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zoom RSS 食べた酵素は働いてくれるのか? その14  スムージーの酵素は安定なのか

<<   作成日時 : 2012/08/23 00:23   >>

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あいかわらず酵素本、と言っても最近はほとんどスムージー本が出続けています。タイトルに「酵素」のつく本を集めていますけど、どんどんたまる一方です。
酵素スムージーのおかしさは色々あるわけですが、
1.食中毒の危険性
2.そもそも酵素が含まれていても意味がない
3.万一酵素が有効だとして、ホントに生きた酵素があるの
などあります。
○食べた酵素は働いてくれるのか? その13  新規酵素発見?
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_8.html
の続きです。

1.は前回書きました。
○食べた酵素は働いてくれるのか? その12  ナマには注意 浅漬けO157
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_7.html

2.は10回に渡って詳しく書きました。
○食べた酵素は働いてくれるのか? その10  酵素パワー
http://yoshibero.at.webry.info/201206/article_26.html

今回は3.について述べます


○食べた酵素は働いてくれるのか? その11  最強の酵素
http://yoshibero.at.webry.info/201207/article_10.html

上記サイト以降に買った本
画像





酵素スムージーというのは野菜や果物などをナマのままミキサーなどで砕いたものだそうです。ナマのままなので、生きた酵素がその中に含まれ、これが吸収されて、体内酵素の代わりになったり、その節約につながったりするそうです。
代わりやら節約やらがなぜ有効かと言えば、一生の内に合成される酵素量が決まっていて、それが尽きると死んでしまうからだそうです。

これまで書いてきたように、これらは完全な与太話ですけど、万一、有効だとすると、一番の前提は酵素食品の中に酵素としての機能を保った酵素が含まれている必要性です。
「生きた酵素」がなければ、いくら与太話でも話が続きません。

これをちょっと検証してみましょう。


二大巨匠などによる「理論書」を読んでも、お薦めの酵素食品や酵素サプリメントにどれだけの酵素が含まれているか書かれていません。

酵素にはいろんな働きがあり、それぞれどの程度の量があるのか、どれくらいの働く力があるのか、それなりに測定する方法があります(全てではありませんが)。

その指標を「活性」といいます。

どんな酵素にも酵素活性があるわけです。
働きを失っていれば「活性がない」となります。

酵素はある化学反応を「触媒」する能力を持っています。
この「触媒」は化学で使う「触媒」と同じです。
どんな反応でも触媒するわけではなく、ある特定の化合物に対する反応だけ触媒します。

これが「特異性」です。

酵素は触媒ですから、反応の前後で基本的には変化しません。
その酵素がある化合物を捕まえて、何らかの電子的なやりとりなどを触媒して、別の化合物ができます。
つまり、化学結合の組換えが起こるわけです。
この化学結合の組換えが化学反応です。
反応前の酵素が捕まえる化合物が「基質」です。できるのが「生成物」。

なので、酵素には「基質特異性」があるわけです。

酵素の活性を測ろうとすれば、基質と酵素を混ぜ、一定条件下で反応させます。その時、基質の減少量や生成物の増加量などを何らかの方法で測定します。どちらかを時間を追って測定することで、反応の速度がわかります。
この反応速度を基質の濃度や酵素の濃度を変化させてあれこれ測定するわけです。

ある程度測定する方法が確定すれば、基本となる条件を設定し、その条件下でどのくらいの値が出るかを計算し、酵素活性の単位とするわけです。一応、誰がやってもその値が比較できるような条件を設定します。

例えば、血液検査をすると肝機能の指標としてGOTとかGPTの数値がでてきます。いずれも酵素活性です(最近はAST、ALTといいます)。
ある国際的に決められた方法で測りますから、出てきた数値はどこの病院や献血で調べてもらおうと、一応比較することができます。

活性測定に使う基質は、実際に生体内にある化合物と同じの場合もありますが、測定しやすいなどの理由で、よく似た別の化合物を使うこともあります。

いずれにしても、ある溶液に溶けている酵素の活性を確立された方法を使うことで測ることができます。

基本的には、酵素の種類が変われば活性の測定方法も変わります。
なので、10種類の酵素活性を測りたければ、10通りの方法で測定する必要があります。
それぞれの方法で測定できるのは、特定の酵素の活性だけです。

先の肝機能検査の場合なら、ASTとALTは別々の方法でそれぞれ測定しています。

ある方法を使えば、全ての酵素活性が一度に測れる、ってことは今のところありません。

食物由来の酵素であれば、種類は多く、それぞれの酵素の「活性」を測ろうと思うと、結構大変なことがわかるでしょう。




ここまでの話を踏まえると、「代謝酵素」の活性はいくら、「消化酵素」の活性はいくら、と書いていないのがわかると思います。ヒトに限っても何千という単位の種類があって、植物やヒト以外動物も含めると膨大な種類になります。なので、そんな統合活性は測定できません。

「代謝酵素」と言っても、それぞれ基質は千差万別ですし、その化学反応はバラエティに富んでいます。
一見単純そうな「消化酵素」でも基質となる化合物は多種多様です。

サプリメントなどでタンパク質分解酵素の活性がいくらです、と書いてあったとしても、ヒトのタンパク質を分解する酵素でも千差万別で、動物特有とか植物特有とかもあります。性質の違いによって、酵素活性の測定方法も変えないといけませんから、一度に全部のタンパク質分解酵素活性を測定することはできません。

測定できないことをいいことに、定量的な話を避けている(逃げている?)ようにもみえます。


48度で酵素活性は失われるとよく書いてあります。
ある方法である酵素の活性を温度を上げながら測定していくと、ある温度で活性がゼロになる点がわかりますから、測定により検証することはできます。
しかし、それでわかるのは、その酵素の活性だけです。他の酵素活性が失われるかは、それぞれの方法で検証しないとわかりません。
幸い、多くの研究者がそれぞれの酵素活性の特性を測っていますから、文献に当たれば、この酵素は何度で最も活性が強く、何度で活性が失われるか調べることはできます。

ということで、この食品には酵素タップリとか、この食品は死んでいて酵素がないとか、定量的に根拠を持って主張することは、基本的には難しいことがわかります。




次に、酵素の安定性です。

ここで出てくる一般的な酵素の科学的な本体は全てタンパク質です。
酵素の安定性ということは、酵素活性自身の安定性のことですが、それはタンパク質としての化合物の特性に関わってきます。

唾液や膵臓にどんな酵素があって、その特性がどんなものかを調べるためには、それぞれの材料から単品の酵素を単離する必要があります。

これを酵素の「精製」と言います。

例えば、ある臓器の細胞内にある酵素を調べたければ、その臓器を細胞が壊れるくらいに破壊し、細胞内に溶けている、あるいは細胞内の小器官に含まれている物質を抽出(水溶液にしたり懸濁したり)する必要があります。その時、目的の酵素は当然含まれるでしょうが、それ以外の多くの化合物も同時に抽出されています。

その中には厄介なものも含まれます。一番困るのはタンパク質分解酵素です。
細胞や組織のように、きちんとコントロールされた環境なら安定して存在できるところが、人為的に破壊することで、これまで触れ合うことがなかった化合物同士が接触します。
その接触はたいていの場合都合が悪い。酵素なら、その活性が弱まったり無くなったりします。
そのように不安定化する要因はタンパク質分解酵素以外にもたくさんあります。

タンパク質分解酵素が働くような環境で抽出すると、目的の酵素はタンパク質ですから、目的酵素は物理的に破壊され、その酵素活性どころか、酵素タンパク質自身が分解されて消えてしまいます。

さらに、酵素には阻害剤という厄介なものもあります。酵素はある特異的な基質と結びついて化学反応を触媒するわけですが、その反応に割り込んで妨害する物質があります。抽出することで、その妨害物質が一緒になることもあります。

さらに、多くの酵素は単独で触媒するのではなく、基質以外にも別の化合物や金属イオンなどが必要なことがあります。それらを失ったり消えたりするような環境になれば、酵素は十分に活性を持たないことになります。

実験的に酵素を精製する場合は、これらの性質を考慮して、細心の注意を払って条件を設定し、抽出から精製までの工程を、肉体的にも精神的にも辛い思いをして、こなしていくわけです。
(ここ数十年、やる人はいなくなりましたけど)




さて、酵素スムージーです。
これがどんなシロモノか、もう説明の必要がありませんよね。
無策のまま酵素精製の第一段階である抽出をやっているわけです。

酵素スムージーには消化酵素がタップリと宣伝していますけど、食べる前の食品でタンパク質分解酵素が働くのであれば、自慢の「代謝酵素」や「消化酵素」は分解されてしまってますし、タンパク質分解酵素自身も分解されます。

つまり、食べる前に酵素活性の多くはなくなってしまいます。

それは、酵素を摂る、という意味も失っていることになります。

つまり、酵素活性のないタンパク質やペプチドを食べているわけです。


そうであれば、食中毒の危険性を顧みずナマにこだわって、生きた酵素を摂るんだ、といきがってみても、食品としての安全性も消化にもよい加熱食を摂った方が健康にも数段よい、ということになります。

いかがでしょう?

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