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zoom RSS 「動的平衡」を読んで ヒアウロン酸? コラーゲンは非・必須アミノ酸?

<<   作成日時 : 2009/06/03 03:20   >>

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ちょっと古くなってしまいましたが、「動的平衡」について、
思うことを書きます。
作者は福岡伸一氏です。
ベストセラーになった「生物と無生物のあいだ」を書いた人です。
「動的平衡」は「ソトコト」誌の連載記事が元であること、
「ロハスの思考」なんて本を書いておられ、
さらに本書の最終章でライアル・ワトソンをかなり好意的に
取り上げられていることからわかるように、
そういう系統の方です。
科学者といってもいろんな人がいますから、
なかにはライアル・ワトソンの「百匹目のサル」
というデマにダマされ、信じ切っている人がいることも確かです。
そういう思想の方ですけど、かなり売れているそうです。
帯によれば、
哲学する分子生物学者が問う「命の不思議」
いままで体験したことのない
サイエンス・ストーリー

う〜ん。
帯は編集者が書くものだから著者に責任はないけどね。


動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか
木楽舎
福岡伸一

ユーザレビュー:
概論的内容は、福岡先 ...
生命の謎の解明に向け ...
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著者のBSEや遺伝子組換えに対する考え方は、
「ソトコト」「ロハス」「週刊金曜日」のノリです。
ちなみに、本書は「遺伝子組み換え」本です。念のため。
「遺伝子組換え」本ではありません。


「はしがき」で気の利いたことを書かれたつもりなのでしょうが、
残念ながらスベっています。
(こういうのが巷で評判の「美しい文章」なのだとしたら
ちょっと悲しい)

p132からにも 「青いバラ」の教訓 という節があります。
著者は一所懸命になって青いバラの開発者達を
バカにしようとしているのですが、

その論理がスベりすぎで、議論になっていません。

この方の組換え嫌いがどこから来るのか、
分析するのもおもしろいかもしれません。

著者によるモンサントたたきも醜い。
事実誤認も甚だしく、いちいち引用して反論するのもバカらしい
そんな内容が延々続きます。

分子生物学と関係のない人達にとっては、
書評などによれば、美しい文章で、気の利いた話の連続なのだそうですが、
 (そういえば、「週刊金曜日」にも書評が載っていた)
 (確かに「週刊金曜日」好みの本です)
少しでも実情を知っている人にとっては、
それはないだろう、
という話がたくさん出てきます。




p235
得意の動的平衡的観点からバイオテクノロジー全般を批判しておられます。

遺伝子組み換え技術は期待されたほど農産物の増収につながらず、

いくらなんでも、それはないでしょう。
投入した金額当たり、あるいは労働力当たりの収獲も考えられたのでしょうか。


臓器移植はいまだ決定的に有効といえるほどの延命医療とはなっていない

本当でしょうか?
「決定的に有効」というのをどの線で言っているのかわかりませんが、
延命医療に役立っていることは確かです。


奇跡的に作出されたクローン羊ドリーは早死にしてしまった

最初の一例目が難しいのは当たり前です。
それまで誰もが不可能だと思っていたことが可能になったのだから、
「奇跡的」なのは当たり前です。
「奇跡的」という言葉に悪意を感じます。
たくさんの胚から1頭しか生まれてこなかったことを指して
奇跡的と言っているのはわかりますが、
事情をあまり知らない人が読めば、
つまり「生物と無生物のあいだ」や本書を読むような人が
その悪意を読み取ってしまいそうです。

また、ドリーは早死にしていませんよ。
安楽死させられただけです。




この手の話はきりがないので、あと少しだけにしておきます。
この前の中間試験で、この本と同じことを書いた学生がいましたので、
このままではちょっとマズイですから。
必須アミノ酸がらみの話です。



コラーゲン添加食品の空虚」(p76)というおもしろい節があります。
言いたいことはよくわかります。
文系人間相手の本ですから、これでもいいのかもしれません。
しかし、正確さを欠いていたのでは、コラーゲン批判が泣きます。


コラーゲンは非・必須アミノ酸なので、人は体内で製造できる

それはないでしょう。「コラーゲンは非・必須アミノ酸」って??

ここだけちょっと説明を省いた、というわけではなさそうです。
つまり、筆がすべったわけではないらしい。


コラーゲンを構成するアミノ酸はグリシン、プロリン、アラニンといた、どこにでもある、ありきたりなアミノ酸であり、あらゆる食品タンパク質から補給される。また、他のアミノ酸を作り替えることによって体内でも合成できる、つまり非・必須アミノ酸である

どうやら、コラーゲンを構成するアミノ酸に必須アミノ酸はないらしい。


たとえば、ヒトの Type I コラーゲンα1 だと、
次のJabionのページがわかりやすい。
http://www.bioportal.jp/genome/cgi-bin/gene_homolog.cgi?org=hs&id=1277

最初の50 アミノ酸
この部分は翻訳後修飾で切れて無くなりますので、
成熟型のコラーゲンには残っていません。

1 mfsfvdlrll lllaatallt hgqeegqveg qdedippitc vqnglryhdr

このなかに、必須アミノ酸が何個あるでしょう?


真ん中付近の50個

721 qgapglqgmp gergaaglpg pkgdrgdagp kgadgspgkd gvrgltgpig

グリシン、プロリン、アラニンが多いですね。
でも、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン、スレオニン
がありますね。




重要な必須アミノ酸をほとんど含んでいない食材もある。たとえばトウモロコシで、トリプトファンという必須アミノ酸がほとんどない。栄養面から言えば、トウモロコシはあまりよい食材とはいえない

2007年度(食料需給表より)
穀類のトウモロコシ
 国内消費量の内訳
  飼料用 1,224 万トン
  加工用 369 万トン
  粗食料 11 万トン

ほとんどは家畜のエサやコーンスターチなどの加工用です。
コーンスターチになってしまいますと、ほとんど澱粉ですから、
タンパク質は1%ぐらいしか含まれていません。
アルコール発酵用に使われてしまいますと、
そのわずかなタンパク質も失われてしまいます。
ということで、トリプトファンが関係しているのは、
粗食料として食べている 11万トンです。

野菜:スイートコーン
 1998年度の古いデータで、国内生産量 約30万トンです。

合計したら40万トンぐらいですね。
○万トンとわれても、ちょっとぴんと来ません。
米と比べてみましょう。

食料需給表によれば、

2007年度 粗食料として一人1日当たりの消費量
 米は 185.1 g、年々減っています。
 トウモロコシは 2.2 g、大きな変動はありません。
  野菜のトウモロコシを入れても、おそらく 8 g ぐらいでしょう。

可食部のタンパク質量はトウモロコシと米でほとんど同じです。
タンパク質当たりのトリプトファンの割合を見てみると、
トウモロコシは米の4割弱です。


トリプトファンという必須アミノ酸がほとんどない

と脅しています。
ほとんどない、といわれると、文字通り無いように見えますが、
米の4割近くあります(たんぱく質重量当たり)。
トウモロコシばっかり食べているわけではありません。
日本人なら、トウモロコシの23倍の米を食べています。


栄養面から言えば、トウモロコシはあまりよい食材とはいえない

そんなにトウモロコシを不当におとしめなくてもいいのに。
トウモロコシにはトウモロコシなりの役割があります。

こういう話をするとき、いつも気になるのは、
実際に食べる量が出てこないことです。

よく食材の宣伝に
ゴマには○○が△△の何倍含まれている。
というのがあります。ゴマじゃなくても何でもかまいません。
ゴマだと、10 g、100 g単位で食べるわけではありませんから、
その数字に意味があるのなら、
普通の人が1日にゴマを何グラム食べ、その有効成分が
何グラム摂れるかが問題のはずです。

有効成分が何倍多いと言われると、それを食べなくっちゃ、
と思ってしまいますが、
有効成分が少ないものでも、
量を食べるものなら変わらないという例もあるでしょう。

この本の例は逆で、有効成分がほとんどない
トリプトファンという必須アミノ酸がほとんどない
という脅しです。




ついでにもうひとつ。

本書には「ヒアウロン酸」という言葉が出てきます。

これはウケ狙い? かっこつけ?
どういう意図かちょっとわかりません。

各種辞典「分子細胞生物学辞典」「生化学辞典」「生物学辞典」「理化学辞典」
細胞生物学をはじめとした多くの教科書、
健康食品やサプリメントがらみの多くの辞典類

数十冊見ましたが、「ヒアウロン酸」はでてきません。
なんだろう?

新しくハヤらせようとしておられるのかも。


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