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zoom RSS 恐山 死と死者 妖怪

<<   作成日時 : 2012/06/30 03:26   >>

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元気なうちに国内旅行に行きたい場所、1位は屋久島ですが、
この本を読んで、2位が恐山になった。
恐山には以前から興味はありましたけど、
是非行ってみたいと思わせる内容の本です。
著者は曹洞宗のお坊さんです。
お坊さんの多くは世襲のようですが、
著者は会社員から出家得度。継ぐべきお寺を持たない方で、
業界を外からながめることができるそうです。

曹洞宗の総本山・永平寺で20年も修行しておられます。
普通は数年で親のお寺に帰って副住職でもするわけですが、
著者は型破りで20年。想像を絶する人です。
観光客として1日訪れても恐ろしいところなのに、その中で20年。

その間、多くの本を書いておられます。
さらに型破りなことに、2年の修行道場運営を経て、
妻の親が住職をしている恐山のお寺に行きます。
そこで住職代理に。

厳しい修行の場でもある永平寺から
どう見てもつながりがなさそうな恐山へ。
この生き様は奇抜ですけど、
考え方には共鳴できるところがたくさんあります。
ある意味、お坊さんらしくないが、類書にない考察が多い。

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恐山と言えばイタコ。
普通ならイタコしか思い浮かばないでしょうけど、
なんと、曹洞宗のお寺があるそうです。この本ではじめて知りました。

しかし、そのお寺にイタコさんたちがいるわけではなく、
両者につながりはありません。
とはいえ、境内でイタコさんたちが商売しているわけですから、
全く無関係というわけにはいかず、
お寺の宿坊にはイタコさん目的の人々が多く泊まるそうです。

本書は、筆者が20年の永平寺時代を経て7年の恐山時代で
つかみ取った思想の軌跡です。




仏教と言えば葬式仏教。
あるいは輪廻転生。
死後の世界。
霊や幽霊や人魂。

そういう連想が庶民的でしょうけど、本書ではこれらを全て無視します。
信じるに足りない。どうでもよい。もっと大切なことがある。

俗説を懐疑的に検証し、まともな仏教思想の解説もしてくれます。
科学的な態度が見られ、その点、大変共鳴できる考えです。

仏教では死後の世界や霊魂の存在に対し、「無記」を貫くそうです。
あるともないともいわない。

死者と交信できるとか死後の世界を見てきたとかいう霊能者はたくさんいますけど、その人達はどう見ても生きています。生きている人が死後の世界を語っているだけで、死者が死後の世界を語ることはありません。これは道理です。
自分の死はない。ありえない。存在しない。これも道理。

なのに、死後の世界は人気です。多くの人が違和感なく受け入れています。これには、おもしろい話があります。意識や脳科学の話を書くときに書こうと思っているのですけど、ひとつの考えとして、その様に進化してきたというものです。つまり、多くの人が死後の世界を語り違和感を持たないのは、その考えに適応するように進化したからだと。この話は突っ込んで考えないといけないので、別の機会に。


筆者は死後の世界があるというのはおかしい、先に書いたように、生きている人が死後の世界を語っているだけだから。しかし、死後の世界がないという断定もできない。だから「無記」なのですけど、これは永平寺時代までの話。

恐山時代では、この考えが少し変わってきます。
恐山では道元原理主義が通用しません。




恐山と言えば、誰でもある程度イメージできるでしょうけど、
それが実際の恐山と同じかどうかはあやしいですから、
この本では、恐山で7年間も住職代理をしている筆者によるさまざまな角度から解説が載っています。
観光ガイドブックより詳しいでしょう。

読者に実際の恐山をイメージさせてから、永平寺時代とは違った角度でみた死や死者についての考察が読めます。

大きな違いは「死者は実在する」ということ。

といっても、幽霊や霊魂や死後の世界の話ではありません。
かといって、哲学的な存在論でもありません。


「死者は実在する」の説明に多くのページを割いています。

どういうことか。

死と死者は違う。
死は死者に埋め込まれている。
死は生者にはない。
死は生者に欠落している最大のもの。

ところが、、、、恐山では、、、、

死は生者の側にある、
死者は実在する。
恐山の死者が生者に死を貼り付けてるれる。

書いてみれば陳腐なまとめですけど、
その意味は、本書を読んでのお楽しみ。




ひとつ納得できないことがあります。些細なことですけど。
っていうか、この本を読んでここに突っ込み入れる人は、
あまりいないと思う。

ある出版社が「日本妖怪大百科」を企画していて、
恐山を取材したいとのこと。これを著者は即座に断っています。

ちなみに、恐山と言えばそにある曹洞宗のお寺のことになるそうです。
そして、そこの住職代理が著者。
なので、恐山の窓口と言えば著者。
恐山への問い合わせや質問なども著者へ。
イタコに対する質問等も、普通イタコさんに直接連絡とれませんから、著者へ。もちろん、お寺とイタコは関係ないので、それなりの対応。

で、ある出版社というのは、おそらく講談社。
そこの出版企画を聞いて、即座に断っているわけです。

心霊話ならまだわかるが、なぜ妖怪なのだろうと思ったのです

う〜ん。ちょっと違和感。たぶん妖怪を誤解しておられるような気が。
この本を見る限り、むしろ取材を受け入れる方が理にかなっていると思うのですけどねぇ。

妖怪を怪獣話や怪物や漫画の世界だと誤解している人が意外と多い。
怪獣や怪物や漫画を卑下しているわけではなく、全く違う分野だと。
著者が妖怪を否定した心情の中に怪獣や漫画を卑下しているようなものが見え隠れして、ちょっと残念。
妖怪現象は、単なるスピリチュアルやオカルトとも違うと思うんですけどねぇ。
出るとかで出ないとかいった単純な幽霊話、怪談とも違う。
なぜなら、妖怪は空想、妄想、虚構のたぐいではなく、生活に根を下ろした泥臭い現実の世界だからです。

大きなお世話でしょうけど、例えば、次のような本が参考になるかと思います。
画像


つまり、むしろ、この本に出てくる恐山こそ妖怪にふさわしいはずです。
著者や霊魂や心霊現象や死後の世界を無視し、幽霊も見たことがないといい、ひたすら世俗の死や死者を思い続けているのであれば、それは妖怪と通じるはずです。
うまく表現でききないのが残念ですけど。

妖怪好きにとっては、ちょっとこの否定と拒否は厳しい。

おそらく、著者がこの件のブログを書かれた時期から見て、
そのままのタイトルの「日本妖怪大百科」のことだと思います。
真ん中にでんと構えている本で、10巻ものです。
画像






どの巻もきちんと取材をしていて、真面目でまっとうな企画の雑誌です。
画像


わざと粗く撮っています。
画像

数々のスポットの中に「恐山」の項目が残っています。
しかし、講談社さんの意地なのか(こうとしか書けなかったのか)、(恐山)と( )の中に出てくるだけで、その説明に天台宗や「円仁」の名前がでてきますけど、曹洞宗や著者が「住職代理」しているお寺の名前は出てきません。


本書には恐山でのさまざまな体験が書いてあります。
イタコさんと話をして崩れ落ちたとか、憑き物が落ちたとか、はたまた壊れたとか、そういった極めて世俗的な話がたくさん出てきます。
思索が哲学的すぎず、実践的で、現実的です。
葬式仏教への建設的な批判や、新しい供養のあり方などにも積極的に書かれています。
そうであれば、なおさら「妖怪」が似合うはずです。

憑物落としと言えば、京極夏彦氏の百鬼夜行シリーズなどで活躍する
京極堂こと中禅寺夏彦。
彼は恐山や下北半島が故郷です。
京極さんが主人公の出自を恐山にしたのには大きな意味があると
思います。
もちろん、水木しげる大先生とのつながりもあるでしょう。
残念ながら、著者は水木サンに対しても誤解されているような気がします。
画像


著者の研究テーマを論じるときに是非とも妖怪も取り入れて欲しい。
そうすれば、新しい発見もあるでしょうし、論考に厚みが増すはずです。
せっかくの取材の機会を即決で断られたのは大変惜しい。

世の中には不思議なことなど何もないのだよ。Mくん。

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