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zoom RSS 某季刊誌「知っているようで知らない遺伝の疑問に答えます!」の利用方法

<<   作成日時 : 2009/04/23 03:33   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 2

「知っているようで知らない遺伝の疑問に答えます!」
という特集記事が載っている某季刊誌を読む機会がありました。
A4冊子、10ページ分。
この冊子の対象としている読者がよくわからないのですが、
健康美を願う人のための
信頼できる情報を提供する雑誌
だそうです。
賢い患者になるため、正しい情報を得る冊子であるらしい。
税込200円。年4回発行。
その最新号。

最初に断っておけば、この冊子は「遺伝子組み換え」本です。
ついでに、コラーゲンでお肌プリプリ記事もあります。
「美肌のためにコラーゲンを摂ることが大切です」
それでも、医療情報満載ですので、
医療機関に置いておく冊子のようです。



「知っているようで知らない遺伝の疑問に答えます!」

一般の人も読者の対象だからか、かなりくだけて書かれています。
監修したらしい先生は遺伝子の先端医療の研究を行っておられるようです。
編集部のまとめ方がマズかったのな。
それとも監修者の校正ミス?


細かい表現の間違いやちょっとした誤解が
ほぼ全項目(単に全ページという意味でなく細目毎に)に見られます。
勘違いして書くとこんな文章になってしまうという典型的な例が満載です。
文章を書くのは難しいなと、自戒を込めて、改めて考えさせられました。

意地悪ですけど、
この特集記事の間違い探しをすることで、遺伝子に対する理解力がはかれそうです。




まずは用語編

数行で科学用語を説明するのは基本的には無理です。
しかし、多くの場合、
編集者からこのような用語集のリクエストがあるので、
不十分ながらも、用語集をつけることになります。
用語集があれば、理解の助けになると信じられているらしい。
執筆者は数行で用語を解説するのにどんな言葉を使うか悩むところでしょうが、
その少ない情報量の中にウソや誤解は厳禁です。


遺伝子
DNA上に24000個の遺伝子の配列があることが分かった。


普通、ここで「遺伝子の配列」という表現はしませんね。
こんな調子ですから、素直に読み進むめることができません。


DNA
ATGC は細長い分子で、らせん状につながっており、


ATGC は細長い分子」、この表現、初めて見ました。


DNAにはタンパク質の内容や、作られる時期が書き込まれており、使われるDNAは細胞の種類によって異なる。

タンパク質の内容」が意味不明ですけど、
たぶんアミノ酸配列のことでしょう。

タンパク質の作られる時期」ねぇ。微妙ですね。

それより、
使われるDNAは細胞の種類によって異なる」はマズい。
ゲノムは同じだけど、発現する遺伝子が「細胞の種類によって異なる」ことを言おうとしたのだと思います。


染色体
染色体は、細胞の中の核の中に、2本の染色分体がくっついた形でおさまっている。
30億個の塩基は、22本の常染色体と1本の性染色体に分かれて入っている。
受精卵の中にある46本の染色体は、父親からもらった23本の染色体と母親からもらった23本の染色体を始まりとしている。


こんなので、ホントにいいのかなぁ?


ゲノム
人の46本の染色体にあるDNAのすべてを指す。
「ヒトゲノムを解読する」とは、46本の染色体に含まれるDNAに含まれる塩基の配列(30億対)を読み解いたということ。


これだと、60億塩基対になると思うんですが。

(塩基対 base pair=bp は使いますが、単なる「対」は普通使いません)

ヒトのゲノム、といった場合は、
第1から第22染色体、X染色体、Y染色体、の合計24種類の染色体に含まれるDNAのすべての塩基配列を指すことが一般的です。
この場合、約30億塩基対です。

「私のゲノム」というように、個人のゲノムだと、
「私」の細胞核には染色体は対になって存在していますので、23対46本の染色体が入っています。
上のヒトゲノムの言い方だと、ゲノムが2セットあることになります。
ですから、どんな遺伝子も2組あり、どんな組み合わせで持つかによって「私」は決まりますから、
「私のゲノム」といった場合は、46本染色体の全部の塩基配列の情報と言うことになります。
その場合だと、60億塩基対分ですね。
この話が混乱しています。


ショウジョウバエやチンパンジーのゲノムは、人の解読に先がけて完了している。

これは初耳。
チンパンジーゲノムの塩基配列が先に読まれていたのなら、
いわゆる「ヒトゲノム計画」なんか、簡単だったことでしょう。
チンパンジーゲノムを参照しながら読んで組み立てていけばいいわけですから。
ウソはいけませんね。


人間とそれ以外の生物は、基本となる遺伝子は同じで、ただ配列が違うだけ。

これで、何をいおうとしたんだろう?
しばらく考えましたが、やっぱりわからんわ。




統一性のない記述 その1
1. 遺伝子が実際にどんな働きをしているか分かっているのは、現在までのところ全体の5パーセント足らず。

2. 働きが分かっている遺伝子の数(2007年現在)
24000あるといわれる遺伝子の中で、リストアップ(拾い出し)に成功している遺伝子は2007年現在で18766あります。

3. DNAの中で働きが分かっている割合・・・60%

4. ゲノムに対する人類の理解度は、本でいえば、字は全部読めるけれども、意味は60%しか分からない。


なんやねん、と思うでしょうが、単純な勘違いだと思いたい。


1. 「遺伝子が」の書き出しから、「5%」という数字は遺伝子の数のように見えます。
そうだとすると、2. の計算すれば78%になる既知遺伝子の数とあわない。
遺伝子が実際にどんな働きをしているか分かっている」と
働きが分かっている遺伝子」は違うことらしく、
前者は5%、後者は78%らしい。

5%のほうは、他のところに
DNAの中で遺伝子として働いている部分の割合・・・3〜5%
と書いてあることから、これと勘違いしたのかも。

3. と 4. は60%。
でも、意味が違いますよね。1. 2. とも数字が合わないし。
たまたま60%なのか、同じ60%を表現を変えて書いたのか。





統一性のない記述 その2
劣性遺伝」と「優性遺伝」ということばでいろいろ説明されていますが、いまいちよく分かりません。

1. 遺伝された形質がそのまま表面に出るかどうかは、環境による因子が必ず関与しています。

2. 単一の遺伝子が関与するメンデル遺伝病
ある一つの遺伝子を持っているかどうかで病気になるかどうかが決まり、環境には関係なく起こる病気


どっちやねん。
1. で環境因子の関与を「必ず」といいきり、
2. では「環境に関係なく」と断定し。


劣性遺伝の場合、
うまれた赤ちゃんに現れた特徴や症状はだれのせいでもなく偶然で、だれにでも起こりえることなのです。


こんな認識で、遺伝カウンセリングするのだろうか?
ちょっとコワいぞ。



お酒に強い
アセトアルデヒド脱水素酵素の対立遺伝子で説明しようとしています。

アセトアルデヒドを分解する酵素の材料をつくるN型遺伝子とD型遺伝子の配列で決まります

普通「酵素の材料を作る遺伝子」という言い方はしません。
材料」って、何をイメージしたんだろう?


1. NN型だとお酒に強く、DD型だと弱くなります。

2. 遺伝的にアセトアルデヒドを全く分解できず、お酒を飲むと治療が必要な状態になってしまいます。


2. は、たぶんDD型の説明だと思うんですが、
1. の「お酒に弱い」という表現と
2. の「アセトアルデヒドを全く分解できず」と「治療が必要な状態」は
同じ意味とは読み取れません。

「弱い」程度なら、お酒は飲めると思うんですが、
それでもアセトアルデヒドが全く分解できず病気になるそうです。


それよりもっとすごいことが書いてあります。

生まれつきお酒に弱い遺伝子を持っていても、長期的に飲み続けていると大量に飲めるようになる人がいる

とあります。
これでいいのか?


生まれつき能力が優れていなくても、時間をかけて訓練していくことで能力が花開いた例は多数あります

と続きます。
これでいいのか?
これは、遺伝子の話のはずです。
この冊子の言うところのメンデル遺伝で説明できる単一遺伝子が関与する能力でも
訓練で変えていくことができると言うことらしい。

上の話の流れだと、DD型の人が訓練すれば大量に飲めるようになると言いたいらしい。
アセトアルデヒドが全く分解できずに治療が必要な状態になる人なのに。
どういうことなんだろう?


もっとも、アセトアルデヒド脱水素酵素の遺伝子は少なくとも6種類見つかっており、
それら由来の酵素のKm値から、実際の飲酒に重要な役割を果たしているのは
2種類と見積もられています。

アルコールに対して強い弱いは話題としておもしろいので、
アセトアルデヒド脱水素酵素がよく取り上げられますが、
もともと一遺伝子で説明できるほど単純な話ではありません。
問題の酵素自身が4量体ですから、ヘテロ接合体の話はもっとややこしい。





突然変異編
遺伝子を構成するDNAがたった一つだけ多かった、あるいは少なかったために病気の症状が現れることがあります。

DNAが」「多かった」、「少なかった」???
なんでぇ?
まぁ、一塩基挿入や一塩基欠失をいおうとしたんでしょうが、
遺伝子を構成するDNAがたった一つだけ多かった」は普通ないでしょう。

遺伝子に変異が起こる原因
1. DNAの書き換えミス

2. レトロトランスポゾン

3. DNAに傷がつく


というのは、(例によって表現はヘンですが)、いいとして、


4. 祖先から変異した遺伝子を受け継いでいる

というのも、「遺伝子に変異が起こる原因」なの?

フェニルケトン尿症の原因遺伝子を両親からホモでもらう子供は
病気を持って生まれると説明し、そのことが「遺伝子に変異が起こる原因」の説明としています。

親から変異遺伝子を受け継ぐ現象も突然変異であって、
それが遺伝子に変異が起こる原因ということらしい。
初めて知った。


遺伝子に変異が起こる原因」のまともな方の説明でも、

紫外線やたばこ、一部の化学薬品によってDNAに障害を起こしています。たいていの傷は、修復遺伝子によって修復されますが、修復が完全に行われないこともあります。それが6〜7回連続して起こると、遺伝子は突然変異を起こし、がん細胞になります

がん細胞になります」って、そんなこと言い切っていいのか?
6〜7回連続して起こると、遺伝子は突然変異を起こし」??
その根拠を知りたい。
もしそうなら、突然変異ってとても単純。
発がんのメカニズムも理解しやすくなって便利。

(「修復遺伝子によって修復」という表現も普通使いませんね)


突然変異とは意味合いの違う変異遺伝子の説明はもっとヘン。

このような変異遺伝子を私たちはみな、10個ぐらい体にもっています。それらが機能障害や形質の問題として表面に出てないとしたら、そらは「たまたま」その変異遺伝子が表面に問題を発生させる場所になかったからに過ぎません。

10個ぐらい体にもっています
せっかくゲノムの説明をしたのだから、説明にゲノムを使いませんか?

ここでいう変異遺伝子がなんなのかよく分からないままですが、
それでも「10個ぐらい」って、そんなに少ないの?

少ないとしても、その変異遺伝子と形質との関係に
変異遺伝子が表面に問題を発生させる場所になかった」って、
場所になかった」って、
場所」って、
あぁ、頭が壊れそう。





「組み換え」編
遺伝子科学はどこまで進んでいるの?
遺伝子組み換え食品を作る
DNAの一部に、突然変異のDNAを組み入れることで除草剤をまいても枯れない作物にしたのが遺伝子組み換え作物(食品)です。


「遺伝子組み換え本」や「遺伝子組換え本」をたくさん読んできましたが、
この表現ははじめて。
思わぬところで突然変異が出てきました。
というか、何でも突然変異で説明しようとしているらしい。


突然変異のDNAを組み入れることで除草剤をまいても枯れない作物に
どんな「DNA」をイメージしたんだろう?


現在国内で消費される大豆食品(調理油、マーガリン、マヨネーズなど)の6割強に、アメリカ産の遺伝子組み換え大豆が材料として使われています。

言い切っている数字の情報源を知りたい。
私も知りたいので調べたのですが、いくら調べても、統計値が出てこない。
6割強という数字の根拠が、たとえば、日本が大豆を輸入する相手国に占めるアメリカの割合とアメリカの大豆作付面積における遺伝子組換えの割合をかけ、大豆の国内自給率を考慮した上での数字なのだとしたら、
たぶんそれは違うでしょう。
そんな単純じゃないはずです。
大豆食品(調理油、マーガリン、マヨネーズなど)」というのも、よう分からん。


#「遺伝子くみかえの法則」はここでも生きています。
#「組換え」を使う記述は正確だが、
#「組み換え」はなんだかなぁ、という法則。


将来も行わないことが決まっていること
遺伝子組み換え人間
研究も相当に厳しい制限のもとで行われており、食物以外で遺伝子の組み換えが行われる可能性はないといえます。


可能性はないといえます」という控えめな表現ですけど、
残念ながら、「食物以外で遺伝子の組み換え」は既に行われています。
植物・動物・細菌、あらゆる生物で、
食物利用以外の目的でも組換え体が数多く作られています。
残念でした。
たぶん、生命倫理や自然の摂理や神の領域などのこけおどしの考えで
書かれてた文章を読んで、「可能性はないといえます
としたのだと思います。





100%」が好きなようです。

1. 現在までのところ、遺伝子治療をすれば100%治る、という病気はありません。
2. (出生前診断は)現在のところ技術的には100%ではなく、診断で「異常あり」と出ても正常な、、、


将来、100%になる可能性があると思っておられるらしい。


3. ゲノムの解読だけでなく、遺伝子の働きも100%解析できれば、
病気になる可能性が分かる

これが「遺伝子を使って将来できる可能性のあること」の一つとされています。

遺伝子の働き」に対して、どんなイメージを持っておられるのだろう?
どのレベルまでの理解なのかによって、「100%」の意味が違ってきますし、
そもそも「100%」の解析なんてどんなレベルであっても不可能ですよね。


個人を特定するための鑑定」として
4. 99%以上の信頼度はありますが、100%には至っていません

これも将来、100%になる可能性があると思っておられるらしい。
1000ドルゲノムシークエンスの時代になったしても、
100%」鑑定は永久に不可能です。


遺伝子を使って現在できること」のうち、
薬の副作用が出るかでないかが、薬をのむ前に分かる」こととして、
5. 予測は100%ではありませんが、「ほとんど効果が無く副作用が重い」という予測が、、、

できると信じておられるらしい。


薬がその人に効果を上げるかどうかが、薬をのむ前に分かる」こととして
6. 100%の予測には至っていません

なんだかなぁ。
科学だというのなら、もうちょっと現実的になりましょうよ。
ここに出てきた「100%」に全く意味がないことを理解しましょうよ。



古代生物の鑑定」として、
現在の技術的限界は、100万年前までとされています。

その根拠を私は知りませんが、
100万年前の話題に、なんで恐竜の絵が描いてあるの?
(ティラノザウルスらしい絵)
人類の仲間と恐竜が一緒に暮らしていたことがある!
と主張する本もあるにはありますけど。
100万年で恐竜はないでしょう。


こういった内容の文章を使って、

遺伝のこと、ちょっとまじめに勉強してみませんか?

というんだけど、なんだかなぁ。


一般の人だけでなく、医療の専門家も読まれる冊子のようなのに、、、





遺伝について正しい知識がなくても生きていけます。
医療に携わっている方々も、この程度で十分なのかもしれません。
でも、なんだかなぁ、という気は抜けませんので、
ちょうどいい入門書を紹介します。

新川詔夫、吉浦孝一郎訳
カラー図解 基礎から疾患までわかる遺伝学
メディカルサイエンスインターナショナル
\7,140
2009年03月25日第1版第1刷

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濃い内容の割に値段もてごろです。
基礎から臨床まで、丁寧に解説してくれてます。
この手の本によくある基礎部分の手抜きがないのがよい。

有名な写真や図をコレクションした図鑑としても役に立ち、
ページをめくるのが楽しくなる本です。

巻末のデータ集も役に立ちます。
先の冊子の特集にでてくるいろんな数字が
でたらめであることが、この教科書でばれます。



同じ出版社から出ている次の本もいい。

リード、ドンナイ著、水谷修紀監訳
症例でわかる新しい臨床遺伝学
メディカルサイエンスインターナショナル
\8,820
2008年11月28日第1版第1刷

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メディカルサイエンスインターナショナル
水谷修紀

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「カラー図解」の本はサイズがコンパクトで手に持って読みやすい。
基礎を理解することに重点を置いた教科書。

「症例でわかる」の本はタイトルの通り症例を多用し
症例から遺伝学を学ぼうとする教科書。

くどいですが、どちらも入門書です。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
>人間とそれ以外の生物は、基本となる遺伝子は同じで、ただ配列が違うだけ。

これってATGCはどんな生物でも一緒だっていいたかったのでは?
ptty
2009/04/24 14:07
コメントありがとうございます。確かにおっしゃるとおりだと思います。オーソログがどうのこうのという話ではなさそうです。
yoshi
2009/04/26 20:40

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