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zoom RSS 遺伝子組換え技術について07 遺伝子くみかえの法則 教科書編04 理科基礎・図録

<<   作成日時 : 2008/02/21 20:40   >>

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高等学校と中学校の教科書に見られる「遺伝子くみかえの法則」の検証の続き。
前回は「生物II」の検証でした。やり玉に挙がったのは東京書籍本だけでした。
今回検証するのは「理科基礎」と「生物図録・図説」です。
そして、やり玉に挙がるのは東京書籍の「理科基礎」です。

「生物図録・図説」は何社から出版されているのかわかりません。
広島大学中央図書館の教科書コーナーに置いてあるのは教科書と教師用虎の巻だけで、図録などはありません。
したがって、自分で持っている4社の「生物図録・図説」を参照しました。

「理科基礎」(3社)と「生物図録・図説」(4社)における「遺伝子くみかえ」表記はすべて「遺伝子組換え」でした。
「理科基礎」にはもう1社あるのですが、「遺伝子くみかえ」の記述は見つかりませんでした。


では、まず、「理科基礎」(3社)から。
「理科基礎」の「遺伝子くみかえ」は、3社とも本文ではなく巻末の課題研究のコーナーで登場します。

実教出版は、課題研究のなかに「生物工学(バイオテクノロジー)」というコーナーがあり、遺伝子組換え技術に触れています。
ただし、ディベートのコーナーなので、ディベート技術のみ解説してあり、バイオテクノロジーの科学的な解説は一切ありません。

数研出版は、終章に「調べてみよう」のコーナーがあり、ここでもディベート技術の解説があります。
実教出版と違い、DNA、遺伝子、組換え技術の解説や社会的な背景も解説してあります。
ただし、これらの解説はディベートの材料として提供するだけで、技術的な問題点の指摘などはありません。

東京書籍は、「科学と社会」という課題研究の項のひとつに「遺伝子組換え技術(ディスカッション)」というコーナーがあって、仮想討論が長々と書いてあります。
討論の前に解説が書いてあります。
「遺伝子組換え技術とは」と書かれたところはまあ妥当な解説なのですが、「遺伝子組換え作物」と題した解説の冒頭からトンデモが飛び出します。


教科書2 「理科基礎」(東京書籍)p198-199、
 2002年03月20日検定済、2006年02月10日発行
【遺伝子組換え作物】
「ある農作物の遺伝子に、その作物がもともともっていなかった遺伝子を組みこんで有用な性質をもつ農作物をつくることが行われている。これが遺伝子組換え作物である。そのような作物には、除草剤をまいても枯れにくいダイズやイネ、ウイルス病にかかりにくいトマト、ペチュニアの遺伝子をもつ今までになかった青いカーネーション、害虫に強いワタなどがある」
「すべての技術がそうであるように、遺伝子組み換え作物をつくり出す技術も優れた面だけをもった技術ではない。自然界には存在しない生物をつくり出してしまう技術でもある。したがってこの技術は常に安全性を厳しく守っていく必要があるのはいうまでもない」



ある農作物の遺伝子に、その作物がもともともっていなかった遺伝子を組みこんで
ある生物の「遺伝子」に別の生物の「遺伝子」を組み込むという記述は、遺伝子組換え技術に反対するあらゆる媒体でみることができます。
このブログシリーズの初回でも取り上げました。
遺伝子組換えは「遺伝子に遺伝子を組みこむ」技術だという説明は、悪質な市民運動家の専売特許だとばかり思っていたのですが、まさか高等学校の教科書にも出てくるとは思いもしませんでした。

遺伝子組換えは「遺伝子に遺伝子を組みこむ」技術であるから脅威の技術であり、悪魔の技術であり、自然の摂理に反するものであり、フランケンシュタイン作物をつくる技術であるそうです。
この教科書は「自然界には存在しない生物をつくり出してしまう技術」と表現しています。


確かに「遺伝子に遺伝子を組みこむ」のであれば、そのような解釈も成り立つでしょう。
ある生物の遺伝子と別の生物の遺伝子が合わさった訳のわからない生物が誕生するとイメージしても仕方がありません。
教科書に書いてあるように「自然界には存在しない生物をつくり出してしてしまう」ことにつながるでしょう。

しかし、遺伝子組換え技術はある生物のゲノムに別の生物(同種でもよい)の遺伝子(ひとつまたは数個)を導入するか、ある生物のゲノムからある遺伝子(ひとつまたは数個)の機能を喪失させる技術に過ぎません。
できあがったものは、元の生物と同じ種であり、ゲノムとしての変化はほとんどなく、数万ある遺伝子の内、数個の遺伝子が変化しただけです。

☆☆「ゲノム」と「遺伝子」については、このシリーズの第1回と第2回でも説明しています☆☆
遺伝子組換え技術について01 ゲノムに占める遺伝子のイメージ01
遺伝子組換え技術について02 ゲノムに占める遺伝子のイメージ02

この教科書のような記述、たとえば、「トウモロコシの遺伝子に細菌の遺伝子を組み込む」といった表現は遺伝子組換え技術が不当に嫌われるようになった元凶ではないかと私はにらんでいます
このフレーズで使われる「遺伝子」という表現はあきらかに誤解に基づくものです。
この誤解を解かない限り、遺伝子組換え作物の正しい理解は得られないでしょう。

それだからこそ、「やさしいバイオテクノロジー」では「ゲノム」と「遺伝子」の説明に多くのページを割き、しつこいほどいろんな角度から解説しています。


「遺伝子に遺伝子を組みこむ」という表現は農林水産省監修の本にも「トウモロコシの遺伝子に虫を殺す毒素を出すカビの遺伝子を打ち込んだもの」という表現で登場します。
ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本
ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本 その後

農林水産省中国四国農政局監修の漫画本に問題のある描写や記述を細かく指摘しています。
その内容をメールで問い合わせると、「中国四国農政局企画調整室」からお返事をいただきました。
その顛末記です。



次に、図録・図説の記述を見て行きましょう。

実教出版の総合資料や数研出版の図録では遺伝子組換え技術の説明と応用例の紹介のみで、問題点などの指摘はありません。

東京書籍も、細胞を操作する技術のひとつとして、遺伝子組換え作物をとりあげています。
簡単な方法の説明と応用例が紹介されています。
教科書本文にあるようなこの技術に対する問題点の指摘はありません。

第一学習社だけ巻末の付録4に「生物に関する小論文出題例と模範例文」というのがあり、そのひとつに
遺伝子組換え食品の利用と今後のあり方について、あなたの考えを800字以内で述べなさい
という例題があります。

その模範解答を読むと、遺伝子組換え技術に対して客観的な分析と妥当な意見を述べており、
マスメディアの誤った報道や、いたずらに危険性をあおる報道に混乱しないように、私たち消費者も、遺伝子組換え食品の作成法など、基本的な知識を身につけておかなければならない
と述べています。

この生物図録は授業の副読本として採用しているものです。
高等学校の教科書がまともだと信じ込んでいたのは、この文章を2004年から毎年読んでいたからです。
東京書籍の「理科基礎」を読まなかったら、高等学校の教科書はまともだと信じ続けていたでしょう。


話をわかりやすくするため、東京書籍だけをことさら悪役として強調しましたが、実は、他社の「生物II」にも、これはマズイのではといった表現があります。
東京書籍をやり玉にあげたのは、まとまった表現があってトンデモ度が高いことと、最初に読んだときの衝撃が大きかったからです。


では、ちょこっと拾ってみます。

「生物II」(教育出版)p122、
 2003年03月20日検定済2005年01月20日発行 A組換え

かなり詳しく遺伝子組換え技術を説明しています。
遺伝子組換えによる品種改良」と題した項目の中で、
遺伝子組換え植物によって害虫以外の昆虫も影響を受けるといった懸念もあり、現在生産が見合わされているものもある
と書いてあります。
害虫以外の昆虫も影響を受ける」というのは、かの有名な「ロージー事件」(1998年。害虫ではないオオカバマダラの幼虫に遺伝子組換えトウモロコシの花粉を食べさせると死んだという事件)のことだと思います。
この事件はとっくに解決しています。
ただ、この影響によって生産が見合わされているのがあるとは初耳です。
何だろう?


「生物II」(啓林館)p99、
 2004年02月20日検定済2004年12月10日発行 A組換え
これもかなり詳しい技術の解説があります。
遺伝子改良作物」と題した項目の中で、
組み込まれた遺伝子や、その遺伝子がつくり出すタンパク質が長期にわたって安全かどうかを問題にする意見もある
と書いてあります。
問題にする意見もある」という書き方は、なんだかなぁという感じです。
確かに、いい加減な市民運動家たちは慢性毒性を懸念する声を発しています。
しかし、そもそも、どのようなメカニズムでタンパク質が長期にわたって毒性を示すと考えているのか不明です。
それに、どんな方法を使って、タンパク質の慢性毒性を調べるつもりなんだろう?そんな方法があるのなら教えてほしい。


「生物II」(実教出版)p101, p108、
 2003年03月20日検定済2005年01月25日発行 A組換え
青いカーネーションや組換えイネを写真入りで説明しています。
「自然界にはなかった生物を生み出すことになるので、慎重な取り扱いが求められている(p101)」
と、ここにも「自然界にはなかった生物を生み出す」と書いてあります。


「生物II」(数研出版)p93、
 2003年03月20日検定済、H19年01月10日発行 A組換え
技術的な説明は一番詳しいでしょう。
遺伝子組換え技術は、それまでになかった生物をつくり出すことにもなる。したがって、この技術を用いることによって人間や生態系に害をもたらすことがないように、遺伝子組換え実験や遺伝子組換え作物の流通には規制措置もとられている
と書いてあります。
これは幾分か落ち着いていますね。



○理科基礎 3社中 A組換え3社
「理科基礎」(実教出版)p128、
 2002年03月20日検定済、2005年01月25日発行 A組換え
「理科基礎」(数研出版)p131〜、
 2002年03月20日検定済、2005年01月10日発行 A組換え
「理科基礎」(東京書籍)p198-201、
 2002年03月20日検定済、2006年02月10日発行 A組換え

○図録図説 4社中 A組換え4社
「生物総合資料」(実教出版)p123, 125, 127、
 2007年増補三訂版 A組換え
「生物図録」(数研出版)p107、
 2007年改訂版第3刷 A組換え
「最新図説生物」(第一学習社)p63、245、
 2007年改訂6版 A組換え
「図説生物 総合版」(東京書籍)p215、
 2004年初版 A組換え



<<遺伝子組換え技術について>>
01 ゲノムに占める遺伝子のイメージ01
02 ゲノムに占める遺伝子のイメージ02
03 遺伝子くみかえの法則 単行本編
04 遺伝子くみかえの法則 教科書編01 イントロ
05 遺伝子くみかえの法則 教科書編02 集計
06 遺伝子くみかえの法則 教科書編03 生物II
○07 遺伝子くみかえの法則 教科書編04 理科基礎・図録
08 遺伝子くみかえの法則 教科書編05 家庭基礎
09 遺伝子くみかえの法則 教科書編06 保健体育
10 遺伝子くみかえの法則 教科書編07 現代社会
11 遺伝子くみかえの法則 教科書編08 中学校教科書
12 遺伝子くみかえの法則 教科書編09 現代社会02 スターリンク事件
13 遺伝子くみかえの法則 教科書編10 農業科用教科書
14 遺伝子換飼料不使用 この世に存在しない遺伝子組換え作物不使用

やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)
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