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zoom RSS 「血液型の暗号」今年一番面白かった本(その4)

<<   作成日時 : 2009/02/28 02:27   >>

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「血液型の暗号」話題、第4弾です。
それまでのエントリーは次のリンクから。
○テーマ「血液型」の記事
http://yoshibero.at.webry.info/theme/e158383b5d.html
しつこいですけど、まだ続きます。
タイトルの「今年」は2008年のことです。
血液型の暗号
日東書院本社
藤田 紘一郎

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1カ月程前、1月末、日本テレビ系の
「人生が変わる1分間の深イイ話」をぼんやり見ていると、
「南米のラテンのノリがいいのはなぜか」
という内容の話題がありました。
そこでCMになったわけですが、
すぐさま、「血液型や!」と叫んでしまいました。
CMがあけると、案の定、答えは血液型でした。

中南米の原住民にはO型が多いから
というのがその理由だそうです。
O型はラテン気質の典型らしい?

その「科学的?」な根拠を与えてくださったのが、
本書の著者、藤田名誉教授です。
テレビで「ヒトの血液型はO型起源」説も披露していらっしゃいました。
いまや、血液型と言えば藤田センセイなのでしょうか。

本書などでも、ヒトの血液型O型起源説を唱えていらっしゃいます。
その根拠やA、B、AB型がどのように誕生したかは
先のエントリーで詳しく紹介しました。
ヒト以外の生物にA遺伝子やB遺伝子が存在することがわかっており、
さらに先生もそのことを認めていらっしゃるにもかかわらず、
ヒトに限ってO型だけが最初に誕生し、A型やB型は
なんと3万年程前に突如出現したとおっしゃっています。

なぜかさっぱりわかりません。


p16「人間のように4種類の血液型を持つ生物は非常に珍しく、人間以外ですとオランウータン、チンパンジー、ヒヒなどのいわゆる高等生物と呼ばれる霊長類ぐらいにしかみられません。しかし、「霊長類に見出されるABO血液型物質の表」のように、霊長類の中でも下等とされるキヌザルにはA型しかありません

生物に対して「高等」・「下等」を使うことはともかくとして、
さらには、オランウータン、チンパンジー、ヒヒという順番もともかくとして、
この「表」をちょっと見てみましょう。

表のタイトルは
「霊長類に見出されるABO血液型物質」
です。
表は、横方向に動物名、O(H)、A、B、AB、
縦にはオランウータン、ヒヒ、チンパンジー、ローランドゴリラ、ニホンザル、カニクイザル、キヌザルの順に並んでいます。

該当するモノに●がつけてあります。
出典はありませんので、根拠はわかりません。

O(H)、A、B、AB全部に●がついているのは、
オランウータン、ヒヒ、チンパンジー、カニクイザル
です。
ローランドゴリラとニホンザルはO(H)とB、
キヌザルはAだけに●がついています。


さて、この●、いったいなんでしょうか?
「ABO血液型物質」と書いてありますので、
おそらく、赤血球の抗原だと思います。
そうであれば、A血液型物質やB血液型物質などはあり得ますが、
AB血液型物質というのはどういうモノなんでしょうか?
A血液型物質とB血液型物質の両方も持つ個体がいるという意味でしょうか?
もしそうだとすると、次の表がおかしくなります。

「動物や魚に見出されるABO血液型物質」という表によると、
横方向は同じで、縦にイヌ、ネコ、ウシ、等12の生物が並んでいます。
12種類の生物すべてABの欄に●がついていません。
O(H)、A、Bの三つに●がついている生物として、
イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ラットがあります。
これら5種類の生物は、AやB血液型物質を持つ個体がいるのに、
(この表が言うところの)AB血液型物質を持つ個体がいないそうです。
なぜなんだろう?

よくわかりませんね。

いずれにしても、ヒト以外の生物にもA型やB型がいることは認めておられます。
なのに、なぜヒトの祖先は全員O型であった、
A型やB型が数万年前に突如「出現」した
という説になるのでしょう?



ヒトの血液型O起源説の検証
藤田説では、ヒトが誕生したとき血液型はO型だけだ、
という話です。

そもそもO起源説の根拠は次の二つのようです。
原住民・先住民にO型が多い
血液型物質の基本はH物質(O物質)

一つ目の話しのバカバカしさは置いといて、
血液型物質の話しをしましょう。
以前書いたこととかぶりますけど、
この点だけに搾ってもう一度書きます。


以前、

H型物質が血液型物質の基本だから(免疫学的知見とはこのことを言うらしい。どうも「遺伝子型」と「表現型」の関係があいまいなまま話が進んでいて、「形質」がどのようにして現れるのか誤解しておられるらしい)

と書きました。

サッパリワカランという方がいらっしゃいましたので、
「遺伝子型」、「表現型」、「形質」を使わずに説明します。


この本にはH型物質の絵が載っています。
この物質は基本的には全人類が持っています。
(まれに持っていない人もいます)
確かに血液型物質の基本はH型物質です。

A型物質はH型物質にある種の糖(ここではA糖としましょう)がくっついたものです。
B型物質はH型物質にある種の糖(ここではB糖としましょう)がくっついたものです。

血液型がA型のヒトはA型物質を持っています。
血液型がB型のヒトはA型物質を持っています。
血液型がAB型のヒトはA型物質とB型物質の両方を持っています。
血液型がO型のヒトはA型物質もB型物質も持っていません。

H型物質がA型物質になるにはA糖がくっつく必要があるのですが、
その化学反応を触媒する酵素がA酵素(とここでは呼びましょう)です。
同様に
H型物質がB型物質になるにはB糖がくっつく必要があるのですが、
その化学反応を触媒する酵素がB酵素(とここでは呼びましょう)です。

酵素はタンパク質ですので、A酵素の遺伝子、B酵素の遺伝子があるはずです。
それぞれA遺伝子、B遺伝子と呼ぶことにしましょう。

A遺伝子が発現すると、この遺伝子から転写・翻訳が起こり
A酵素が合成されます。

同様にB遺伝子が発現するとB酵素が合成されます。

つまり、ゲノムにA遺伝子をもっている人はA酵素を合成することが出来、
そのA酵素の働きによりH型物質がA型物質に変化します。
全てのH型物質がA型物質になるわけではありませんので、
このヒトはH型物質とA型物質の両方を持っていることになります。
したがって、H型物質とA型物質は自己ですので、
これらの物質に対する抗体は持っていません。
しかし、B型物質は非自己ですので、
B型物質に対する抗体は持っています。

つまり、どんな血液型物質ができるか、どんな抗体ができるかは
持っている遺伝子の種類によって決まるわけです。

親から子へ遺伝するのはゲノムです。
血液型物質や抗体が遺伝するわけではありません。

ということで、血液型の「起源」を語るのであれば、
それに関与しているある特定の遺伝子を語ることになります。
つまり、問題はある特定の遺伝子だけに特定できるということです。

ではどんな遺伝子なのでしょうか。
A酵素をコードするA遺伝子
B酵素をコードするB遺伝子
の二種類がここまでで登場しています。

それ以外にもうひとつ
O遺伝子と呼べる遺伝子があります。

ヒトのA遺伝子とO遺伝子の塩基配列を比べてみると
ほとんど同じで、途中1塩基異なるだけです。
A遺伝子の方が長く、
O遺伝子はA遺伝子と比べて1塩基だけ欠落しています。

この1塩基欠失の意味を説明するのはやっかいなのですが、
O遺伝子から作られるOタンパク質には働きがなくなります。

すなわち、
A遺伝子からはA酵素が作られ、そのA酵素はA糖をH型物質にくっつけるという活性を持っています。
B遺伝子からはB酵素が作られ、そのB酵素はB糖をH型物質にくっつけるという活性を持っています。
O遺伝子からはOタンパク質が作られますが、そのOタンパク質はA糖やB糖などの糖を転移するという活性を失っています。

ヒトにはゲノムが2セットあります。
ということは、どんな遺伝子も(基本的には)2つあります。
今注目している遺伝子はABO式血液型を決めている遺伝子です。
この注目している遺伝子には3種類あることを見てきました。
(もちろん3種類だけでなく細かくいえばサブタイプはたくさんあります)
ひとつのゲノムに今注目している遺伝子の乗っかる場所が一カ所あります。
その一カ所に3種類の内のどれかが乗っかります。
そのようなゲノムが一人のヒトに2つあります。

つまり、次のような6通りの組み合わせで遺伝子を持つことがわかります。
組み合わせですので、2つの遺伝子の順番は関係ありません。
A遺伝子とA遺伝子
A遺伝子とO遺伝子
B遺伝子とB遺伝子
B遺伝子とO遺伝子
A遺伝子とB遺伝子
O遺伝子とO遺伝子

つまり、今注目している遺伝子だけに限れば、
6種類のヒトがいるわけです。

O遺伝子由来のOタンパク質には糖を転移するという働きを失っています。
A糖やB糖を転移する働きがあるかどうかだけに注目すれば、
この6種類のヒトは次のようになります。
A遺伝子とA遺伝子 A糖転移活性を持つ
A遺伝子とO遺伝子 A糖転移活性を持つ
B遺伝子とB遺伝子 B糖転移活性を持つ
B遺伝子とO遺伝子 B糖転移活性を持つ
A遺伝子とB遺伝子 A糖転移活性とB糖転移活性を持つ
O遺伝子とO遺伝子 A糖とB糖の転移活性を持もたない

つまり、A糖とB糖の転移活性の有無でいえば、
4種類のヒトがいることになります。

A糖転移活性を持つA酵素があれば
H抗原はA抗原に変わります。
B糖転移活性を持つB酵素があれば
H抗原はB抗原に変わります。
H抗原は(基本的には)全てのヒトが持っています。

ということで、抗原の有無で分類すれば次のようになります。
A遺伝子とA遺伝子 A抗原を持つ
A遺伝子とO遺伝子 A抗原を持つ
B遺伝子とB遺伝子 B抗原を持つ
B遺伝子とO遺伝子 B抗原を持つ
A遺伝子とB遺伝子 A抗原とB抗原を持つ
O遺伝子とO遺伝子 A抗原もB抗原も持たない

つまり、A抗原とB抗原の有無でいえば、
4種類のヒトがいることになります。

これらのことから、ABO式血液型では4種類のヒトに
すなわち、A型、B型、AB型、O型
と分類するわけです。


まとめると、ABO式血液型は
それを決めているある特定の遺伝子の乗っかっている場所に
どの組み合わせでどんな遺伝子を持っているか
によって決まることがわかります。


藤田説でいう、
血液型物質を見ると、H型(O型)が基本になり、そこにA糖やB糖がくっついた形をしているとA型やB型になることから、「O型が最古の血液型、つまりO型が血液型の祖先だと言ってもいいと思うのです」(p71)
という話しが、ヘンだというのは、ここまでの話でわかると思います。

更に言うなら、
藤田説ではO型が起源で、
2万5千年前、腸内細菌からA抗原を取り込んでA型が
1万年前、腸内細菌からB抗原を取り込んでB型が
それぞれ出現した、というものです。
これがヘンだというのも、同様にわかると思います。

遺伝するのはゲノムであって、
血液型物質や抗体ではありません。



ABO式血液型を決めている遺伝子の乗っかっている部分の遺伝子は
ヒト以外でも単離されており、その塩基配列が調べられています。
画像

画像

この図から、
ヒトとチンパンジーの遺伝子構造は非常によく似ていることがわかりますし、
A遺伝子やB遺伝子がヒト以外にも存在することがわかります。

これらのことから、少なくとも
ヒトとチンパンジーの共通の祖先がいたとされる700万年前にいた生物は
A遺伝子を持っていたと推定できます。
この700万年前に、後にチンパンジーとヒトになる分岐する枝の中で
それぞれ突然変異等が起こり、結果的に1.6%の違いが生じました。
画像


同じようなことはチンパンジーだけでなく、
他の霊長類の生物にも言えますし、
さらに、霊長類以外の哺乳類にもいえます。

もし、全ての祖先の血液型がO型だった説が成り立つのであれば、
ヒトの祖先はOO遺伝子型で、A遺伝子もB遺伝子ももっていないことになります。
その祖先の内、数万年前にA遺伝子やB遺伝子を突如持つようになったことになります。

ヒトとチンパンジーで遺伝子の塩基配列を比べれば、98.4%一致します。
この微妙に違いのある遺伝子をわずか数万年前にヒトが突如持つようになったことは考えにくい。

仮に今のO遺伝子と同じような遺伝子が人類の祖先が持っていたとしましょう。
今のA遺伝子はO遺伝子とほぼ同じで、1塩基欠失であることは先に見ました。
藤田説ではA型の誕生は2万5千年前だそうです。
O起源説が成り立つためには、
数万年前に、その欠失した部分に正確にある塩基が挿入される必要があります。

藤田説ではB型の誕生は1万年前だそうです。
今の代表的なA遺伝子とB遺伝子を比べると、7塩基置換が確認できます。
とすると、1-2万年の間にゲノムDNAの遺伝子領域において
7塩基もの置換が起こったことになります。
あるいは、その可能性が低いというのなら、
今のB遺伝子の翻訳領域の最初の方に
1塩基置換や1塩基挿入していて糖転移活性を持たないタンパク質を
コードする遺伝子を持っていて、
1万年前にその部分の挿入や欠失が起こったことになります。



人類の祖先に近い遺伝子を持つといわれている世界の先住民俗の血液型は、O型がとても多い」(p68)

という理由で、O起源説を唱えるのは、無理があります。

いや、それ以前に
人類の祖先に近い遺伝子を持つといわれている世界の先住民俗
って、スゴイ偏見と差別ですよ。




ちなみに、本書の半分以上(感覚としては8割ぐらい?)は
「占い本」のノリです。
その部分は読んでもおもしろくありませんし、
おそらく藤田先生が書かれたわけでもないでしょうから、
無視しました。

科学的根拠?を与えているという部分も
藤田先生の筆ではないことを祈っています。
(テレビで説明されていた人もセンセイ影武者であって欲しい)


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