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zoom RSS 「怪異考」「化物の進化」 寺田寅彦随筆選集

<<   作成日時 : 2012/09/12 02:11   >>

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先のエントリーで時数制限のため書けなかった続きです。
○怪異 妖怪 神隠し 「妖怪文化入門」
http://yoshibero.at.webry.info/201209/article_13.html
これまでに、死後の世界や霊魂の不滅を進化心理学や脳科学で考える過程で「神隠し」が出てきました。「神隠し」に登場する装置が「妖怪」の一種なので、「妖怪学」の入門を紹介しました。
今回、少し毛色が違いますが、妖怪の話を読んでいると、ときおり登場する寺田寅彦の随筆です。
彼は物理学者というより随筆家としての方が有名で、「怪異考」(昭和2年・1927年)、「化け物の進化」(昭和4年・1929年)を書いており、最近文庫化されました(2012年08月刊)。

怪異考/化物の進化 - 寺田寅彦随筆選集 (中公文庫)
中央公論新社
2012-08-23
寺田 寅彦

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怪異に関連した随筆を小さな文庫にまとめられた本で、大変お買い得感のある本です。
書かれた年からわかるように、井上円了より後で、柳田國男の「妖怪談義」より前の随筆です。
○怪異 妖怪 神隠し 「妖怪文化入門」
http://yoshibero.at.webry.info/201209/article_13.html

井上円了の妖怪退治が進んでいる時代ですが、物理学者としてその世俗化された流れに同調するのではなく(円了の妖怪学自身を批判しているわけではないと思う)、次のように警鐘を鳴らしているところがおもしろい。

江馬努は歴史学から妖怪の復権を唱えていますが、寺田寅彦は物理学者として通俗科学で退治されている妖怪の復権を唱えています。

すなわち科学者としての体験を持たないジャーナリストによる通俗科学を批判した後、
皮相的科学教育が普及した結果として、あらゆる化物どもは函嶺(はこね)はもちろん日本の国境から追放された。あらゆる化物に関する貴重な「事実」をすべて迷信という言葉で抹殺する事がすなわち科学の目的であり手柄であるかのような誤解を生ずるようになった。これこそ「科学に対する迷信」でなくて何であろう。科学の目的は実に化物を捜し出すことなのである。この世界がいかに多くの化物によって充たされているかを教える事である

古人の書き残した多くの化物の記録は、昔の人に不思議と思われた事実の記録と見る事が出来る。今日の意味での科学的事実では到底あり得ない事はもちろんであるが、しかしそれらの記録の中から今日の科学的事実を掘り出し得る見込みのある事はたしかである」(p20)

それが何か、具体的に提示して論じています。

不審に思う人もいるかもしれませんが、科学というのは要するに疑問を持たないと成り立たないわけで、健全な懐疑主義なくしてあり得ない、単に迷信だと否定するだけならこれは科学じゃないと言うことでしょう。
科学が万能だとする考えも通俗科学であり、皮相的科学教育の賜物だと言うことだと思います。

不思議に思うこと、疑問に思う事が大切だけど、それで終わらず、きちんと解明しようという心構えの必要性の話でしょう。
それを言うために、「化物なんかいるわけない」と頭ごなしに否定することを戒めているわけです。
これは井上円了自身を批判しているわけではなく、かれの妖怪学を通俗的なジャーナリストにより捩じ曲げられた雰囲気を糾弾しているわけです。

これはさんざん私が書いてきた「霊魂不滅の法則」にも当てはまりそうです。




p153に奇妙なことが書いてあります。

植物が生物である事は誰でも知っている。しかしそれが「いきもの」である事は通例誰でも忘れている

「誰でも」って言うわけですから、寅彦だけの認識ではなく、そういう時代の認識なんだろうか?
それはともかくとして、アインシュタインの相対性理論を援用した時間論を植物の生長とからめて書かれたこの随筆はなかなか楽しめました。
ちなみに、これが書かれたのは大正10年・1921年です。
一般相対性理論から5年後で、アインシュタインが来日する(つまりノーベル賞をとる)前年です。




「寺田寅彦先生談話会」の記録が一番楽しく読めます。
57歳に癌で逝去する前年の昭和9年・1934年の問答集です。

幽霊には興味はない。写真に撮らなければ信じるかもしれないが、写真にうつるものは物理の領分ですからね写真にうつる幽霊はない」(p127)

明解です。

このあと人魂(ひとだま)の話が続きます。相当お気に入りのようで、物理現象として解明したいとので情報提供を呼びかけています。
人魂は偶然みることが多いですから、いつでもどこでもみられるわけじゃないし、構えていて観察できるわけでもないですから、検証しようと思うと大変ですね。



ちょっと怪異から離れますが、次の回答も興味深い。

p134
今の物理や化学の方法では、原子1つびとつの個性をテストする方法がない。今の物理や化学は無能力であるから、原子は皆同じなりと主張することは出来ない

原子や分子の話になると、ちょっとあやしくなります。
その時代の考え方が垣間見えておもしろい。
現代の健康食品やサプリメント業界は、次の話の後継者かもしれない。


生物、生命について次のように答えています(p133)。
これも時代が感じられます。
時代の認識か彼独自の認識かわかりませんけど。

生物と無生物とのないだにLineを引きたくない。生命現象も、物理現象として説明できるように物理を進めて行かなければ気がすまない。生物と無生物とを別々に祭り上げておくことは面白くない。一緒に同じ神棚にまつることが出来る可能性はありそうに思われる。そうしないと何だか私には工合がわるい。




この本を含めて戦前の古い本に不満があります。

仮名遣いなどが現代化されていることです。

当時の雰囲気を味わうためにも、1編でもいいので改ざん(改悪)していない元原稿のままの用語で書かれた随筆を読みたい。

せっかくの傑作が、現代仮名遣いにより陳腐化されているようで残念です。
箱に入った高価な本だけでなく、このような寝転がって読める文庫本であっても、せめて1編だけでもいいので、著者自身が書いた文章を忠実に活字化したのを入れて欲しい。

全て旧仮名遣い、全て現代仮名遣い、でなくても良いと思います。

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