やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS バイオパンク バイオのDIY バイオ技術の個人化

<<   作成日時 : 2012/04/21 00:06   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

2012年02月25日第1刷
楽しい本です。
サブタイトルは「DYI科学者たちのDNAハック!」。
その名が示すとおり、バイオ技術をコンピュータ技術とのアナロジーで語っています。
ガレージでマイコンが生まれたように、DYI科学者やバイオハッカーも自宅のガレージや台所で新しいバイオ世界を切り開き、やがてメジャーになり、世間に浸透すると。

バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!
NHK出版
マーカス・ウォールセン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック! の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



バイオを自宅のガレージで。
とはいっても、ガレージのある家は日本にどれほどあるんだろう?
とひねくれ者はヘンなところで立ち止まってしまいます。
ちゃんと屋根のある離れとかプレハブとか空き部屋の一室とか、
その辺ということにしておきましょう。

バイオをキッチンで。
これなら何となくイメージできます。
キッチンにある機材を使ってバイオ実験を。
とはいっても、小学生レベルのお遊びではなく、まともな実験ですよ。
純粋な基礎実験ではなく、実社会に応用でき役に立つ成果を上げるタメになる実験のことです。
それを、ガレージやキッチンのようなお手軽の場所でお手軽の値段で、というわけです。




朝日新聞の書評が2012年4月15日に載っています。
評者は山形浩生氏。
氏の訳本はいろんな意味で興味深いのが多く、この人の訳本(および解説)を選んで読んだりしています。
「バイオパンク」はノリのいい本で、翻訳もなかなか凝ってはいるのですけど、時折意味の読み取れない訳があります。悪くはないのですけど、内容的にみて、山形氏の訳で読んでみたかったなと思える本です。




バイオテクノロジーの現場といえば、大学や企業の研究所というのが一般のイメージでしょうが、マイコンを個人がガレージで組み立てて作りだしたときのように、バイオ技術も同様に個人レベルでできるようになり、何が可能か、どんな問題があるかなど、多方面から報告しています。

ハッカーといえば一般には悪いイメージが定着していますけど、ここでは本来の意味でのハッカーが使われ、DNAハック、バイオハック、遺伝子ハック、バイオパンクの世界を紹介しています。

単なく個人レベルでの隙間を狙った応用というだけではなく、二重らせん構造を発見したワトソンとクリックもその仲間に入れています。

牛痘や性病の診断を発見した物語もその仲間です。自分の体を使って体当たり実験による発見物語は、なかなかおもしろいものです。しかし、これからのバイオパンクは自分や家族を犠牲にするようなバタ臭い実験ではなく、もっと洗練されています。




日常的に使うバイオ機器は比較的安価ですけど、それなりの分析機器となると高価で、とても個人で購入することはできません。
そこで、個人レベルでも使えるような安価で、かつそれなりに使える機器の開発も紹介されています。
サーマルサイクラーなどは中古品も出回りだしたけど、それでもまだ高い。だから、もっと購入しやすいものを、って話も出てきます。
しかし、いまや大学や企業の研究所ではサーマルサイクラーはひとり一台以上の時代ですから、どの研究室でも余っていて使われていない機器が転がっていると思います。移転の手続きさえクリアできれば、ただで手に入ることも可能なのでは?




第7章は「遺伝子組み換え作物はだれのため」。
山形氏も紹介しておられるインドのお話です。
インドでも環境保護主義者がいますから、そのためにアンチ遺伝子組換え運動もみられるそうです。インドでは綿花の栽培が盛んなのですが、綿花の栽培には水が大量にいることから、干ばつが起こればたちまち収入がなくなり、その結果、自殺者が半端な数じゃないとのこと。
いくら自殺者が出ようと、環境保護主義者は生態系や生物多様性を守ることの方が大切だと言い出しかねません(っていうか、実際言ってますね)。

どうするか。

おもしろい動きがこの後インドで起こります。
それは山形氏のように読んでのお楽しみということでもいいのですけど、遺伝子組換え作物に対する反対派も賛成派も全く予想していなかったことが、実際に綿花を栽培しているインドの現場でおきたわけです。
結果的にはBt毒素を作る遺伝子が入り込んだ作物(モンサント社の作った遺伝子組換え作物由来の遺伝子を含む)を栽培することになるわけですが、法で裁かれない程度にハックすることに成功し、インドの農民たちは反対派からも賛成派からも解放されることになりました。
インド政府は遺伝子組換え綿花を栽培することを禁じており、特許を持つモンサント社は無断で使うことを禁じており、さらに環境保護者は遺伝子組換え作物を栽培すること自体を拒絶しているのに、そのいずれもクリアし、隙間をぬって自殺者が減るように大成功を収めるわけです。

まさに、この本で言うバイオハック。

こんな魔法のような解決策を見いだした農民たちは、いったい何をしたのでしょう?




DNAの塩基配列を読むコストが下がり、いろんな遺伝子検査をウリにする商売が花盛りです。その中の光と影も焦点を当てています。
日本でも怪しい遺伝子検査ビジネスが横行しています。ぼったくりとしか思えない高価な値段をふっかけながら、得られる情報といえば血液型性格判断程度。つまり全く役に立たない。
乏しい根拠で断定的な診断をする悪徳商法が蔓っています。蔓ってもなくならないのは利用者の方にも問題があり、血液型性格判断のようにひとつの遺伝子で性格が語れると信じてしまうような感性が残っている限り、この手の商売はなくならないでしょう。

中には真面目に診断している会社もあります。その見極めは意外と簡単です。ただし、それなりの知識はいります。




遺伝子組換え技術に反対する人の根拠のひとつとして、バイオテロへの懸念を表明する人がいます。極端な予防原則を持ち出す人はとりあえず無視するしかないのですけど、バイオテロに使われたら困るだろう、というある種の脅しは意外と効果的です。

これに対し、本書ではおもしろい考察をしています。

p238 バイオテロをするのに遺伝子工学は必要ないということだ。必要ないどころか、テロに遺伝子工学を使うなど馬鹿げている。  世界制覇が目的だったら、回り道もいいところだ。


一般に、この論理は通用しにくい。よく似たことはあちこちでみられます。例えばクローン技術。クローン人間がうじゃうじゃができると、兵士専用のクローンや奴隷や労働者専用のクローンが生まれる。だからダメだと。

ホントウにそうなのか?

技術的に難しく、成功率が低いく、コストもかかり手間も時間もかかるクローン技術を使ってわざわざそんなクローンを作る人がいるのだろうか?技術的な側面が改良されたとしても、それでも使う人がいるのだろうか?
普通に考えれば、その辺にいる人を拉致したり、教育したり、育てる方がはるかにマシなことがわかるはずです。
なんでそこにクローンが必要なの?

遺伝子組換え技術も同じです。テロに使いたいのなら、わざわざ手間暇かけ、大金をかけ、リスクを冒し、やっとできてもちんけなものしかできない。もっと手軽で安価に強力なバイオテロ用の武器を作る手段は既にあります。材料は自然界にあります。なにも人工的に組換えを起こさなくても、立派なバイオテロ材料は手を加える必要のない自然の中にあります。

もちろん、このような武器を作ることを推奨しているわけではありません。バイオテロに使われるからこの技術に規制を加え、使えない、あるいは使えても使いにくいように規制するのはおかしいという話です。




バイオハックを無条件で推奨しているわけではありません。メリット・デメリットを公平に検証し、ちまたに流布している誤解を解き、正しい方向に向けていくにはどうすればいいかを語ってくれます。

だけど、、、、

バイオパンク、DIYバイオ、
個人でホントにできるのか、何ができるのか、本気かい?

p166 誰が自分でやるようになるのか、という問がに対する答えならもうでている。「これまでになく多くの人々」だ。過去10年の二種類の技術の発達により、私達が生物学を「自分でやる」可能性は決定的に高まった。


この「二種類の技術」が具体的に何か、気になりますよね。

遺伝子組み換えはやがてノートパソコンを起動するのと同じくらい簡単になるかもしれない


私はそこまで楽観的ではありませんけど、この本は痛快です。

私たちは各人が全ゲノムのスキャン情報をスマートフォンに入れて持ち歩けるようになるだろう。DNAの読み書きがビットとバイトで処理できるようになれば、遺伝学は日常生活の一部になる。そうなったとき、私たちはみな、自分がDIY生物学者になっていることに気付くのだ。


職業分子生物学者は皆失業です。


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

関連リンク集

バイオパンク バイオのDIY バイオ技術の個人化 やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる