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zoom RSS 「それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?」を読んで。

<<   作成日時 : 2009/09/29 02:29   >>

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久しぶりの遺伝子組み換え本です。
「遺伝子くみかえの法則」にあうように
この本は「遺伝子組換え」本です。
つまり、徹底して「組換え」に反対する「組換え」本です。
内容も「組換え」です。決して科学的な「組換え」ではありません。

それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?
筑摩書房
アンドリュー・キンブレル

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『それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?』



対立軸がはっきりしていて、わかりやすい本です。
つまり、
有機農業(オーガニック)対「遺伝子組換え」

有機農業の相手は科学的な「遺伝子組換え」ではありません。
相手にしているのは仮想の作られた敵である「遺伝子組換え」です。

日本人の書く「アンチ遺伝子組換え」と同様の論理が出てきます。
この本のメリットは、著者がアメリカ人と言うこともあって、
アメリカの内情がわかるという点です。
根拠が示されていないので真偽のほどは定かではありませんが、
アメリカ人の「遺伝子組換え」に対する考えがわかります。

また、チャールズ皇太子やヨハネ・パウロ2世のコメントなど、
使う古された有名な言葉も一通りまとめてありますので、
「遺伝子組換え」について歴史も含めて知りたければ、
これほどコンパクトな入門書はありません。
翻訳も読みやすい。

5章構成です。
第1章は人の健康に対する影響(彼らの主張によれば危険性)
第2章は環境への影響(同様に悪影響・環境破壊)
第3章は有機農業への影響(もちろん悪影響)
第4章は「スーパーマーケットでの遺伝子組み換え食品の簡単な見分け方」
第5章は市民運動(もちろん反対の)への参加方法の伝授
 著者は弁護士であり、市民運動家でもあります。




第1章
遺伝子組み換え食品には、健康にとってどんな危険性が
潜んでいるのか?」


一応科学者からのいろんな報告です。
といっても、市民運動家により書かれていますので、
かなり扇動的な文章が続きます。
必要以上に不安をあおろうとして、大袈裟な物言いです。

残念ながら、農水省の入門向け小冊子程度の知識だけで、
簡単に反駁できるような内容しか書いてありません。
しかも、古く、言い尽くされた内容ばかりなので、
新事実は出てきません。
相変わらず、牛成長ホルモン、アレルギー、遺伝子の水平移動、
トリプトファン事件、パズタイ事件といったトピックスだけです。

「遺伝子組み換え食品には、健康にとってどんな危険性が
潜んでいるのか?」
という章で、この程度の事例しか紹介できないと言うことは、
反対運動は行き詰まっているのでしょう。




第2章
動物と植物の遺伝子組換えが混在しているので、
初学者には混乱しそうです。
本質的に異なる技術が交互に話題として登場します。
それが著者の意図なんでしょうが、ちょっとせこい。
弁護士・市民運動家らしく、とにかく扇動的です。
どの項目も必要以上に大袈裟で、不安をあおるのに必死です。
もう少し冷静に書いたほうが説得力がありそうなのに、と思いました。
しかし、その内容は科学的にみてあまり意味がありませんけど。




第3章
これが書きたかったのでしょう。
第1章、第2章と古い話題ばかりでしたので、
あまり力が入っているように見えませんでしたが、
この章からは日本人の書いた「アンチ遺伝子組み換え本」にない、
興味深い内容が続きます。

最初に書いたように、この本の基本は
有機農業 対 「遺伝子組み換え」
です。
非常にわかりやすいですので、
有機農業なら善、「遺伝子組み換え」なら悪です。
ただ、善であるはずの有機農業の良さが、この本から見えてきません。
有機農業であろうと、そうでなかろうと、
栽培する植物種子は品種改良されています。
なぜ有機農業で栽培する種子は良くて、
「遺伝子組み換え」された種子は悪なのか、
この本からは見えてきません。
(その理由は簡単です。敵が仮想の「遺伝子組み換え」だからで、
「遺伝子組換え」でないからです。
そして、有機農業のデメリットは全く書いてありません)

有機農業にとって「遺伝子組み換え」が邪魔になるのは2点で、
遺伝子汚染と有機農薬がつかえなくなることだそうです。
遺伝子汚染については、このブログでも何度も取り上げていますが、
あまり科学的な話題ではありません。妄想のたぐいです。

おもしろいのは有機農薬の話です。
害虫抵抗性の遺伝子組換え作物を作るとき、
タンパク質であるBt毒素の遺伝子が組み込まれています。
Bt毒素が害虫を殺してくれます。
この遺伝子組換え品種を作ろうとしたきっかけは、
長年Bt毒素が農薬として使われていたからです。

Bt毒素は化学合成品でないという、あまり科学的でない理由により、
有機農業で使っていいことになっています。

Bt毒素入り組換え作物が広まると、耐性害虫ができ、
有機農業でBt毒素が効かなくなることを懸念されています。

Bt菌を用いて防虫を行っている有機農家にとっては、害虫がBt菌に耐性を持ってしまえば害虫を駆除する有効な手立てを失い致命的な事態となる。ふたたび有害な合成化学殺虫剤を使わなければならない農家も出てくることだろう

おもしろい論理です。




第4章
スーパーマーケットでの簡単な買い物ガイド
この本の中で、一番のウリでしょう。
アメリカには遺伝子組換え関連の表示制度がありませんから、
このようなガイドが必要なのだそうです。

とにかく、「遺伝子組み換え」作物は食べてはいけませんから、
どうしたら避けられるかのガイドです。
これまでの流れから簡単にわかるように、
そのキーになるのは有機農作物です。
アメリカでの話ですから、日本と事情が異なりますが、
結構と参考になります。

有機農作物(オーガニック)とナチュラルとは異なるという話は
おもしろい。

遺伝子組換え作物の多くはダイズとトウモロコシです。
アメリカでは、いずれも家畜のエサとして大量に使われているので、
人が直接これらを食べる機会はほとんどありません。
直接食べる場合は、遺伝子組換えでない品種が使われています。
たとえば、ホップコーンのトウモロコシに遺伝子組換えトウモロコシは
使われていません(アメリカのような国であっても)。

その次に多いのはダイズやトウモロコシを使った加工食品です。
その中でもコーン油、大豆油は、油ですから、
トウモロコシやダイズ由来のDNAやタンパク質は
ほとんど含まれていません。
コーンスターチやコーンシロップ(果糖ブドウ糖液糖)も糖ですから、
同様です。
ナタネ、ワタはナタネ油、綿実油に使われる程度ですから、
これもそれほど気にすることもないでしょう。

具体的な食品をあげて、「遺伝子組み換え」を避けるガイドなのですが、
以上のような理由で、重箱のスミを突っつくような話ばかりになります。

アスパルテームや果糖ぶどう糖液糖は遺伝子組換え作物由来の
可能性が高いので、これらが含まれている食品は買うな、
とか、
遺伝子組換え作物をエサに育った家畜由来の肉や卵にまで
気をつけろと言われても、これは閉口するしかありません。

となると、もし気にするのなら、
コーンミール、大豆タンパク質などを使った加工食品くらいでしょう。

逆に言うと、この程度ですんでいるわけです。
つまり、このガイドを読めば、著者の意図とは反対に、
なんだこの程度しか食べてないんだったら気にすることないじゃん、
と思えるようにもなっています。


おもしろいガイドの例。
<鶏卵について>
「平飼い」「放し飼い」「自然」などと表示された卵が、
遺伝子組み換え飼料を与えていないと保証する物ではない


どうすればいいかというと
有機認定を受けた卵を選ぶようにしてください

わかりやすいでしょ?
他の食品も似たり寄ったりのガイドです。
とにかく、有機認定を受けたモノならOK。
有機農業を宣伝する本ですから、当然ですね。

有機農産物の危険性については一切触れていませんから、
日本流に言えば有機認定を受けていれば「安心・安全」だ
という主張です。

そういえば、この本には
「安心・安全」というお題目は出てこない(たぶん)。




第5章
市民運動の手引き。
すみませんが、あまり興味がありません。
読んでいて思い出したのは、ゴア氏の「不都合な真実」の最後のほう。
なんかよく似ています。




この本の一番おもしろい点は、翻訳本の監修者かも知れません。
アマゾンでこの本を検索しても、著者と訳者が出てくるだけで、
監修者は書いてありません。
e-honなら監修者の名前が登録されています。


この本の帯に監修者の文章が載っていて、ちょっと楽しくなれます。
(アマゾンの写真は、残念ながら帯なし)
この文章のもとは、この本の最後にある監修者の「あとがき」です。
この「あとがき」は9ページ分あります。
おそらく、本の監修はしておらず、この9ページ分書いただけで
「監修」したことにしているのではないでしょうか?
そう思えるおもしろい文章が、9ページ分書いてあります。

帯やこの「あとがき」を先に読んでから本文を読むことは
お勧めしません。
この本の内容と監修者の文章は全く関連がありませんし
(とってつけたように書かれている最後の1文を除いて)、
かえって混乱します。
監修者の本「動的平衡」を宣伝するだけで、
この興味深い「遺伝子組換え」の解説にもなっていません。
ですから、まったく別世界の文章です。
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