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zoom RSS 本の感想:遺伝子組換え技術で作った作物を有機栽培するという考えはどう?

<<   作成日時 : 2011/08/18 23:11   >>

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久しぶりの遺伝子組換えが主題の本です。
遺伝子組換えについて、ちょこっとだけ触れているという本は
かなりあるので、そのうち紹介しようと思っているのですが、
その前に、この奇妙な本の紹介です。
タイトルがかわっていますが、内容もかかなりかわっています。
有機農業と遺伝子組みかえ作物は、どうしても対立し、
お互いに歩み寄ることが不可能のように見えます。
この2つを一緒にしてやろうというのがこの本の主題です。

有機農業と遺伝子組換え食品 明日の食卓
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ざっくり言って、有機農業には限界があり、
かといって捨てがたい面もあるので、
有機農業をよりよくする(「生態学的農業」と呼んでいます)ために
遺伝子工学も利用してやろうという話です。

なので、遺伝子組換え技術を否定するものではなく、
かといって、有機農業を絶賛するわけでもありません。

ちなみに、この本はタイトルにもあるように、遺伝子「組換え」本です。
○テーマ「くみかえの法則」のブログ記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/a34edcc9ad.html

遺伝子組換え技術に関しては科学的にしっかり書かれています。
有機農業については何とも言えません。

有機農法 VS 遺伝子組み換えという対決本はよくあります。
例えば、
○「それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?」を読んで。
http://yoshibero.at.webry.info/200909/article_66.html

この本は対決するのではなく、
融和させ、「生態学的農業」を育てようとしています。

このような一風変わった組合せを融合させようとしたきっかけは、
2人の著者の関係にあります。

2人の著者、夫婦です。
妻のパムは分子生物学や細胞生物学の専門家で、
遺伝子組換え技術の部分を担当しています。
夫のラウルは有機農業家です。
二人とも同じ大学で教える立場の人です。




パムによる遺伝子組み換え技術にかんする記述は
わかりやすく科学的です。
従来の記述と比べて、何がどう違うのかということを
わかりやすく解説しています。

いまや都市伝説化した、非GM陣容による数々の主張に対し、
科学的な検証を試みています。
この手の都市伝説は広く浸透し数も多いのですが、
これらをしらみつぶしに丁寧にわかりやすく見事に反証しています。

非GM本しか読んだことのない人にとって、タメになるところですが、
信者には何を言っても無理かもしれません。
非GMにうさんくささを感じるが、うまく反証できない、
という人にとっては、大変タメになる本です。
非GM陣容が主張するトンデモ説のほとんどを見事に論破しています。
非GM陣容の非科学性に気がついている人でも、
改めて読むことで、問題点を確認することができるはずです。




ラウルによる有機農業に関する説明があります。
収量、収益、品質、そして歴史。
弱点があるはずですが、あまり書かれていません。

アメリカでも日本でも、有機の認定を得るためには、
非遺伝子組換えであることが条件の1つになっています。
つまり、遺伝子組換え作物を有機農法で育てても
有機の認定は得られません。
日本では、有機農業をやっている人たちにとって、
遺伝子組換え作物のタネは悪魔のごとき存在で、
一粒たりとも遺伝子組換え花粉やタネが侵入してくることが
我慢ならないらしい。

アメリカにも同じような人たちがいるでしょう。
ところが、面白いアンケート結果が載っています。
どれを好むか?

1 化学肥料を使った慣行農作物
2 有機農作物
3 有機農法で育てられた遺伝子組換え作物

普通の日本人なら2でしょうし、
遺伝子組換えなら何でもダメだと思っている人が
圧倒的多数でしょうから3なんてはじめから眼中になし。
3を食べるくらいなら1がよい、
と言う結果になるのではないでしょうか。

ところが、3が一番だという。

実際には見た目、価格、味などの影響を受けるはずです。
有機で生産している人なら遺伝子組換えや慣行農法などは
認められないでしょうけど、
一般消費者は意外とドライなのかもしれません。


私も講演や授業などで、次のような問いかけをよくします。

次の野菜で一番食べたいのはどれですか?
順位を付けてください。

○農薬栽培野菜・減農薬遺伝子組換え野菜・無農薬栽培野菜・
 有機栽培野菜 どれを選びますか?
http://yoshibero.at.webry.info/200809/article_1.html

1. 遺伝子組換え農作物 減農薬栽培
2. 通常農法の農作物 農薬適正使用
3. バイオ技術で改良さえた新種農作物
4. 無農薬栽培だけをくり返した農作物
5. 有機農法だけをくり返した農作物

この中に、遺伝子組換え作物を有機農法で育てる、
というのはありません。
このような発想がなかった訳ですが、
これからは1つ増やすことにしましょう。




p80
化学合成で天然化合物を合成することを「不自然」と受け取る人びとがいる。科学理論として信用されなくなって百年以上経った今でも、ネットで検索するとたちまち生命力論の支持者がみつかる。たとえば、化学合成したビタミンよりも自然物から抽出したビタミンのほうがより健康的であるといった信条のように、生命力論の名残はなかなかなくならない

これは、洋の東西を問わず、困った人というのはどこにでもいる
という例ですね。

こういう人にとって、「有機」や「減農薬」や「無添加」ならいいんだけど、
「遺伝子組み換え」なんてとんでもない、となるんでしょう。

p114
イデオロギーや政治的な目的のために科学をゆがめて伝えることは、真摯な議論を台なしにする。悲しいことに、GM食品に関してはこれがしばしば起こっている。

  残念なことに、日本も同様ですね。
  今の政権は、むちゃくちゃやっています。
  修正される動きすらありません。どうなるんだろう?
  ○遺伝子組換え食品に関する不隠な動き 古い話ですけど
  http://yoshibero.at.webry.info/201009/article_20.html

このあと、パムによる本物と偽物の見分け方の解説が載っています。
まっとうな話で、大変役に立つ情報なんですけど、
「生命力論者」には永久に通じることはないでしょう。


遺伝子組み換え技術に反対あるいは疑問に思っている人との対話が
載っています。(例えばp108、p123)
例によって、イライラするくらい非科学的、トンデモ、感情的な意見
なのですけど、パムは落ち着いて科学的根拠をあげて説明します。
残念ながらトンデモさんたちにその説明が通じていないようですけど。


p126
消費者は虫食いのあとのないものを好むので、農家は昆虫耐性植物を栽培したがり、それにこたえて育種かはソラーレンの量が比較的高いセロリを選抜した。残念なことに、そのようなセロリを収穫する労働者は、ときどき深刻な皮膚びょはっしんにかかることがある。

無農薬栽培を続けることでも同じようなことが起こります。
このことは私も何度も書いてきたのですが、
収穫する人々にとっても害になるということは、
今まで書いたことがありませんでした。
確かにおっしゃるとおり。いいことはナンもありませんね。

残念ながら、この本には有機農業を続けていることのデメリットが
書かれていません。
このデメリットを修正するのに遺伝子組換え技術が使えるはずですが、
このような活用方法については一切書かれていません。

それ以前に、なぜ持続可能であったり生態学的農法が有機農法なら
当てはまって慣行農業や遺伝子組換え作物を使うとダメなのか、
よくわかりません。

p223
地元のフードコープではGMフリーという言葉が頻繁に使われる。
皮肉にも「GMフリー」と表示される食品の多くは、有毒な殺虫剤を使っていたり、遠くから輸入されたり、地元のものより栄養価が低かったりする。対照的にGM食物は殺虫剤を使わないし、地元産かもしれない。そしていつか、非GM作物より栄養価が高くなるかもしれない


とうことで、GM作物を有機農法で育てると、いろんな問題点が
解決するかも、って話なのですが、どうなんでしょう?

遺伝子組換え作物を慣行農法で育てるという現行の方法で
十分だと思うのですけど、これをわざわざ有機農法で育てる
という意義がいまひとつ見えてきませんでした。
しかし、この夫婦でないと書けない、おもしろい主張です。




「有機」で関連のありそうな記事一覧

○「それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?」を読んで。
http://yoshibero.at.webry.info/200909/article_66.html

○遺伝子組換え作物を嫌う人にどう説明するか 付:「遺伝子組換え」の記述のある本の感想
http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_40.html

○遺伝子組換え作物に対する認識 共通した誤解
http://yoshibero.at.webry.info/201009/article_65.html

○農薬栽培野菜・減農薬遺伝子組換え野菜・無農薬栽培野菜・有機栽培野菜 どれを選びますか?
http://yoshibero.at.webry.info/200809/article_1.html



○食の安全・安心? リスク 有機野菜
http://yoshibero.at.webry.info/200903/article_16.html

○有機野菜信仰 植物は有機物を栄養素にしている?
http://yoshibero.at.webry.info/200907/article_29.html

○別冊宝島「無農薬野菜、有機栽培農作物が安全でおいしいは神話にすぎない」の記事
http://yoshibero.at.webry.info/200905/article_4.html

○天然なら安全か 木酢液を例にして 無農薬栽培の危険性
http://yoshibero.at.webry.info/200706/article_3.html



○「美味しんぼ第101集 食の安全」を読む 有機農法
http://yoshibero.at.webry.info/200809/article_5.html

○「美味しんぼ第101集 食の安全」を読む 有機無農薬栽培
http://yoshibero.at.webry.info/200809/article_7.html

○「コンシェルジュ」第8巻 野菜戦争 「美味しんぼ」への皮肉?
http://yoshibero.at.webry.info/200904/article_3.html

○美味しんぼと遺伝子組換え その1
http://yoshibero.at.webry.info/201007/article_6.html



○ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本 その後(再掲載)
http://yoshibero.at.webry.info/201010/article_66.html

○ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本(再掲載)
http://yoshibero.at.webry.info/201010/article_65.html

○食糧と食料と食品の行く末 農薬や食品添加物をやめると農業はどうなるんだろう
http://yoshibero.at.webry.info/200705/article_8.html

○永田農法と有機農法
http://yoshibero.at.webry.info/200910/article_31.html

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有機農業と遺伝子組み換え食品-明日の食卓-
有機農業と遺伝子組換え食品、という本を読んだので、感じたことをまとめておきます。 有機農業と遺伝子組換え食品 明日の食卓 (2011/06/28) 不明 ...続きを見る
Whistle Life
2012/07/09 19:28

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