やさしいバイオテクノロジー

アクセスカウンタ

zoom RSS ヒトの遺伝子 遺伝子組換え技術は種を超えている?

<<   作成日時 : 2008/09/14 02:28   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 12 / トラックバック 0 / コメント 0

遺伝子組換え技術が嫌われています。
その理由の一つに
遺伝子組み換えと交配などの従来の品種改良とは違う。
どちらも遺伝子をいじっていることには違いないが、そのいじり方が全く異なる。
なぜなら、遺伝子組換え技術では種を超えて遺伝子を導入することができるのだから、自然に起こる交配などとは全く違う。
というもの。
本当だろうか?
ここで種を超えてる遺伝子というのが登場します。
この遺伝子についてちょっと考えてみます。

遺伝子組換え技術とは、たとえば、
「トウモロコシの遺伝子にカビの遺伝子を導入する技術」
だとする誤解をよく見かけます。
ゲノムと遺伝子の違いがわかれば、上の例では
「トウモロコシのゲノムにカビ由来のひとつの遺伝子を導入する技術」
と言い換えれば、ある程度は正しくなります。
この話は他のエントリでも取り上げています。

ここでは、ゲノムと遺伝子の話ではなく、後半の「カビの遺伝子」にこだわります。
この「○○の遺伝子」(○○は生物名)にも、なにがしかの誤解があるような気がするからです。

ヒトの遺伝子

というのが実体としてあるだろうか?という話です。


ヒトとチンパンジーのゲノムと遺伝子
ヒトとチンパンジーはおよそ700万年ぐらい前に分岐したと考えられています。
700万年ぐらい前にはヒトとチンパンジーの共通の祖先種がいて、その種が暮らしていたわけです。
それがある条件下で分かれ、ヒトとチンパンジーにそれぞれ進化してきたわけです。

共通の祖先にもゲノムが当然あります。
その中に、数万の遺伝子があります。

現在生きているヒトやチンパンジーにもそれぞれのゲノム、ヒトゲノム、チンパンジーゲノムがあります。
それそれのゲノムの中に数万の遺伝子があります。

ヒトゲノムもチンパンジーゲノムも元を正せばその祖先種のゲノムからできあがったものです。
ですからよく似ています。

でも、違いがあります。
700万年もの間、いろんな突然変異が起こり、ある時には遺伝子単位で重複や欠落なども起こっています。
その結果、ヒトとチンパンジーで共通の遺伝子がほとんどですが、中にはヒトだけ、あるいはチンパンジーだけに存在する遺伝子もあります。

重複によってできた遺伝子も、進化の過程で変異しますので、時間がたてばお互いによく似ていますが異なる配列を持つようになります。


オーソログとパラログとホモログ
ここで、ちょっと専門用語に登場してもらいます。
オーソログとパラログとホモログです。

○オーソログ
上の例では、ヒトとチンパンジーの共通祖先が持っていたある遺伝子Aに注目し、その遺伝子Aが進化の過程で、つまり700万年の間に突然変異などで変化し、現在のヒトの遺伝子A-Hやチンパンジーの遺伝子S-Cになった場合、その遺伝子A-Hと遺伝子A-Cをオーソログといいます。

したがって、オーソログ遺伝子はヒトとチンパンジーと種が違っていても、塩基配列には高い相同製を持っていますので、その遺伝子由来のタンパク質には共通の機能を持つことが多い。

このオーソログな遺伝子を、ヒトとチンパンジーに限らず、酵母から植物や動物などいろいろな種で見つけると、その遺伝子Aの塩基配列やアミノ酸配列を見比較することで進化の過程を推定したり、あるいは種によっては機能のわかってない遺伝子の働きを推定したりすることができます。

○パラログ
あるひとつのゲノムの中で、遺伝子の重複が起こり、ある遺伝子が複製されることがあります。
その複製によってできた類縁関係にある遺伝子のことをパラログといいます。
これも、進化の過程で重複があった時点からの時間に依存して、突然変異などによって塩基配列が変化しますので、重複が起こったときは同じ配列ですが、そのうち異なる配列になります。
しかし、よく似た配列であって、その遺伝子由来のタンパク質の機能もよく似ているはずです。


○ホモログ
よく似た言葉にホモログというのがあります。
いちおう、ホモログはオーソログとパラログを含みます。
というは、どちらかわからなくても、とりあえずよく似た配列で類縁関係にあると推定できる遺伝子をホモログといいます。
お互いにホモログ関係にある遺伝子は共通の祖先をもつことには違いがなく、ただ、どのようにして枝分かれしたか特定できない時に使います。
ホモログ遺伝子でも、共通の祖先をもち、進化の過程で別種に含まれるとわかればオーソログになりますし、同一種内での遺伝子重複によってコピーされてできたと推定できればパラログになります。


起源が同じであっても、進化の過程で異なる機能を持つ場合もあります。
オーソログとパラログの関係にある遺伝子だと思っていても、そのタンパク質の機能を調べてみたら異なると言うこともあります。

シトクロムCの遺伝子は酵母からヒトに至るまでよく保存されていて、そのアミノ酸レベルでの配列の比較がよく例として出てきます。
アミノ酸が100個超の小さなタンパク質ですから、ヒトとチンパンジーではアミノ酸配列で全く同じです。


画像
ヒトのシトクロムCアミノ酸配列と多の生物のそれと比較したもの。
上の画像をクリックするとpdfファイルが開きます。



「ヒトの遺伝子」ってなんだろう?
ここまで、述べてきた言葉を利用して、「ヒトの遺伝子」という言葉を考えてみましょう。

ヒトゲノムはヒトという種をつくる情報ですから、ヒトに固有です。
これは間違いありません。
他の種のゲノムでも同じことがいえます。

ヒトゲノムにはヒトの遺伝子が確かにあります。
では、ヒトの遺伝子といった場合、ヒトに固有だと言えるでしょうか。

ヒトゲノムの中には他の種のオーソログ遺伝子がたくさん含まれています。
ヒトといえども、38億年の進化の歴史の中で作られた種ですから、現在生きている多くの地球上の他の種と同じように、進化のなれの果てです。
他の種とオーソログ関係にある遺伝子がたくさんあるわけです。

もちろん、そのオーソログ遺伝子の中にはパラログ関係にある遺伝子を持つものも含まれるでしょう。

そもそも、種の分岐が起こったばかりの頃は、お互いにゲノムはよく似ていますから、ほとんどすべての遺伝子がオーソログ関係だともいえます。

そうしてみてくると、種の固有性を見るとき、ゲノム単位で見ないといけないこと、遺伝子単位で見ていたのではよく見えないことがわかります。

「ある生物の遺伝子」というような形で、ある生物を台上させるような遺伝子はないことがわかります。
むしろ、○○の遺伝子といった場合、○○にある種の機能(や表現型や形質)をあてはめ、オーソログ遺伝子の関係でみたほうがいいことがわかります。

生物の固有性を著すのは、あくまでもゲノム単位です。

つまり、「ヒトゲノム」や「シトクロムCの遺伝子」というのはありますが、「ヒトの遺伝子」というのは実態がつかめず、適切な言い方ではないということです。


「種の壁を越える」ってなんだろう?
種の壁を越える、といった場合の壁を「ゲノム」と「遺伝子」のどちらのレベルで見るかによって考え方が異なるでしょう。

この種の壁をゲノムだととらえると、異なる種の丸ごとの遺伝子群を見るわけです。
しかし、種の壁を遺伝子単位で見た場合、それほど種間の違いが目立つわけではないことがわかります。


遺伝子組換え食品に反対する人たちがよく唱える種の壁を越えるのでいけないとか、種の壁を越えて作ったのだから、新しい種ができるとか、今まで存在しなかった生物を作るのだとかそう言った誤解が生じますが、そえはこの種の壁を本来は遺伝子に過ぎないのにゲノムだと勘違いすることから来るのだと思います。


遺伝子組換えも交配も遺伝子をいじっていることには違いがなく、だから遺伝子組み換えはたいしたことがない、という意見は間違いだ、遺伝子組換えは種の壁を越えている、交配は種の壁を越えていない、だから、全く違うんだ、遺伝子をいじくっていると言うことでごまかしてはいけない、という意見もあります。

これも同様に、種の壁が遺伝子単位であることがわかっていなくて、交配は確かにゲノム単位で異なっていれば自然には起こらないわけで、この両者を混同することから来る誤解でしょう。

さらに導入する遺伝子を「カビの遺伝子}と言ってしまうと、その遺伝子にはカビの属性があるように思われ、トウモロコシゲノムにカビの遺伝子を入れると、トウモロコシがカビの属性を持つようなイメージができてしまいます。

でも、これは誤解だと、今までの話から理解できるはずです。

チンパンジーにヒトの遺伝子を導入する
というと、チンパンジーがヒト用に変化するようにイメージするかもしれませんが、そうではなく、その遺伝子がたとえばオーソログであれば、たいした変化はないなというイメージが湧くのではないでしょうか。



やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)
ソフトバンククリエイティブ
芦田 嘉之

ユーザレビュー:
真面目な学者のきちん ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 12
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

関連リンク集

ヒトの遺伝子 遺伝子組換え技術は種を超えている? やさしいバイオテクノロジー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる