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<<   作成日時 : 2012/09/01 02:21   >>

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「犬はあなたをこう見ている 最新の動物行動学でわかる犬の心理」
先に動物に魂はあるか、「うつ」はあるかという本を紹介しました。
○動物に魂はあるのか 動物に「うつ」はあるのか
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_14.html
今度は、具体的な動物として犬の登場で、その行動学的新理論です。
犬は野生のオオカミから人が作った作品であることは確かなので、
元の種(しゅ)のオオカミの行動が反映されていると思われています。

犬はあなたをこう見ている ---最新の動物行動学でわかる犬の心理
河出書房新社
ジョン ブラッドショー

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お隣に犬と「2人暮らし」をしておられる方がいます。
犬は単なるペットだけでなく、家族の一員として扱われることが多い。
ポピュラーなペットなので、犬に関する蘊蓄もちまたに溢れています。
犬のしつけはこうあるべきだとか、犬はこう考えているはずだとか。
犬はこういう行動を取るはずだとか。
ところが、この本によれば、通説の多くは間違っているそうです。
そればかりか、多くは正反対らしい。誤解、間違い、勘違い、、。




人類が飼い慣らしだ動物はたくさんあります。
犬、猫、牛、馬、羊、豚、山羊、鶏などなど。
それらはペットになったり家畜になったりしています。
その中で一番最初に飼い慣らしだ動物は何なのか?
それは犬です。

では、いつ、どこで犬の飼い慣らしが始まったのでしょうか?
考古学的な証拠やDNAの塩基配列の解析からある程度わかるようになってきました。

犬やオオカミの仲間は実は色々あります。
近縁の動物と比較するなど、粘り強い努力のお陰で、少なくとも直接的な祖先と思われる種(しゅ)は見つかっています。それらが野生として生息していた場所で飼い慣らしが始まったのだろうと思われます。

どんな証拠からどのように推測されてきたのか、かなり詳しく書かれていますので、その科学的な解明の過程は充分に楽しめます。




大きさも性格も異なる多くの犬の祖先は、タイリクオオカミだろうと推測されています。
オオカミにもいろんな種類がいますので、タイリクオオカミ以外のオオカミでも人類の祖先が飼い慣らしをしたでしょうけど、結果的に飼い慣らしに成功したのはタイリクオオカミ由来だけのようです。

その時期はハッキリ同定できていませんが、1万数千年前だという。
その頃に今のタイリクオオカミと犬の共通の祖先がいたことになりますが、数万年という時間は種の進化の歴史からみれば一瞬です。

両者の「遺伝子は、99.96パーセント一致している」のだそうです。
この数字は我々人類の一致率より大きい。
つまり、ヒトの多様性の方が大きい。
それは当然でしょう。
犬はわずか数万年ですが、ヒトは20万年ぐらいの歴史があります。




犬とオオカミはゲノムレベルでは非常に似ているわけですが、人間による選択がかかったからか、行動学的には大きく異なることがわかっています。

古いオオカミの行動学は野生のオオカミを観察したつもりでも、人間のつくった環境に適したオオカミの行動を調べていることがわかるなど、野生の行動学とは程遠い学説がまかり通っていました。

さらに困るのは犬はオオカミからつくられたのだから、犬もオオカミのような行動をするという二重の誤解が生まれたことです。

犬は愛らしい皮をかぶったオオカミだとする考えは、50年以上にわたって犬の育て方と仕付を決定づけ、その結果は、控えめに言っても、功罪相なかばというところだ(p94)。

犬の専門家やドッグトレーナーと呼ばれる人たちによる誤解が一般の人にも広まり、誤解が信じられていたと言うことです。まだ誤解は続いているようです。

で、どんな誤解なのか、古い知識、「ドッグトレーナーのエキスパートで犬の行動専門家」という肩書きの人がつい最近まで、あるいは今でも言い続けている「知識」とはどんなものなのか、そして、最新の動物行動学の成果はどうなのか、具体的かつ膨大なデータを紹介しながら解説してあります。

いちいち引用するのも大変なくらい膨大な分量です。
私自身、犬に関する俗説をあまり知りませんので、俗説と最新科学との違いの衝撃度がわかりませんから、どれを特に引用していいのかわかりません。

驚くのは、一時代前のドッグトレーナーの知識(俗説)と最新行動科学とは全く正反対である例がかなりあることです。

あえて一つだけあげるなら、オオカミは群れている、階級がある、支配の順位が重要だ、などなど、オオカミの習性(と思っていたものも含む)が犬にも当てはまると勘違いし、その思想の元で考えられた飼い主と犬との支配関係を説いた犬のしつけ方法などはハッキリ言って全部間違っているとのこと。

日本ではどうなんだろう?
「いぬのきもち」という本があるようですが、書店で買えませんから何が書いてあるのか知りません。
例えば次の宣伝サイトを見ると、しつけについても書いてあります。
○いぬのきもち|犬のしつけ・育て方をわかりやすく解説する雑誌
http://www.benesse.co.jp/pets/dog/lp_ma/

俗説ではなく最新の行動科学に基づいていることを祈るしかありません。




オオカミから犬へと飼い慣らし、いろんな犬種ができたのは、農村などの環境に適したものが選ばれた結果です。
5000年前以降なら、狩猟、羊追い、警備など目的もハッキリしていたようで、それぞれの働きにあう行動をとる犬がつくられています。
そのため、犬の種類ごとに性格が異なり、行動様式も異なります。

ところが、人間の生活様式も代わり、都会化し、ペット事情も変わったことから、最近、そういった犬の特長を無視して、見た目でペットとして飼うことが多くなり、犬自身も飼い主にとっても不幸なことが起こっているという。
その具体的な例もたくさん書いてあります。

人間側の急激な環境変化や嗜好変化により、それに適応した犬の開発が遅れています。
犬種ごとの個性の違いは短期間に変えることはできません。
人間側の都合で飼う環境が変わったのに、それにあう犬がいないのです。

このすれ違いの不幸を著者はかなり憂慮しており、また放置するわけにはいきませんから、未来に向けての対策も書いてあります。




大リーグのイチロー選手は、今年2012年、西海岸の片田舎からニューヨークへ電撃的に移籍しました。移籍後の選手としての成績は申し分ないのですが、彼にとって気がかりが一つあるとの記事が載っていました。

○イチローが抱える問題
http://news.livedoor.com/article/detail/6887846/

イチロー選手はインタビューで次のように答えています。
「うちの犬、イッキュウが都会の生活に慣れるのに苦労している。彼のことはちょっと心配なんだけど、ニューヨークの街に慣れてくれると思っている」

犬にとって、セントラルパークとタクシーだらけの車道は、シアトルの郊外とは大きな違いがある。

「彼は緑に囲まれて、走り回るところがたくさんある所で育ったから、走り回ることができていたんだけど」イチローは説明した。「今は背の高いビルやたくさんの騒音の中にいるから、彼にはすごいストレスだと思う」



これは「イッキュウ」という一個体の問題ではない、という話が、この本にも出てきます。
かつてはニューヨークであっても、走り回れる場所もあったでしょう。著者の子どものころの回想などを通じ、犬を飼う環境の変化(衛生観念から糞の始末に対する世界的な動きまで)あれこれ書かれているところを読んでいるときに「イッキュウ」のニュースを見たので、興味深かった。


繰り返しになりますが、犬には犬種ごとにいろんな性格があり、見た目などではなく、目的に合った性格の犬を飼うのならいいのですが、多くはそうではなく、性格を無視して犬種を選ぶことが多いそうです。
そのため、環境に適さない場合、飼われる犬にとってはストレスでしょうし、飼い主にとっても飼いにくい犬になってしまいます。
無理やり人間に合わせると、犬は「問題行動」を起こします。

この問題点をきちんと整理し、解決策も提案してあります。




そして、それと関連して、同じくらい歴史を持つ問題として、血統問題があります。飼い主は賞を取るような純血種を好む傾向があり、血統登録制度もあいまって、ほんの一握りの犬の子孫からなる遺伝的な均質、多様性の喪失の問題です(これは競走馬、肉牛などにも見られます)。

遺伝子に起因する病気はたくさんあります。それでもヘテロで持っているなら(キャリア)発病しない場合が多い。しかし、ヘテロ同士の子の1/4は病気に関与する遺伝子をホモで持つようになります。

キャリアとなる遺伝子は数千の単位であって、そのうちどの組み合わせでいくつ(数百単位)持つかで個体の多様性が生まれます(人間も)。
しかし、近親交配を繰り返していると、その多様性が乏しくなり、同じへテロ遺伝子の組み合わせを持つようになり、結果としてホモになる、つまり重篤な病気を発病する可能性が高くなります。


このような純血種を好む風潮は、犬の歴史からみて1%に満たない期間しか経ていないわけですが、病気や性格や行動様式を無視して、見た目を重視する風潮に警鐘を鳴らしています。
現実問題として、犬の健康にとって深刻な状況だと言うことです。

歴史的にみて、近年の極端な純血主義が確立するまでは、おおらかな交雑は普通に行われていたらしい。

犬の繁殖方法は、思い切って変えなければならないところまできている。遺伝子が原因で起こる欠陥をなくすだけでなく、ペットとしてかわいがられる犬の能力を、最大限に発揮できる基質を育てなければならない。今のところ、毎年生まれてくる犬のほとんどは、「ドッグショー」での活躍を念頭に置いたものか、無計画な繁殖の結果のどちらかだ(p347)。

都会の生活に適した性格や行動が取れる犬を積極的につくろうという風潮がありません。これは犬にとっても飼い主にとっても不幸なことです。




犬に行動に関して自分が信じてきたことと比べ、フムフムと納得したり、えぇ〜っと驚いたり、いろんな楽しみができる本だと思います。

もちろん、この本の内容のすべてが完全に正しいわけでもないでしょう。動物行動学は比較的新しく、日進月歩です。書き換えられる説もあるでしょう。

しかし、綿密な実験や観察などで、今のところわかっている範囲で解明された情報はそれなりに入手し、通俗書を、場合によってはプロの言うことも健全な懐疑主義で吟味することは、この分野に限らず重要なことでしょう。

犬の歴史、多様性、個性、行動心理学などをきちんと理解し、賢い飼い主になりたいものです。

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