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zoom RSS 免疫学? 「免疫力」だけで突っ走るモルモット科学者の悲哀

<<   作成日時 : 2012/04/23 00:37   >>

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2012年04月20日第1刷
先のコラムで次のように書きました。
○バイオパンク バイオのDIY バイオ技術の個人化
http://yoshibero.at.webry.info/201204/article_22.html
牛痘や性病の診断を発見した物語もその仲間です。自分の体を使って体当たり実験による発見物語は、なかなかおもしろいものです。


この手の物語を集めた本があります。
自分の体を使って実験した「モルモット科学者」の話です。
被差別の人達を利用して行われた卑怯な実験も多数ありますけど、この本は自分自身や家族を材料として体当たりでためした事例集。

自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝
紀伊國屋書店
レスリー デンディ

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笑ってしまう実験から、体当たり実験によりノーベル賞まで取った物語まで、バラエティに富んだユニークな話が満載。危険をかえりみない人間の探究心には関心します。

巻末にモルモット科学者の年表が載っています。日本からはサナダムシを飼って名前まで付けて可愛がっていたあの先生も載っています。
敬虔なモルモット科学者は自分だけで試し、まわりにすすめたり脅迫?したりしないのですけど、この人は違います。

自分の妻と、何人かのポスドクの学生も説きふせて、同じように寄生虫を飼わせた

これが本当なら、今だと立派なパワハラです。ポスドクの立場を考えたら断るわけにもいかないでしょう。前世紀末の話だからしかたがないと言うことなのか?しかし、これはハッキリいって邪道です。
こんな重大なことがさらりと書いてあります。




で、この先生、最近は血液型や水の本が多かったのですけど、新しく出た本には本来の専門である寄生虫のことが書いてあります。
本のタイトルからみて、最近はやりの「ローフード」に警鐘を鳴らしてくれているのかと一瞬思いましたが、全くそういう話ではありません。

毒になる生食、薬になる生食 (講談社+α新書)
講談社
藤田 紘一郎

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生(ナマ)食は時には危険だという当たり前の事がいろんな事例で紹介されています。
最近の傾向から見て、なんだかまともすぎておもしろくない。もしかしたら、これまでに書かれた本と時事ネタを基にしてどなたか別の人が書かれたのではないか、と思わせるような内容です。

寄生虫そのものは、おもしろい存在です。
「目黒寄生虫館」へ行けば、標本や楽しい解説がいっぱいあり、タメになります。
http://kiseichu.org/default.aspx
最寄りの駅からちょっと離れていますから、歩かないといけませんけど。

私が行ったときには係員がいなくて、パンフレットを買いたかったのですが、インターホンを押してその旨告げると白衣を着た人がどこからともなく出てきて買う事ができました。




先の「自分の体で」の本にはサナダムシ博士の研究を次のような興味深い内容で伝えています。

腸内にサナダムシを住まわせれば、自分のアレルギーがよくなると考えたのだ。アレルギーは免疫系の過剰な反応によって引き起こされるが、ある種の寄生虫には免疫系を抑制する働きがある。その証拠に、発展途上国に住む人々は、寄生虫の治療を受けるとアレルギーを発症する場合がある。

ところが、当のモルモット科学者はそう考えてはおられないようです。書かれている内容を見るとどうも違う方向に向いておられます。




氏は多くの本や雑誌などで次のように主張されています。



免疫の約70%は腸内細菌が関与している。
最近、日本人の腸内細菌が減ってきた。
減った原因は食品添加物などの悪い食生活の関与。
その結果、日本人の免疫力が落ちている。

乱れた食生活(食品添加物)を改善すれば、
免疫をになう腸内細菌を増え、免疫力がアップする。



もっともらしいけど、根拠はどこにも示されていません。
この本にもチラホラとこの話が出てきます。
(このトンデモ珍説は再生産され続け、ネット上に溢れています)


この本のタイトルには
「薬になる生食」ともあります。
これにも期待したのですけど、p67あたりにちょこっと書いてあるだけです。しかもそのちょこっとの内容と言ったら、

植物性食品は腸内細菌のエサとなり、結果として、腸内細菌が増えて免疫力が高まるのです

と、例の話に無理やり結びつけているだけです。
かろうじて、活性酸素の話も書いておられますが、これもトンデモ健康説のママです。

地球温暖化説も信じておられるようで、寄生虫の生態が変わったのは、地球温暖化が原因だと真面目に論じておられます。




p174 ノロウイルスの感染を左右している第一の要因は免疫力です。免疫力の高い人は、感染しても症状がほとんど出ません。

とにかく、怪しい免疫力だけで突っ走ります。
先に書いたように免疫力の70%は腸内細菌だそうです。その根拠やメカニズムかそれなりの仮説も全く示されていないので、これが何を意味しているのかさっぱりわかりませんが、とにかく腸内細菌が重要で、それを増やせばいいとのこと。病原性の大腸菌も腸内細菌が多いと大丈夫なんだそうです。

70%の根拠はわかりませんが、残り30%は何なのか気になりますよね。

その答えは、
「自然に触れる」「楽しい生活を送る」「大声で笑う」「適度な運動をする」
だそうです。

「免疫力」の説明は、これで全てです。脱力。

まぁ、そういう話です。




最後に、一連の話と全く違う話題が突如として付け足しのように登場します。

例の「血液型」の話です。
どうやら、この話題を書かずに筆を置くわけにはいかないらしい。

ノロウイルスの感染性と血液型が関係しているそうです。
ある地方で起こった集団食中毒事件を調べると、次のようなデータになった、という報告が紹介してあります。

ノロウイルスの「発症率」
A型 71.1%
AB型 55.3%

ノロウイルスの「感染者」でどの血液型の人の家族にノロウイルスが「伝染」したか
A型 41.4%
AB型 19.2%

発症率 伝染 等の用語の意味がわかりませんが、次のように結論づけておられます。

ノロウイルスはA型の人にうつりやすいが、AB型の人にはうつりにくく、
AB型に感染したノロウイルスは二次感染する力も低下していることがわかったのです。

どんなデータなんだろう?
有効数字が3桁のあるので、膨大な被験者数があるんだと信じたい。
その後、

別のノロウイルスの集団食中毒事件では、O型の人がかかりやすいというデータが出されています。

なんて平気で書いてあります。
一方はA型、一方はO型って結果が出たのなら、
たまたまなだけじゃん、で終わりですよね。

好意的に解釈するならノロウイルスでもタイプが違うと血液型別の感染しやすさも変わるとなるけど、しんどいね。
最初の例で、単に割り算だけなら 55.3%は21/38、19.2%は5/26の可能性がありますけど、AB型なのに最少でも意外と分母が多い。それなら、数百人レベルの話ですよね。ノロウイルスのタイプの違いはどうなんだろう?

ノロウイルスの感染による病気の症状や病態が、人の血液型によって、大きく異なるという興味深い知見が得られたのです。

年齢構成、当時の健康状態、食中毒の原因と考えられているものとの接触の仕方、発症したのならその症状など色々考慮しないといけないでしょうから、ホントにハッキリとした違いが見られたんだろうか?

それに、もし免疫力説が正しいとなると、食中毒事件当時の免疫力によって大きく影響を受けるのではないのでしょうか? 免疫力が高いと感染しても発症しないと言い切っておられますから。たまたま免疫力が低い人が発症しただけってことにはならないの? それもと、AB型の人は腸内細菌が多くて免疫力が高いの?

食中毒になりやすい人、なりにくい人は、血液型で決まってしまうことが考えられるのです。

たとえそれがわかったとして、何の訳に立つんだろう?
食中毒にかかりやすい血液型の人は、具体的に何をやればいいのでしょう?あっ、腸内細菌を増やせばいいのでしたね。すみません。

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