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zoom RSS 遺伝子組換え技術について09 遺伝子くみかえの法則 教科書編06 保健体育

<<   作成日時 : 2008/02/24 03:39   >>

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高等学校の教科書に見られる「遺伝子くみかえ」表記を検討するシリーズ。
今回は「保健体育」です。
参照したのは3社5種。
3社とも「生物U」(もちろんすべて「遺伝子組換え」本)を出していますが、なぜか3社5種ともに「保健体育」は「遺伝子組み換え」本です。
同じ出版社なのに変ですね。

第一学習社は「生物II」、「図録」、「家庭基礎」および「家庭総合」では「遺伝子組換え」ですが、「保健体育」だけ「遺伝子組み換え」表記になります。

大修館書店は理科の科目は出しておらず、「家庭基礎」、「家庭総合」が「遺伝子組換え」で、ここも「保健体育」だけ「遺伝子組み換え」です。

東京書籍は「生物II」、「図録」、「理科基礎」で「遺伝子組換え」表記、「家庭基礎」、「家庭総合」「保健体育」で「遺伝子組み換え」表記です。
東京書籍は「生物II」、「理科基礎」でぶっ飛んでくれていて、3回前前々回のブログ記事で詳しく検討しました。
「家庭基礎」「家庭総合」でも問題ある記述が見られ、前回のブログ記事で取り上げました。
はたして「保健体育」は如何に?
(東京書籍が「現代社会」を出していないのが悔やまれます。「現代社会」はほとんどの出版社でぶっ飛んでいます。次回)


「保健体育」教科書では、いずれも、遺伝子組換え技術は危険なものとの前提で書かれています。

3社とも、食品による健康被害の代表例としてまず「食中毒」があげられています。
その後に「新たな不安」として「遺伝子組み換え食品」が指摘されており、さらに、食品添加物の安全性や「健康被害が起きることがある」という具体的な健康被害にふれています。
なかには、森永ヒ素ミルク事件などと同列に扱っている教科書まであります。

つまり、「遺伝子組み換え」作物による健康被害は食中毒や食品添加物並みに取り上げられており、この構成では、遺伝子組換え技術で作った作物は危険なものと認識してしまいます。
実際には、遺伝子組換え作物由来の健康被害は報告されていません。
「保健体育」を読んでいると、遺伝子組換え作物を食べることによって、食中毒並みの健康被害が起こっているように錯覚してしまいます。

このように、「食品衛生活動」の項目の中の「食品による健康被害」と題した段落の中に遺伝子組換え作物を持ってくることからして、この教科書の編集者の意図が透けて見えてきそうでおもしろい。


もう少し具体的に述べますと、
第一学習社は、
食品による健康被害の代表例としてまず「食中毒」があげられています。
その後に「新たな不安としては、遺伝子組み換え作物があげられる。現在、遺伝子の配列を組み換えたり、新たな遺伝子を組み入れることで、除草剤に強い品種など、意図した特徴を持つ植物をつくりだすことが可能になった。しかし、操作された遺伝子の影響で人体が新たなアレルギー反応を引き起こす可能性も指摘され、議論・研究がつづいている」と続きます。
このように「新たな不安」として遺伝子組換え食品が指摘されており、さらに、食品添加物の安全性や「健康被害が起きることがある」という具体的な健康被害に言及しています。
つまり、遺伝子組み換え作物による健康被害は食中毒や食品添加物並みに取り上げられており、この構成では危険なものと認識してしまいます。


大修館書店は、
食品衛生活動のしくみとはたらき」の中に登場します。教科書本文には書いてありませんが、食品添加物、食中毒、HACCPの説明の中に挿入されている欄外の「やってみよう」欄で説明されています。
「遺伝子組み換え食品」って何?という話題で、「どんな食品に表示がついているか、スーパーやコンビニで確認してみましょう」と呼びかけています。
大修館書店の別の教科書は、「健康の保持増進のための環境と食品の保健」の「食品の安全のために私たちが果たす役割」の項目で、食品の表示制度の説明のあと、「遺伝子組み換え食品」の表示は「消費者にとって有益な情報」のひとつで、「これらの表示をみることによって、食品の選択が容易になり、より安全な食品を私たち自身が選ぶことが可能となる」と結んでいます。
遺伝子組換えの有無のどちらが「より安全」であるかは書いてませんが、暗に「組み換え」がより安全でないと示しています。
また、用語解説欄にも登場し、「遺伝子組み換え食品」は「遺伝子の一部を操作して別の植物のなかに組みこむことによって、害虫に強くしたり、収穫量を増やしたりするために改良された作物を用いた食品のこと」と説明してあります。



一橋出版は
食品と健康」の「食品をめぐる健康問題」の項で、食品添加物、食中毒などの話題の中に突如「組み換えDNA技術応用食品の安全性についての議論も起きている」と挟んでいます。中立を保っているようで、添加物、食中毒並みの扱いです。
一橋出版のもうひとつの教科書では、同じく「食品と健康」の「食品をめぐる健康問題」の項で、森永ヒ素ミルク事件、カネミ油症事件、雪印食中毒事件、残留農薬などの話のあと、突如「これらの表示をみることによって、食品の選択が容易になり、より安全な食品を私たち自身が選ぶことが可能となる」と結んでいます。
そのあと、食中度と食品添加物の詳しい話が続きます。つまり、遺伝子組換え食品の健康問題は、森永ヒ素ミルクや食中毒並みの扱いで、相当危険なものと認識しているらしい。



第一学習社本だけさらに詳しく検討します。

教科書4 「保健体育」(第一学習社)p94、
 2006年01月20日検定済、2007年02月10日発行
【食品による健康被害】
「新たな不安としては、遺伝子組み換え作物があげられる。現在、遺伝子の配列を組み換えたり、新たな遺伝子を組み入れることで、除草剤に強い品種など、意図した特徴を持つ植物をつくりだすことが可能になった。しかし、操作された遺伝子の影響で人体が新たなアレルギー反応を引き起こす可能性も指摘され、議論・研究がつづいている」


引用者注:この引用文は「食中毒」と「食品添加物」の話題の間に挟まれている


全体的な論調は社会科目の一分野のようであり、社会的な問題点を指摘しようとしているのでしょうが、無責任な記述で終わっています。

まず、この引用文のタイトルは「食品による健康被害」です。
そのわりには「新たな不安としては」との書き出しで、遺伝子組換え作物を取り上げています。

食中毒により、あるいは昔使われていた食品添加物により、食品が原因となって健康被害が起こることは確かにあります。このふたつの話題が引用文の前後に使われています。

しかし、遺伝子組換え作物が直接の原因として生じた健康被害の報告は今のところありません。
(よく引き合いに出される「トリプトファン事件」は「トリプトファン事件はまだ有効なのでしょうか」参照)
「議論・研究がつづいている」としながらも「健康被害」の項目の中で遺伝子組換え作物を取り上げるのは不適切でしょう。

ちなみに、食品添加物の問題点を「アカネ色素」を例にあげて指摘しています。
安全性の確認されたものしか食品添加物として認可されていないのに、よく使われていた「アカネ色素」を調べてみたら危険性があったことを指摘し、だから、食品添加物には未知の危険性が残っているといいたいらしい。
しかし、この話をするのに、アカネ色素は不適切です。
アカネ色素がよく使われていたのは、これが「天然の」添加物だったからです。
世間では「天然信仰」があつい。
天然であれば危険性はなく、有用性があると信じられています。
人工の化学物質であれば何でも危険だと信じられています。
人工の添加物はみんな危険だろうけど、アカネ色素は天然なのだから、安全なのに違いない、そういう思想の元によく使われていたものです。
ところが、この「天然の」添加物が有害であることがわかったわけで、これは別に珍しいことでもないのですが、とにかく「天然」にもかかわらず危ないとわかって騒いだ曰く付きの添加物です。


「食品による健康被害」や「新たな不安として」「議論・研究がつづいている」具体的な例が「操作された遺伝子の影響で人体が新たなアレルギー反応を引き起こす可能性」だそうです。
その「可能性」が「ある」か「ない」かと問えば、「ない」とは絶対に答えられませんから「ある」としかいいようがありません。
問題はその「可能性」がどの程度かということでしょう。

ここで言う「可能性」がもしあったとしても、それは限りなく低い「可能性」でしかありません。
なぜなら、もし導入される遺伝子由来の産物が明らかにアレルギーの原因になることがわかっているのであれば、当然のことながらその作物は栽培も販売も許可されません。
そもそも、そのような危険性が考えられる遺伝子を導入しようと考えることすらあり得ません。

遺伝子組換え技術で導入される遺伝子が産生するのはタンパク質です。
そのタンパク質のアミノ酸配列はわかっているわけですから、このタンパク質がアレルゲンになるかどうか調べることはいくらでもできます。そして、実際に調べた上で、導入する遺伝子が選択されています。
この点からだけでも、遺伝子組換えでない食品と比べて、特にアレルギーの危険性が高いという可能性も低いことがわかります。


ちなみに、「用語解説」として次のように説明しています。
「遺伝子組み換え作物」p110
「ある作物のDNAの特定部分に、他のDNAを組み入れたり、一部を置き換えることによりつくられた新しい遺伝形質を持つ作物をいう。遺伝子組み換え作物として、トウモロコシ・大豆・じゃがいも・トマトなどがあり、わが国では1996(平成8)年から輸入されるようになった。EUでは1998(平成10)年から表示が義務化された。わが国でも2001(平成13)年4月から、安全性の審査を受けていない遺伝子組み換え作物や食品の輸入・販売が禁止された」





○保健体育 3社、5種中 B組み換え5種
「保健体育」(第一学習社)p94、
 2006年01月20日検定済、2007年02月10日発行 B組み換え
「新保健体育」(大修館書店)p213, 229、
 2002年02月28日検定済、2005年04月01日発行 B組み換え
「現代保健体育」(大修館書店)p97、
 2002年02月28日検定済、2005年04月01日発行 B組み換え
「明解保健体育」(一橋出版)p86、
 2002年02月28日検定済、2005年01月20日発行 B組み換え
「保健体育」(一橋出版)p96, 156、
 2002年02月28日検定済、2005年01月20日発行 B組み換え



<<遺伝子組換え技術について>>
01 ゲノムに占める遺伝子のイメージ01
02 ゲノムに占める遺伝子のイメージ02
03 遺伝子くみかえの法則 単行本編
04 遺伝子くみかえの法則 教科書編01 イントロ
05 遺伝子くみかえの法則 教科書編02 集計
06 遺伝子くみかえの法則 教科書編03 生物II
07 遺伝子くみかえの法則 教科書編04 理科基礎・図録
08 遺伝子くみかえの法則 教科書編05 家庭基礎
○09 遺伝子くみかえの法則 教科書編06 保健体育
10 遺伝子くみかえの法則 教科書編07 現代社会
11 遺伝子くみかえの法則 教科書編08 中学校教科書
12 遺伝子くみかえの法則 教科書編09 現代社会02 スターリンク事件
13 遺伝子くみかえの法則 教科書編10 農業科用教科書
14 遺伝子換飼料不使用 この世に存在しない遺伝子組換え作物不使用

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