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zoom RSS 遺伝子組換え技術について12 遺伝子くみかえの法則 教科書編09 現代社会02 スターリンク事件

<<   作成日時 : 2008/03/04 01:09   >>

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高等学校や中学校の教科書に見られる「遺伝子組換え」技術を検証しています。
遺伝子組換え食品が不当に嫌われるようになった原因を教科書の記述から考察してきました。
正しいことが書かれていると信じられている教科書なのに、いい加減な記述がたくさん見られます。

たとえば、

ある生物の遺伝子に別の生物の遺伝子を組みこむのが遺伝子組換えだ。
ここに出てくる3つの遺伝子に同じ意味を持たせること。
半数致死量が300gと食塩よりも安全性の高い物質を、怖い除草剤であるという表現で不安がらせること。
普通のタンパク質と同じように分解されるだけに過ぎないあるタンパク質をヒトにとっても強力な毒素であるかのごとく表現すること。
食中毒など具体的な健康被害が生じている事件と同列に扱うこと。
森永ヒ素事件など大きな公害事件と(関連性はないのに)同列に扱うこと。
技術的問題点として核兵器(原発ではなく)並みに危険であると煽ること。
まだ実現していない技術が、あるいは実現の可能性がほとんどない技術が、すでにある、あるいは実現しつつあるとし、その脅威の技術により暗い未来を予測すること。

その他諸々の言われなき理由によって、悪役のイメージが広められています。
こうしてまとめれば、まさかと思うようなことばかりですが、これらが平然と書かれています。

悪質な市民団体程度ならまだしも(これも許せませんが)、義務教育ではないとはいえ、検定制度のある教科書において、悪質な市民団体並みの記述がゾロゾロ出てくるというのは問題ではないでしょうか。

今回登場いただく清水書院の「現代社会」にも、遺伝子組換え関連の記述が多い分、上記に当てはまる文章がたくさん出てきます。
ここでは、今まで詳しく書いてこなかった「スターリンク事件」にだけ突っ込みを入れることにします。


「高等学校現代社会」(清水書院)p72
2003年03月10日検定済、2004年02月15日発行 C組みかえ

【私たちの食べ物と日本の農業】
【食べ物に何が起こっている?】
「最近、病原性大腸菌O-157による食中毒や牛海綿状脳症(BSE)の発生、さらに人体への影響が心配されている遺伝子組みかえ食品の流入など、私たちの生活のもっとも基本である安全をおびやかすような事件が起きている」

【遺伝子組みかえ食品の流入】(欄外の説明)
「1999年JAS法の改正で、一定以上使用した製品は表示が義務づけられた。しかし、2000年には人体にアレルギーを起こす疑いのあるとうもろこしが輸入され、問題となった」



病原性大腸菌O-157による食中毒」の発生
牛海綿状脳症(BSE)の発生
人体への影響が心配されている遺伝子組みかえ食品の流入
この三点が並列で問題提起されていて、

私たちの生活のもっとも基本である安全をおびやかすような事件が起きている
と結ばれています。

遺伝子組みかえ食品の問題は「流入」であるが、O-157食中毒とBSEは「発生」が問題となっています。
この「流入」が食中毒並みに問題なのだそうです。

O-157は集団感染したり、場合によっては命を落としたりするなど、結構シビアな問題です。

BSEは日本ではそれほど懸念する必要がありませんが、かつて、イギリスでは猛威をふるい、BSEに罹患・発症した牛を食することにより、人間もBSE様の症状、すなわち変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症する人が続出し、死亡例も多数報告されています。

これらのことから、確かに、O-157食中毒やBSEは「発生」しており、それらが直接の原因となって死に結びつくという点で、「私たちの生活のもっとも基本である安全をおびやかすような事件」として起きています。

では、「人体への影響が心配されている遺伝子組みかえ食品の流入」はどうでしょうか。
通常市販されている遺伝子組みかえ食品は、一定基準の安全性試験に通ったものしか売られていません。したがって、「人体への影響が心配されている遺伝子組み換え食品」は流通しないシステムが構築されていることから、普通なら「流入」しません。
この著者が問題にしているのは、どうやら次の欄外の説明に書いてある事件のことらしい。


【遺伝子組みかえ食品の流入】(欄外の説明)
「1999年JAS法の改正で、一定以上使用した製品は表示が義務づけられた。しかし、2000年には人体にアレルギーを起こす疑いのあるとうもろこしが輸入され、問題となった」


2000年には」「輸入され、問題となった」と書いてあることから、この問題は有名な「スターリンク事件」のことだと思われます。

スターリンクは米国で開発、栽培、販売されていた害虫抵抗性トウモロコシの品種名です。
事件は2000年に起こりました。
スターリンクは、米国において飼料用は認可、食用は非認可で、日本においては、飼料用・食用ともに非認可でした。この点が混乱を招きました。

まず、アメリカにおいて、本来飼料専用であるスターリンクが食用として混入していることが確認され、回収され、栽培許可も自主的に返上することになりました。
日本においてもスターリンクが輸入されていることが判明し、大騒ぎになりました。

害虫抵抗性を付与するタンパク質はBt毒素です。
このBt毒素には多くの種類があり、胃酸や胃液中のタンパク質分解酵素に対する反応性(安定性・抵抗性)に違いがあります。
問題のスターリンクはこの抵抗性が他のBt毒素と比べて強いため、アレルギー性物質となる可能性が残ると予想されることから、食用としては認可されませんでした。

アレルギー性があるかどうかはタンパク質のアミノ酸配列を見ることである程度わかります。
また、実際に純粋なタンパク質として単離できますので、アレルギーを誘発するかどうかの試験が可能です。
スターリンクに導入された遺伝子由来のタンパク質は、構造上からも実験からもアレルギー性があるとの結果は得られていません。
しかし、胃液で分解されにくいということから、食品としての認可は見送られました。
動物を使った毒性試験等により、有害性があるとの結果は得られなかったことから、飼料としては認可されました。

スターリンクとは、このような事情のあるトウモロコシのことです。


市民団体などの説明文を読んでいると、スターリンクにアレルギー性があるとかアレルギーを誘発するとか書いてあって、毒性の強いトウモロコシであることを印象づける記述に出会います。
ひどいのになると、スターリンクを食べてアレルギーになった人がいるなど、具体的な健康被害が生じたと書いてあるものまであります。
しかし、これは間違いであることは上記の説明から明らかです。

この教科書は「人体にアレルギーを起こす疑いのある」という表現であり、比較的正確に書かれてあります。

だからといって、簡単に見過ごすわけには生きません。

この表現は、【私たちの食べ物と日本の農業】という項目の【食べ物に何が起こっている?】という単元で「病原性大腸菌O-157による食中毒や牛海綿状脳症(BSE)の発生」と並んで「人体への影響が心配されている遺伝子組みかえ食品の流入」という形で、「私たちの生活のもっとも基本である安全をおびやかすような事件が起きている」という話の中で出てきます。

先に触れたとおり、O-157食中毒やイギリスなどヨーロッパにおけるBSEの「発生」は具体的に死者を出した事件です。
この死者を出す事件と同等に「スターリンク事件」を持ち出すのは、何かよからぬ意図があるのではと勘ぐりたくなるほど違和感のある文章といわざるをえません。

少なくとも「スターリンク事件」でアレルギーを含む健康被害が生じたという報告はなく、科学的にもその可能性は非常に低いことが確認されており、まして、死者など出ていません。

スターリンクがどんなものか一切書かず、それどころか、どんな「安全をおびやかすような事件」か一切書かず、ただ不安を煽るだけというのが、この清水書院の教科書といえます。



<<遺伝子組換え技術について>>
01 ゲノムに占める遺伝子のイメージ01
02 ゲノムに占める遺伝子のイメージ02
03 遺伝子くみかえの法則 単行本編
04 遺伝子くみかえの法則 教科書編01 イントロ
05 遺伝子くみかえの法則 教科書編02 集計
06 遺伝子くみかえの法則 教科書編03 生物II
07 遺伝子くみかえの法則 教科書編04 理科基礎・図録
08 遺伝子くみかえの法則 教科書編05 家庭基礎
09 遺伝子くみかえの法則 教科書編06 保健体育
10 遺伝子くみかえの法則 教科書編07 現代社会
11 遺伝子くみかえの法則 教科書編08 中学校教科書
○12 遺伝子くみかえの法則 教科書編09 現代社会02 スターリンク事件
13 遺伝子くみかえの法則 教科書編10 農業科用教科書
14 遺伝子換飼料不使用 この世に存在しない遺伝子組換え作物不使用

やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)
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