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zoom RSS 体細胞クローン家畜の安全性

<<   作成日時 : 2009/03/14 03:44   >>

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2009年03月12日、NHKニュースで
食品安全委員会が下した体細胞クローン家畜の
安全性評価にかんする報道がありました。
翌朝、朝日新聞にもその記事が載っていました。
このふたつの報道について、思うことをしたためておきます。

これに先立ち、01月19日、次のように報じられています。
クローン牛・豚「安全性問題なし」 食品安全委報告へ
(朝日新聞・2009年1月19日)
http://www.asahi.com/national/update/0119/TKY200901190317.html

食品安全委員会のワーキンググループが
「一般の繁殖技術で生産した牛・豚と同じ安全性を持つ」とする報告書をまとめることを確認した」


今回の報道は、この上位組織での結論です。
この記事はいいとして、
これに反応したちょっとおかしな論説が載っていたので、
タイムリーな話題でしたので、授業で取り上げました。

○第25回 2009年01月30日
科学哲学とニセ科学とバイオテクノロジー 科学論
http://yoshibero.at.webry.info/200901/article_4.html

クローン牛・豚 安心できない「安全」宣言
(2009年1月21日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-140062-storytopic-11.html

体細胞クローン技術や食の「安全」という立場から科学的に考えるとは
第三者機関である「食品安全委員会」の立場
それらを報じる無知蒙昧なマスコミ
 この報道のどこがおかしいのか?
「科学の話しなら科学で考える!!」


科学を一般に!
 サイエンスコミュニケーション
 サイエンスカフェ
 サイエンスリテラシー
 トランスサイエンス

などといわれる時代なのに、この論説は論外だという話でした。

どこがヘンなのか、どこに反応したのか、
以下、説明します。



NHKの報道について〜消費者団体の反応
琉球新報の社説について
NHKの報道について〜ゲノムと遺伝子
朝日新聞の報道について〜「クローン」の使い方




NHKの報道について〜消費者団体の反応

食品安全委員会が、体細胞クローン家畜に対して
安全性に問題がないとするとりまとめが報じられました。

ニュースでは、委員長が
「科学的に評価」した旨を述べておられました。

食品安全委員会は、科学的見地に立って議論をするところです。
その結果出された結論の科学的な妥当性はともかくとして、
この委員会の姿勢を、とりあえず理解する必要があるでしょう。
このような組織が政治的判断までやるのは、あきらかに不適切です。
我々は食品安全委員会のような組織を持っていることを
もっと誇りに思っていいと思う。

ところが、ニュースで登場した消費者団体の方は、
不安が取り除けていない、説明が足りない旨、述べられていました。

しかし、ここは問題をきっちりとより分けるべきでしょう。
いつまでも不毛な意見を言い続けても仕方がない。


「食の安全・安心」とよく呪文のごとく唱えられます。
このとき、安全と安心が別だという認識が欠けていると、
話が混乱します。

安全と安心の議論をひとつの組織に押しつけるのはよくありません。

食品安全委員会は科学的に安全性を評価する第三者機関です。
あくまでも客観的かつ冷静に判断する組織としてとらえたい。

科学の範疇に属さない安心の議論は別組織でやればよい。

リスクコミュニケーションを食品安全委員会に押しつけるのは
間違っていると思います。
どんな組織でも、予算と人員が限られています。

第三者機関として、
政治や消費者や生産者などの雑音に惑わされないよう、
徹底的に科学の立場にたって議論するだけで十分です。
もちろん、その議論の内容も公表されます。

公表された内容が理解できないというのはまた別の問題です。
消費者団体などの
 説明が足りない
 安心が得られない
などの意見は、
聞きようによっては、無知であることを誇りにし
無知であることをタテに脅しているとも取れます。

自己努力も必要です。
しかし、当然、それには限界もあります。
そこで、リスコミの組織も当然必要になります。

だからといって、食品安全委員会に
科学的な判断とリスコミの両方の仕事を押しつけたのでは、
せっかくの第三者機関の能力が半減してしまいます。

政策もまた別の話でしょう。
必ずしも科学的判断は伴わなくてもいいわけですし、
科学的でない政治判断もあり得ますし、
現にその判断で法律が作られています。
科学的根拠を無視した政治判断の法律はいくらでもあります。


食品安全委員会のWebサイトに次のような告知がのっていました。

3月12日
「食品に関するリスクコミュニケーション−体細胞クローン家畜由来食品のリスク評価について−」開催のお知らせと参加者募集について【開催日 東京:3月24日、大阪:3月27日】
http://www.fsc.go.jp/koukan/clone_risk_annai210312.html

体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての御意見・情報の募集について【意見募集期間:3月12日〜4月10日】
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_shinkaihatu_clone_210312.html





琉球新報の社説について

クローン牛・豚 安心できない「安全」宣言
(2009年1月21日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-140062-storytopic-11.html

安全と安心を混乱したまま述べる典型的な社説です。
おもしろいので、教材に使わせてもらいました。

この社説は、
「安全」といわれても、なぜか「安心」できない
からはじまります。

最後に、
安心できない「安全」宣言などは、もはや論外。食の安全は、慎重すぎるぐらいが安心のもとだ
で締めくくり。

たしかに、この議論そのものが「もはや論外」ですね。

上記の観点でこの社説を読めば、
結構楽しめます。




NHKの報道について〜ゲノムと遺伝子

リスコミの説明が難しいのも確かです。

私はゲノムの理解にこだわっています。
このことを他のエントリーで何度も書いています。

ゲノムにかんして、
このNHKニュースでも気になった点がありました。


ニュースの字幕に
体細胞クローン技術
皮膚などの細胞を使い
同じ遺伝子を持つ動物を作り出す。


とありました。

こういう場合、いつもニュースなどでは
遺伝子
が登場します。

ゲノム
が出てくることは滅多にありません。


NHK総合 番組2009年02月11日
ふたごの不思議に学べ!
 老化予防から子育てまで


という番組がありました。
一見、教養番組っぽいですが、バラエティでした。


生命誌研究館の中村桂子氏がコメント役でした。
中村氏にとっては持論の「ゲノム」を説明したいところでしょうが、
番組では「ゲノム」は一度も出てきませんでした。
中村氏にとって、「ゲノム」が使えないのはつらかったと思います。

何とか
遺伝子の総体 セット
など言い換えておられましたが、
この双子や老化、病気の話題でも
「ゲノム」
がわかれば問題なく説明できてしまいます。

こういった番組でこそ
「ゲノム」
を前面に押し出すべきではないでしょうか。

わかりにくいからと言って「ゲノム」を避けるのではなく、
また、曖昧な意味のまま「遺伝子」を使い続けるのではなく
こういうバラエティでこそ
「ゲノム」
を堂々と使って啓蒙すべきでしょう。

「一家に1枚ヒトゲノムマップ」の加納圭氏にも、
もっともっとがんばってもらいたい。
お会いすると、大変聡明な青年でした。
遺伝子ではなくてゲノム!
ゲノムと言うべき時にはゲノム!
をもっともっと広めて欲しい。


このNHKニュースのように

体細胞クローン技術
皮膚などの細胞を使い
同じ遺伝子を持つ動物を作り出す。


という認識ではいつまでたっても
「安心」
は得られないと思うのです。

もちろん、
「安全」
の議論もできません。


遺伝子組換え食品の誤解も同根です。

遺伝子組換え食品
遺伝子」と

体細胞クローン技術
皮膚などの細胞を使い
同じ遺伝子を持つ動物を作り出す。


の「遺伝子」を同じものだと思うことから、
遺伝子組換え作物の脅威が生まれてくるのだと思います。

体細胞クローン技術
皮膚などの細胞を使い
同じゲノムを持つ動物を作り出す。


で理解できれば、遺伝子組換え作物に対する理解も変わるはずです。




朝日新聞の報道について〜「クローン」の使い方

記事では、体細胞クローンがメインですから、
最初に「体細胞クローン」と書き、
その後はすべて「クローン」と省略されて書かれています。
琉球新報の社説も同様です。

悪意はないのでしょうが、
これだと、「クローン」一般の話のように読み取れます。

そもそも、体細胞クローン牛に先立ち、
「受精卵クローン牛」は1990年に誕生しており、
平成20年9月30日現在、
受精卵クローン牛が出生等した研究機関数は43機関、
受精卵クローン牛の出生頭数は718頭

と報告されています。

参照:
家畜クローン研究の現状について
農林水産省

http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/081222_1.htm

同じサイトに
売却がなされた受精卵クローン牛 390頭
食肉として処理されたことが確認された頭数 319頭

という数字も載っています。

すでに食用として319頭出回っています。
「受精卵クローン牛」の肉はすでにわれわれ消費者の胃袋に
おさまっているわけです。
ちなみに、「受精卵クローン牛」の牛乳も出荷されているようです。

単にクローン牛が問題になっているわけではありませんので、
単に「クローン」と書くのはちょっと問題があると思います。


ちなみに「体細胞クローン牛」については
体細胞クローン牛が出生等した研究機関数は46機関
体細胞クローン牛出生頭数は557頭

だそうです。

もちろん、「体細胞クローン牛」は1頭も出荷されていませんので
「体細胞クローン牛」の肉や乳は
今のところ誰も食べたり飲んだりしていません。


体細胞クローン牛の出生頭数は緩やかに増えていますが、
受精卵クローン牛はここ4年間であまり増えていません。
(同サイトの「添付資料」より)




また、新聞記事では、クローン技術の図解が載っています。
例によって例のごとくなのですが、
核移植の説明が間違っています。

「核移植」という言葉から
核を移植するように思えますが、
(実際、動物によっては核を移植します)
今話題になっているクローン牛の場合、
核を移植するのではなく、細胞融合です。

朝日新聞の説明では、
体細胞から核を取り出し、
その核を除核卵に移植するように書いてありますが、
実際には体細胞や卵割胚や初期胚のひとつを丸ごと使い、
卵子から核を除くときにできたキズの部分に置いて融合させます。

NHKの報道では、きちんと細胞を使ってと言っていました。


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