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zoom RSS ナマ食はカラダにいいのか? その3

<<   作成日時 : 2010/06/22 03:44   >>

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ランガム著「火の賜物 ヒトは料理で進化した」ネタの続きです。
○ナマ食はカラダにいいのか? その2
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_30.html
○ナマ食はカラダにいいのか? その1
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_27.html
○遺伝子組換え作物 書籍から ナマ食信仰と進化
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_21.html




生食主義者というのがいるそうです。
(我々の業界では、「生食」と聞くと「生理的食塩水」を思い浮かべますが
これは「ナマの食事」のことです)
「ローフード」(ナマの食品)を絶賛する人たちです。
栄養素の話をする人もいますし、生きた酵素を話題にする人もいます。
あるいは、ダイエットに。

前回書いた料理仮説を検証するのに、
まず、第1章「生食主義者の研究」から始めまています。

料理仮説
ヒトは料理で進化した。すなわち、火の使用と料理の発明。

料理だけで進化したわけではないが、
料理が占めるウエイトは大きそうだ。

約230万年前、ハビリスの出現
190万年〜180万年前、ホモ、エレクトスの出現。
考古学的証拠から見る限り、まだ、脳が小さいが、
現代人とよく似た飛躍的な進化が認められる。

動物の形態が、その食べるものにより進化した例は、
フィンチの例を挙げるまでもなく、多く見つかっている。
好んで食べるものによって解剖学的特徴や地理的分布が
決まってくる。

ヒトも例外ではないハズ。
ヒト以外の動物は料理することがない。
ヒトも動物の一種である。
人類の祖先が今のチンパンジーのように、
いわゆる天然物を食べて生きていたであろうが、
ヒトがヒトたらしめている理由の一つに、
料理をあげるのは別に驚くべきことではない。
いわれてみれば当たり前のように思えるが、
これをきちんと検証した人がいなかった。

ヒトとチンパンジーなどの類人猿との間に
解剖学的な違いはたくさんある。
たとえば、小さな歯、短い胃腸器官など。
これらは、ヒトが料理した消化のよい食べ物を
食べることに適応してできた特徴であろう。
火による料理を発明することにより、
ヒトの解剖学的な特徴は劇的に変化し、
進化を促進したかもしれない。



生食主義は、単なる人類進化学の話だけでなく、
現代人の病理の話でもあります。

動物はナマ食です。これは間違いありません。
人間だって動物です。
では、ヒトはナマ食で生きていけるのでしょうか?

生食主義者は、単なる菜食主義ではなく、
徹底してナマで食べる主義だそうです。

いろいろおもしろいエビソード
栄養不良、危険なダイエット、性的不全、毒素や病原体感染の危険性
などが紹介されていますけど、
ここでは、このブログでも触れたことがある「酵素栄養学」に
しぼって引用しましょう。

生食主義には多くの障害があるにもかかわらず、人気がある。
それを補うメリットがあると説く人達がいるからです。

p26にハウエルが登場します。

1948年に出した本で、植物は「生きた」あるいは「活発な」酵素を含んでおり、生で食べると体のなかで有効に働くと説いたベジタリアンのエドワード・ハウエルの疑似科学的な考えを、多くの人が支持している

ハウエルはこのブログに何度か登場していただきました。
○テーマ「酵素栄養学」のブログ記事
 http://yoshibero.at.webry.info/theme/dd610793bf.html

ハウエルは酵素栄養学の提唱者で、日本にもその信者は多い。
体内酵素と消化酵素、洗剤酵素、ミラクルエンザイムなどと
聞き慣れない造語で理論武装?し、
数多くの書籍、雑誌やサプリメントが販売されています。

いずれもそれなりに科学的であるらしいことが書かれていますけど、
その根拠は、ハウエルしか唱えていない、ランガムが言うところの
「疑似科学的な考え」しかありません。
画像



彼の支持者は食物を通常摂氏45度から48度より下の温度で調理する。そこを越えると酵素の「生命力」が破壊されてしまうという。科学者の目から見れば、食物の酵素が消化や体内の細胞の働きを助けるという考えはナンセンスだ。胃や腸で酵素そのものが消化されてしまうからだ

ランガムは控えめに「科学者の目から見れば」と書いていますけど、
中学生並みの理科の知識があれば、簡単に分かることでしょう。


また「生きた酵素」という考えは、かりに食物の酵素が消化器官で生き延びたとしても、私たちの体になんらかの意味で役立つには代謝機能が特定されすぎているという事実を無視している

ハウエル酵素栄養学では、体内の酵素は有限であり、
その酵素が尽きるときが寿命としています。
ですから、体内酵素を節約しないといけないらしい。
生のものを食べると、そこには生きた酵素があるので、
それが代役となり、体内の酵素が節約できるのだそうです。
もしそうなら、植物に含まれている酵素が
ヒトの代謝機能に役立つことを期待しないといけないわけですが、
そもそもヒトの酵素と植物の酵素の働きが違いすぎて、
役に立たないという話です。

基本的には、ヒトに必要なタンパク質は、全て、
ヒトの細胞がヒトのゲノムの情報に従って合成しています。
食べたタンパク質は分解され、その部品が合成に使われますが、
食べたタンパク質が機能を保ったまま働くことはなく、
その働きを期待するという機能もありません。

酵素栄養学では、生まれたときに酵素は用意されていて、
小出しに使うらしい。
一説によると、膵臓から分泌される消化酵素だけでも
1日に60〜70グラムといわれています。
60グラムとして、1年で22キログラムですね。
3年で66キログラム、標準的なヒトの体重を上回ってしまいます。
膵臓だけが作る酵素が、いったいどこに保存されているのでしょう?

いや、保存されているのではなく、一生のうちに合成できる量が
決まっているのだという説もあります。
もしそうだとしても、数グラムのサプリメントに「生きた酵素」は
ミリグラム単位しか含まれていないでしょうから、
この少ないサプリメントで「節約」なんて、不可能でしょう。
ナマの野菜を食べたところで、もともと酵素は微量で働く
タンパク質ですから、そんなに含まれていません。


生理学者が「生命力」や「生きた食物」という考えを支持しないにもかかわらず、多くの生食主義者はこれを受け入れて生食に励んでいる

日本国内の信者は多い。
非常に高価なサプリメントが売られています。


もっとも、ハウエルの哲学は低温の調理を認めることで「生の」食材を、まったく熱を加えていないものより食べやすく、美味しく、層化しやすくしているのであるが




ハウエルの主張はほとんど科学的には当てになりませんけど、
エスキモー(イヌイット)の生活が頻繁に紹介されており、
イヌイットは、ほとんどナマのものを食べるという主張から
ハウエル酵素栄養学は
それなりにもっともらしい話に仕上がっています。

しかし、それもランガムにかかってしまうと、
しかし、ここにも誇張があることがわかった」(p39)
と木っ端微塵です。

西洋化されていないイヌイットの食事法に関するもっとも詳しい研究は、ヴィルヒャルマー・ステファンソンが1906年から何度かコッパー・イヌイットの居住地を探検したときのものだ

その後、延々とイヌイットの生活が紹介されています。

ハウエル本を読んでいて、唯一説得力を持ちそうな話が、
イヌイット(ハウエルの時代はエスキモーですけど)のナマ食です。
しかし、もうだませません。
「酵素栄養学信者」にとって、頭の痛い反論でしょう。
完璧なまでに、イヌイット説は崩壊してしまってます。








ゆがんだ生食主義者の紹介のなかに、
フランケンシュタイン」が登場します。
映画ではなく、小説の方です。

「フランケンシュタイン」の著者メアリー・シェリーの夫が
「火の賜物」に登場します(p27)。
この人は、「肉食は多くの社会的弊害のもととなる言語道断の習慣
だとし、料理によって肉食が実現したのだから、
料理をしない方がいいと主張しています。
ヒトは牙や鋭い爪をもたないし、
ナマ肉を好んで食べるわけではないことから、
肉食は「明らかに自然に反している」と論じたそうです。
現代でもありそうな話ですね。
ちなみに、メアリー・シェリーは1797年生まれの19世紀の人です。
料理をすることで「暴政、迷信、商業、不公平」など
人間的な問題が生じたということらしい。
いろんな人がいるもんです。

この夫の考えに影響を受け(受け入れた?)、
メアリー・シェリーが作り出した怪物は、
そもそも食物を生で食べるベジタリアンだった」と紹介しています
(p211 注20)。

小説「フランケンシュタイン」の副題は、「現代のプロメテウス」です。
そのためか、「」が重要な場面で何度か登場します。
「フランケンシュタイン」の解説本はいろいろありますけど、
誕生物語や哲学書や詩を読む怪物、言葉を覚える怪物、家族などの
テーマで論じられることが多く、
火を使う料理に注目したのはたぶんないのでは?

その点で、これは興味深いテーマかもしれない。
この注20では、
木になっているか地面に落ちたベリー類を探して食べていたが、あるとき物乞い達が残していった焚き火を見つけ、料理によってごみの味がよくなることを知った
怪物は、自分は本物の人間とほとんど変わらない。ちがいはいくらか粗野なものを食べても生きていけることだ、と宣言している
とあります。後で確認しとこ。

ちなみに、このブログにもフランケンシュタインは登場しています。
あれから、解説本や映画のDVDが増えました。
なのに、感想はまだ書いていません。
○フランケンシュタインと生命科学 関連本02
 http://yoshibero.at.webry.info/200811/article_1.html

○フランケンシュタイン関連 書籍と映画DVD リストと画像
 http://www2.biglobe.ne.jp/~ashida/bioinfo/PP/PP-F.pdf
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