。意図的かもしれませんが。
この話題で問題なのは技術そのものより、鑑定するサンプルの調達方法。容疑者のものだと思っていて捜査員のDNAを採取したのでは正しい鑑定が得られないのは当然です。
○化石の分子生物学 現在生きている全ての生物は進化の産物であり、なれの果てだ
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_16.html

DNA情報のデータベース化も懸念しています。
前科者の情報は蓄積されているようです。

少し前、目薬の入れ物に入れた体液を通りすがりの若い女性の衣類にかけるという事件がありました(2012年08月30日各紙)。その体液から「DNA型鑑定」により容疑者が簡単に割れました。前科者だったので。

この本ではネガティブな話ばかり取り上げられていますけど、この技術によって解決した事件、救われた人も多くいます。

この分野でわかりやすいのは次の本。
この分野の専門家によりおもしろおかしく書かれています。



本質的な問題ではありませんが、1点だけ奇妙なことがあります。
この本は「DNA型鑑定」の本です。本の中でもこの言葉の解説があり、「DNA鑑定」ではないことが書いてあります(p77)。
ところが、本のタイトルは「DNA鑑定」。なんでやねん。
本文は一貫して「DNA型鑑定」で通しています。
これは著者の思い入れもあると思います。
私の本でもそう書いています。

タイトルでは編集者に負けたのか、と憶測するのもおもしろい。


そもそも「DNA鑑定は”嘘”をつく」というタイトル自身も扇動的で誤解を生みやすい。このタイトルだと”嘘”というのはDNA型鑑定技術自身が未熟だという意味に取れてしまいます。
タイトルと同じ節が先の引用カ所のすぐ後に出てくるのですけど、もちろんそんな話ではありません。




遺伝子組換え作物の話題は少ない。
遺伝子組換え作物は危険なものとの考えが固定化されたからか、
世間の関心も薄れてきている印象。

発売中の「東洋経済」(9月8日号)は『「貧食」の時代』の特集を組んでいます。食がテーマですけど、遺伝子組換えネタは小さな囲み記事1本だけです。
「あなたも食べている遺伝子組み換え作物」

当たり障りのない話題だけ。今回取り上げた本の著者も登場します。

週刊 東洋経済 2012年 9/8号 [雑誌]
東洋経済新報社
2012-09-03

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「健康食品」のコーナーがおもしろい。
「酵素」の話がチラッと出てくるのですけど、専門家の方は「コラーゲン」のおかしさと同じようなことを話していますから、勘違いしているのかも。
おそらく「酵素」がどんな理由で売られているのかご存じないのでしょう。

あと、美肌をウリにする社員食堂の記事で、何のためらいもなく
「コラーゲン」が出てきたのには笑わせてもらった。




3章は遺伝子組換え鮭。魚の話題で、コンパクトにまとめてあります。
先の東洋経済の記事にもちょこっと出てきます。
心配な人にとっては確かに心配でしょう。

4章は体細胞クローン技術。
これは純粋に技術の問題なので、障壁があってもそのうち解決するでしょう。著者はこの技術は、ものにならないと言っています。

5章は花の遺伝子組換え。青いカーネーションやバラだけでなく、多くの遺伝子組換えの花卉が開発されています。多くは花の色を変えるもの。
例によって警鐘を鳴らすのですが、ちょっとピント外れも(というか本書全体がそうなんだけど)。

遺伝子組み換え花で懸念されるのは、交雑の範囲が広いことである。ユリカは、植物においてイネ科、ラン科に次いで大きな科である。カーネーションはナデシコ科で、野生植物が多い。バラ科にはナシ、リンゴ、ビワなどの果実もある。徐々に交雑の範囲が広がり、いったん種の壁を越え拡がり始めると、やがて科全体にまで汚染が及ぶ可能性もあり得る

著者はもう何十年もこの問題を取り上げておられるのに、あまり進歩がなさそうです。
ゲノムと遺伝子の違いを早く理解して下さいね。
とりあえず、このレベルの本です。

まぁ、あり得る「可能性」だから、何言ってもいいのかな?

この手の人たちは「汚染」が大好きです。
ただし、何が汚物で、なぜ汚物で、どうやって汚染が拡大するのか、
一切語りません。

この後、遺伝子組み換え技術にかんする陰謀臭い話が続きます。

つねに新しい話題を提供してくれるという点で(その解説はともかくとして)、著者の本は大変有用です。


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ノーベル賞医学・生理学賞にiPS細胞の山中伸弥先生 おめでとうございます
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を世界で初めて作った山中先生が2012年のノーベル医学生理学賞を受賞されました。おめでたい話です。 すこし遅かった気がしますけどね。 iPS細胞はそれまでほとんどの人が不可能だと思っていたことができたという点で、独創的に画期的な方法を見つけるというノーベル賞の趣旨に最もふさわしい内容です。 ...続きを見る
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2012/10/08 19:16

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