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zoom RSS 美味しんぼと遺伝子組換え その2

<<   作成日時 : 2010/07/13 02:17   >>

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○美味しんぼと遺伝子組換え その1
 http://yoshibero.at.webry.info/201007/article_6.html
の続きです。
今回は、「美味しんぼ」が遺伝子組換えをどのように解説しているかの
検証です。
画像


遺伝子組換え技術の説明をした後、
いろんな「問題点」を指摘しています。

まずは、人体に対する安全性の問題。
毒ジャガイモとスターリンク。
残留除草剤の有害性。
除草剤耐性の害虫の発生。
周囲の作物への影響。
生物特許。
自殺種子技術。

わかる人にはわかるでしょうけど、
もう語り尽くされた古い話題ばかりです。
簡単に論駁できる話題ばかりです。




具体的に見てみましょう。

まず、遺伝子組換え技術はどんなものかというと、

ある菌の遺伝子の一部を取って、大豆の遺伝子に埋め込んで、
除草剤に強い性質を持つ大豆を作るなどの技術


なんだそうです。

あいかわらず、「遺伝子に遺伝子を入れる」という、
例のトンデモ説明です。

私がいくら言ってもどうしようもないのですけど、
このブログでも授業(試験問題)でも講演でもこの話を使います。
そんなバカな、という反応もなきにしもあらずですけど、
ウソじゃないでしょ。
この手の説明をする人がいまだにいるのです。
どうしようもないですね。

こんな認識で始まるわけですから、
編集長さんの言う「科学的根拠」がどんなものか、読まなくてもわかるでしょう。

違う種の物の遺伝子を人工的に組み込んで、
種の違いを超えた、これまでにない品種を作り出すものです


例の、種の壁を越えている、云々の話です。
これも、ブログでも授業でも講演でもよく使います。
こんなホラー話に引っかかる人がいるわけないじゃない、
と思うでしょうけど、
このホラー話を信じている人がいるわけです。

うは、不自然じゃないか

紋切り型の反応ですね。




少し前に、チョコッとだけ書いたのですけど、

○遺伝子組換え作物を嫌う人にどう説明するか 
 付:「遺伝子組換え」の記述のある本の感想
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_40.html

科学と技術の話ですから、
やっぱり基本的なことは押さえておかないと、話が通じません。
すくなくとも、「ゲノム」がわからないとどうしようもない、という考えに
説得力があると思っています。

「ゲノム」さえわかれば、
「菌の遺伝子の一部を作物の遺伝子に埋め込む」なんて
説明は逆立ちしても書けないわけですし、
「種の壁」も、もう少しまともに書けるはずです。




で、人体に対する安全性の第一の「根拠」は毒ジャガイモの話です。
いや、笑ってはいけませんよ。
とっくにお蔵入りかと思っている方も多いでしょうが、
どっこい(古い)、まだ生き残っています。
知らない人にはなんだか分からないでしょうけど。

なにやらデータらしいのも載っています。

先に
害虫に強くした殺虫毒素を持つジャガイモ、トウモロコシ、綿など
いろいろ作られています


とさりげなく説明してから、

害虫を殺す毒性を持つが、人間に害がないとされてる
遺伝子組換えジャガイモをラットに与えたところ


臓器への影響や、免疫力が低下し病気にかかりやすくなったという
結果が発表された


この流れだと、ジャガイモだけでなく市販されているトウモロコシなどでも
同じように臓器への影響や免疫力の低下を引き起こすかも、
と誤解してしまいます。

実際、「このジャガイモを作ったのは誰だあっ!貴様はクビだっ!
というようなシッカリ誤解したコメントがあります。
(このジャガイモを作ったのは、上記のデータを出した人で、
 市販されている審査に合格したジャガイモではありません)
罪作りな描き方です。

この短い引用の中に、多くの突っ込みどころが隠されています。

この話を持ってきて、
遺伝子組換え技術一般の問題点を指摘しようとしていますが、
それは無理です。

確かに害虫を殺す毒素を作る遺伝子組換え作物が市販されていますが、
この「毒素」と、このラットに食べさせた遺伝子組換えジャガイモの
「毒素」とは全く別の物です。

話の流れから、同じもののように誤解してしまいますけどね。

安全性のチェックは、個別に行われます。
このラットがおかしくなったというジャガイモは、市販されていません。
科学的に意味のあるデータで、このような結果が出たのなら、
単に市販されないというだけの話です。

そもそも、このラットに食べさせたジャガイモに導入された
遺伝子から作られる植物由来のレクチンは、
哺乳類一般に有害な物です。
レクチンにもいろんな種類がありますから、
その有害性も千差万別です。

害の少ないのを使ったんだとの言い訳もありますけど、
結局、害のあるタンパク質の遺伝子を導入して作ったジャガイモを
ラットに食べさえたらやっぱり害があった、という、
きわめて分かりやすい話に過ぎません。

つまり、遺伝子組換え技術の問題点だというわけではなく、
単に使い方を間違うとマズイよ、というだけの話で、
毒を作るようにすると毒作物ができるのは当たり前です。
品種改良ならぬ、改悪です。
いくらなんでも、こんな商品を開発・販売するところはないでしょう。

市販されているジャガイモやトウモロコシで、
臓器への影響や免疫力の低下」が見られたわけではないことは
はっきり書いておかないと、誤解してしまいます。




この話には続きがあって、
ここまで、ラットに対して害があったという前提で話をしていますが、
実は、「害があった」という点にも疑問があります。

マンガでは、ランセットの論文を引用した形を取っており、
臓器への影響や免疫力の低下」の「結果が発表された
としていますけど、これは違います。
たしかに「臓器への影響」というのは載っていますけど、
免疫力の低下」は載っていません。

実は、この話がこじれているのは、
通常のルールを無視して、データをマスコミ発表し、
センセーショナルに報道されたことから、
このデータに対して、いろんな憶測が飛び交い、
社会的にも問題となったからです。

ならばと、ランセットが特別にどんなデータなのか載せて、
一般の審判に任せようとしたわけです。

本来なら論文として載るようなデータではないのですけど、
とりあえず載りました。
どれほど特殊な論文かは、掲載されて号を見れば簡単に分かります。

Commentary
Horton, R., Genetically modified foods: “absurd” concern or welcome dialogue? Lancet, 354, 1314-1315 (1999).

Research letters
Ewen, S. W. B. and Pusztai, A., Effect of diets containing genetically modified potatoes expressing Galathus nivalis lectin on rat small intestine. Lancet, 354, 1353-1354 (1999).


Editorial
Health risks of genetically modified foods. Lancet, 353, 1811 (1999).

Correspondence
Lachmann, P., Health risks of genetically modified foods. Lancet, 354, 69 (1999).
Malcom, A. D. B., Health risks of genetically modified foods. Lancet, 354, 69 (1999).
Feldbaum, C. B., Health risks of genetically modified foods. Lancet, 354, 70 (1999).
Schellekens, H., Health risks of genetically modified foods. Lancet, 354, 70 (1999).
Brunner, E. and Millstone, E., Health risks of genetically modified foods. Lancet, 354, 71 (1999).

Ewen, S. W. B. and and Pusztai, A., Health risks of genetically modified foods. Lancet, 354, 684 (1999).

で、マスコミ発表では、
発育不全と免疫機能機能の低下(リンパ球の増殖反応)が
話題となりましたけど、
ランセットには臓器の重さを比較したデータしか載っていません。
日本人が好きな「免疫力の低下」のデータは公表されていません。

そもそも「免疫力」なんて「力」はありませんから、測れませんけど、
そういう意味だけでなく、とりあえず測られたリンパ球の増殖云々
というデータも、載っていません。
編集者らの記事にもあるように、もともと不備のある論文なわけで、
臓器の重さなら何とかなっても、
「免疫力」まではさすがに載せられなかったのでしょう。

よく読んでみると分かるのですが、臓器の重さにも問題があります。
そもそも、実験計画、実験方法、結果の解析のいずれもがずさんだと
いろんなところで指摘されています。

たとえば、
遺伝子組換えジャガイモとそうでないジャガイモで比べてはいますけど、
栄養成分が違っていたり、食べさせたラットの数が少なすぎたり、
コントロールのエサも普通のエサではないし、と散々で、
実験ごとに結果がバラついた理由の説明がないなど、
データ解析にも不備が見られるとされています。

一般向けの本など(よく見かける「オオカバマダラ事件も含めて)
○ 岡田吉美著「新植物をつくりだす」(岩波ジュニア新書) 2001年3月 \780
○ 三瀬勝利著「遺伝子組み換え食品の『リスク』」(NHKブックス) 2001年3月 \970
○ 川口啓明、菊池昌子著「遺伝子組換え食品」(文春新書) 2001年5月 \680
○ 浜本哲郎著「はやわかり遺伝子組換え」(広文社) 2002年12月 \1,680
○「サイアス」(朝日新聞社)2001年2月号
○ 大塚善樹著「遺伝子組換え作物 大論争・何が問題なのか」(明石書店) 2001年10月 \2,000
○ 鎌田博著「遺伝子組換え作物の食品としての安全性」(「遺伝」裳華房)2001年11月 \1,600
○ 渡辺正他訳「遺伝子組換え食品 どこが心配なのですか?」(丸善)2002年7月 \2,100
○ 農林水産省農林水産技術会議事務局編「組み換え農作物早わかりQ&A」2002年4月 無料
○ 農林水産省農林水産技術会議事務局編「くらしのなかのバイオテクノロジー」2001年4月 無料


ということで、しょっぱなから躓いています。

人体に対する安全性の第一の「科学的な根拠」とやらは、
この程度だったわけです。

そもそも、ある研究者が独自に作った遺伝子組換え技術を使って作った
毒ジャガイモをラットに食べさせると、ラットが変になった、という話です。

その話が、なぜ遺伝子組換え技術そのものの食の安全にかかわる
科学的な根拠になるのかサッパリわかりません。

くどいですが、
安全性のチェックは、個別の品種ごとに、開発段階ごとに行われます。
レクチン遺伝子を導入しようという発案の段階で蹴られるだけです。

ラットなどの動物実験で安全性を確認する場合、
いろいろ難しい問題があります。
このブログで最近指摘しているように、
そもそもナマ食の動物と加熱食のヒトでは、
生理的な機能に開きがありすぎます。
毒物に対する抵抗力にも違いがあります(これはまだ書いてていません)。

ジャガイモはラットが好んでナマで食べる餌ではありません。
そのジャガイモを無理矢理食べさせるわけです。

ある構造のわかっている一つの化学物質なら何とかなっても、
作物丸ごとの有害性を試験する実験系を組み立てるのは
実は容易ではありません。
短期毒性でも長期毒性でも。

ヒトは、ジャガイモをナマで食べませんよね。




次は、スターリンク事件。
これについては、
団体が「美味しんぼ」の間違いを丁寧に説明しておられます。

○美味しんぼ(FSIN)
 http://sites.google.com/site/fsinetwork/katudou/oishinbo

その後も、トンデモな解説が続くのですけど、もう疲れました。
余力があれば次回に。


とにかく、

ゲノムの理解
他の技術との比較

たったこれだけの視点を導入するだけで、簡単に解決するはずです。


○遺伝子組換え作物を嫌う人にどう説明するか 
 付:「遺伝子組換え」の記述のある本の感想
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_40.html

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