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zoom RSS 人類最大の謎? 人類の起源 プロメテウス? ヒトはチンパンジーから進化した!?

<<   作成日時 : 2012/08/17 23:45   >>

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「プロメテウス」という映画が、来週(2012年08月24日)全国で公開される予定です。
先行上映も予定されています(すでにいくつか終わっていますけど、残りは08月18、19日、明日と明後日だ)。
宣伝によると、「人類最大の謎」それは「人類の起源」ということで、
「人類はどこから来たのか」の答えがあるらしい。
学術的な「人類の起源」とは関係ないでしょうけど、未来モノとしておもしろそうです。
DNAもちょこっと出てくるらしい。「エイリアン」とはちょっと違うらしい。




少し前に、
「800万〜700万年前か=人類出現、DNA解析で―国際チーム」
という時事通信の記事が載りました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120814-00000009-jij-soci
http://news.livedoor.com/article/detail/6852898/

記事ネタの論文はPNASです。
Langergrabera, K. E., et al., Generation times in wild chimpanzees and gorillas suggest earlier divergence times in great ape and human evolution.
http://www.pnas.org/content/early/2012/08/08/1211740109.abstract

ゲノムの解析だけでなく、世代の年数、体重や化石データ等から総合的に考察されています。

この手の話をするとき、致命的な誤解があります。
上の記事のコメント欄にも出てきます。

「ヒトはチンパンジーから進化した」
「ヒトは進化して誕生したがチンパンジーは進化していない」

そう誤解する諸悪の根源は「生きた化石」「生きている化石」だと睨んでいます。
シーラカンスは進化していない。
何億年もずっとそのままの形を維持している、と。

最近の新書にも同様のユニークなことが書いてありましたので、
紹介します。


人類はなぜ短期間で進化できたのか (平凡社新書)
平凡社
杉 晴夫

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第1章はダーウィンらによる定説の批判だそうです。
この本の基本なので、どんなことが書いてあるのか、ワクワク。

ラマルク信奉者によるラマルク主義の入門書です。
ダーウィン進化論をこき下ろしています。
ところが、攻撃対象であるダーウィン進化論がどうもおかしい。
どうやら著者の頭の中にある虚像を攻撃しているだけのようです。

どうやらラマルクの用不用説が正しいらしい。

これを否定した実験に不備があるからだそうです。
マウスの尾を何代も切り落としても尾が短いマウスは生まれてこない。
だから用不用説は間違っている。
こんな証明はおかしいと。

しかし、今どきこんな与太話で用不用説を否定する人はいませんよね。


妄想もスゴイ。
ダーウィンはラマルクに対して敵意をあらわにしたそうです。
ダーウィンは自分の説がラマルクの亜流になることを警戒し、
ラマルクの影響を受けたことを否定したかったからだそうです。

ここまでくるとホラー話を通り越して、喜劇です。
「種の起原」を読んでいないのがバレバレです。


この本では、分子生物学の成果は基本的にはないことになっています。

ランダムな突然変異は生物にとって有利なもの、有害なもの、および無害無益なものが、ほぼ等しい確率で起こるであろう」(p28)
と言っておられます。何度も出てきます。
これ、いったい誰の説なんだろう? 少なくとも木村中立説ではない。
こういう与太話をする人がどこかにいるのでしょう。


この人にとって知りたいこととは、
生物はなぜ下等なものから高等なものへと変化していったのか
という疑問だそうです。これも何度か出てきます。

また、
生物が下等なものから高等なものに向かって進化してきた、という明らかな事実を具体的に説明しようとはせず」ともおっしゃっています。
このような「明らかな事実」があるのかどうか知りませんけど、定向進化説にキレイにはまってしまっているようです。

このような穴に落ちてしまう原因のひとつは、進化の向きを逆に見るからでしょう。
現存している生物から過去をながめていると、ある方向に進化していったと思ってしまいがちです。

生物にこんな複雑で巧妙な仕組みができるはずがない、なにかみえない力(意思)が働いているのだろうと考えてしまうと、創造論になってしまいますけど、そうじゃない人たちが、おおむね定向進化説になってしまうようです。


さらに、今西錦司を絶賛しています。
引用されている本を私も読みましたが、
残念ながらこれは科学ではありません。
それに、もう十分に古い。
今西進化論では自然淘汰の考えに疑問を呈しているそうですけど、
そしてそれに筆者は賛同しておられますが、
それ以降の膨大な科学的知見はスルーです。
なかったことにしておられます。

著者はよく「一般人に説明できない」と言っておられます。
それが誰を指すのかわかりませんけど、科学は「一般人」にわからせなければいけないわけではありません。はっきりいって、置き去りにしてもいいわけです。

それ以前に、著者が一般人に説明できていないだろう、といっている説は十分に証明されていますし、それに対する著者独自の考えは残念ながら反駁されて尽くしています。


天変地異などによる環境の激変に対向できるのは高等な生物で、下等な生物はダメなんだそうです。
だから、高等なものへと定向進化したそうです。(p38)
人類が全世界に広まったのも必然。

昆虫も地球上に蔓っていますけど、昆虫は頭が悪いので、
昆虫はもし環境が激変すればこれに対応できず絶滅する
んだそうです。
おおスゴイ!!
地球の生命史まで無視です。

人を絶賛するためでしょうけど昆虫を馬鹿にする文章が結構出てきます。
かわいそうな昆虫さん。人間以外の生物に対する愛が感じられません。



共通の祖先から進化したという考え方はかろうじて残っているようですが、中立説や自然淘汰の考え方を全面的に否定しておられますから、現存する全ての生物種が進化の産物だという考え方がどこかで抜け落ちてしまったようです。


p189
単細胞動物から多細胞動物に進化した過程を説明するところで、クラゲが登場し、これは原始的な多細胞生物なんだそうです。
で、「このクラゲの仲間から、より高等な多細胞動物が進化を繰り返し、ついには人類の出現にいたるのであるが、クラゲの仲間は依然として現代にも生存している

これが不思議なんだそうですが、クラゲの仲間が現存だけでなく、
単細胞生物も依然として存在していますよね。それはなぜ?

彼らにとって進化の時計は何億年も止まったままなのである。

いやはや、やっぱり「生きた化石」の亡霊の影響でしょうか。
シーラカンスにも、棲むところによっていろんな種がありますよね。
ゲノム解析までされています。
生物の多様性も無視。

ゴリラ、チンパンジーから分かれた猿人は、原人を経て現生人類に進化していったが、ゴリラ、チンパンジーの進化の時計は何百万年も止まったままである。

ボノボの存在をどう説明するつもりなんだろう?
チンパンジーとの分岐は何百万年も前?
もしかして、チンパンジーとボノボは同一種との見解?
チンパンジーの亜種はいつ誕生した?
ゴリラも1種だけなの?
化石記録も無視?

さらに本の中程にも同じような話が出てきます。p50、p80
共通の祖先からの進化を理解した上での話だろうと思ったのですけど、どうやらそうではないらしい。

人類は現生種の類人猿から進化したのではなく、1000万年以上前に現れた高等な霊長類が人類の直系の祖先とされている。この高等霊長類は、すでに人類の基本的特徴を備えているので猿人とよばれ、他の霊長類とは区別される。

って書いてあります。いやはや。


つまり、遺伝子云々、自然淘汰批判はこのような認識だったからこそ可能だったようです。
それなら十分あり得るね。




他にも、人類の歴史や「優生学」に関する独自の解説が楽しめます。

意味不明の説明は全ページに複数あります。
いくら見つけて、どの程度論駁できるかで、理解力が試せそうです。




人類の起源に関する本はたくさんあります。
最近の本であれば、次の本がおもしろい。

人類の原点を求めて: アベルからトゥーマイへ
原書房
ミシェル ブリュネ

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大学生協では、なぜか文系の本棚に置いてあります。

発売前、この分野で日本をリードしておられる諏訪元氏の名前を見て、
ついに単行本を書かれたのかと喜んだのですけど、残念ながら監修者でした。
早く氏の本を読んでみたい。

文系の棚に置いてあったのは出版社の都合だけでなく、内容もそれなりに関係している。
古生物学は立派な科学ですけど、この本では科学的な記述は抑えめにして、著者らの自伝的な話が多い。その点、どんな戦略で発掘するのか、発掘された化石からどのように分析し、どのように仮説を作っていくのか、その過程の物語がおもしろい。

人類の祖先に関係している化石には名前が付いています。
著者らが関与したのは360万年前の「アベル」と
700万年前の「トゥーマイ」。
この2つの化石にまつわるお話です。
ちなみに諏訪氏が発見したのは「ラミダス」。

この分野では誰もが知っている研究者と言えばリーキー一族であろう。
彼らの伝記ばかりにうんざりしている向きには、この本は斬新で、
楽しく読めると思います。

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プロメテウス 人類の起源
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やさしいバイオテクノロジー
2012/08/19 01:11
化石の分子生物学 現在生きている全ての生物は進化の産物であり、なれの果てだ
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2012/09/15 08:48

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