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zoom RSS ナマ食はカラダにいいのか? その4

<<   作成日時 : 2010/06/23 02:31   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 1 / コメント 11

ランガム著「火の賜物 ヒトは料理で進化した」ネタの続きです。
○ナマ食はカラダにいいのか? その3
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_33.html
○ナマ食はカラダにいいのか? その2
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_30.html
○ナマ食はカラダにいいのか? その1
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_27.html
○遺伝子組換え作物 書籍から ナマ食信仰と進化
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_21.html




前回は、ナマ食主義者と酵素栄養学を取り上げました。
○ナマ食はカラダにいいのか? その3
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_33.html

これに関連して、ナマ食と酵素に関するおもしろい記事があります。
2010年05月23日の「ナリナリドットコム」というサイトの記事です。

生の白菜を食べ過ぎて昏睡状態に、酵素が甲状腺機能を低下させる。
 http://news.livedoor.com/article/detail/4785209/


ナマの白菜を大量摂取して昏睡状態に陥ったんだそうです。
この記事によると、
博士の説明では、女性が白菜を大量に食べたことで、それに含まれているミロシナーゼという酵素を体内に過剰摂取してしまい、昏睡状態に繋がったという
なんか変ですね。
酵素を過剰摂取して昏睡状態?

この記事に対して、ネット上には多くの書き込みがあります。
しかし、この部分に突っ込みを入れたのは見当たりません。

酵素の摂取で昏睡状態?なんだろう?
記事のタイトルも「酵素が甲状腺機能を低下させる

ヘンだなと思い、原著を取り寄せました。

The New England Journal of Medicineの5月20日号です。
Letters to the editor のひとつ。

Chu, M., N. Engl. J. Med., 362(20), 1945-1946 (2010).
Myxedema Coma Induced by Ingestion of Raw Bok Choy.

ナリナリドットコムの記事は「米ニュースサイトMSNBC」の引用です。
元記事は見ていないらしい。

英文の元記事によると、
患者の女性は88歳、中国系、甲状腺機能の既往歴なし。
lethargic and unable to walk or swallow for 3 days
というからには、結構重症。心配になった家族が病院に。

患者は、毎日1.0 から1.5 kg の raw bok choyを数ヶ月間
食べていたらしい。
ナマ、という以外、どんな状態で白菜を食べたかは不明。
このご老人、なんでこんなに食べたかというと、
糖尿病を患っていて、治療によい信じたからだそうです。
(ちなみに、ナリナリドットコムでは「毎日約900グラム〜1.36キロの
白菜を生で食べていたという
」とあります。この記述からも、
MSNBCのbetween 2 and 3 pounds of raw bok choyという記事だけを
参考にし、元記事は読んでいないと推測できます)

体温、血圧、脈拍数、呼吸数、血液検査の結果など基礎データの他、
診断の根拠、経過などが書かれています。
当たり前ですけど。


で、原因の推測。
このおばあさんが食べていたのは、
Brassica rapa chinensis, otherwise known as bok choy or Chineseで、
たぶん、白菜でしょう。どんな品種か不明ですけど。

この手の野菜には猛毒物質が含まれています。
products of glucosinolates, such as thiocyanates, nitriles, and oxazolidines
といった化合物が、甲状腺機能を阻害するそうです。

When eaten raw, brassica vegetables release the enzyme myrosinase,
which accelerates the hydrolysis of glucosinolates;

ナリナリドットコムでは、この説明が、
博士の説明では、女性が白菜を大量に食べたことで、それに含まれているミロシナーゼという酵素を体内に過剰摂取してしまい、昏睡状態に繋がったという。

ミロシナーゼを過剰摂取すると、甲状腺ホルモンを分泌するために必要なヨウ素の取り込みができなくなってしまう。

「米ニュースサイトMSNBC」というのを見つけることができなかったので、
なんて書いてあるのかわかりませんけど、

どうやら、摂取した酵素が体内で毒物を合成したと勘違いしているらしい。

この手の酵素反応はキズストレスで誘導されることが多いことから、
もし大量摂取した白菜の毒物が原因なのなら、
ミキサーで砕いてから飲んでいたのではないでしょうか?
それが原因で酵素のより毒物合成反応が促進され、
昏睡状態にまで陥ったというのなら、何となく納得できます。

日本でもキャベツダイエットなどと称して、
キャベツをミキサーにかけ、ナマの酵素入りだから健康にいい、
とかいった特集がよく載っています。
画像


なんかしらんが、わざわざ毒を作って、
濃縮された毒をせっせと摂るのがいいらしい。


もっとも、今回の症例はそれほど教訓にはなりません。
元記事のタイトルが、
Myxedema Coma Induced by Ingestion of Raw Bok Choy.
ですけど、88歳の糖尿病のご老人が、毎日1キロ以上の白菜を
数ヶ月間食べ続けたという、トンデモない例ですので

This case demonstrates the potential for nutritional factors to have a profound effect on health.

というのも、なんかむなしい。




脱線してしまいました。

「火の賜物」には先人の業績が多数引用されています。
(当たり前ですけど)

その中に、次の本があります。
最近、文庫化されました。


フェリペ フェルナンデス=アルメスト著、小田切勝子訳
食べる人類誌 火の発見からファーストフードの蔓延まで
ハヤカワ・ノンフィクション文庫
\1,050
2010年06月15日発
画像


食べる人類誌―火の発見からファーストフードの蔓延まで (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
早川書房
フェリペ フェルナンデス=アルメスト

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非常にたくさんの食材 ...
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この本は、ナマ食である「牡蠣」の話から始まります(p20)。
現代の数ある西洋料理の中で、調理をほどこさずに生きたまま食べるのは牡蠣だけだと言っていい

牡蠣はわれわれと祖先とをつなぐ食べ物――人類という種の誕生以来、人はこうして栄養をとってきたのだろうと思われるやり方で食べる料理――なのだ

牡蠣が極端な例だとしても、生の食べ物が魅力的なのはそれが奇異だからだ。つまり文明以前の世界、いや人類が出現する以前の進化の段階へと逆戻りするように思われるからだ

こうやって始まる物語は、多くのエピソードを交え、興味深く進行します。
これでもか、怒濤の食文化誌が繰り広げられるわけですが、
(読みにくいですけど)
「火の賜物」のランガムにかかると、

料理は「人類の人間性の指標である」と宣言した。しかし、料理の重要性を指摘するのはほかの著作者と同じく、このふたりも料理((略))グラム食物の栄養価に与える影響を理解していなかった
と手厳しい。

料理した食物にヒトがどう適応したか、料理がヒトの進化にどんな効果を及ぼしたか、あるいは、料理自体がどう進化したかとっいった、きわめて重要な疑問は残っていた

とうことで、これらの疑問を解いたのが「火の賜物」ってことです。
生物学的にみて、料理や火の使用がヒトの進化にどのように
影響を与えたのか、それが問題だと。




「食べる人類誌」でも最初の火の使用がいつから始まったのか
わからない、としています(p31)。

以前、50万年前という数字を出しましたけど、
この本では、北京原人のエピソードが引用されています。

ここに書かれているのを含め、
北京原人の発見物語もいろんな意味でおもしろいのですけど、
もう少ししたら
神父と頭蓋骨 北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展
という翻訳本が出ます。
楽しみです。


神父と頭蓋骨
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脱線ばかりですけど、北京原人がらみということで。

鯨統一郎という異色の覆面作家がいます。
彼の小説の全ての初版本を持っていて、全部読んでいます。
(単行本から文庫化されたいくつかの文庫以外)

そのなかに、「北京原人の日」という異色の本も混じっています。
異色すぎて、タメにならないかもしれませんが。
結末も奇抜です。
一応、北京原人がらみということで。


北京原人の日 (講談社文庫)
講談社
鯨 統一郎

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止まらない・・・途中 ...
歴史ミステリ(?)の ...
いつっもながらいつも ...
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タイトル (本文) ブログ名/日時
モノとコト ホメオパシー 高分子化合物の機能
コメントをいただきましたので、単純な考え方のメモを残します。 ○ナマ食はカラダにいいのか? その4  http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_35.html ...続きを見る
やさしいバイオテクノロジー
2010/08/27 02:07

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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
Brassica rapa chinensis, otherwise known as bok choy or Chineseは青梗菜です。
通りすがり
2010/06/24 00:46
はじめまして。
1年程前にとある事から”酵素”なるものを知りローフードに興味を持ち、最近ではナチュラルハイジーンというものを取り入れている者です。鶴見隆史氏の書籍や、フィットフォーライフ等の書籍を読んだりして色々調べていけばいく程、”酵素”なるものに対して疑問が湧いてきて(そのどれもが科学的根拠がないような気がして)、ネットで調べている中でこちらのサイトにたどり着きました。ちなみにただの一般人なので医学的・科学的な知識は全くありません。
こちらの「酵素栄養学」「酵素」「ナマ食」カテゴリーの記事を拝見して、私が疑問に思っていた事が色々と解析されていて、胸のつかえがとれたような思いです。
しかし、私はナチュラルハイジーンの考え方を(自分の都合の良い所だけ)取り入れ、午前中は果物のみ、昼は山盛りサラダ、夜は好きな物を食べる(肉も魚も大好きです。寝酒も少々)という生活を3ヶ月半程続けていますが、明らかに体調が良く、体重も減り、肌の調子もとても良いのです。これが”酵素”によるものでないとしたら、どのような効果がはたらいているのでしょうか?
また、是非とも書籍「フィット・フォー・ライフ」に対するお考えを記事にして頂きたいと思いコメントさせて頂きました。
小市民
2010/08/26 16:58
コメントありがとうございます。このエントリーの続きがあるのですけど、まだ書いていません。すみません。
食に気をつかい、いい食材を選ぶという考え方だけで体調は良くなるものだとおもいます。少なくとも引用されている著者の「酵素」ではないことは確かです。彼らが言う「酵素」は分子生物学や生化学の酵素とは全く別物です。この「酵素」に対する懐疑的な記事が見当たらないのは、単に「酵素」が知られていないのと、たとえ知ったところで、分子生物学をやっている人なら、ふん、と鼻で笑っておしまい、あるいは、こんなの信じるヤツいるわけないだろう、で終わり、というヒドイ代物だからです。つまり、全く相手にされていません。ここがヘンだよ指摘するのは結構エネルギーがいりますので、ニセ科学好き以外、指摘する人がいないでのしょう。ですので、彼らの本で「酵素」を勉強しても、有益な情報が得られるとはおもえません。
何とか主義とかこの方法でないといけない、といった極端な行動をとらない限り普通でいられるとおもいますし、都合の良いと思うところだけつまみ食いするという考え方は健全だとおもいます。というより、普通の人が書かれているような生活をするのは無理だとおもいませんか?
yoshi
2010/08/27 01:47
早速のご回答、ありがとうございます。
誤った情報がこんなにもまかり通っているのだなー、と改めて痛感しました。

>分子生物学をやっている人なら、ふん、と鼻で笑っておしまい、あるいは、こんなの信じるヤツいるわけないだろう、で終わり、というヒドイ代物だからです。

現状、そんなヒドイ代物を信じている人の方が多いという状況ですね。


ところで、
「たんぱく質(肉・魚)と炭水化物(穀類)を一緒に摂らない、理由は消化の過程が違うため」
という考えについてはどのような見解がありますでしょうか?
また、たんぱく質(肉・魚)は加熱すると消化吸収しにくくなるのでしょうか?
そもそも、肉は体の害なのでしょうか?
酵素の事もそうですが、上記の事が気になって調べているのですが、納得のいくものが見つからないのです。どのサイトを見ても一様に「良くない」としか書いてありません。

食べた物がどのように体内で消化・吸収・利用・排泄されていくのか、本当の事を知るためにはどうしたら良いのでしょうか?
小市民
2010/08/27 14:09
確かにそんなことも書いてありますね。
書かれている通りのことがホントに起こりえるのか、書かれている通りのことがホントにできるのか、少し引いて考えてみてはいいのではないかと。
タンパク質と糖質を分けて食べることが可能なのか。肉が害なのなら、人類はどうなっているんだろうか、とか。
加熱と消化については全く逆です。加熱した方が消化がよく、摂取カロリーも高くなります。
ナマ食をするとやせるのは、栄養不良により栄養失調になりカロリー不足になるなからです。
チンパンジーのまねをしても、人は健康になれません。
いろいろと不安なのなら、その手の本を全て捨てる、ヘンなサイトを見に行かないというのが一番の解決策のような気がしますが。
この手のニセ健康情報は、単にコピーされているだけのものが多いので、似たような記述しか出てきません。
引用している「火の賜物」はオススメです。フィット・フォー・ライフやナチュラル・ハイジーンがいかにバカげているか、懇切丁寧に書かれています。
yoshi
2010/08/28 01:35
ご回答、ありがとうございます。
「火の賜物」 是非読んでみます。私の力で理解出来るかどうかは定かではありませんが。

過去記事も少し読ませていただきました。
栄養学以外の環境問題等に関しても、どうも偽善っぽいなと思っていた部分を一般人にも解る言葉でズバッと切りこんでいらっしゃって、とてもスッキリしました。このサイトに辿り着く事が出来て光栄です。これからも愛読させて頂きたいと思います。
先生のような方がもっと”真実”を世の中に広めて頂けると良いのですが・・・。

ちなみに、先生は「犬」を飼っていらっしゃるのですか?”酵素”のカテゴリーで犬用の商品がとりあげられていたもので・・・。実は、栄養について勉強したいと思ったきっかけが、犬の食事作りだったのです。
小市民
2010/08/28 09:07
どうもコメントありがとうございます。
犬は飼っていませんが興味はあります。
yoshi
2010/08/30 01:42
またまたしつこくコメントさせて頂きます。
お忙しい中、申し訳ございません。

ローフード実践者で本も出していらっしゃる方のページにこのような文章を見つけました。
http://rawbeauty.seesaa.net/article/125476604.html
酵素栄養学(ローフード、ナチュラルハイジーン)では、エドワード・ハウエル博士の説からスタートする、すなわち、「胃の上部(噴門部)のPHは5〜6の弱酸性で、ここでは胃酸、ペプシンの機能は及ばない」というものである。
PHは1〜14だから、5〜6といえばビオレ(?)程度の弱酸性ということになる。
 そして、食物酵素はこの環境で活発に働く、というのが酵素栄養学なのである。

・・・。
私は既にこのような情報が真実として入ってくるような事はないのですが、この方の支持者は非常に多いようです。
実際、新谷氏にしろ鶴見氏にしろこの石塚という人にしろ、科学的根拠の無い事を知識の無い一般人に向けて発信するというのは、いくら言論の自由があるとはいえ、詐欺罪などの犯罪にはならないのでしょうか?
私には、ミートホープやうなぎの食品偽装と同じ程度の罪にしか思えないのですが。
日本には、それを取り締まる法律はないのでししょうか?
小市民
2010/08/30 22:34
法律のことはよく知りませんが、「これで病気が治る」とか「万能薬」といった内容の書籍や商品は山のように売られていますし、ニセ科学はあらゆる分野で見ることができます。
ある程度はダマされる方も悪いというのもあるでしょうし、私は「と学会」のスタンスと同様楽しむことはあっても、訴えたり説得したりケンカしたりするつもりはありません。
こんなヘンな世界があるよと紹介し、現代の科学ならどう考えられるかを提示する程度です。「やさしいバイオテクノロジー」はそのスタンスで書いています。
最近は「ソマチット」に凝っています。
yoshi
2010/09/01 02:13
はじめまして。楽しく読ませていただきました。
というのも最近周囲に菜食ローフーディストが増えてきてて、彼らの言い分が
「肉はしめられた時の悲しみの波動が残っているので、
魂のレベルが下がるので食べない」なので「?」と思うことがとても多いんです。
こうなるとニセ科学というよりもはやオカルトの域ですが、ぐぐってみると意外とそういうことを
書いている人が多くてビックリしています。まあ
言ってる分にはpgrしてればいい話ですが、肉や魚を
普通に食べてる自分に対して、まるで哀れなものを
見るかのような対応をされて、正直「・・・」と思うことも多々あります。
どうしてマクロビやローフーディストって、思想を
他人に押しつけるのでしょうかね?不思議でなりません。
そのあたりはどう思われますか?
ミートくん
2010/09/26 02:24
コメントありがとうございます。
動物は食べてはいけないが植物なら良いという発想がよくわかりませんね。人間のために存在してくれる作物、といった人間中心主義とか。
思想をなぜ押しつけるのかわかりませんけど、悪い意味での宗教だからでは?私の信仰している神様だけが正しくて、他はニセ者だ。布教しなくては・・・・。
食材を育ててくれたり、獲ってきてくれたり、調理してくれたりした人たちに感謝しながら食べたいものを食べるので十分だと思います。
yoshi
2010/09/26 05:47

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