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zoom RSS 生物多様性と遺伝子組換え技術

<<   作成日時 : 2010/10/13 03:16   >>

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生物多様性に関する会議が名古屋で開かれ、
あれこれ報道されています。
ニュースを見る限り、
いわゆる遺伝子組換え作物や細胞融合で作られた作物に対して、
あまり建設的なことが議論されているようには見えません。

遺伝子組換え作物の種類を増やし、在来種と交雑するのなら、
生物多様性が増すのでは?
という冗談もあります。

それはともかくとして、

よくわかりませんが、遺伝子組換え作物が蔓ることは
生物多様性にとって危機なのだそうで、それは、
「汚染」であり「環境破壊」であり、「生物多様性を損ねる」らしい。
なぜかよくわかりませんけど。


以前、農水省がとある団体の抗議に屈していることを書きました。
○遺伝子組換え食品に関する不隠な動き 古い話ですけど
 http://yoshibero.at.webry.info/201009/article_20.html
その団体の抗議文は、もしかしたら、ウケ狙いで、読む人が
ズッコケるのを狙って書かれたのでは、というような内容でしたけど、
今回取り上げる本は、同系列の団体ですけど、もう少しまともです。
しかし、まともだからと行って正しいわけではありませんけど。

遺伝子組換えナタネが在来種と交雑して自生しているという話があり、
この話も、なぜかよくわかりませんが、
「汚染」であり「被害」なんだそうで、
生物多様性を脅かしてもいるらしい。
どう考えても理解に苦しむ内容ですが、
真面目に取り組んでおられる団体があるらしい。

遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン 編
「遺伝子組み換えナタネ汚染 (クリティカル・サイエンス 6) 」
緑風出版
2,100円
2010年10月20日初版第1刷
画像

帯には
不気味なGMナタネの自生拡大
GM作物はなぜ危ないか?
とあります。






この本は「GMナタネの自生拡大」の話がメインですけど、
ここでは、第1部、第2章にだけに焦点を当てます。
遺伝子組み換え技術の基本的な問題点
と題する章です。

1. 遺伝子組み換え技術の危険性議論
小見出しがありますので、順を追ってみていきます。

遺伝子組み換え技術は、危険な技術である。

という文から始まります。

何度も書いていることですけど、この本で扱われている話は
この文にもある通り、
「遺伝子組換え技術」です。
実際の「遺伝子組換え技術」とは毛色が違いますので、
その点に注意して読むと、危険だと断定されている
「遺伝子組換え技術」がどんなものかよく見えてきます。
丁寧に読んでいくと、長大な文章になってしまいますので、
部分的に取り上げます。


2. 遺伝子組み換え作物とは

作り方の問題点です。

導入された遺伝子が細胞内のどこへ行くかは運任せである。

細胞内のどこへ行くか」という表現は斬新ですね。
どこへ行くかわからないと言って不安がらせるためなのか知りませんが、
どこへ行くと考えているんでしょうかねぇ?

これがうまい位置に入り込む確率は非常に低いので何億個かの細胞に遺伝子を導入した後で、使えそうなものを探すことが必要になる。この探索のために抗生物質耐性の遺伝子を一緒に導入して、これを目印にするのであり、このために、抗生物質耐性遺伝子の安全性も問題になる。

ちょっと話が違うのでは?
パーティクルガン法なんかで、
「何億個かの細胞に遺伝子を導入した後」って、
そんなに形質転換細胞がたくさんできるの?
導入された細胞の中から「使えそうなものを探す」ために
抗生物質耐性遺伝子を利用するように書いてありますが、
ちょっと目的が違うような気が。単なる勘違い?

もしヒトの病気治療に重要な抗生物質の耐性遺伝子を作物に入れると、これが環境中にばらまかれて耐性菌が出る可能性があるので、

遺伝子組換え作物の中にある、導入された抗生物質耐性遺伝子が、
どこをどう通って人に感染するような細菌のゲノムにとりこまれると
考えておられるのでしょうか?

技術が改善されて、意図した場所へ外来遺伝子を組み入れることができれば、遺伝子組み換え作物の安全性が高まるかもしれない。

おっ、これは認めておられるのですね。

しかし、まだそのような方法がなく、導入した遺伝子の行方は運任せであり、さまざまな安全性の問題を生じる。

スゴイ断定ですけど、そんなことありませんよ。
これは技術の問題ですから、いくらでも改善できます。
ゲノムの狙ったところに遺伝子を導入する方法はありますし、
抗生物質耐性遺伝子以外のマーカー遺伝子もありますから、
抗生物質耐性遺伝子を使うのはやめ、
植物由来の遺伝子が使われていますよ。

遺伝子組み換え作物がうまくできる例が少なく、実際に流通している遺伝子組み換え作物の種類が限定されている。

なんか違うような。
前段と後段がつながっていませんけど。


3. 遺伝子の働きとは
4. 遺伝子とDNAの関係

いろんなたとえで書かれているのですけど、かえってわかりにくい。
細かい突っ込みはやめておきましょう。


5. 導入遺伝子の働き方が問題
6. 調節部位が問題

プロモータを問題視しています。

これもテクニカルな問題です。

先のマーカー遺伝子などと同じことで、
この人が問題だと言っている点も現在では改良されていますので、
ここで延々書かれている問題は消滅しているか、
近い将来消滅してしまうでしょう。
改良されなくても大きな問題とは思えないのですけど、
こういった反対する人たちの指摘を受けて、
より受け入れてもらえるような技術に改良されていきますから、
こういう指摘方法をいくらしても、本質的に「遺伝子組換えは危険だ」
という話にはなりません。


7. 科学で食品の安全性は立証できない
これは当たり前の話です。
当たり前の話ですけど、例によって陰謀論で片付けられます。


8. 動物実験は必要ないという変な理屈
遺伝子組換え作物に限らず、
作物まるごとの安全性評価を動物実験ですることは不可能です。
この当たり前のことがなぜか問題なのらしく、
いきなり「人体実験」をするのはけしからんということが言いたいらしい。

逆に、食品まるごとの安全性試験を動物実験でやるとしたら、
どんな方法をとればいいのか教えてほしい。


9. 「安全である」は、とりあえずの取り決め
これも当たり前のことですよね。
政府も科学者も安全であるという宣言は絶対しません。

でも、この本では変な方向にいってしまいます。
例によってロシアの子ラット怪死事件の話を取り上げ、

中立であるはずの国や自治体も無視を決め込むだけで、再試験をしようとしない。

またも、断言です。
似たような実験はやられていますけど、
それはないことになっているらしい。
そもそも検討に値する実験ではありませんし、
きちんとした論文になっているわけでもありません。
とにかく、実験方法があるのなら教えて欲しい。

このあと、毒ジャガイモ事件が登場します。
まだこの話、有効らしい。
例によって
免疫力の低下と発育の阻害という結果が出た。
という話です。
何度も取り上げているように、とっくに論破されていますし、
そもそもこんなジャガイモ作る人も企業も誰もいませんから、
この実験そのものもおかしな内容ですけど、
そもそも誰も作らないような方法を使って作られた
害があるとわかりきった作物を使って害がありましたと言ったところで、
遺伝子組換え技術がダメだという話にはなりません。

再試験は行われていない。

当たり前です。誰がこんなヘンな実験するもんか。


このように、遺伝子組み換え作物の危険性を暗示する科学的データに対しては、推進派はこれをもみ消すだけで、決して安全性の再確認を行おうとはしない。
危険かもしれない話を推進派が徹底してつぶしているという現実がある。


いやまぁ、開いた口がふがらない、とはこういうときに使うのでしょう。

安全性の試験はオニのように積極的になされています。
膨大なデータがあり、公表されています。
危険かもというデータも、当然評価されます。
その結果、子ラット怪死事件や毒ジャガイモ事件は
考慮するに値しないと言うだけのことです。


10. 科学が健全ではない
推進派は感情的できちんと話ができる人たちではないらしい。
どっちもどっちという感じがしますけど。
少なくとも、「科学」の土俵で話をしているのなら、
基本的な話は押さえた上で、共通の定義された言語で
話し合わないといつまでもかみ合いません。
「遺伝子組換え」と「遺伝子組換え」は別物ですから、
いつまでたっても健全な話はできないでしょう。


11. 推進派の不勉強
この推進派というのをずっと使っていますけど、
これ、どういう定義なんだろう?
誰を指しているのか不明なんで、よくわからない話が延々と続きます。
お役人は中立じゃないといけないと言いながら、
推進派だとのレッテルを張って独断的に話を進めておられますので、
こりゃ、話になりませんわ。


厚労省のWebサイトに
「遺伝子を遺伝子に組み入れたりする技術」といった表現があって、
これを糾弾しておられます。

この手の話は、私の本や講演やブログで繰り返し扱っていますけど、
確かに厚労省や農水省にもこの手の表現を使う人がいます。

これは、厚生労働省の係官が、遺伝子組み換え技術を正しく理解していないことをはっきり示す文である。この文の「遺伝子」を「DNA」に置き換えてもまだ正しくない。

で、正解は教えてくれないのね?

厚労省や農水省にもピンからキリまでいます。
さすがに研究者や安全性の検査に関わっている人がこんな人たち
ということはないでしょう。
問題は、広報ではないでしょうか?
私が以前指摘した農水省関連でこの手の文章を糾弾したのも
広報でした。


12. 環境への影響も闇の中
例によって、オオカバマダラ事件です。これもまだ有効らしい。
もっと新しい、それこそ「推進派」がギョッとするようなデータを
出して欲しい。
いつまでもオオカバマダラや毒ジャガイモにこだわっていては、
誰も相手にされませんよ。





「遺伝子組み換え」陣容の中だけで完結している話から早く脱却し、
実際に存在する「遺伝子組換え」陣容に飛び込み、
分子生物学の基本概念や用語をきちんと理解し、
実際に使われている技術を正しく理解し、
オオカバマダラや毒ジャガイモや子ラット怪死事件や
ここには登場しませんでしたけどトリプトファン事件などは
キレイさっぱり捨て去り、
すぐにでも改善できる、あるいは改善可能な技術を取り上げて
反対するという戦略もキレイさっぱりあきらめ、
遺伝子組換え技術にこだわらず、
他の品種改良に使われている技術にも目を向け、それらと比較し、
その中で遺伝子組換え技術の位置づけをきちんとし、
この技術特有の問題点を整理した上で反対運動をなさると、
より効果的ではないかと思います。

蛇足まで。

○テーマ「遺伝子組換え」のブログ記事
 http://yoshibero.at.webry.info/theme/50d24de1d2.html

○テーマ「くみかえの法則」のブログ記事
 http://yoshibero.at.webry.info/theme/a34edcc9ad.html

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内 容 ニックネーム/日時
紹介された団体は、ちょっと前まで市販納豆や豆腐に遺伝子組み換え大豆が使われていないかという調査をやっていましたね。これが面白くて、遺伝子組換えの証拠が出てきてしまったんですね。それで、こんなにも皆さんの口に遺伝子組換え食品が入っていると警告を出して大騒ぎしようとしていました。覚えておられるでしょうか。
しかし、よく考えてみますと、もともと遺伝子組換え大豆は毒であるわけはありませんので、危険なわけは無いのですよね。その結果、この調査運動は遺伝子組換え大豆は危険じゃないよという情報を私たちに提供してくださった貴重な運動だったようです。
それに気がついたのかどうか、最近ではこの調査のことをあまり口にしなくなりました。その結果、川田さんは組換え菜種に飛びついたんでしょうか。大豆も確か川田さんが主導していたように記憶してますが・・。
しかし、私も組換え菜種がそれほど生存力の強いものであるかどうか疑問に思っています。どうみても、それほど大変な勢いで日本国内に広がっているとはあの調査結果を見ている限り見えないのですよね。
とおりすがり
2010/12/07 08:25

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