やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS 動物に魂はあるのか 動物に「うつ」はあるのか

<<   作成日時 : 2012/08/28 23:35   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 4 / コメント 0

このブログで人間の意識や魂や霊や死後の世界など、あれこれ書いているわけですが、今回登場するのは動物です。
動物にも意識があるのかないのか、動物も痛みを感じるのか感じないのか、はては動物にも輪廻転生するのかしないのか、哲学的や科学的や単なるスピリチュアルの世界や、いろんな本が出ています。
そんな中で、比較的新しい本としてタイトルにある2冊を紹介します。
画像





動物に魂はあるのか (中公新書 2176)
中央公論新社
金森修

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 動物に魂はあるのか (中公新書 2176) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


「動物に魂はあるのか」というタイトルですから、あるのかないのか論じてくれそうです。
哲学的(?)なアプローチです。
「序章」を読むだけでなんだこりゃ? とひっくり返るか、おもしろそうだと興味を持つかどっちかでしょう。

アリストテレスから始まって、多くの「哲学者」が「動物霊魂論」をどのように考えたかの解説が「動物機械論」との兼ね合いから延々と続き、最後に現代人はどう考えたらいいのか、著者の意見が書かれています。

そもそも「魂」ってなにか、を論じないといけないわけですが、アリストテレス以降の哲学者の「定義」をあれこれ議論しています。

現代の動物の哲学といえば、「動物の解放」のシンガーらを忘れてはいけない。私もわけあってこの分野の本を短期間に読みまくりましたが、コンパクトにまとめられています。著者はシンガーらを批判的に引用しておられます。


序章で「いかなる意味でも自然科学的な議論ではない」と断っているように、思想的な話です。しかし、自然科学方面からはある意味この問題に結論は出ていますから、実際にはそれを無視することはできません。上記のように断っているにもかかわらず、自然科学方面からのアプローチも行っておられます。

最後に「わたしを離さないで」が出てきます。これなど言い例かもしれません。

○クローン人間には魂がないのか?
http://yoshibero.at.webry.info/201206/article_7.html

世の中にはクローン人間に意識が無いと思っている人が結構います。
著者は「わたしを離さないで」の小説と映画の違いも適切に指摘しておられますし、クローン技術に関してきちんと理解しておられ、この小説や映画で体細胞クローンの意味ないじゃん、ということもきちんと指摘しておられます。
しかし、この文学がなぜここで出てくるのか、ちょっと理解に苦しみます。こじつけっぽい意義を説明しておられますけど、どうもこじつけとしか、、、。

で、最終的に著者は動物に魂があると言っているのか、ないと言っているのか、それは本書を読んでのお楽しみといいたいところですけど、どうだろう? 本文最後の2ページ分はなるべく読まずに最初からつきあった方がいいかもしれません。




動物に魂があるかどうかはともかくとして、人間だって動物です。動物論をやっていても、最後には人間論に行き着きます。
で、人間に魂があるのか? って話も、この魂なるものがどんなものかと考えることで、意見は分かれます。
心なのか、感情や痛みを感じることなのか、永遠の生命として死後も生き続ける変わらない自分を決めているものなのか、いろいろあるでしょう。

ロボットに魂はあるのかと言えば、とりあえず、今のところないでしょう。感情を持つロボットはどうか? 心を持つロボットは? あるいは感情は持たないけど、見た目人間と変わらず、それでいて人間を超える能力を持っていて、判断に躊躇したり感情的な行動をとっていそうなロボットに心はないのだろうか?(映画「プロメテウス」の主役級のアンドロイド(?)とか)

この本は「霊魂」という言葉を使うことで失敗しているように見えます。




冒頭のアリストテレスですけど、「動物誌」と「霊魂論」を引いておられますが、「動物誌」の引用からの動物霊魂論は強引だと感じました。「霊魂論」の引用も凡人には理解不能でスッキリしない。



人間は霊界を知り得るか
PHP研究所
金森 誠也

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 人間は霊界を知り得るか の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


上の本は動物ではなく人間の「霊界」話が主流ですけど、同じ名字の人(といっても専門分野も年齢も全然違う)を書いています。文庫本も出ています。

この本によれば、アリストテレスの「魂について」(これが先の「霊魂論」とどう関係しているのか知らない)が引用されていて、こちらは明解です(単行本はp96、文庫本ならp72、筆者による邦訳で、読み比べて文庫本の改訳の方がわかりやすいのでそちらを引用します)。

魂があの世からこの世にやってくると、魂はあの世で見たものを忘れる。しかし、魂がこの世を去ったときは、あの世で、この世で体験したことを想起できる。これは丁度かなり多くの人が健康体から病気になったときに似ている。病気になったときには自分が学んできた文字ですら忘れてしまうのだ。これに反し病人が健康体に戻るとき、こうした現象は起こらない。そうしたことからしても、魂の本質すなわち肉体のない生命というのは健康体そっくりだ。他方、肉体は病気と似ている。そこで魂があの世からやってくるとき、あの世で体験したことを忘れてしまうが、この世からあの世にゆくとき、魂は現世で体験したことを忘れないことが説明できる。

明解じゃないですか(私は賛同しませんけど)!
で、「動物霊魂論」を議論しているときの「霊魂」とこの「魂」はどうつながるのだろう?





動物に「うつ」はあるのか (PHP新書)
PHP研究所
加藤 忠史

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 動物に「うつ」はあるのか (PHP新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


動物に「うつ」はあるのか
このようなタイトルですけど、動物実験の話がメインです。
著者は精神科医です。
一般的な病気の診断・治療と言えば、血液検査や画像検査など、可能な限りの検査をし、そのデータを基本に診断し、治療方針が決められます。
その診断や治療方針もあらゆる基礎研究や病理学的な知見を根拠とするわけですが、基礎実験の多くのデータにはモデル動物が使われます。もちろん、それを基にした臨床試験など人間を使った実験結果も使われます。

ところが、精神科医療の場合、訪れた患者さんの話を聞いて、ある権威のある診断基準にもとづいて診断し、治療するわけですが、そうすると、その診断基準をどのようにして作られたかが問題になります。
疾患の性質上、モデル動物を使った確たるデータというのは少なく、したがって、精神疾患以外の病気と比べ、根拠に乏しい。
診断基準があるといっても、それは客観的なデータを使うわけではありませんから、判断する医者によっても診断が異なることも多い。
権威ある診断基準はアップデートされますけど、そこに載っていない疾患はないことになりますので、新型○○というように、新しい病気が過渡期には現れたり消えたりします。

これは過渡期であって、確たる診断と治療をするためには、モデル動物を使ったデータ収集と客観的な診断、治療方法を作る必要があるわけです。

そこで問題になるのは、たとえば本のタイトルにあるように「うつ」を動物実験で解明しようとすると、使う動物が「うつ」になる必要があるわけで、でも本当に動物に「うつ」はあるのか、ってことになるわけです。

遺伝子の変異や相異が原因となる病気は千の単位以上に見つかっています。それが見つかったのは動物実験を通じて得られたデータに依存し、その遺伝子を人工的に細工することで疾患モデル動物が作られ、それを使って診断や治療法などが探られます。
最終的にはヒトで確認しないといけませんが、ヒトで最初から最後まで実験をするわけにはいきませんから、モデル動物というのは非常に役にたつわけです。
このよない疾患モデル動物はたくさん作られている中で、精神科で診断する病気に対する疾患モデル動物が少ないわけです。

タイトルの「うつ」だと、患者がうつだと診断するのは精神科医ですが、その根拠は患者と医師との対話がメインです。先の診断基準に照らして医師が判断するわけです。
この状況を変えようというのが本書の主題です。

もし「うつ」の動物がいたとしても、動物と人間はコミュニケーションが取れませんから、対話によりその動物がうつかどうか診断することはできません。しかし、その「うつ」動物を使って客観的な検査などにより「うつ」だと診断できる方法が見つかり、それがヒトにも応用できるようになれば、患者と医師の対話に頼っていた診断に客観的なデータが加わることになるわけです。



著者は臨床と基礎研究の両方に関わっていると言うことで、両者の違いを綿密に比較している章があります。
私も壁1つ隔てると入院患者さんがいる病室という基礎研究室にいましたから、思い当たることが多々あり、なかなか楽しく読めました。




このような、著者が動物実験の意義を説く理由が「おわりに」に端的に書かれています。

私は、「心の病」という言葉は、いずれなくなるべきだと思っています。病気は体がなるものです。心は脳という臓器の機能です。脳が病気になることはあっても、心が病気になるわけではありません。

賛同できない人は多いと思います。先に書いたような「霊魂論」をやっていたり、心身二元論者には到底容認できる内容ではないと思います。

しかし、これが神経科学、脳科学のいまのところ基本だと思います。

先の引用に続けて、脳の病気と心の悩みは異なることも説明されています。

精神疾患は、たんなる心の悩みとはまったく違います。
「心の病」と呼ばれている状態のなかには、脳の異常によっておきる精神疾患と心の悩みが、いっしょくたにって入っている可能性があるのです。


そのためにも、身体的特徴をきちんと診断できる方法の開発は必要ですが、それには人の観察だけではどうしようもなく、モデル動物の作成がどうしても必要になるわけです。

モデル動物が必要だという話には、動物にも人にみられる精神疾患があるというはずだという前提がないと始まりません。その前提の背景には、動物に「魂」があるのかないのかといった話は吹っ飛んでいます。




心は脳の機能です。
脳はモノで心はコトです。
コトはモノがあって初めて発揮され、モノが変化するとコトも変化します。
コトは単独では存在しません。
あるモノのコトが別のモノに乗り移ることもありません。
(物質の機能で考えるとわかりやすい)

脳が物理的に変化すると、それにともなって心も変化します。
心だけが単独で(脳非依存的に)存在するわけではありません。
脳や身体に依存しない不変の心があるわけでもない。

精神疾患があるということは、心が単独で病になるわけではなく、脳や脳に依存したあるいは脳に影響を与えている身体の何らかな変化あるいは異常が先にあるはずです。


そう考えると、「動物霊魂論」や「動物機械論」が色あせて見えてきませんか?
心身二元論とか心脳問題とかは一部の思想家さんの中だけで議論してくだされば結構です。


「動物に魂はあるのか」の第二章に「デカルトの衝撃」というのがあります。
デカルトはそれまでの「動物霊魂論」を批判し「動物機械論」を展開したという。
しかし、デカルトの動物に関するこれらの議論は失敗していますし、人間の魂論も完璧に失敗しています。

デカルトの思想やその亜流は死んでいます。
デカルトは完璧に間違っています。


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
この一冊でiPS細胞が全部わかる トーチウッド人類不滅の日
「この一冊でiPS細胞が全部わかる」(青春新書INTELLIGENCE) スゴイタイトルの本ですけど、そのままの内容です。 新書としては高い方ですけど、それなりに情報量も多い。 iPS細胞を理解するのに必要な基礎的な話から応用まで、広い範囲をカバーしています。 私の後期の授業の内容と被っていますので、新しいネタのところは使わせてもらいます。 ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2012/08/29 23:33
犬はあなたをこう見ている 最新の動物行動学でわかる犬の心理
「犬はあなたをこう見ている 最新の動物行動学でわかる犬の心理」 先に動物に魂はあるか、「うつ」はあるかという本を紹介しました。 ○動物に魂はあるのか 動物に「うつ」はあるのか http://yoshibero.at.webry.info/201208/article_14.html 今度は、具体的な動物として犬の登場で、その行動学的新理論です。 犬は野生のオオカミから人が作った作品であることは確かなので、 元の種(しゅ)のオオカミの行動が反映されていると思われています。 ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2012/09/01 00:26
魚は傷みを感じるのか? 「動物の福祉」「魚の福祉」
「魚は傷みを感じるのか?」 答えは1ページ目から示唆されています。 というか、読者はとっくに知っているだろうとの前提で書かれています。 このブログを書くのに、この答えをどう書こうかと迷いましたが、 書かないと話が進みませんし、いずれわかりますから先に書きます。 魚は痛みを感じている。 そうすると、「魚の福祉」が問題になります。 釣りや漁や養殖など、あらゆる現場で魚の傷みをやわらげたり傷まないようにしたりといった 配慮が必要になります。 必要か必要でないかという話ではなく、... ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2012/09/06 02:01
ヒトはなぜ神を信じるのか 進化心理学が解き明かす神の起源
「ヒトはなぜ神を信じるのか」 進化心理学者が解き明かす神の話です。 この本の論理は非常に明快で理解しやすい。結論にも納得できます。 著者は大学の研究者でしたが、若くして独立、文筆一本に搾っておられるため、わかりやすい論理で書かれています(翻訳も良い)。本書は大学の研究者時に書かれたものですが、その後、続々と出版されるらしい(翻訳も)。期待できます。 本書は「生きがいの創造」などで感動した人こそ読むべき本です。 この本で本物の科学とはどういうものかが実感できるはずです。 ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2012/09/09 03:19

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

関連リンク集

動物に魂はあるのか 動物に「うつ」はあるのか やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる