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zoom RSS ヒトゲノム中98%の未踏領域 非コードDNAに挑む

<<   作成日時 : 2012/08/31 01:30   >>

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このブログでは遺伝子やらゲノムやらの話も書いています。
今回はちょっと硬いですけど、「非コードDNA領域」の話です。
取り上げるのは、羊土社から出版されている「実験医学」という月刊誌の特集記事です。
「実験医学」ももう30巻、ってことは30年。いつのまにか500号を超えています。
その最新号(2012年09月号)の特集記事の紹介です。
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ヒトゲノムは30数億塩基対からなります。
その中に遺伝子が数万あるわけですが、遺伝子の中でもmRNAになる領域はゲノム全体の1.5%程度しかありません。それ以外の98.5%はタンパク質のアミノ酸配列とは直接関係ないことから、非コードDNA領域となるわけです。
コードというのはアミノ酸配列を指定しているという程度の意味です。

この非コードDNA領域は古くはジャンクとか呼ばれていましたけど、私は嫌いだったので、昔からその呼称は使っていません。




非コード領域の半分は反復性の配列です。
残り半分の6割ぐらいが非反復性配列で4割ぐらいが遺伝子領域のイントロンです。

非コード領域といっても、機能がないわけではありません。

非コード領域でも機能性がわかっているところもあるので、それを非コード機能性領域と呼ぶとすると、その中には古くからわかっている染色体の両端であるテロメアと染色体のくびれ部分であるセントロメアがあります。

それ以外の非コード機能性領域があるわけですが、この「機能」はわかっているだけでも多種多様です。
DNAからmRNAへ転写するときにはmRNAとしてコードされている領域以外に転写を制御する領域がDNA上にあります。
DNAが複製するときには複製開始点があるわけですが、それも多数あります。
減数分裂の時に交叉(組換え)が起こりますが、それは組換えのホットスポットで起こります。
DNAは多くのタンパク質と絡み合って染色体となりますが、それには秩序正しい構造があり、その構造を保のに関与しているDNA側の配列もわかっています。
また反復配列のうちいくつかの機能が明らかになりつつあります。

このように非コード領域にも機能性が確認できますから、そのうちセントロメアとテロメアを除いた領域をインターメアと呼ぶことが提唱されており、この3つ、3メアは互いに連携し合っていますから、3メアネットワークとか呼ばれています。

特集記事の解説というか簡単な紹介をしてもいいのですけど、学術的な話ですから、ブログ記事としてはおもしろくない。
そこで、この特集記事から触発された感想を少し述べます。




コードDNA領域はゲノムに占める割合が1.5%とは言っても、ゲノムの中に点在していますし、要するに数万ある遺伝子ですから、その領域の解読や発現解析にも工夫がなされています。

非コードDNA領域は膨大です。機能を調べようと思えば、とりあえず配列解析は必要です。
全ゲノムDNAの解析速度や精度は急速に上がってきており、近い将来、正確に読全部むだけなら1日もかからないようになるでしょう。

「ヒトゲノム計画」と呼ばれていたころ、とりあえず暫定版が出たり、やっと読めましたと発表されたりしたのは、非コードDNA領域の配列(反復配列やセントロメアなど)を読むのが難しいかったからです。実は、端から端まで全部読むのは今でも難しい。

特集記事では、この非DNAコード領域の配列解析技術の記事も載っています。

その中に、全ゲノム解析は作物などの品種改良にも使えることが書いてあります。
交雑や放射線照射、変異原となる化学物質などによる通常の品種改良では、ゲノム内でランダムに突然変異が誘発されます。どこがどう変わったか調べるのが大変だということで、今のところ、安全性の検査などに法的な縛りはありません。

調べる方法があっても現実的でなかったわけです。
(一方、いわゆる古典的な遺伝子組換え技術を使った場合は、どこがどう変わったか調べる方法がありますから、いろんな規制を作ることができるという理由で種々の縛りがあります)

ところが、ゲノム解析が簡単になってくると、古典的な品種改良の場合でも、どこがどう変わったか、短期間、かつ安価にわかるようになります(今でも網羅的解析ができないことはないが大変)。

そうなったとき、遺伝子組換え技術に反対してきた人たちはどう出るのでしょう? どう見ても、古典的な品種改良の方が遺伝子組換え技術よりゲノムに与える変異率が高いわけですから、変異原や放射線による品種改良はもとより、自然に起こる交配や交雑だって検査の対象にしないとけいないはずです。

(もちろん、品種改良によりどこが違ったかはわかるけど、その変化したところの意味を探るのは大変。中立的な変化なのか、「良い」のか「悪い」変化なのか、多分わからないでしょうから、法的に縛るのは難しいかも。遺伝子組換え作物なら、変化した場所はもとより、その変化によりどう影響を受けるかの意味も比較的わかりやすい)

市民運動家さん、がんばってね。




2012年04月ですから4ヶ月も前の話ですが、ライフというバイオ屋さんがおもしろいアンケートを載せています。
○1000ドルゲノム解読アンケート あなたならどうする?
http://www.invitrogen.jp/enext/120418.shtml?CID=EM_120418_next

「1000ドルで自分のゲノムを解読できるとすれば、あなたはこのサービスを利用しますか?」 という質問です。
回答者は250人と少ないのですが、この分野の研究者、技術者、ポスドク、学生がメインです。
楽しいコメントも書いてあります。

結果の詳細は上記サイトも見てもらうとして、近い将来、ゲノムの配列が1000ドル程度で読んでくれる時代が来るそうです。
ただ読んでくれるだけでは宝の持ち腐れですから、きちんと解読してもらわないと意味がわかりません。

その「意味」のうち重要な部分はコードDNA領域です。
いまでも安価で良心的な1塩基多型の解析サービスはありますので、それらとリンクさせながら、各遺伝子の持つ意味を教えてくれるサービスが始まるかもしれません。

それだけでなく、非コードDNA領域も今回の特集記事にあるように解析が進んでいますから、この領域の注釈も必要になるでしょう。




非コードDNA領域の中で私のお気に入りはAlu配列です。
これはゲノムの1割を占め、100万コピーもある反復配列です。

なぜお気に入りかというと、このAlu配列は進化的に見て霊長類にだけあることです。恐竜が絶滅した最後の大絶滅期に生まれたらしい。

霊長類だけというのもおもしろいのですが、この反復配列はいたるところにあり、遺伝子間やイントロンだけでなくエキソンの中にも入り込んでいます。

Alu配列のゲノム内への挿入メカニズムはまだよくわかっていませんが、結果としてあちこちに挿入されているのは確かです。


Alu配列の挿入によって新たな機能を獲得することもあるでしょうが、病気になることもあります。

コードDNA領域に挿入されると、その遺伝子が変異しますから、通常、機能を持たなくなることが多い。

非コードDNA領域であるイントロンに入った場合でも、そのイントロンがエキソン化する例が報告されており、これも悪い影響の方が多いでしょう。

さらには、Alu配列がイントロンに挿入されることで、本来相同的な場所で組換えが起こらないといけないところが挿入による影響でずれてしまって、本来とは違う場所で組換えが起こる(非同一相同的組換え)こともあります。
そうなるとその遺伝子の内部で部分的に失われて短くなったり、部分的に重複して長くなったりします(同時に起こる)。

そんな厄介なものや現象が結構多いわけです。




トンデモさんの話によると、よく脳の数%しか使われていないので、使われていない領域を開発するとよいこと(能力増強、新能力や超能力の獲得)が起こるような話が出てきます。

同じように、遺伝子は数%しか使われていないので、使われていない領域を活性化してやるとよい、といった話もよく出てきます。


しかし、ゲノムに占める狭い意味での遺伝子領域が数%なのであって、残りの98%ぐらいは非コードDNA領域なんだからタンパク質のアミノ酸配列は直接コードされていません。
この辺を勘違いして、脳開発を唱えている人がいたりするからおもしろい。

(数万あるすべて遺伝子は一生の間、少なくとも1回は発現します。なので、「一生発現しないで眠っている遺伝子がある」というトンデモさんの主張も間違いです)

もし非コードDNA領域が活性化して(「トンデモ」スイッチオン理論が好きな人ならスイッチがONになって)コードDNA領域に変化するのであれば、恐ろしいことが起こりそうです。

「遺伝子オンで生きる」「遺伝子が目ざめる生き方」は「サムシング・グレート―大自然の見えざる力」により「眠っているDNAを目覚めさせ」「スイッチ・オンの生き方」が可能だそうです。
具体的には「笑う!遺伝子」があって、「笑って、健康遺伝子スイッチON!」にしたり、「愛が遺伝子スイッチON」にしてくれるらしい。

笑えば笑うほど非コードDNA領域がコードDNA領域に変化するのかな?

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