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zoom RSS 進化論の何が問題か ドーキンスとグールドの論争

<<   作成日時 : 2012/07/11 00:56   >>

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進化の話を読んでいると、必ずと言っていいくらい登場するのは
ドーキンスとグールドです。
両者とも一般向けの著作が多く、わかりやすさに定評があります。
この2人の比較した日本人の手による本が出ました。
著者はドーキンスの本を読んでいる人ならおなじみの人で、
ドーキンス本の訳者です。

進化論の何が問題か―ドーキンスとグルードの論争
八坂書房
垂水 雄二

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前半はドーキンスとグールドが生まれてから代表作を書くまでの
簡単な歴史です。

後半は両者の学説について検証しています。
ドーキンスは「利己的な遺伝子」、グールドは「断続平衡説」です。

グールドのエッセイなどを読んでいると、やたらと人種差別の話が出てきます。なぜグールドが差別にこだわるのか、それは彼の生い立ちと関係があり、その辺の話が詳しく書かれています。
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両者の訳書のあるほとんどの本の解説が書いてあります。
なので、両者の説を知らない人は、一通りどんな本を書いているのか知ることができて便利でしょう。


この本のタイトルは「進化論の何が問題か」ですけど、
こう書くと、本書にも出てきますが、創造論を唱えている人が勢いづく。

進化論はまだ仮説に過ぎない。
論争が続いている。
科学でない。
だから、正しくない。
わが創造論、インテリジェント・デザイン説こそ正しい。

おいおい、違うだろう。もうちょっとしっかり読めよ。
って言いたくなりますが、
創造論側は「進化論」論争を巧みに利用しています。

ってことで、進化の話をするなら、どうしても創造論は無視できない。
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創造論なんか信じる人は、狂信的な一部の人だけだろう、
と日本にいれば思いがちですが、アメリカは異常です。
ちょっと前の大統領はあきらかに原理主義者でしたし、
もしかしたら近い将来モルモン教徒の大統領が誕生するかもしれません。

p137に、2010年の「ギャラップ」調査結果が載っています。
人間が自然に進化したと思う人 16%
神の導きで進化したと思う人  38%
神が創造したと信じる人  40%

何でこうなるかは明らか。とにかく教育。特に家庭内教育。
親による子の洗脳。


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グールドの「神と科学は共存できるか?」はちょっと物足りない。
言いたいことはわかるんですけど、どっか引いてる。
その辺の事情が、「進化論の何が問題か」にも書いてあります。

一方のドーキンスの「神は妄想である」(The God delusion)はタイトル通りかなり過激です。
読んでいてスッキリします。
無神論者宣言をするのは(グールドは不可知論者)場合によっては命を落とす危険があるわけですから、かなりの勇気がないとできません。その辺の事情は日本と全く違います。
しかし、かなり売れたと言うことは、隠れ無神論者が意外と多い。
もちろん、反論のために勝った人もいるでしょうけど。

神は妄想である―宗教との決別
早川書房
リチャード・ドーキンス

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帯には「あのドーキンスがなぜここまでむきになるのか?」と書いてあります。
ホントにむきになっています。読んでいてひしひし感じます。
この本は本気の宗教否定です。
目次をながめるだけでも、その過激さがわかります。

「進化論の何が問題か」にもこの本の背景や論点がきちんと整理されています。
もちろん、グールドの「神と科学は共存できるか?」との比較も。
ちなみに、グールドによるこの本のタイトルの答えは「できる」です。
なので、ドーキンスはグールドの答えを許せませんから、
グールドの本に対向し、さらに、911への返答として書いています。

ドーキンスにとって、一番許せないのは、家庭内や地域、学校による子供の洗脳なのでしょう。精神的虐待とも言っています。
いや、肉体的な子供への虐待にも宗教は多く関わっています。
実例をあげ、とにかくとことん宗教との対決し、決別に向けた論をはっています。


もう一つ無視できないのが優生学。
ダーウィンのいとこのゴルトンが言い始めた学問ですけど、
ワトソン・クリックのワトソンが長年所属していたコールドスプリングハーバー研究所は優生学の総本山であったことからもわかるように、遺伝子の話をしはじめると優生学も切り離すことができません。
(コールドスプリングハーバー研究所は分子生物学をやっている人なら誰もが知っている「Molecular Cloning」でおなじみの分子生物学の総本山でもある。先月、新版が出ました)

Molecular Cloning
Cold Spring Harbor Laboratory Pr
Michael R. Green

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なので、この本でも後半、対創造論と優生学に結構なページを割いています。
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さらに話題になるのは「社会生物学」。
なんで論争になるの? って感じもあるんですが、創造論とも優生学とも関係しています。なので、進化学の話にもからんできます。
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利己的な遺伝子と断続平衡説といった学説の違いだけでなく、
ドーキンスとグールドはそれぞれの生い立ちが全く異なります。
また、イギリスとアメリカという違いも大きい。
英米とひとくくりにできないくらい、進化学に対する両国の反応は大きく異なります。それぞれの国を主戦場にしている両者による対応も、自然と異なることになります。

本書は、両者の違いを浮き彫りにしながら、論争点を整理し、俗説にありがちな対決色を薄め、共通点、共通の目的を探っています。

学説で言えば、両者が「ねらいをはずした撃ち合い」をしているとし、憎しみあっているわけではなく、お互いに前向きに批評し合うことで自説を強化しています。

どちらかというと環境や歴史など、学説以外の記述が多い。
もちろん、学説の比較もあるのですけど、
タイトルにある「進化論の何が問題か」が深く理解出来るほど
掘り下げているわけではありません。
読み物としては非常におもしろい。




似たような本が2004年に出ています。原著は2001年。
「ドーキンス VS グールド」 (ちくま学芸文庫)
こちらは、翻訳本で、両者の対決色が濃い本です。原著は2001年。

ドーキンス VS グールド (ちくま学芸文庫)
筑摩書房
キム・ステルレルニー

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なかなか刺激的な本で、この本にリストされている読書案内がよくできていて、訳書のある本は片っ端から購入し読みました。
それほど、深く知りたい、と思わせる本です。

こちらの本は、文庫本ですけど、内容的には非情に濃く、両学説の具体的な解説にかなりのページを割いています。

巻末の「解説」もなかなか楽しい。


両方の本に登場し、2人の争いを書いた本がもう一冊あります。
2001年に翻訳本が出ていますから、かなり古い。
しかし、内容的にはまだ読み応えがあります。

ダーウィン・ウォーズ―遺伝子はいかにして利己的な神となったか
青土社
アンドリュー ブラウン

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結局、両者の説のうちどっちが正しいのか?
これは、わかりません。
科学哲学的に言えば、科学に「正しい」はない、となりますけど、
そこまでつっまねなくても、学説として、どちらがよりもっともらしいか。

私個人的には、ドーキンスの説をとっていますけど、
グールドの話もわからないわけではない。
多分、全面的にどちらかが間違っていてどちらかが正解、
というわけではない。かといって、中間というわけでもない。
両方とも根本的に間違っているかもしれない。

どちらの説に重きを置くかで、「生きた化石」「生きている化石」という言葉に対する違和感の持ち方も違ってくると思う。




○ヘッケルの法則と創造論とニセ科学
http://yoshibero.at.webry.info/200707/article_9.html

○利己的な遺伝子
http://yoshibero.at.webry.info/200605/article_9.html

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