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zoom RSS 遺伝子組換食品は臓器の機能を変えてしまう You Tube

<<   作成日時 : 2012/09/04 02:32   >>

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ブログの読者からおもしろい情報を提供していただきました。
遺伝子組換え食品が危険だという「科学的事実」を紹介する動画です。
一応、今年発行の論文を引用しており、最新科学の成果だそうです。
遺伝子組換え食品を食べれば食べるほど人間でなくなっていき、人間が殺虫剤製造工場になってしまうそうです。ワオ!
http://www.youtube.com/watch?v=aBXQKbGmqSU
画像


事情を知らない人が見れば、怖いと思うかもしれません、
論文を根拠に誠実そうなおじさんが自信を持ってしゃぺっているし。
しかも英語の論文だから、日本人にとっては敷居が高いし。

しかし、これはニセ科学のデパートのようなものです。
科学的に考えるとはどういうことかを学ぶ上で重要なポイントがてんこ盛りなので、いい教材になりそうです。
過去にトンデモさんが遺伝子組換え食品を攻撃したことにたいする反論集のようなものがあるのですけど、それを適用するだけでこのビデオの論理(?)は全て破綻します。
つまり、使い古された反論集で事足り、目新しい内容はありません。




Natural News という組織によるニュース解説です。
どんな団体なのか知りません。

ある論文を引っ張ってきます。
登場するキャスター(?)は、とりあえず論文の要約部分とイントロ部分の一部を読み上げます。
なので、少なくともその部分は読んでいるんでしょうが、その意味を全く理解していません。
この論文をネタに、トンデモ解説をするわけですが、トンデモ説を入れ知恵する人が他にいるのかもしれません。

例によって、この手の人たちにとってモンサント社は敵でしょうから、それなりに攻撃します。
インチキモンサントは「遺伝子組換え食品は安全だと推定される」と言っています。
「安全と推定される」であって「安全だと証明されている」と言っていない。
他にも楽しいツッコミしています。

さて、問題の論文ですが、「遺伝子組換え食品を食べるとあなたの臓器の機能を変更するかもしれない」という報告なんだそうです。

まず、論文のタイトルなどから、この論文の解説です。
miRNAsの説明を一所懸命にしてくれます。
miRNAsは情報で食料から消化を通して血液に入り、臓器にとりつくそうです。
そして、その情報は臓器の機能や発現を組換えるなど、なにやら悪いことをするらしい。
それは最先端科学であって、モンサントの主張を無効にするものだそうです。

この最先端科学によれば、我々が食品を食べるということは、いろんな栄養素と一緒に情報も食べていることになるそうです。

我々は実はDNAやRNAをという情報を食べていたんだ!

遺伝子組換え食品を通じてmiRNAsを食べるということは、情報を食べていることになり、その情報により不妊などの悪影響を受けているかもしれない。
miRNAsは臓器や器官にとりつき、その正常な発現機能を変更させることができるから。




ここで、論文の Abstract の一部を引用するわけですが、(翻訳の一部が変ですけど)とりあえず、そのまま読んでいます。
ところが、変な方向へ解説が飛びます。次のように完全に妄想です。

捕食者が獲物を摂取するということは、獲物から捕食者への情報の転送がある。
あなたと、あなたが消費したその動物もしくは植物が一つになるのだ。
これは生化学的な事実だ。

遺伝子組換え食品は邪悪な科学者が作った邪悪な存在で、それを食べるとその悪い情報を食べることになる。なぜなら、自然な情報ではないから。


さらに、論文の Abstract の最後の結論部分を引用しています。
そのまま読んでいますけど、その後の解釈が、またおもしろい。

そこに書いてあるのは、冒頭の繰り返しですけど(重要なこと)、
遺伝子組換え食品を食べると、食べた人の臓器の発現を変更させられてしまう、という意味なんだそうです。


次にIntroduction の引用。
miRNAsの種々の機能が書いてある部分です。それ自体は普通。
ところが、これも次のように妄想につながります。

あなたの体に癌を引き起こすことができる食品から情報を吸収していることになる。
遺伝子組換え食品を消費すればするほど、あなたは段々人間ではなくなっていくのです。
情報を摂取することで人間でなくなっていき、自然でもなくなっていくのです。

論文にはそんなことどこにも書いてありません。
完全な作り話です。妄想です。

さらに論文の解説は続きますが、指先がおかしくなりそうなので、省略。




次に具体的な話へ。
BTトウモロコシが登場します。
BTとは殺虫剤の化学物質を生成するもので、この殺虫剤は神経学的損傷を引き起こすことによって虫を殺すんだそうです。ワオ!

このBTトウモロコシを食べることによって、自分の体の中で殺虫剤を生成するようにコード化され、プログラムされた人になるかもしれないのです。へぇ!

miRNAsとはトウモロコシの中にある神経学的損傷を与える殺虫剤を生成するためのコードであり、消化を通過でき、あなたの血液に入り込むことができ、おそらくあなたの体の中のさまざまな臓器にとりつく可能性さえある。
さらには、腸内の細菌に取り込まれあなたの腸内で殺虫剤を生成しはじめる可能性がある。
あなた自身が毒素を生成しはじめる。つまり、あなたは殺虫剤工場になりえる。
食べれば食べるほど人間ではなくなっていく。
これは生物学的遺伝的事実なのです。

この科学的事実をもって、モンサントを再び攻撃します。
(かわいそうなモンサント)






さて、ここまで読んでみて、あるいはビデオを見て、もうお気づきとは思いますが、念のためちょっと突っ込みを入れます。

まず、モンサントの話ですけど、
「遺伝子組換え食品は安全だと推定される」と「推定される」であって「証明されている」と言っていないといちゃもんつけています。
しかし、どんな技術にもいえることですけど、安全は完全に証明することはできません。
なので、「安全は完全に証明された」とか「100%安全です」といえば、それはウソになります。
もし科学者や技術者がそう言えば、科学者や技術者失格です。それでも言い張るのならニセモノです。

いえるのは、
あらゆる可能性を考慮し、可能なかぎり検証したところ、積極的に危険であるという合理的な証拠は現在まで見いだされていない。




まず、問題の論文ですけど、画面にしっかり映っていますから、探すのは簡単です。

Zhang, L., et al., Exogenous plant MIR168a specifically targets mammalian LDLRAP1: evidence of cross-kingdom regulation by microRNA. Cell Res., 22, 107-126 (2012).

タイトルからもわかるように、ある一つのmiRNAsの話です。肝心の遺伝子組換え食品の話は出てきません。
書いてあるのは、食品由来のmiRNAs が食べた動物やヒトの血漿などに取り込まれ、この外因性のmiRNAsは意外なことに安定で、このmiRNAsによって肝臓における一つの遺伝子(LDLRAP1)の発現(遺伝子が転写・翻訳されてタンパク質が合成)を阻害したという話です。


Introduction のはじめに重要なことが書いてあります(ビデオにちゃんと映っています)。キャスターはここをスルーしています。

MicroRNAa(みRNAs), a class of 19-24 nucleotide long non-coding RNAs ・・・

つまり、miRNAsは20塩基程度の小さなヌクレオチドで、タンパク質のアミノ酸配列をコードしているわけではありません。これは重要なポイントです。キャスターはここを理解していません。

まず基本から。
miRNAsは上記のように非常に小さい1本鎖のヌクレオチドです。小さいけれども、相補的な1本鎖mRNAとくっつき、そのmRNAによる翻訳を阻害することがあります。

miRNAsは小さいとはいえ、20塩基ほどありますから、例えばランダムに20塩基の配列(やその相補鎖配列)を紙に書いたとして、それと全く同じ配列がヒトゲノムにあるかというと、確率上でてきません。それくらいの長さです。

miRNAsがmRNAにとりつくとは言っても、miRNAsがどんな配列でもいいわけではなく、ある特殊な配列でないと機能しません。mRNAとmiRNAsの間にはある程度の特異性があります。

論文に書いてあるのはある特殊なmiRNAsを材料としていて、そのターゲットとなるmRNAももちろん決まっています。決まっていないと調べるのが大変ですから。
この論文でおもしろいのは、植物由来のmiRNAsが動物の特定のmRNAに作用し、その発現を阻害するというのがわかったというところです。
そのmiRNAsの由来が植物の食品であって、経口摂取により本来なら分解されるところが吸収されていたという点も(ホントかどうかわかりませんが)おもしろい。

ただ、それだけの話です。
遺伝子組換え食品は出てきません。
miRNAsとmRNAがランダムに相互作用するという話でもありません。

繰り返しますが、
食品由来のmRNAsが本当に動物の組織の中に取り込まれ、細胞の中に入り込み、遺伝子の発現に影響を与えているのなら、これはおもしろい現象でしょうが、調べられたのは、ある一つのmiRNAsであって、ターゲットとなった遺伝子もある一つの遺伝子だけです。




出演者がこの論文と遺伝子組換え食品がどう関係があるかと思ったのかわかりませんが、食品の植物由来のmiRNAsが取り込まれるのだとしても、それにはたくさんの種類がありますから、遺伝子組換えであろうと、この人達があがめているオーガニック食品由来であろうと、関係ありません。

もし心配なのなら、むしろオーガニック植物に含まれる多数のmiRNAsを心配すれば良いと思うのですけど、その心配はしていないようです。

オーガニック植物由来のmiRNAsが体内に取り込まれ、あなたがあなたでなくなり、あなたがオーガニック植物と一体化し、臓器不全を起こしてしまいますよ、と。

どうやら理由は不明ですが、人工的な遺伝子組換え食品だけが邪悪な情報を持っているらしい。




後半のBTトウモロコシの話はいろんな意味で興味深い。

まず基本。BT毒素は神経毒素ではありません。
そっちの業界ではそういうことになっているのかもしれませんが、実際に栽培され市販されているBT剤とは違うものです。
他の殺虫剤と混同しているのでしょう。

さらに、殺虫剤に対して過剰反応しすぎです。

このキャスターの理論だと次のように要約できます。

BTトウモロコシからmiRNAsを介して殺虫剤としての情報が腸内細菌に移動する。
その結果、BTトウモロコシを食べた人が殺虫剤工場になる。

まず、BTトウモロコシはタンパク質であるBTトキシンの遺伝子を導入して作られています。この遺伝子の遺伝情報からBTタンパク質は作られます。
これを食べた人間の腸内細菌でBTタンパク質を作るようになるためには、腸内細菌はBTトキシン遺伝子を持っていませんから、BTトキシンタンパク質の遺伝子がトウモロコシから腸内細菌へ移行する必要があります。


これはほとんどありえません。
遺伝子組換えに使う遺伝子は数千から数万のヌクレオチドを持ち、これがトウモロコシゲノムに挿入されています。
トウモロコシを食べると、BTトキシン遺伝子を含む全てのトウモロコシ遺伝子は消化管で分解され短くなったりずたずたになったりします。
もし切れずに残ったとしても、BTトキシン遺伝子は数万ある遺伝子のうちの一つに過ぎず、それが腸内細菌に移行するのであれば、他の数万ある遺伝子も腸内細菌に移行してしまいます。

ここではそういう話で殺虫剤工場人間になるといいっているわけではありません。
miRNAsの話です。

miRNAsを介して情報が移行するという話ですが、仮にBTトキシン遺伝子に作用するmiRNAsがあったとして、それが食べた人に吸収されたとして、それが腸内細菌に移ったとしても、腸内細菌にはそれが作用するmRNAがありませんから、何も影響を受けません。
miRNAsはIntroduction の最初に書いてあったように、20塩基ぐらいの非コード配列です。そのmiRNAsにBTトキシンタンパク質を作る情報は書いてありません。

そもそも、BTトウモロコシにはBTトキシン遺伝子が組み込まれていますが、このトウモロコシがこの遺伝子のmRNAに作用するようなmiRNAsを作るという話も出てきません。
それがないと、そもそもmiRNAsとしての作用云々ができません。
もちろん、先に見たように、仮にあったとしても、植物細胞の中では何らかの影響があり得たとしても、その遺伝子を持っていない腸内細菌にとっては無害です。

そもそも、植物由来のmiRNAsが食べた人間の消化管を通り抜けて、血液中に入り、肝臓細胞にまで到達し、その細胞内での遺伝子発現に影響を与えるという話でした。
遺伝子組換え食品の影響があると無理やり話をこしらえて、殺虫剤工場人間になるとまで脅したいのであれば、どうせトンデモ話なのだから、食べたmiRNAsが直接人間の細胞に入り、殺虫剤工場になると言えばいいのに。
(そう言っているつもりなのかもしれませんが、それらしい話から細菌の話へ飛ぶのでわかりにくい)
なんで間に細菌を入れたんだろう?




食品由来のmiRNAsが肝細胞にまで取り込まれたとしても、実際に肝細胞の機能障害に結びつくためには、ある程度のmiRNAsの量が必要なはずです。
意外なほどmiRNAsが安定であったという結果も報告していますけど、そうであっても、多くの肝細胞に特定の遺伝子の発現を抑制するためには、miRNAsがある程度蓄積しないといけないはずです。

mRNAは次々と作られています。
取り込まれたmiRNAsは細胞の中で増えるわけではありません。
増やそうと思えば、新規供給が必要で、また食べないといけません。

食品由来のmRNAsが肝細胞に取り込まれたとしても、その時に取り込まれた分の影響が一次的に出るだけで、細胞内で分解されてしまうと、消えてしまいます。
miRNAsが機能するのは、それをつくる細胞とmRNAをつくる細胞が同じだからです。




このように、前半の情報(miRNAs)の話と後半のトウモロコシの話でつながりがありません。
もちろんそれぞれがトンデモ話なのですけど、それを結びつけるところでも失敗しています。
論理の自己矛盾に気がついていないところも悲しい。


どうしてもこの論文と遺伝子組換え食品とが関係しているといいたいのであれば、この論文に登場するmiRNAsをつくるように遺伝子組換えを行い、それを食べたら危険だよ、という話ならできます。
でも、そんなのつくる人いませんから、ナンセンスですよね。

過去にレクチンという動物や人間に害になる遺伝子を入れたジャガイモをラットが食べたらおかしなった、というトンデモ話がありましたけど、それと同じで、害になる遺伝子を入れたら害になる作物ができましたというだけの話で、遺伝子組換え技術の本質的な危険性とは関係ありません。

初めから売れないとわかっているものを作る人はいません。
毒をもつ食材を作りたいのなら、もっと簡単でストレートな方法があります。




この手のトンデモ情報には「科学的」という言葉が多用されます。生化学的とか遺伝学的とかいろんな言葉に置き換えていますが、この手の言葉を数えてみるのもおもしろいかもしれません。
過剰に使っているなと思えるものは一般的にニセ科学です。
本物なら、淡々と説明すればいいだけで、なにも科学的だ、事実だと強調する必要がありません。
やましいことがあればあるほど、「科学」を強調する傾向があります。




何度も書いていることですけど、ニセ科学を見抜く基本は

1. 基本を理解する
2. 比較検討してみる

の2つです。

1. はコツコツ勉強するしかない。王道はありません。
2. は簡単です。ターゲットの話が普遍なのか個別なのか、特殊なのか汎用なのか、他に例はないのか。次々と問えばいいわけです。健全な懐疑主義をとり、単純に信じない。


ここに書いた考え方は次の本にも書いてあります。





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