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zoom RSS 海外で受ける幼児の脳死心臓移植医療は美談なのか

<<   作成日時 : 2010/06/17 00:14   >>

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○「孤高のメス」と脳死移植
 http://yoshibero.at.webry.info/201006/article_15.html
の続きです。
日本では移植例が圧倒的に少ないのと、
小さなサイズの臓器が調達しにくいことから、
海外で臓器移植を受ける例が、いまでも報道されています。
2010年5月22日の朝日新聞によると、
○「臓器移植のための渡航「自粛を」 WHOで決議採択」
 http://www.asahi.com/health/news/TKY201005220108.html
WHO総会で、臓器移植目的の渡航は自粛するよう
決議を採択したそうです。
もともと2009年に採択される予定が、新型インフルエンザ騒ぎで
延期されていました。
日本独特の医療と言われている生体間移植についても
規制を求められたそうです。
このWHOの決議の話があったので、昨年、2009年、
政権崩壊間際に、ほとんど審議なしに法改正がなされました。
参考:
○「WHO:臓器提供指針案を採択」
http://mainichi.jp/select/science/news/20100523k0000m040024000c.html




かなり前ですが、「いい話」をクイズの中に取り込んだテレビ番組を
何気なくみていると、
幼児の脳死心臓移植の話が出てきました。
出演者全員が泣くという異常な雰囲気でした。

日本人が海外でする脳死心臓移植は美談なのでしょうか?
お金の力で他国の臓器を横取りする行為ではないのでしょうか?

この手の番組で違和感(怒り?)を覚えたのは、
心臓移植を受けた本人と、その家族の視点しかないことです。
もう一つの視点が完全に欠けていました。

新聞も相変わらずです。




そんな中、ちょっと情けない事件がありました。
広島を舞台にした事件で、2010年06月07日に報じられました。
肝移植募金で集めたお金を横領したという事件で、
逮捕者が出ています。

移植待ちの男性は、現在19歳。
2歳のときにバイラー病と診断され、
1999年に肝移植を受けることを決意。
半月あまりで目標額(約2千万円)の募金が集まり
2000年、海外渡航して移植を待ったがドナーが見つからず帰国、
投薬治療で病状が落ち着いたそうです。

報じられている内容しか分かりませんから、実際の所不明ですけど。
この場合、移植は急を要するわけではなかったらしく、
移植でしか助からないというわけでもなかったらしい。

孤高のメス」であれば、すぐ隣でドナー見つかれば、
適合性など関係なく、即、肝移植がなされたことでしょう。




いまのところ、日本では幼児の心臓移植は基本的にできません。
なぜなら、移植に使える心臓が供給できないからです。

日本の脳死移植に関連する法律では、
臓器提唱者となれるのは民法で遺言が認められている
15歳以上となっています。
したがって、14歳以下のサイズの心臓は日本の市場にはありません。
小さいサイズの心臓が必要なときには、
そのサイズの生きた心臓がある国へ行ってもらう(買い取る)しか
方法がありません。

そんなわけで、テレビでよく美談になる幼児の心臓移植は海外で
移植されることになるわけです。

これはよくない、WHOからも警告を受けそうだ、
ということで、法改正がなされ、
今から一ヶ月後の2010年7月17日から
日本でも小さいサイズの心臓移植ができるようになります。




いろんな移植医療がありますが、
脳死心臟移植は他の移植医療と本質的に異なります。

心臓は動いていないと移植に使えません。
生きた心臓が必ず必要になります。
生きた心臓は生きた人にしか存在しません。
死んだ人の心臓は止まっいるので、移植に使えません。

生きた人間から、自発的に心臓が動いていてい心拍もあり、
血色もよい、そんな患者さんかに麻酔をかけ、
メスを入れて心臓を取り出すことで、生きた心臓が調達されます。

最近でも、来月からゴーサインが出ている
日本での心臓移植を待てないのか、
募金活動が始まったとのニュースが報じられています。
05月25日と27日の朝日新聞によると、
心臓移植に必要な1億5千万円の街頭募金が始まった
というニュースが、美談のように報じられています。

また、06月04日には、5月に米国で心臓移植を受け、
退院したとニュースが報じられています。
もちろん、美談仕立てです。

患者や家族が生きるために手段を選ばないことに対し、
とやかく言うつもりはありませんし、悪いことだとも全然思っていませんが、
報じる時は、それなりの配慮は必要だと思います。




現実は「孤高のメス」と違いますから、
免疫的に適合する移植用臓器はなかなか見つかりません。
海外で移植を受けると決まっても、
移植用臓器が見つかるとは限りません。
見つかるまでの状態というのは、
つまり、早く見つかってほしいと願うことは、
ひとりでも多くの幼児に死にかけてくれと願うことでもあります。

誰かが死にかけてくれなければ移植用臓器は調達されません。
また、死にかけてくれと願うわけですが、
ただ単に死んでしまったのでは、心臓移植に使えません。

幼児が脳死状態になる原因は、
脳梗塞のような成人の病気はまれですので、
不慮の事故か親などによるの虐待が多いと言われています。

つまり、ある時突然脳死になるわけです。
そんな不幸な人がより多く誕生することを願い続け、そして、
不幸にしてその状態を体験する家族に当たれば、
深い悲しみのもと脳死を受け入れてくれ、
臓器提供を申し出てくれた家族がいてくれないといけません。

そのような家族の犠牲と悲しみがない限り、
移植に使える心臓は誕生しません。


かの地でも心臓移植を待ち望んでいる幼児がたくさんいるはずです。
日本からその国へ行って心臓移植を受けるということは、
その心臓提供者と同じ国の同じように心臓の提供を待っている
幼児をおしのけて、お金の力で奪い取ることになります。


そんな話が、なぜ美談になるんでしょうか?


死んでいった人やその家族の視点が決定的に欠けてます。
幼児の移植されたわけですから、死んでいった人も幼児でしょう。
幼くして亡くなった家族の悲しみの視点がありません。

また、助かったはずの、かの国の人に対して申し訳ないという
視点もありません。

以上、出演者全員が泣くという、異常なテレビ番組を見た感想でした。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
私も別に美談とは思いませんが、お金を使って臓器を買い取ることが非情で非道のように書かれても同意しかねます。
実際、お金で売っている人がいるわけでしょう。
つまり「悲しみ」もお金で換算可能だということです。
換算できないなら、売る人はいません。
あなたにとってはそうでも、売った人にとってそうとは限りません。

人の命は地球より重い、などと言った人がいます。
でも、そこまで価値があるかと言われれば、違いますよね。
人一人の命のために地球を滅ぼしていいんですか?
人一人の命など、その程度のものです。

これが犯罪なら話は別ですがね。
たとえば人を殺した罪は、金では償えないということで、投獄されたり、死刑になりますから。
roz
2010/07/14 09:34
美談だとは思わないが…
我が子が心臓移植でしか助からない状態であれば、助けたいと思うのが親心ではないでしょうか…
移植するにあたっては、色んなアセスメントもされていて、考えに考えた上の事だと思います。
結局は当事者でないと分からない事だと思います…
コーヒーはホットで…
2010/08/19 22:37
コメントありがとうございます。
ふたつももコメントがつくと、放っておけないので、コメントを残します。
このようなコメントを予想して
「患者や家族が生きるために手段を選ばないことに対し、
とやかく言うつもりはありませんし、悪いことだとも全然思っていませんが、
報じる時は、それなりの配慮は必要だと思います」
と予防線を張っているように、
金で買い取ることを非難しているわけでも反対しているわけでもありません。
金がある人がどのように使おうがどうでもいいわけで、個人レベルの話をしているわけではありません。
WHOから名指しこそされていませんが、明らかに日本向けに出された勧告もあり、その是非や好き嫌いはともかくとして、それに反することをおっぴらに新聞やテレビを使って美談仕立てにするのはどうかなという話です。
個人が脳死移植を受け入れるかどうかと言うことに関しては、はじめから答えはあるわけですから、その点でどうでもいいことで、興味もありません。
問題の矛先はテレビや新聞のあり方、脳死移植の異常さだけです。
手段を選ばず生きのびようとする人が矛先なのではありません。
映画や小説ならメッセージ性がないといけないのでこれもどうでもいいことですが、新聞やテレビがそのレベルではダメだろう、という話です。
yoshi
2010/08/28 01:24

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