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zoom RSS 健康食品 ヒアルロン酸を食べることに効果はあるのか その5

<<   作成日時 : 2009/07/30 02:28   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 4

食べる・飲ヒアルロン酸を集めています。
今回はヒアルロン酸入りの飴です。
高価な商品も見つけてはいるのですが、ほどほどの値段の商品です。
また、前回に引き続き、
ヒアルロン酸を摂ることのバカバカしさを説明します。
今回は
ヒアルロン酸を食べるとヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現が高まる
と信じている人の話です。

参考
○健康食品 ヒアルロン酸を食べることに効果はあるのか その4
 http://yoshibero.at.webry.info/200907/article_8.html




ロッテそろい踏み。
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SPASHそろい踏み。新入りは一番下。
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うるおいスパッシュ ヨーグルト&アップル
株式会社ロッテ
名称:チューインガム
内容量:8枚
ビタミンC
ヒアルロン酸
栄養成分表:1パップ(8枚)当り
ヒアルロン酸 0.1 mg
ビタミンC 25 mg
128円

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毎度のことながら、
0.1 mg のヒアルロン酸で、どんな効果を期待するんだろう。
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100ショップのヒアルロン酸商品。

ヒアルロン酸 人工軽石
株式会社大創産業
105円
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角質を落として、つるつる素肌

ヒアルロン酸エキス配合」とありますけど、
品質表示欄には何も書いてありません。
画像


何種類か類似品がありました。




今回紹介した軽石にヒアルロン酸エキスをしみこませたり、
以前紹介したヒアルロン酸配合タオルなどは
とりあえず、お遊びでしょう。

一般に、健康食品業界でヒアルロン酸信仰はあついらしい。
直接皮下に注入したりする治療法もあるらしいが、
ここでは食べる・飲むヒアルロン酸にこだわります。

高分子量だと吸収が悪いので、
低分子量化とかナノテクノロジーとかそれらしい言葉で、
分解したヒアルロン酸が配合されていることを
宣伝する商品があります

ヒアルロン酸を食べればヒアルロン酸合成が高まると期待することは、
ハゲの人が髪の毛を食べれば髪の毛が伸びてくれると期待するのと
同じぐらいナンセンスです。

○健康食品 ヒアルロン酸を食べることに効果はあるのか
 http://yoshibero.at.webry.info/200804/article_2.html
 黄金法則から検証

○健康食品 ヒアルロン酸を食べることに効果はあるのか その2
 http://yoshibero.at.webry.info/200905/article_18.html
 このあと検証する学会発表の紹介

○健康食品 ヒアルロン酸を食べることに効果はあるのか その3
 http://yoshibero.at.webry.info/200907/article_6.html
 ヒアルロン酸の合成過程から検証

○健康食品 ヒアルロン酸を食べることに効果はあるのか その4
 http://yoshibero.at.webry.info/200907/article_8.html
 ヒアルロン酸を含む結合組織などの構造から検証

でも、これを実証しようとした実験があります。
なんと日本で最難関大学といわれているT大学の先生の実験です。
(もちろん単独ではなく、
ヒアルロン酸を商品化しているメーカーとの共同実験です。
御用なんちゃら?)

低分子量のヒアルロン酸を食べると
ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現が高まる?!

ここでは、例の実験を簡単に検証してみましょう。




ヒアルロン酸は二糖の繰り返し構造からなります。
グルコロンサンとN-アセチルグルコサミンです。
問題の低分子量ヒアルロン酸の分子量は2000ぐらいだそうです。
二糖単位の分子量は約400ですので、
二糖が5回繰り返したものです。
単糖が10個分です。

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これを食べると、ほとんどが単糖にまで分解されます。
しかし、これはヒアルロン酸合成現場に直接運ばれるわけではなく、
たとえ運ばれたとしても、ヒアルロン酸合成の原料にはなれません。

これらの単糖は最終的には肝臓でグルコースに代謝されます。
もちろん、全部が全部、ってわけではありませんが。




このことを踏まえてT大学の先生の実験を見てみましょう。
何をやったかというと、ヒトの培養細胞の培地に
低分子量ヒアルロン酸を直接添加し、
ヒアルロン酸合成酵素mRNAの発現量の変化を追いかけています。
以前書きましたように、このポスター発表を見に行き、
演者からあれこれ聞いています。

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この実験の前提条件が成り立つためには、
ヒアルロン酸合成酵素が発現している細胞へ
低分子量ヒアルロン酸が直接届いていないといけません。

そんなことは起こりえないですし、
もし起こりえたとすると、途中で免疫の餌食になり、
ヘタしたら命を落としてしまいます。

それでも、困難を乗り越えて、
低分子量ヒアルロン酸が
ヒアルロン酸合成酵素が発現している細胞の所へ行ったとしましょう。


ヒアルロン酸合成酵素mRNAの合成が高まると言うことは、
添加した低分子量ヒアルロン酸が
細胞内の核の中にあるDNAに働きかけたことを意味します。

通常、細胞が取り込める化合物には限りがあります。
アミノ酸、単糖のグルコースといえども、
水に溶ける化合物ですから簡単に細胞内に入るわけではありません。
たとえば、グルコースなら、
グルコーストランスポーターという
ポンプのようなタンパク質が必要です。
これがない細胞にはグルコースは取り込まれません。

直接細胞内に取り込まれずに、細胞内に影響を与えることもできます。
たとえば、細胞膜にあるレセプターというタンパク質に
特異的に結合することで、
レセプターの細胞内部分が活性化し、
細胞内にシグナルを伝達することができ、
最終的に、ある遺伝子のプロモーターを活性化させる、
つまり、ある遺伝子の発現を高めることができます。

さて、低分子量ヒアルロン酸ですが、
でかすぎで、細胞内には取り込まれません。
レセプターがあるという話も聞きません。

低分子量ヒアルロン酸がヒアルロン酸合成酵素の発現を高める
というのなら、
(実験ではヒアルロン酸合成酵素のmRNAの量を追いかけている)
少なくとも低分子量ヒアルロン酸がやってきたというメッセージが
細胞内の核にあるDNAに含まれる3万近い遺伝子のうち
ヒアルロン酸合成酵素遺伝子を見つけ、
その遺伝子の転写を促進する必要があります。
そうしないと、mRNAの量は増えません。

この実験者はこれが起こったと言っています。
不思議です。



もっとありそうなシナリオは(もちろんありそうもありませんが)、
細胞膜に埋め込まれているヒアルロン酸合成酵素タンパク質自身に
低分子量ヒアルロン酸がアタックし、活性化させ、
ヒアルロン酸の合成を高めるという話です。

この実験では、ヒアルロン酸の合成が高まったかどうかは
細胞でも動物実験でも結果は出ていません。
調べた例もありますが、ばらつきが多くて結果が出なかったと
おっしゃっていました。

低分子量ヒアルロン酸によって、
どの程度ヒアルロン酸合成酵素mRNAの量が増えたのか
失念してしまったのですが、
それほど大きな倍率ではなかったような気がします。

2倍程度の違いであれば、
リアルタイムPCR法の限界でもありますので、
(PCRでは倍々に増えていく)
あまり有効な結果として考察できません。




そもそも、ヒアルロン酸の破片であり不良品とも言える
低分子量ヒアルロン酸が、
完成品であるヒアルロン酸の合成を触媒するタンパク質の
遺伝子であるDNAに働きかけるはずだという発想が
どこから出てきたのかがさっぱりわかりません。

何度も例に出しますけど、
ハゲた人が、髪の毛が伸びることを期待して髪の毛を食べる、
というのとあまり変わらない発想だからです。




この実験が正しいのだとすると、
経口摂取した低分子量ヒアルロン酸が吸収され、ふしぶしに運ばれ、
ふしぶしのヒアルロン酸合成が高まることが期待されることになります。

例の黄金法則の通り、
ヒアルロン酸は、健康や美肌にとって非常に重要なものであり、
ヒアルロン酸は年齢と共に減少し、補ってやらないといけない。
そのニーズに応えることができると。

経口摂取するたびに合成が高まるのだとすると、
合成してほしいところにだけ行くわけではなさそうですから、
非特異的に全身のあちこちでヒアルロン酸合成が起こり
何か良からぬことが起こりそうです。
全身の恒常性が保てるのでしょうか。

腫瘍マーカーにもなっていますから、
発がんに結びつかないのか心配になります。


あるいは、ヒアルロン酸合成途中には
中途半端な「オリゴヒアルロン酸」ができていますから、
これがどうしてだかわかりませんが、もし万が一、
ヒアルロン酸合成酵素遺伝子に働きかけ、
発現が高まるのだとすると、ヒアルロン酸合成酵素自身の量も増え、
さらなるヒアルロン酸合成が高まることになります。
これが雪だるま式に起こらないのか、心配になります。
(もちろん、心配しなくていいですが)




もっとびっくりするのは、
バイオの記事を積極的に載せている某新聞社が
この発表をトピックスに選んでいることです。
確かに話題としてはおもしろいですけど、
発表者に取材するだけで、どんな内容はすぐにわかるはずです。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
 「コラーゲン入り」「ヒアルロン酸入り」「糖鎖栄養素」などという食品のバカバカしさにうんざりしているものの一人です。ただ今回の低分子量ヒアルロン酸についての研究に対してはどうも論点が違っているかもしれませんので糖鎖生物学の立場から少し説明させて頂きます。
 このT大学の発表がどの研究室のものかは突き止められなかったので本来の研究目的が不明のままですが、低分子量ヒアルロン酸は単なる「不良品」ではなく高分子量のものとは違った生理活性を持つことが明らかになりつつあります。高分子量ヒアルロン酸から生成した分子量数千の分解産物が糖鎖シグナルになって細胞表面受容体であるCD44などを介して細胞内の伝達系を活性化し、表皮細胞ならば殺菌活性を持つディフェンシンを分泌させたり、癌細胞なら転移を促進するMMPの発現を促進することが報告されています。またTooleら(Cancer Res.64,1229,2004)はこのシグナル系の活性化の結果ヒアルロン酸合成が促進されることを既に報告しております。この一種の正のフィードバックは癌の悪性化進行に関係するのかもしれません。そこで「低分子量ヒアルロン酸」は新規の糖鎖医薬としての応用も考えられております。従って先の研究発表をこのストーリーで眺めると何も不審な部分はありません。ただし、このストーリーを演者が説明できなかったことは不勉強であり(演者は学生ですか? 研究指導者の問題ですねえ)、また御指摘のように結果がrtPCRだけならばお話しになりません。なお、この発表が栄養学的な視点であったり、経口投与を前提としたものであればもちろん論外ですが。
 もう一点、単糖のUDP化が肝臓のみで起こるというのは間違いです。ヒアルロン酸合成系を含め基本的な糖鎖合成系はすべての細胞が持っております。でなければ肝細胞以外の培養細胞は糖鎖合成が出来ないことになります。
たかじィ
2009/08/03 23:33
どうも、コメントありがとうございます。
演者が食品会社の発表ですので、食べるヒアルロン酸の話です。
人工腸管膜への透過性が分子量が小さいほどよいというのと、食べるヒアルロン酸を直接培養細胞に添加したRT-PCRの結果だけです。
腸管から吸収された後、たとえばヒザでの遺伝子発現までの間はブラックボックスだという発表でした。
ですので、「不良品」の記述はご勘弁を。ランダムに分解し、ある程度の分子量のものを「食べる」話ですので。
UDP化の話ですが、別のものと勘違いしていました。このままではマズイので該当箇所を削除しました。
ご指摘ありがとうございました。
yoshi
2009/08/05 00:29
 了解しました。食品会社の発表でしたらたぶん書かれている通りの文脈でしょうね。
 いわゆる「糖鎖栄養素」についてもかなり問題視されていますが日本糖質学会としては会員向けのコメントとして単に「関わらないように」という弱いものだけ(http://hfnet.nih.go.jp/notes/detail.php?no=519)。ネット上ではさも医学的な根拠があるごとくに何の病気に対しても「糖鎖栄養素」が効果がありますよという情報(専門家の目にはほとんどファンタジーとしか思えないレベルの)があふれている状況です。学術的なサイトにおけるまっとうな注意も土砂降りのごときでたらめ情報(しかも藁をも掴みたい人々にとっては一筋の光のような)の前には我々の説得力自体に無力感を感じます。ここのサイトは「食べちゃってどうなるの?」というある意味素人にも分かりやすい視点からの反論であり、大変興味深く見せて頂いております。今後とも体を張った活動を応援しております。
たかじィ
2009/08/06 23:56
どうも温かいコメントありがとうございます。ニセ情報によって経済的損失や場合によっては命まで、という状況を受け入れないといけないのは悲しいことです。
私もある意味コレクションで経済的損失はありますけど、、、
このサイトは私一人ではとても書けません。協力者がいます。「体を張った活動」と思われたのなら、それは協力者のおかげです。
yoshi
2009/08/07 03:36

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