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zoom RSS ヒトはなぜ神を信じるのか 進化心理学が解き明かす神の起源

<<   作成日時 : 2012/09/09 03:19   >>

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「ヒトはなぜ神を信じるのか」
進化心理学者が解き明かす神の話です。
この本の論理は非常に明快で理解しやすい。結論にも納得できます。
著者は大学の研究者でしたが、若くして独立、文筆一本に搾っておられるため、わかりやすい論理で書かれています(翻訳も良い)。本書は大学の研究者時に書かれたものですが、その後、続々と出版されるらしい(翻訳も)。期待できます。
本書は「生きがいの創造」などで感動した人こそ読むべき本です。
この本で本物の科学とはどういうものかが実感できるはずです。

ヒトはなぜ神を信じるのか: 信仰する本能
化学同人
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このブログで、動物に魂があるのかないのかとか、人間の心や意識や魂や永遠の生命やらの話題をあれこれ書いてます。
○動物に魂はあるのか 動物に「うつ」はあるのか
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_14.html
○テーマ「コラム・哲学」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/e648aa0559.html

トンデモ本も含めて感想を書いていますけど、今回の本は冒頭の理由で大変お薦めです。

本書を読んでいると気がつきますが、哲学者のデネット、心理学者のハンフリーが何度も登場します。
彼らの本を読んでいる人なら、本書の結末はある程度予測できるかもしれません。
ハンフリーの近著「ソウル・ダスト」はこのブログでもチラッと取り上げました。本格的に書くと言いながらまだ書いていませんが。
○脳科学 脳と意識 その2
http://yoshibero.at.webry.info/201205/article_4.html

ハンフリーの言いたいことはわかるのですけど、書き方が回りくどい。
デネットになると、哲学者特有の外堀を埋めながら核心に迫っていくスタイルなので、1冊の分量が多く、結局何が言いたかったのか理解するのに骨が折れます。
ところが、本書のベリングは、文筆一本で生きていこうということからわかるように、非常にわかりやすく読みやすい。
ハンフリーやデネットに挫折しても、ベリングのこの本で充分補えそうです。
画像





このブログで何度も書いているように、心は脳や脳と関連した身体によって醸し出される現象であり、脳の働きが止まり、身体の機能が停止すれば、これは死ですけど、心も消えます。

しかし、世の中には死後の世界があると信じる人はいますし、神の存在を信じ、死後を垣間見たり、いったん死後の世界へ行ってきたけど戻ってきたという人がいたり、身体とは別に魂という存在を信じ、これが永遠の生命の元だと信じる人たちもいます。
○生物の時間 脳科学 幽体離脱
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_10.html
○人は死なない。では、どうする?
http://yoshibero.at.webry.info/201207/article_6.html
○死後の世界 輪廻転生 人は死なない
http://yoshibero.at.webry.info/201204/article_25.html

しかし、これらの死後や魂を語ってても、そう思っているのは生きた人間の脳の中で生じたコトにすぎません。本当に死者が死後の世界を神が神の世界を語って人わけではありません。あくまでも生きている人間の考え、妄想でしょう。

脳や身体と心の関係、身体の死と心の関係は、脳や身体を分子のレベルで調べていけば、ある程度のことは説明できます。

それでも死後の世界を信じる人が後を絶ちません。神や死後の世界が信じられない人は、生きがいや人生の意味もわからないし、安らかな死もえられないと脅す人までいます。
○AERA 死ぬ間際に見える風景
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_11.html
○死後にスープを飲むと生まれ変わるときに記憶を失う
http://yoshibero.at.webry.info/201207/article_15.html

ホントのところはどうなんだろう。

仏教の立場は無神論、無霊魂だという猛者もいますけど、
一般的には死後があると思われています。
○仏教の立場? 無神論・無霊魂論
http://yoshibero.at.webry.info/201207/article_7.html
○恐山 死と死者 妖怪
http://yoshibero.at.webry.info/201206/article_28.html

本書のp140に脳と心の関係が端的に書かれています。
脳はほかの器官と同様、体を構成する一部である。そして心とは、脳がすることであり、名詞というよりは動詞に近い。なぜ、体が死んだら心はどこに行くのかと思うのか? 心も死んでしまうと考えて、なぜいけないのか?

私も「モノ」と「コト」でくどいほど繰り返し書いています。
脳はモノで心はコトだ、心は脳の機能だ、と。
○構造と機能 モノとコト3 脳の機能が心?
http://yoshibero.at.webry.info/200806/article_6.html

ところが、ここに「魂」なる言葉が出てくるからややこしくなる。




心と魂の区別は難しいく感じられることがある。
4章は「奇妙なのは心の不死」と題し、この問題も取り上げています。

日本人だと、人が死ぬと魂が抜け、あの世に旅立つと多くの人は信じていると思われます。朝日新聞の天声人語を見ても、ある有名人が死ぬと、しがらみのないあの世で思う存分研究して欲しいとか、先に死んだ人との再会を思い巡らしたり、死んでもその人の魂が生き続けているとの前提で書かいてあります。

日常会話でも、もし生まれ変わったら何になりたいとか、輪廻転生の考えももごく普通でしょう。

p152に「理解するのが容易でない小乗仏教の輪廻転生信仰」と書かれているように、著者によれば生まれ変わりは奇妙なことらしい。
しかし、これは小乗仏教に限らず、アジアの多くの国では当たり前の考え方でしょう。
○死後にスープを飲むと生まれ変わるときに記憶を失う
http://yoshibero.at.webry.info/201207/article_15.html

いろんな死生観がある中で、心と魂の概念は洋の東西を問わずあるようです。本書の4章とその注から、ざっくりいって、次のように特徴付けられそうです。

心は生きている人の中にある 脳の機能 死ぬと消滅
魂は生きている人の中にもあるが、不死で あの世に行く

生きているうちなら心と魂は分けなくてもよいように思えますが、
両者の違いは死そのものや死後と関係しそうです。

おおざっぱですけど、生きているときは脳も機能していますから心はある。どこにあるか、はっきりとはわからないが。生きているうちは心と魂はほぼ同義。

心と魂の違いの一つは、心は生きている過程で変化することがある。脳の外傷や脳血管の破裂など、脳の物理的な変化により、心も変化する。しかし、魂は身体や脳とは非依存であり、一生を通じて(大きくは)変化しない。

死の瞬間、身体の一部としての脳の働きはなくなりますし、死体を燃やせば灰になります。どうみても機能しているとは思えません。それなら心も消え去るはずです。
ところが、死の瞬間、魂が肉体から離れ、肉体非依存的な何かとして「存在」する。死後の世界があって、そこへ魂が旅立つ。

臨死体験とは、普段、心と魂を区別していないが、何かの拍子に魂だけが分離し、あの世を体験する。その時、心は身体と不可分なので、心は身体にあり続ける。臨死体験が終わると魂は再び身体や心と一体化する。
(もちろん、脳の右側頭葉のある部分を突けば、臨死体験できます)

死後、魂はどうなっているのか生きている人間には全くわからない。想像するしかない。そこで、魂は永遠に生き続けていると想像する。そればかりか、再びこの世に舞い戻ってくることもある。その場合、脳を持つ身体に宿り、その脳が醸し出す心と一体化する。

つまり、魂が先に存在し、魂が肉体に宿り、そのあと肉体から心が生み出されるわけです。

人が死体を見たとき、そこに心が宿っているとは思えないが、しかし、死者の生前を知っている人なら、その死者の魂なるものを想像することができ、供養したり、思い巡らしたり、死体に対する対応も生きている魂を前提とする。

もちろん、これらは全て妄想です。証明することはできません。
私は、もちろんこのようには考えていません。
この本の著者もハンフリーもデネットも同様です。

しかし、多くの人は上記のような概念を共有しているようです。
その共有意識は、発達心理学的に見れば、教育や家庭環境とは関係なさそうです。


本書は魂の有無かとか、あるのならどこから来たかという話ではなく、
魂のような「概念」や「考え方」がどこから来たかを議論しています。
神を信じるとはどういうことなのか、という話。
無神論者で、魂なんか存在しないという進化心理学者の論考です。

では、このような心や魂や死後の世界や神の概念はどうして生まれてきたのか、というのがこの本のテーマなわけです。


人間は動物の一種です。特段高等なわけではありません。
万物の霊長などと自信過剰に思う人がいるかもしれませんが、
進化論的に見るなら、単なる動物の一種です。
○「サイエンス・クエスト 科学の冒険」
http://yoshibero.at.webry.info/201207/article_18.html

600万年か700万年程前にチンパンジーと人類の共通の祖先が枝分れし、それぞれが進化しました。
我々人類側でのみ起こった変化が我々人類独自の特長になっています。

どのように進化するかは突然変異と自然淘汰で説明できます。進化論的な「適応」も強力な武器になります。

以前書いたようにハンフリーの「ソウル・ダスト」ではおもしろい指摘をしているのですが、これほどまでに多くの人が神を信じ(各民族ごとに異なる神であってもそれぞれの神を信じ)、死後の世界があると思い、身体や脳とは別に魂があると信じるのは、そう信じるように進化の過程で「適応」したからだ、といっています。

それがチンパンジーでは見られないことから、チンパンジーと分かれた後の進化の過程で適応的に獲得した性質であろう。

本書もよく似ているのですけど、独自の論考がたくさんあります。
本来なら、ここで著者がどのように論じたかを書くべきかもしれません。
引用したい綿密で魅力的な論考もたくさんあります。

しかし、数ページ読む度に思考が飛んでしまうくらい刺激的な話が多く
(したがって読むのに時間がかかる)、感想を簡単に述べることができません。

ざっくり言ってしまえば、「神は適応的錯覚の産物」となります。
ここでいう「適応」は進化論でのそれです。

そして、その「錯覚」の正体を暴き、「錯覚」を粉砕している本だ
といえます。




帯に「進化心理学が解き明かす神と宗教の起源」とありますが、
「神」は出てきますけど「宗教」はほとんどでてきません。
著者自身も言っているように(p244)、本書で検証された「適応」で
議論しているのは宗教以前の問題だからです。

進化から見た宗教へのアプローチはデネットやウェイドの本に詳しい。
同様の心理学方面なら、ハンフリーの本が詳しい。
(いずれも、寝転がって読める本ではありませんが)
画像



本書の最後に「パスカルの賭け」が出てきます。
○パスカルの賭け 神を信じるか、天国はあるか
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_12.html

著者は、もちろん、神を信じない方に賭けます。
「死者は死者であって、それ以上でもそれ以下でもない」
「人生とは一体なんのためのものか? 結局のところ、その問そのものが偽物なのだ」


ベリングの続刊がどんな本なのか、今から楽しみです。

以下続く。。。。。。

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