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zoom RSS 遺伝子組換え技術について10 遺伝子くみかえの法則 教科書編07 現代社会

<<   作成日時 : 2008/02/25 00:08   >>

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高等学校の教科書に見られる「遺伝子くみかえ」表記の検討。
いよいよ佳境に入ります。
真打ちの「現代社会」の登場です。
これが実におもしろい。
「現代社会」は「遺伝子組み換え」本です。
「遺伝子くみかえ」表記が見つかった9社、13種の「現代社会」で「遺伝子組換え」本は一冊もありません。
「遺伝子組換え」本だけの「生物II」や「理科基礎」と好対照ですね。
それだけに、記述内容も「遺伝子組み換え」にふさわしく、自由な発想で書かれています。



教科書5 「新現代社会」(教育出版)p25、
 2006年03月20日検定済、2007年01月20日発行
【遺伝子組み換え作物の誕生】
「長らく人類は、違う品種の作物の花粉を受粉させることによって、病気になりにくい品種や実りの多い品種を開発してきた。しかし、今では、直接に遺伝子の配列を変えること(遺伝子組み換え)によって、いろいろな品種の作物を開発できるようになった。
その結果、今では強力な除草剤にも耐えられる品種が作られている。こうした品種の作物は、農業が巨大ビジネスになっているアメリカなどではさかんに栽培されている。しかし、他方では、そうした作物の安全性をはじめ、多くの問題が指摘されている」



違う品種の作物の花粉を受粉させること」によって開発される品種は(同一種の異なる品種の受粉のことなら)限られます。
現在市販されている野菜などは、違う種の品種同士を掛け合わせたり、化学物質や放射線によりランダムな突然変異を誘発させたりして作られたものです。
その過程で組織培養や細胞融合など多くの技術が使われています。

遺伝子組み換え」の説明が「直接に遺伝子の配列を変えること」となっています。
ある遺伝子の塩基配列を変更させることはできますが、教科書の記述がゲノム上の遺伝子の配列を直接変えることを意味しているのであれば、それは無理です。残念ながら、そのような、それこそ神業を人類はまだ手にしていません。
もしかしたら、これは公の建前で、裏社会では、この教科書の執筆者だけが知っているヒミツの研究があるのかもしれません。

冗談はともかくとして、この教科書には、「従来の品種改良と遺伝子組み換えによる品種改良」と題した図が載せてあります。
しかし、何を説明したいのかさっぱりわからない図になっています。
これではまず理解できないだろうというような図です。
たぶん、書いた人はよくわかっていないのでしょう。
直接遺伝子の配列を変えること(遺伝子組み換え)」と説明しているところからして、遺伝子も遺伝子組換え技術もよくわからないまま書いているなという印象を受けます。

市販されている遺伝子組換え作物で直接遺伝子の配列を変更させて作ったものはありません。
遺伝子組換え技術で実現していることは、ゲノムの中に遺伝子単位で直に挿入しているだけです。


除草剤の説明をするのに「強力な」という修飾を使うことに悪意が感じられます。
どこの世界の話か明記してありませんが、先ほどの神業的な技術により、「強力な除草剤にも耐えられる品種」が作られたそうです。

それはともかくとして、説明に「強力な除草剤にも耐えられる品種」という説明を入れ、「安全性をはじめ、多くの問題が指摘されている」と結ぶ書き方は、悪質な市民運動家の常套手段です。
「強力な除草剤」といえば、恐ろしい除草剤に思えますが、実際に「強力な除草剤」がグリホサートのことなら、この除草剤のヒトに対する毒性は食塩と比べても低いことがわかっています。
体重60 kgのヒトで300 gが半数致死量です。
残留農薬で300 g一気に摂ろうとすると、いったいいくら食べればいいのだろう?
この除草剤はヒトに対して「強力」なのではなく、広く植物に普遍的に働く化合物なのであって、つまり、植物の種類に選択的な除草剤なのではなく、また、植物以外の生物にはほとんど影響がありません。


安全性をはじめ、多くの問題が指摘されている」といいながら、具体的な問題点を指摘していません。
根拠もなく危険性を指摘するのは、単に不安をあおっているだけで不適切でしょう。
確かに、悪質な市民運動家から「多くの問題点」が指摘されています。
しかし、いずれの指摘点も科学的に精査すれば問題点ではないことはすでに明らかになっています。
本当に安全性に問題があるのであれば、その問題点が顕在化していてもおかしくないのですが、いまのところ深刻な問題は起こっていません。
安全上問題点がわかっているのであれば、栽培も販売も認められるはずがありません。



教科書6 「新版現代社会」(実教出版)p27、
 2006年03月20日検定済、2007年01月25日発行
【バイオテクノロジーは何をもたらすか】
「われわれ人間は、いまや設計図のレベルから生命をつくり出し、コントロールする段階に到達しようとしている。遺伝子操作をおこなう人間の責任は、きわめて重いといえるだろう」

「遺伝子組み換え作物の安全性について、日本ではどのような議論がなされているのかを、新聞やインターネットなどで調べてみよう」

「『遺伝子組み換え』に抗議するNGO 遺伝子組み換えトウモロコシを切り落とす環境保護団体『グリーンピース』の活動家。ドイツ」(大きなはさみを使って成長途中のトウモロコシを切り落としている写真。活動家はマスクをして防御服と分厚い手袋もして身を守っている)



この教科書を読んではじめて知りました。
人類は、「いまや設計図のレベルから生命をつくり出し、コントロールする段階に到達しようとしている」らしい。
すばらしい科学の発展ですね。どの程度の段階にまで到達していて、いつごろ達成できる見込みなのか是非とも知りたいところです。
どこのだれがそのようなすばらしい研究をしているのか知りませんが、どうやら教科書の執筆者だけが知っているヒミツの研究があるらしい。
このようなヒミツの研究があり、神をも恐れぬ技術を手にしているのなら、確かに「責任は、きわめて重いといえる」でしょうね。

遺伝子組み換え作物の安全性について、日本ではどのような議論がなされているのかを、新聞やインターネットなどで調べてみよう」といいながら、提供されている教材は「グリーンピース」だけです。
いかにも「現代社会」を執筆陣の考えそうな話で、興味深いです。

なかなかおもしろい写真が使われています。
引用文のあとにも書いたように、まだ成長しきっていないトウモロコシを1 m 以上はあろうかという巨大なハサミで切り落としています。パンデミックウイルスの出現かと見まがうほどの格好をしています。
物々しい格好をすることで、危険なものを成敗している正義の味方だぞ、というパフォーマンスなのでしょう。そのインパクトはなかなかのものです。
しかし、このパフォーマンスは無知な消費者を騙すことができる程度で、かえって逆効果ではないでしょうか。

遺伝子組換え作物の遺伝子が独立して飛び出し、周りの生態系を攪乱したりヒトに対して悪い影響を与えたりすると広く信じられています。グリーンピースはそういう風に読める主張をしています。
しかし、遺伝子組換え作物に直接さわっても、遺伝子組換えでない作物と比べて特に危険性があるということはありませんし、空気感染によって病気になるわけでもありません。

活動家によるこの写真のような行為はまだやさしいほうで、研究所を焼き討ちしたり研究者や農家の人たちに暴力的に危害を与えたりするという事件も起こっています。
これは、日本の調査捕鯨船に対するテロ行為と似ていますね。
日本でも、農家の方が許可を得て試験栽培されていた遺伝子組換えダイズを、活動家により収穫前にトラクターで無理矢理すき込むという犯罪事件も起こっています。



教科書7 「高校現代社会」(一橋出版)p71、
 2002年03月20日検定済、2004年01月20日発行
【技術革新と経済社会の変化】
「こうした技術革新の進展は、かならずしも人類に幸せをもたらすとはかぎらない。核兵器をはじめとするハイテク兵器の開発や、化学物質による環境汚染、遺伝子組み換え作物の問題などを考えればあきらかであろう。私たちは、科学技術の成果がどのように応用されているかという点にも、つねに注意を払うことが大切である」

(引用者注:「あきらかであろう」と言い切られても困惑するしかありませんが、例によってなぜ「人類に幸福をもたらすとはかぎらない」のか具体的な指摘は、この教科書のどこにも書かれていない)

遺伝子組み換え作物の問題」は「核兵器をはじめとするハイテク兵器の開発や、化学物質による環境汚染」並みに「つねに注意を払うことが大切」なのだそうです。
遺伝子組み換え作物の問題」とは、実に恐ろしい問題ですね。

遺伝子組換え技術はいつの間にか核兵器並みに恐怖の技術になったらしい(原子力発電所のような核技術の利用ではなくハイテク核兵器と同列扱いである点に注意)。

人は見えないもの、理解不能なものに恐怖を感じます。
その恐怖の多くは無知から来るのもまた事実です。
無知は悪いことではありません。誰でも最初はどんな物事にも無知です。
しかし、教科書の執筆者が諸手を挙げて無知であることを宣言し、いたずらに恐怖をあおるだけの言説をとなえるのはいかがなものでしょうか。
少なくとも、教科書で「あきらかであろう」と主張するのであれば、執筆者には、客観的に知られている事実を理解し、租借してから書く義務と責任はあるでしょう。
市民運動家の主張じゃないのですから。


「現代社会」にはまだまだおもしろい記述があります。
回を改めて。


以上、高等学校の教科書を読んでみて、教科書執筆陣の創造力には感服させられました。
次々と恐ろしい問題点を考え出し、その空想の世界を信じ、さまざまな警告を発してくださっています。
とりあえず、そのご高説をありがたく頂戴するのが礼儀かもしれません。

その上で、ウソや捏造を見分け、執筆陣の意図をくみ取り、なおかつ、教科書には書いていない現代科学の共通の認識を理解し、勉強していかないといけない高校生諸君に深く同情します。



○現代社会 9社、13種中 B組み換え9種 C組みかえ4種
「新現代社会」(教育出版)p25、
 2006年03月20日検定済、2007年01月20日発行 B組み換え
「現代社会 地球社会に生きる」(教育出版)p54、55、76、81
 2002年03月20日検定済、2005年01月20日発行 B組み換え
「新版現代社会」(実教出版)p27, 89、
 2006年03月20日検定済、2007年01月25日発行 B組み換え
「現代社会」(実教出版)p73, 86、
 2002年03月20日検定済、2004年01月25日発行 B組み換え
「高等学校現代社会」(清水書院)p72, 74、
 2003年03月10日検定済、2004年02月15日発行 C組みかえ
「新現代社会」(清水書院)p24, 139、
 2002年03月20日検定済、2004年02月15日発行 B組み換え
「高等学校現代社会」(数研出版)p54, 55, 76, 81、
 2002年03月20日検定済、2004年01月10日発行 B組み換え
「高等学校現代社会」(第一学習社)p40、
 2002年03月20日検定済、2004年02月10日発行 B組み換え
「高等学校新現代社会」(第一学習社)p36, 70、
 2002年03月20日検定済、2004年02月10日発行 C組みかえ
「現代社会」(東京学習出版社)p18、
 2002年03月20日検定済、2005年01月25日発行 B組み換え
「現代社会」(東京書籍)p23、
 2002年03月20日検定済、2004年02月10日発行 C組みかえ
「高校現代社会 現代を考える」(一橋出版)p71、
 2002年03月20日検定済、2004年01月20日発行 B組み換え
「現代社会」(山川出版社)p17、
 2002年03月20日検定済、2005年03月05日発行 C組みかえ



<<遺伝子組換え技術について>>
01 ゲノムに占める遺伝子のイメージ01
02 ゲノムに占める遺伝子のイメージ02
03 遺伝子くみかえの法則 単行本編
04 遺伝子くみかえの法則 教科書編01 イントロ
05 遺伝子くみかえの法則 教科書編02 集計
06 遺伝子くみかえの法則 教科書編03 生物II
07 遺伝子くみかえの法則 教科書編04 理科基礎・図録
08 遺伝子くみかえの法則 教科書編05 家庭基礎
09 遺伝子くみかえの法則 教科書編06 保健体育
○10 遺伝子くみかえの法則 教科書編07 現代社会
11 遺伝子くみかえの法則 教科書編08 中学校教科書
12 遺伝子くみかえの法則 教科書編09 現代社会02 スターリンク事件
13 遺伝子くみかえの法則 教科書編10 農業科用教科書
14 遺伝子換飼料不使用 この世に存在しない遺伝子組換え作物不使用

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