|
ニワトリや乳牛が飼料中のトウモロコシや大豆を食べると、飼料に含まれるDNAや遺伝子はどうなるのだろうか。 遺伝子組換えでない飼料を使うと、どんなメリットがあるのだろうか。 遺伝子組換え飼料を使うと、どんな不都合があるのだろうか。 遺伝子組換えでない飼料を使って飼育したと言っても、そのこと食品の検査で確かめることができるのだろうか。 偽装じゃないとどうやって証明するんだろうか。 これらの疑問は、「分子生物学のセントラルドグマ」で考えると、きちんと見えてきます。 世の中には遺伝子組換え作物由来の飼料を食べた牛の肉や牛乳、鶏卵を疑問視する人たちがいます。 この人たちは、遺伝子組換えでない飼料を食べた牛由来の肉や牛乳、鶏卵なら安心・安全だと信じており、このように宣伝されている通常より高価な商品を好んで購入しています。 遺伝子組換え飼料が嫌われる原因のひとつとして、「予防措置原則」という妖怪があります。 このような人たちに次の5項目で「分子生物学」を解説すると、、、 (以下の問答は次の試験解説を改訂・増補したものです。 「4-1.平成20年度 定期試験問題」 http://www2.biglobe.ne.jp/~ashida/kurekousen/4-1.htm) 分子生物学のセントラルドグマとは。 遺伝子組換え作物は、遺伝子組換えでない作物と比べ、「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」のレベルでどのような違いがあるのだろうか。 バクテリアの「害虫抵抗性遺伝子」を導入したトウモロコシを例に説明すると。 ヒトが牛肉や牛乳や鶏卵を食べると、それらに含まれているDNA、タンパク質などはどうなるだろうか。 そのとき、ヒトゲノムは安泰だろうか。 牛肉には牛ゲノム、牛DNAが含まれているが、牛肉を食べてもヒトが牛にならないのはなぜなのか。 遺伝子組換え作物由来の飼料を食べた牛由来の牛肉や牛乳をヒトが食したとき、ヒトに害を与えるのであれば、どのようなメカニズムを想定する必要があるだろうか。 遺伝子組換えでない作物を食べた牛由来の食品と比較しながら解説すると。 結局、「遺伝子組換え飼料を使っていません」と書いてある鶏卵や牛乳から「遺伝子組換え飼料を使っていない」ことを証明することができるのだろうか。 分子生物学のセントラルドグマとは。 DNAはアデニン、グアニン、シトシン、チミンというヌクレオチドが直鎖状に数珠つなぎになったもので、二重らせん構造をとっています。 DNAには方向があり、二本のDNA鎖は逆向きで、塩基の部分はアデニンとチミン、グアニンとシトシンという組み合わせしかありません。 つまり、二本のDNA鎖のうち一本のDNAの塩基配列があるともう一本の塩基配列は必然的に決まります。 このようなDNA構造の特徴から、同じ塩基配列を持った複製物を作ることが簡単にできます。 DNA鎖には遺伝子と呼ばれる領域があります。 この遺伝子の部分の遺伝情報から転写という過程でmRNAが新たに合成されます。 真核生物の場合、合成されたmRNAは細胞核を出てリボソームに達すると、翻訳という過程でmRNAの遺伝情報からタンパク質が合成されます。 タンパク質は20種類のアミノ酸が数珠つなぎになった化合物のことです。 つまり、DNAという物質にある遺伝子と呼ばれる領域の遺伝情報というのは、どのような構造のタンパク質を作るかといった情報のことであり、DNAの遺伝情報には、どのタンパク質をいつどのくらい作るかといった情報も内包しています。 生命を構成する基本物質(核酸・タンパク質)、転写・翻訳の基本的なしくみなどを分子レベルでみてみると、調べられた限り地球上に存在するすべての生物で共通しています。 そのようなことから、これらのことを分子生物学のセントラルドグマと呼んでいます。 転写・翻訳は一方向しか情報が流れません。 つまり、DNAの遺伝情報がmRNAへ、mRNAの遺伝情報がタンパク質のアミノ酸配列へと情報が流れています。 この逆、たとえば、タンパク質のアミノ酸配列という情報がmRNAやDNAに流れるといったことは確認されていません。 一部のウイルスに逆転写酵素を持つものがありますが、一般にウイルスは生物に含めないため、上記の「生物のセントラルドグマ」の反証ではありません。 遺伝子組換え作物は、遺伝子組換えでない作物と比べ、「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」のレベルでどのような違いがあるのだろうか。 バクテリアの「害虫抵抗性遺伝子」を導入したトウモロコシを例に説明すると。 トウモロコシにはトウモロコシゲノムがあり、その中には数万の遺伝子があります。 このトウモロコシにバクテリアの害虫抵抗性遺伝子導入することを考えます。 害虫抵抗性遺伝子を構成する本体は害虫抵抗性という遺伝情報を持ったDNA分子です。 このDNA分子をトウモロコシのゲノムを構成しているDNAに導入することになります。 すると、もともとあったトウモロコシのDNAは導入したDNAの長さだけ長くなります。 他の領域に変化はありません。 導入したDNAは遺伝子ですので、トウモロコシの転写・翻訳システムを使って、導入遺伝子由来のタンパク質が合成されます。 これが害虫抵抗性タンパク質です。 害虫抵抗性遺伝子を導入したトウモロコシは、そうでないトウモロコシと比べて、DNAは導入したDNA分だけ長くなり、その結果もともとあった数万の遺伝子に1個だけ遺伝子が追加され、もともとあった数万種類のタンパク質群に1個の害虫抵抗性タンパク質が加わることになります。 害虫抵抗性遺伝子を導入しても、元々トウモロコシの持っていたDNA、数万の遺伝子、数万種類のタンパク質群に基本的には変化がありません。 ヒトが牛肉や牛乳を食べると、それらに含まれているDNA、タンパク質などはどうなるだろうか。 そのとき、ヒトゲノムは安泰だろうか。 牛肉には牛ゲノム、牛DNAが含まれているが、牛肉を食べてもヒトが牛にならないのはなぜなのか。 ヒトが牛肉や牛乳を食べると、牛肉や牛乳には牛遺伝子、牛DNA、牛タンパク質が含まれていますが、DNAやタンパク質はヒトの消化器官によって分解され、それぞれの構成要素の最小単位にまでばらばらに分解されてから小腸などから吸収されます。 このように、牛由来のDNAやタンパク質がそのまま機能を持ったままヒトに吸収されるわけではありませんので、ヒトの体細胞ゲノムDNAは何ら変化がありませんし、牛タンパク質の機能がヒトの体内で発揮されることもありません。 このようなことから、牛ゲノムの遺伝情報がヒトに組みこまれることはありませんので、牛由来の遺伝情報をもったヒトに変化することはありません。 万一、食品中のひとつの牛遺伝子が摂取したヒトの体細胞ゲノムに取り込まれたとしても、その細胞だけが取り込まれた遺伝子由来のDNAを含むだけで、必ずしもその遺伝子が発現するとは限りませんが、万一発現したとしても、その遺伝子由来のタンパク質がひとつ多く合成されることになります。 このようなことは起こり得ませんが、万一起こったとしても、ひとつのタンパク質でヒトが牛になることはありません。 遺伝子組換え作物由来の飼料を食べた牛由来の牛肉や牛乳をヒトが食したとき、ヒトに害を与えるのであれば、どのようなメカニズムを想定する必要があるだろうか。 遺伝子組換えでない作物を食べた牛由来の食品と比較しながら解説すると。 たとえば、害虫抵抗性遺伝子が牛のゲノムに組みこまれたり、それを食べたときにその遺伝子がヒトのゲノムに組みこまれたりすることを想定する必要が生じます。 一番よくあるパターンは遺伝子の水平移動という考え方です。 ウイルスによって遺伝子が平行移動することはあり得ます。 ただし、この場合、平行移動する両方の生物に共通して感染するウイルスが必要になります。 通常異種生物に感染するウイルスはいませんので、滅多に異種間でウイルスを介して遺伝子が平行移動することはありません。 植物から牛へとなると、ほとんどと言っていいくらい遺伝子が平行移動する可能性はありません。 このあり得ないことがもし起こるとすると、害虫抵抗性遺伝子が牛ゲノムに取り込まれることになります。 ただし、この場合、害虫抵抗性遺伝子だけが特にウイルスにより運搬されやすいと言うことは考えにくく、植物に存在する数万の遺伝子が等しくこの可能性を享受することが考えられます。 もしそのようなことが起こるなら、植物と牛にあるそれぞれ数万の遺伝子がお互いに行き来するだけでなく、植物と牛に限らず生物一般に遺伝子が水平移動してしまうことになります。 実際にはそのようなことは起こっておらず、もし起こっているのなら種の固有性は保てません。 結局、「遺伝子組換え飼料を使っていません」と書いてある鶏卵や牛乳から「遺伝子組換え飼料を使っていない」ことを証明することができるのだろうか。 遺伝子組換え飼料(例えばトウモロコシ)と組換えでないトウモロコシとを比べると、基本的には、組換えた遺伝子(その本体のDNA)、その遺伝子由来のタンパク質の有無の違いしかありません。 飼料の遺伝子組換えの有無の検査はできます。 飼料を試料にして、飼料からDNAやタンパク質を抽出し、その中に組換えたDNAやそれ由来のタンパク質が含まれているかどうかを検査することは可能です。 たとえば、飼料由来のDNAに組換えたDNAがあるかないかを組換えたDNAの塩基配列があるかどうかを検出することで検査できます。 また、飼料由来のタンパク質に組換えた遺伝子由来のタンパク質のアミノ酸配列があるかどうか、あるいは、組換えた遺伝子由来のタンパク質の立体的な構造があるかないかを抗体を使って検出するなどの方法により、検査することができます。 しかし、この飼料を家畜が食べると、飼料に含まれるDNAやタンパク質は分解されてから吸収されます。 分解されたDNAやタンパク質には、もはや特定の塩基配列やアミノ酸配列が残っていませんから、特定の遺伝子や特定のタンパク質を検出する方法はありません。 したがって、家畜由来の牛乳や鶏卵のDNAやタンパク質を検査しても、飼料由来のDNAやタンパク質がそのまま残っているわけではありませんので、飼料が遺伝子組換えかそうでないかといった検査はできません。 ========== 遺伝子組換え飼料不使用鶏卵01 イントロ 遺伝子組換え飼料不使用鶏卵02 入手した鶏卵 遺伝子組換え飼料不使用鶏卵03 入手した牛乳 遺伝子組換え飼料不使用鶏卵04 輸入穀物の現状1 遺伝子組換え飼料不使用鶏卵05 輸入穀物の現状2 遺伝子組換え飼料不使用鶏卵06 輸入穀物の現状3 遺伝子組換え飼料不使用鶏卵07 分子生物学で考えると やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書) ソフトバンククリエイティブ 芦田 嘉之 ユーザレビュー: 真面目な学者のきちん ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ |
| << 前記事(2008/07/07) | トップへ | 後記事(2008/07/11)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
分子生物学のこと
楽天から検索された商品図解入門よくわかる分子生物学の基本としくみ¥ 2,310オススメ度:★★★★★メディカルサイエンスシリーズ 著者:井出利憲出版社:秀和システムサイズ:単行本ページ数:351p発行年月:2007年12月この著者の新着メールを…分子生物学講義中継(part0... ...続きを見る |
WEBの情報缶! 2008/08/08 16:35 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
はじめまして、島根出身のyootenと申します。 |
yooten 2008/08/30 23:12 |
どうもコメントありがとうございました。 |
yoshi 2008/08/31 00:38 |
| << 前記事(2008/07/07) | トップへ | 後記事(2008/07/11)>> |