やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS この一冊でiPS細胞が全部わかる トーチウッド人類不滅の日

<<   作成日時 : 2012/08/29 23:33   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 4 / コメント 0

「この一冊でiPS細胞が全部わかる」(青春新書INTELLIGENCE)
スゴイタイトルの本ですけど、そのままの内容です。
新書としては高い方ですけど、それなりに情報量も多い。
iPS細胞を理解するのに必要な基礎的な話から応用まで、広い範囲をカバーしています。
私の後期の授業の内容と被っていますので、新しいネタのところは使わせてもらいます。


この一冊でiPS細胞が全部わかる (青春新書INTELLIGENCE)
青春出版社
金子 隆一

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by この一冊でiPS細胞が全部わかる (青春新書INTELLIGENCE) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



昨年書いた本にiPS細胞やそれを理解するのに必要な話題をふんだんに取り入れました。
サブタイトルにも「iPS細胞」がついています。







iPS細胞がどんなものかは、ここでは詳しく書きません。
よく似た細胞にES細胞というのがあるのですが、そのES細胞との比較、倫理的な問題点などもかなりのページを割いて説明してあります。

これらの細胞を説明するためには、細胞の全能性とか万能性とか多能性とかを理解しないといけません。よく似た言葉ですから、結構こんがらがります。

再生医療というからには人の臓器の形をした交換パーツが作られていると思いがちですが、今のところiPS細胞やES細胞を使っても三次元臓器をつくることはできません。

それでもiPS細胞の応用範囲は広い。
いちいち引用していればそれこそ本になってしまいそうです。


本書は、iPS細胞を理解するために必要な基礎事項や類似のES細胞の説明をした後、再生医療の本質に迫ります。
歴史も大切ですから、この細胞できるまでの周辺の研究史もまとめてあります。
そして応用が可能なのか、その時の問題点や限界にもふれています。
シメは「完全予測 iPSの未来」で不死の話まで行き着きます。




iPS細胞の発見物語は、他の本にもたくさん書いてあるからか、この本ではかなり素っ気ない。当事者でないからかもしれませんが。

せっかくなので、「やさしいバイオテクノロジー」にも書いてあることを
少しだけ引用おきます。

分化した細胞から多能性を取り戻すためには多くの遺伝子発現が関わっているだろうと予想されます。細胞融合を使った実験から、それに関与する遺伝子の存在は示唆されています。

遺伝子は2万以上あります。その中からこれかなという候補を24個に絞ります。

ここで問題です。

1.この24個の中に答えがあるかどうかわからない。もしかしたらないかも
2.もしあったとして、どれが答えかわからない
3.何個かもわからない
4.チェックするためには、お金も時間もかかる。
  なるべく少ない回数で答えを出したい

さて、どんな実験系を組み立てますか?
ターゲットの細胞に遺伝子を入れると、その細胞内でその遺伝子の情報からタンパク質が作られる方法があり、多能性を獲得していればそれと判断できる方法があるとします。
それが24個の遺伝子それぞれで可能だとします。

まず、1をチェックします。
この方法は比較的簡単です。24個全部を多数の細胞に振りかけてやればいいわけです。
そうすると、いくつかの細胞が多能性を獲得しているのがわかりました。
つまり、どれか何個かわかりませんけど、すくなくとも候補の24個の中に答えがあることがわかります。

では1つなのか、複数なのか。

1つだとこれも比較的簡単な実験で検証できます。
それぞれの遺伝子を細胞に振りかけてやればいいわけです。
ただ、24通りの実験が必要ですけど。

こたえは、全滅。

つまり、ここまでの25通りの実験で、答えは24個の中にあるけど、1つではない。複数だとわかります。
ただ、2個なのかそれ以上なのかわからない。その組合せもわからない。
例えば、4個が答えだとすると、その組合せは膨大です。
何通りあるか計算してみて下さい。それだけの実験をやろうと思うと大変です。お金が持ちません。時間もありません。

ではどうやって見つけるか。

彼らは1回24通りの実験で答えを見つける方法を実行し、4つの答え、山中因子を見つけています。

さて、どうやったのでしょう?

その答えはこの本には書いてありません。多くの類書に書いてあります。
「やさしいバイオテクノロジー」にも。




再生医療のうちの一つの分野が移植用の臓器をつくることです。
しかし、先にふれたように、自分の細胞を使って三次元の移植用臓器をつくることはまだできません。
そのつなぎとして行われているのが生体間移植や脳死移植です。
ということで、脳死移植の話題も避けて通れません。
さりげなく、結構過激なことまで書いてあります。

これまで絶対に不可能だと思っていた分化細胞の多能性を獲得がiPS細胞の出現で可能になり、iPS細胞の研究が進むと、自然とその周辺の理解も進んでいきます。
これまでとは違った方向で癌細胞の研究も進んでいます。癌化のメカニズム解明や癌治療への応用も着々と進んでいます。

一番可能性のある応用例は、病態モデルの細胞をつくることでしょう。
先のブログで書いたように、病態モデル動物はいろいろと作られ、それによって病気の理解がかなり進みました。
○動物に魂はあるのか 動物に「うつ」はあるのか
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_14.html

これは丸ごとの動物(多くはノックアウトマウス)を使うわけですが、そうではなくて、iPS細胞の多能性を利用して、臓器単位で病態モデルとなる細胞をつくることも可能になってきました。
これだと、患者さんの細胞を使って病態モデル細胞をつくったり、人工的に遺伝子改変した細胞から病態モデル細胞をつくることもできます。
病気のメカニズムの解明だけでなく、薬剤による細胞の応答機構も調べることができますから、製薬分野でも応用できます。

さらには、外から観察したり、麻酔をかけて切り開くことで見える部分ならいいのですが、どうしても直接見ることのできない組織もあります。たとえ、画像解析ができたとしても。
その場合でも、iPS細胞を使ってその組織に分化させて調べることが可能になるでしょう。

遺伝子発現を調べるためには、細胞を染めたり、細胞を固定したり、細胞を壊したりする必要があります。いくら画像解析ができても、あるいは手術で組織を摘出しても、限界があります。
病態モデル細胞なら、染めようが壊そうがお構いなしですし、物理的、化学的処置も可能です。

あるいは将来的に発症する可能性が高いゲノムをもっている人の細胞を使い、発症メカニズムや治療法などの開発にも応用できそうです。

iPS細胞から移植用の丸ごとの臓器ができなくても、細胞や細胞シートを移植することで、それなりの成果もあがっています。幹細胞を組織のそれなりの場所に移植してやると、自然と分化していくことも一部では観察されています。特に神経系の細胞では、もしかしたら比較的早く応用されるかもしれません。




困ったのは生殖細胞でしょう。
男性のiPS細胞から精子、女性のiPS細胞から卵子ができるのはそう驚かないわけですが、男性のiPS細胞から卵子が、女性のiPS細胞から精子もできるとなると、ちょっと待てよとなります。
原理的には女性からY染色体を持った精子は作れませんが、もしかしたら近い将来、染色体組換えができるようになるかもしれません。そうなれば、ある細胞のX染色体を別の細胞のY染色体に置き換えることで実現しそうです。
男性からつくるY染色体を持つ卵子がどのような挙動を示すかは、、、、あまり考えない方がいいのかもしれません。
ヘタしたら、胎盤もできるかもしれない。
そうなると、もはや倫理的な問題だけにとどまらないでしょう。


そして、もう一つ困った組織が脳です。
先にふれたように、PS細胞から脳の細胞に分化させ、その細胞や細胞シートを移植することで、壊死した脳細胞を補充したり作り直したりすることは可能かもしれません。
これは福音か地獄を見るかわかりませんが、それなりに期待できそうです。
すぐに移植に使うのではなく、当面はアルツハイマー病やパーキンソン病の病態モデル細胞としてならすぐにでも応用できそうです。

しかし、iPS細胞から三次元の脳そのものがつくられるようになると、ちょっと怖い。
これも一歩手前で、脳そのものではないけど、それに近い組織を作り、例えば記憶のメカニズムとか知るための実験には使えそうです。
あるいは、神経科の疾患モデル細胞や細胞群のようなものができるかもしれません。

しかし、ある程度の脳もどきができてくると、そのうち「意識」を持つようになるかもしれませんし、「人格」が誕生するかもしれません。それがどの時点なのかも興味深いけれども恐ろしいことになりそうです。

そして、究極は「脳移植」。


動物を使っても、ヒトの代わりになりえない、かといって、人間を使って人体実験をするわけにはいかない、そういうときにiPS細胞の応用が使えそうです。

ということで、直前の2つのエントリーがここに収束するわけです。

○自己犠牲の人体実験
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_13.html
○動物に魂はあるのか 動物に「うつ」はあるのか
http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_14.html




今のところiPS細胞をつくろうとすると、遺伝子を導入したり遺伝子の発現を外的因子で調節したりする必要があります。ある意味、遺伝子改変なわけです。しかもその改変によってできた細胞から将来的には臓器を作り、移植に使おうというわけです。

この他にも、ノックアウトマウスとかいうかなり残酷な名前の実験動物もいます。これはある遺伝子の働きを無くしてしまう改変を行っています。これにはいろんな方法があります。

一方で、遺伝子組換え作物は、ある植物のゲノムに他の生物種の遺伝子を導入して作ります。
最近では植物ゲノムに別の植物遺伝子を導入することも行われています。

で、本書の「監修者のことば」にも書いてあることなのですが、いわゆる遺伝子組換え作物は強烈に反対されています。一般の人で食べたい、もっとやれ、という人はほとんどいないでしょう。これは食料という自分が食べるものに関わっていることから来る恐怖があるからかもしれません。

遺伝子改変動物や遺伝子改変動物細胞は植物の比ではないほどたくさん作り出されています。応用も実用化もされています。
さらには、遺伝子改変移植用臓器まで作られようとしているのに、それには反対という声は聞こえてきません。自分の細胞を使って、自分のゲノムを改変し、もしかしたらその細胞や組織の一部が癌化する恐れや、うまく定着せずに思ったとおり制御できず暴れ出すかもしれないのに(その可能性は高い)、反対する声は小さい。

このアンバランスさはなぜなんだろう?
この辺を考えるのもおもしろいかもしれない。

いや、本質的に違うんだという人が(遺伝子組換え作物と言っても通常の品種改良と変わらんやん、と言うと怒り出すような人)、多分出てくるでしょう。しかし、遺伝子組換え作物と同様、その本質なるものをうまく説明できる人はいないはずです。
かといって、何でもやっていいというわけでもありません。
一方だけ絶対的に反対というのはおかしいやん、という話です。




最後にアンチエイジング、不死化の話が出てきます。
悪くなったパーツを交換するという意味では、その部分は若返るでしょうし、全体も長持ちするかもしれません。
しかし、若さを保ったまま永遠に死なない体をつくるというのはおそらく無理でしょうし、もしできたとすると、人口構成や社会に与える影響が大きすぎます。

人の不死といえば、WOWOWでおもしろい連続ドラマが放映されています。
トーチウッド 人類不滅の日」という10話もので、7話まで放映されました。
10月中旬に再放送されますので、見逃した人はどうぞ。

こちらは寿命が長くなるというわけではなくて、ある日から突然人が死ななくなるわけです(たぶん人以外は死ぬ)。その設定もおもしろいのですけど、致命的なケガをしても丸焼けになっても死なないとなると、社会的にもおもしろいことが起こります。
死なないけどケガの痛みはあるとなれば地獄ですよね。
殺してやろうと思っても殺せない。死刑もできない。自殺もできない。

それ以上に恐ろしいのは、人類全体の存続にも関わってくることです。
みんなが死ななくなると、そのままいけばおそらく絶滅。
不滅の獲得により絶滅が起こりえるわけです。

物語では、何でこの展開? って話ばかりでもうちょっと辻褄を合わせて欲しいところですが、まぁ、ここに書いてきた話とは関係ない展開です。、


不老不死は多くの人にとって夢なのかもしれませんが、それは一部の人だけが獲得するのならその人たちにとってはいいことがありそうですけど、普遍的になり、みんなが不老不死になってしまいますと、それは奇跡ではなくなります。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
付き合う前にまずチェック!将来「出世する人」の特徴9つ【3/3】
前回の記事、および前々回の記事では、ビジネスコンサルタントの浜口直太氏の著書『あたりまえだけどなかなかできない出世のルール』をもとに、出世する人の特徴9つのうち、6つまでを紹介しました。では、残り... ...続きを見る
恋愛コラムリーダー 〜Love Colu...
2012/08/30 21:01
暴走するバイオテクノロジー
「暴走するバイオテクノロジー」(金曜日) ちょっと古くなりましたが、直前に遺伝子組換えネタが出ましたので、 この本を取り上げます。 帯には「科学は人類を裏切るのか」と扇動的で、 「生命操作」は「制御できない技術」で「第二の原発」との位置づけ。 帯は扇動的ですけど、今までのような勢いが感じられないのが残念。 あれこれ盛り込みすぎなので、焦点が絞りにくい。 遺伝子組換え技術の話がメインです。 ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2012/09/05 23:04
ノーベル賞医学・生理学賞にiPS細胞の山中伸弥先生 おめでとうございます
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を世界で初めて作った山中先生が2012年のノーベル医学生理学賞を受賞されました。おめでたい話です。 すこし遅かった気がしますけどね。 iPS細胞はそれまでほとんどの人が不可能だと思っていたことができたという点で、独創的に画期的な方法を見つけるというノーベル賞の趣旨に最もふさわしい内容です。 ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2012/10/08 19:16
ブックカバーがもれなくもらえます。  祝! 山中伸弥教授 2012年ノーベル医学・生理学賞受賞
しつこいですけど、iPS細胞ネタの続きです。 サイエンス・アイ新書が特別キャンペーンをやっています。 1冊本を買うと、特製ブックカバーが1個貰えます。 ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2012/10/09 21:55

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

関連リンク集

この一冊でiPS細胞が全部わかる トーチウッド人類不滅の日 やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる